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第二章 【食人鬼】は被食者の夢を見るか?
Episode 15
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--浮遊監獄都市 カテナ 第二区画 デンス 第二階層
■【食人鬼A】CNVL
これから試しにNPC相手に決闘をしてみるというハロウを置いて、私は1人第二階層の散策をする。
といっても、そこまでここを見たい!という目的はなく。
本当に唯々散歩気分で歩いているだけなのだが。
暫く歩いてみれば、街の雰囲気なども掴めてくる。
ここにいるNPC達は、第一階層……上にいる者らとは役割が違うように見えた。
それこそ、上は普通に生活しているような村人だったのに対し、こちらは何かを専門的に作っている職人が多いように見えるのだ。
店に関しても、工房だったり研究所のような場所だったり様々で。
それらを冷やかすつもりはないものの、気になって覗いてしまう。
……ん、あれは……。
そんなことをしていたからだろうか。またしても知り合いを見つけることが出来た。
「おーい、メアリーちゃん」
「ひゃっ!?」
肩をびくつかせ、少女のような声を上げた彼女は、そろりとこちらの方へと振り返る。
そして私の顔を確認したのか、ほっと息を吐いた後にパーティ申請をしてきたため、それを承認する。
「いやぁ、ごめんごめん。驚かせるつもりはなかったのだけど」
『大丈夫!CNVLさんもこの辺の散策?('ω')?』
「まぁ、今日は戦闘とかダンジョンに潜るのとかはやらない日って決めたからね。……メアリーちゃんはここの工房に何か用があるの?もしかしたら邪魔したかい?」
『えっ?あぁ、いや!(゜д゜)!』
彼女が立って中の様子を伺っていたのは、鍛冶系の工房で。
中からは今も鉄を打つ音が響いている。
メアリーは所謂生産組……本来アイテムを作成するのを専門にしているプレイヤーの1人だ。
興味があるのだろう。
「ここで立ってても何も教えてもらえないぜ?……ってあぁ。そういうことか」
『私はいいよ……流石にNPC相手だとしてもコミュニケーション取れないんじゃ……(;´Д`)』
「うーん……あぁ、そうだ」
『?(';')?』
私は彼女の手を引き、その工房の中へと入る。
その行動にメアリーは驚き、手を離そうとするが戦闘をメインにしている私の腕力には敵わないのか、腕をぶんぶんさせるだけで振りほどくことはできないようだった。
むわっとした熱気が肌を撫で、金属を扱う工房……鍛冶工房であることを改めて教えてくれる。
私達が入ってきたことが何かのトリガーになったのか、その工房の奥から頭にバンダナを巻いた筋肉隆々のNPCがこちらへと近づいてくる。
「ここはキングス工房だ。何か用か?嬢ちゃん達」
「そうだね。ちょっと鍛冶について触りだけでも教えてもらいたいなぁって思って」
『CNVLさん!?』
「いいのいいの。私もどうせなら知っておきたいしね。……で、どう?資格とか何かしら必要だったりする?」
そうやって聞くと、NPCは腕を組み私達の事を品定めするような目で見てきた。
……おぉ、感情というか細かい表情まではっきりと出るもんだねぇ。凄いや。
そんなことを考えていると、彼は独りでに頷き「いいだろう」と一言口にした後。
「鍛冶を学びたいとは言うが、何を作るために知りたい?触りっつってもそこが分からねぇと下手な事を教えちまう。それに製法も違うんでな」
「何を作りたい、か。そうだね、私はダガーやナイフかな。あそこらへんを主に使うから覚えておきたい」
「そっちの嬢ちゃんは?」
突然話を振られたからか、メアリーはまたも肩をびくつかせ言葉に詰まってしまう。
彼女ならば恐らくはほぼ全て……知れるものがあるならば全てを知りたいとでも答えるのだろうが、こればっかりは私の予想でしかなく。
本人の口から言われないと本心というものは分からない。
少しばかり震えている彼女の頭に、フードの上から手を乗せ軽く撫でてやる。
そして私を見上げてきた彼女に軽く笑いかけ、小さく「深呼吸して、ゆっくりでいいから話してみ」と優しく語りかける。
すると、少しずつゆっくりと。つっかえながらも自分の言葉で自分のやりたいことを伝え始めた。
「あっ……わ、わたしは、その、こっここで教えてもらえること全部しり、たいです……」
「あい分かった。じゃあ少し待ってろ」
恐らく、彼女は極度のあがり症なのだろう。
ただ単に対人能力が低すぎるのかもしれないが、その場合ここまで私達と一緒に行動も出来ていないだろうし……何より、チャットではきちんと受け答えができるのだ。
単純に声を出すことを恥ずかしがっているのだろう。多くの人にそれを聞かれるのが恥ずかしいのだろう。
正直な話、そこさえ何とか通過してしまえば彼女は普通に話すことも出来る、と思う。
割とお節介というか、今回の件に関して言うならば確実に余計なお世話だったのだろうが……まぁ、思いついてしまったからには仕方ない。
……あとでちゃんと謝っておこうか。嫌われるのは嫌だしねぇ。
とりあえず今は。今だけは、私の隣で真っ赤になって固まっているこの小さな少女の頭をなで続ける事に専念しよう。
キングス工房で教えてもらえる『鍛冶』というコンテンツは、中々に興味深いものだった。
