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第三章 オンリー・ユー 君だけを
Episode 16
しおりを挟む--第二区画 第二階層ダンジョン 【決闘者の墓場】 4F
■【偽善者A】ハロウ
テレポーターの機能によって、1Fからではなく4Fから直接再入場した私達はとりあえず先にそれぞれが考えてきた対策法が通じるかどうかを確かめるべく、グレーターゾンビを探し始めた。
先程までとは違い、物資が潤沢にある状態のため多少の無茶も出来るようにはなっている。
但し無茶をしすぎて殺されるというのも阿保らしいので、ある程度はルールを決めてやることにした。
「まず、やってる側が無理だと思った瞬間に合図を出す。合図を出した瞬間に他が介入。合図に関してはまぁ……各自に任せるわ」
「当然だねぇ」
「まぁ一応ね。で、二つ目。やってる側のHPが半分切ったら、合図がなかったとしても介入するわ。これは流石にデスペナになるよりは良いという考えからね」
『デスペナになると面倒だしねぇ('ω')』
「流石に今からデスペナ明けるの待ってると、時間が足りないから。で、最後。それが出来た場合、基本的にこの攻略中のグレーターゾンビの担当はその人になるわ。例外として私の【強欲性質】のような……再使用時間が長いものを使っている場合は、まぁ仕方ないってことでその権利が他の人に移るわ」
「権利って言っても、基本的には強制でしょう?」
マギが少し肩を竦めながら苦笑いで言う。
それに私も苦笑いで返しながら、溜息を吐いた。
「そりゃそうよ。私達も頑張るっちゃ頑張るけれど、まぁアレをどうにかしないとここでの探索もまともに出来ないだろうしね」
「いやぁ、面倒だ面倒だ。もっと大物用に大太刀でも用意しておくべきだったなぁ」
『CNVLさんはどっちかっていうと、そういう刀とかよりフォークとかナイフとかの方が似合いそう(゜д゜)』
「お、いいね。後でそのコンセプトで作ってみようか」
ルールを再確認し終わり、適当な雑談も交えながら歩いていると。
運が良いのか悪いのか、私達の進む方向に1つの巨大な影が存在した。
どうやら異常に発達した部位は個体によって違うのか、私達が戦った個体とは別に。
こちらの個体は異常に頭が発達しており、ちょっとしたファンタジーの火星人のようになっていた。
自身の頭の重さを支え切れていないのか、ふらふらと壁へと頭をぶつけながらこちらへと歩いてくる姿は、少しだけ……対策をしっかり各々で考えてきた私達にとっては色々と思うところもあり。
「あれは全員で殺しましょう」
「「『異議なし』」」
普段、忙しい時以外顔文字を外さないメアリーまでもが短く返答してきたのは印象に残ってしまった。
「今のみたいな、相手側に合わせて決めていきましょうか」
「まぁ流石に対策以前のレベルならどうしようもないしねぇ」
グレーターゾンビの生態……でいいのだろうか。
何の要因で発達してしまったのかはわからないままだが、特徴である異常発達した部位が個体によって違うというのは、正直な話とても有用な情報だった。
というのも、発達していてこちらが危険である部位は限られているからだ。
私達が最初に戦った右腕が発達しているもの。
そして、反対側の左腕の発達したもの。基本的にはこの2つが危険に当たるだろう。
それ以外の部位はほぼほぼ危険性がないといってもいい。
今の所確認できていないだけかもしれないが、異常発達する部位は現在各1部位しか確認できていない。
つまりは、足などが発達した場合……まともに動けないものも存在する可能性もあるのだ。
「よし、じゃあとりあえず各人用意してきた対策は発達部位見てやるか決めましょう」
「基本的に腕が発達してたらやるってことでいいんです?」
「えぇ。それ以外だとまだ何が危険か分からないから。……まぁ流石に腕以外で危険な部位とかはないとは思いたいのだけど」
そんなことを言いながら、4Fを探索していく。
今まではグレーターゾンビを警戒してあまり探索出来ていなかったのだが……ある程度警戒する必要もないのかと思い、今は探索を優先している。
といっても、だ。
探索といってもファンタジーの冒険者のような、隅々まで調べたりはせず。
私達の仲間内でいう『探索』というのは、次の階層に繋がる階段を探すことだった。
恐らく、ここの成り立ちやなんでこの階層からこんなに小綺麗になっているのかなど……そういったバックストーリーに関する資料やアイテムが見つかるのだろうが……正直私達の中にそれらが気になるプレイヤーはおらず。
そういった成り立ちなどを中心に追っているプレイヤーが他に居るし、そういった者らが掲示板にまとめをあげてくれているため私達がやる必要もないだろう。
そんなわけで探しているのだが。
ダンジョンという名の通り、一種の迷宮のようになっている為か単純に迷いかけてしまう。
……そろそろマッピング用の目印なんかも付けられた方がいいのかしらねぇ……。
明らかに第一区画のダンジョンよりも広いこのダンジョンを見て、頭の隅で考えていたことだ。
あとでメアリーに提案してみようと考えつつ。私達は更に奥へと進んでいく。
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