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第一章

Episode 24

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「さて。ここまで話してきたものの……別にスキニットくんは何とも思ってないんだろう?」
「まぁな。聞いたのもテクニック的に気になった程度だし……」
『なっ……』

私の言葉にスキニットは肯定し、それに対しジョンは驚いたような声を出した。

「そりゃそうだろ?語り部達は自分の出来る事をやったと言ってるだけだ。決闘中に俺が言うならともかく、今言うのは流石にちげぇさ」

彼は苦笑しつつそう言った。
私にではなく、きちんとジョンに向かって。

「正直小言の1つくらいは覚悟していたのだけれどね」
「言ってやろうか?」
「はは、やめておくれよ。……まぁ実際に戦った側はそんなものなのさ。そんなわけだから……」

一度、ニッコリと笑顔をジョンに向け。
その後、彼の目へと視線を向けた。

「うだうだ言う元気は、この後の森林攻略に回そうぜ?」
『ッ……わか、った』
「ならよーし。行こうか、スキニットくん」
「了解。……なんつーか」
「ん?」
「語り部には出来る限り逆らわない方針で行くことにしたわ……」

何やらスキニットが決闘の後よりも疲れたように見えたのは気のせいだろうか。


<ルプス森林 浅層>

【憑依】状態を一度解き、改めてアーちゃんとサーちゃんを呼び出した後、私達は森の中へと入っていた。
私の近くにはスーちゃんとサーちゃんが。
その前方にアーちゃんとスキニット。
後方にはアナとジョンという、大人数で移動している。

「スキニットくん、【憑依】しなくても大丈夫?」
「一応な。【憑依】を使うなら敵の速さにも目を慣らさねぇと反応できねぇし……それに、そっちの嬢ちゃん達と違って、うちのはジョン以外【森の中の歩き方】を持ってねぇからな」
「あー……そりゃ仕方ないね。でもアーちゃんの戦闘って」

私の声を遮るように、発砲音が森の中へと鳴り響いた。
消音器などを付けていない銃の音は、遮るものが木程度しかない森の中では中々に響く。
それこそこちらに害意を持っている相手にも。

「この通り、銃火器による遠距離戦闘だぜ?動きとか見れるかい?」
『あら、失礼ねマスター。接近戦出来るようにわざと音を鳴らして狼達を集めているのに』
「君の場合はストレス発散も兼ねているだろう?」

苦笑いしながらも、少しは近接戦闘を行うようにとは言い含めておく。
今回から、というか攻略するまではこの協力戦線は継続するのだ。
私達だけならば問題はないが、今後奥へ入っていけばいくほどに敵の数は増えていく。
その時に、私達だけでは対処できない数が襲ってきたら……現状のままであれば、容易に全滅するだろう。

それに例の【人狼王】の事もある。
アレの動きを最低限止める程度の動きさえスキニット側が出来るようになってくれれば……私側で何とか出来るかもしれない。

『はぁ……分かったわよ。と言っても、私が出来る近接戦闘ってバリツとかガン=カタとかになるわよ?』
「それらが出来るだけでも十分に凄いから大丈夫」

そもそも架空の戦闘術を実戦で扱えると言っている時点で、戦闘能力の高さが伺える。
それに加え、別に私側のメンツで戦闘が出来るのは彼女だけではない。

「いざとなったらお願いね、スーちゃんサーちゃん」
『私はいいですが……サーちゃんもですか……』
『前回は油断してたからね!頑張るよ!』

ふんす、という鼻息が聞こえてきそうなくらいには気合の入っているサーちゃんの頭を撫でながら、こちらへと視線を投げているスキニットを視界に収める。

「ほら、こっち見てていいのかい?」
「あ?あぁ、まぁ語り部達がそうやって談笑してる時は敵が近くにいないってことだろう?」
「あー……うん。そうだね。あんまり油断するのは良くないと思うぜ?」
「は?」

ビュン、と何かが風を切る音が横から聞こえた。
そしてその後数秒遅れてから、何かが倒れるような音がスキニットの背後から聞こえてくる。
見れば、頭を撫でていたサーちゃんがモーニングスターを取り出し金属塊を何かにぶつけた、らしい。

<レッサーウェアウルフが討伐されました>

ログが表示されたため、何が倒されたか分かったものの、横でニコニコと今だに笑っている彼女に対しスキニット側が向ける視線は恐怖で染まっていた。

「ほら、そっちにもログ入っただろう?油断するのは良くないぜ?」
『良くないぜー?』
「あ、あぁ……すまん。もうちっと身入れるわ」

スキニットは私の言葉遣いを真似して笑っているサーちゃんの行動、というよりはその動きの始まりが見えなかった・・・・・・こと自体に驚いているようにも見えた。
確かに彼からすれば目の前で自分の背後に向かって武器を振るわれたのに何も反応が出来なかったのだ。
他のVRMMOで前衛を務めているらしいスキニットに衝撃を与えるのには十分だろう。

……サーちゃんの正体を知ったらもっと驚きそうだなぁ。
そんなことを考えつつ、私達は以前とは数を増やし森の奥へと進んでいく。
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