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第3章

自由になるための呪文

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 走り書きのメモを何回も読み返す。「妄想」という言葉を多用した。この言葉が自分を自由にしてくれる呪文になると信じて。

『また誰かが自分を銃撃してくるのではないか』最初は、そう書いていたのだが、『見張っている』と書き換えた。

 こちらの方が警察・検察に対する刺激が少ないと考えたからである。

 刑法学的に言うと、これまでは包丁を持ちだす正当な理由があったと主張していたのだが、そうではなく正当な理由は無かったのだが、私は行為当時には正当な理由が有ると勘違いしていたと、供述を変更する。

 また警察とオウム真理教との癒着に関する供述は撤回するという事になる。


 この理論構成で私は自由を勝ち取ることが出来るのか?

 不安が全身にみなぎってきた。留置場の日常は時間の流れが遅くて退屈過ぎるのに、こういう時は留置場の時間の流れは余りにも早すぎた。弱弱しい冬の陽光は、もう沈みかけている。

 そんな時、警察官の声が響いた。
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