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第二十四話
しおりを挟む立ち話もあれなので、俺とニーナとアイリスは近くの喫茶店に入ることにした。
それぞれメニューを注文し、待っている間お互いの現状について話し合う。
「まさかアルトがあのアルトリアの騎士になったとはな…」
ニーナに拾われてアルトリアの騎士になったと伝えると、アイリスは目を丸くして驚いた。
「俺もまさかこんなことになるなんてな…ニーナには感謝してるよ」
「そんな…!感謝するのはこっちです。あの時アルト様に助けていただけなければ、私はどうなっていたかわかりません」
こちらの話が終わったら、次はアイリスのことを聞く番だった。
「俺が抜けてから…ギルドはどうなって
る?」
いきなりクビを宣告され、誰にも告げることなく出てきてしまったが、しかし元メンバーたちに恨みはない。
彼らが今どうしているか、俺は知っておきたかった。
「ええと…そのだな…実はギルドのことは私もわからん…」
「え…?それはどういう…」
「私も…ギルドを辞めてきたのだ」
「はぁ!?」
アイリスの告白に俺は思わず声をあげてしまった。
周りの客がこっちを見たので、慌てて声を顰める。
「どういうことだ?」
「お前がクビになったと聞いてカッとなってしまってな…自分から辞めてきてしまったのだ」
「いやいやいや、何してんだよ!?」
俺のために怒ってくれるのは嬉しいが…
しかし、だからって辞めるのはやりすぎだろう。
「なんで俺なんかのためにお前が…?」
「そ、それは…その…お前がいたから…私はあのギルドに入ったわけで…」
「ん?声が小さいぞ」
「な、なんでもないっ!!ともかくっ、私はあのギルドを辞めたのだっ!!理由は…あ、あれだ!その…ガイズが気に入らなかったんだっ!!だからやめた!!」
「ガイズが…?確かにむかつく野郎ではあったけど…」
なんかとっつけ感が半端ない。
しかし、実際に辞めるということに踏み切ったということは、彼女なりにあのギルドに思うことがあったのだろう。
給料が低いとか、上が無能とか、将来性がないとか。
今思えば、俺もクビにならなくともいずれはあのギルドを去っていたかもな。
あそこにいても使い潰されるだけだ。
「じゃあ、お前…今はどうしているんだ?どこかのギルドに入ったのか?」
「ま、まだだ…ずっとお前を探してたから…」
「ん?なんだって?」
「い、今あるギルドと交渉中だ!!」
「そうか…ならよかった」
おそらくこいつの実力なら、どこのギルドにだって受け入れてもらえるだろう。
こいつの名は、いつかに戦ったミリア同様冒険者界隈に轟いているからな。
就職に困ることもあるまい。
「まぁ…ギルドが決まったら教えてくれよ。心配しちまう」
「し、心配…えへへ…アルトが私を…」
「ん?何ニヤニヤしてんだ?」
「な、なんでもないっ」
「そうか」
なんかさっきからアイリスの様子がおかしい気がする。
やっぱりまだギルドを辞めたことを後悔していたりするのだろうか。
「お、お二人に聞いてもいいでしょうか」
俺がアイリスのことについて考えているとずっと黙っていたニーナが口を挟んできた。
「なんだ?アルトリア嬢」
「あ、アルト様とアイリス様は…その…冒険者時代はどういう関係だったのでしょうか…」
「関係…?」
「そ、その…だから、ええと…言いにくいのですが…男女として、どういう関係、と言いますか…」
「なっ!?」
アイリスが顔を真っ赤にした。
「わ、私とあるとは別に…っ、そ、そういう関係では…」
こういう話にあまり耐性のないアイリスが、ウブな反応を見せる。
俺はニーナに念を押しておいた。
「俺とアイリスは付き合ってはなかったぞ。あくまで冒険者仲間って感じだ。な?」
俺と勘違いされたらアイリスも迷惑だろう。
そう思って俺の方からも言っておいたのだが、なぜかアイリスがむすっとこっちを見た。
「そ、そうかもしれんが…な、何も言い切らなくても…」
「え、なんだって?」
「あ、アルトのいう通りだ!私たちに男女の関係はない!!」
「そ、そうですか…よかった…」
ほっと胸を撫で下ろすニーナ。
それを見て、アイリスが目を丸くする。
それからどこか羨ましげに、俺とニーナを見比べ始めた。
うーん…なんかわからんが、出会った当初から、アイリスがやたらニーナに対して敵対心を抱いているような気がする。
なんだろう、以前に何かあったのか。
しかしこの2人は会うのは今日が初めてだろうし…
「お待たせいたしました。ご注文の~」
そうこうしているうちに、注文した料理が来た。
俺たちは一旦会話を切り上げて、食べるのに集中するのだった。
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