というのも、今までは適当にアイテムを組み合わせ『合成』というボタンを押すだけで作っていたアイテムを、ゲーム内で本格的に加工する為のコンテンツだったからだ。
主に使う素材アイテムは鉄の欠片。
それを炉によって熱し、どろどろに溶かした後。
他の様々なアイテムと組み合わせることで、様々な効果……例えば、ゾンビ系に対する特攻や、魔法の威力アップなどといったものを付与することが出来た。
最終的に作られる武器によってその効果量というのは変わってくるものの、それでも狙った効果を付けられるのはかなり便利なものだろう。
ゾンビや人型特攻なんてものを付けてしまえば、【劇場作家の洋館】の雑魚敵などは今よりもずっと楽になってしまうのだから。
「うーん、まぁ。こんなものかな……」
そんなこんなで作ってみた、私の『鍛冶』コンテンツを使った作品。
初めてやってみたにしては中々良いものが出来たと思う。
ーーーーーーーーーー
『』 武器:短剣
装備可能レベル:5~
効果:なし
説明:ゾンビの肉を練りこんだ短剣。
時々脈打っているように見えなくもない。
ーーーーーーーーーー
「流石にアクターゾンビから出た肉片じゃあ効果も出ないよねぇ……まぁ仕方ない」
混ぜたアイテムは腐った肉片。
他にも余ってはいたが、特に数多く残っていたのがそれだったために投入してみたのだ。
効果は何も発現しなかったのだが。
横を見ればメアリーがせっせと何かを作っているのが見えたため、チャットに『別の所を回ってくるよ』と一言入れた後、工房から離脱した。
■【食人鬼A】CNVL
これから試しにNPC相手に決闘をしてみるというハロウを置いて、私は1人第二階層の散策をする。
といっても、そこまでここを見たい!という目的はなく。
本当に唯々散歩気分で歩いているだけなのだが。
暫く歩いてみれば、街の雰囲気なども掴めてくる。
ここにいるNPC達は、第一階層……上にいる者らとは役割が違うように見えた。
それこそ、上は普通に生活しているような村人だったのに対し、こちらは何かを専門的に作っている職人が多いように見えるのだ。
店に関しても、工房だったり研究所のような場所だったり様々で。
それらを冷やかすつもりはないものの、気になって覗いてしまう。
……ん、あれは……。
そんなことをしていたからだろうか。またしても知り合いを見つけることが出来た。
「おーい、メアリーちゃん」
「ひゃっ!?」
肩をびくつかせ、少女のような声を上げた彼女は、そろりとこちらの方へと振り返る。
そして私の顔を確認したのか、ほっと息を吐いた後にパーティ申請をしてきたため、それを承認する。
「いやぁ、ごめんごめん。驚かせるつもりはなかったのだけど」
『大丈夫!CNVLさんもこの辺の散策?('ω')?』
「まぁ、今日は戦闘とかダンジョンに潜るのとかはやらない日って決めたからね。……メアリーちゃんはここの工房に何か用があるの?もしかしたら邪魔したかい?」
『えっ?あぁ、いや!(゜д゜)!』
彼女が立って中の様子を伺っていたのは、鍛冶系の工房で。
中からは今も鉄を打つ音が響いている。
メアリーは所謂生産組……本来アイテムを作成するのを専門にしているプレイヤーの1人だ。
興味があるのだろう。
「ここで立ってても何も教えてもらえないぜ?……ってあぁ。そういうことか」
『私はいいよ……流石にNPC相手だとしてもコミュニケーション取れないんじゃ……(;´Д`)』
「うーん……あぁ、そうだ」
『?(';')?』
私は彼女の手を引き、その工房の中へと入る。
その行動にメアリーは驚き、手を離そうとするが戦闘をメインにしている私の腕力には敵わないのか、腕をぶんぶんさせるだけで振りほどくことはできないようだった。
むわっとした熱気が肌を撫で、金属を扱う工房……鍛冶工房であることを改めて教えてくれる。
私達が入ってきたことが何かのトリガーになったのか、その工房の奥から頭にバンダナを巻いた筋肉隆々のNPCがこちらへと近づいてくる。
「ここはキングス工房だ。何か用か?嬢ちゃん達」
「そうだね。ちょっと鍛冶について触りだけでも教えてもらいたいなぁって思って」
『CNVLさん!?』
「いいのいいの。私もどうせなら知っておきたいしね。……で、どう?資格とか何かしら必要だったりする?」
そうやって聞くと、NPCは腕を組み私達の事を品定めするような目で見てきた。
……おぉ、感情というか細かい表情まではっきりと出るもんだねぇ。凄いや。
そんなことを考えていると、彼は独りでに頷き「いいだろう」と一言口にした後。
「鍛冶を学びたいとは言うが、何を作るために知りたい?触りっつってもそこが分からねぇと下手な事を教えちまう。それに製法も違うんでな」
「何を作りたい、か。そうだね、私はダガーやナイフかな。あそこらへんを主に使うから覚えておきたい」
「そっちの嬢ちゃんは?」
突然話を振られたからか、メアリーはまたも肩をびくつかせ言葉に詰まってしまう。
彼女ならば恐らくはほぼ全て……知れるものがあるならば全てを知りたいとでも答えるのだろうが、こればっかりは私の予想でしかなく。
本人の口から言われないと本心というものは分からない。
少しばかり震えている彼女の頭に、フードの上から手を乗せ軽く撫でてやる。
そして私を見上げてきた彼女に軽く笑いかけ、小さく「深呼吸して、ゆっくりでいいから話してみ」と優しく語りかける。
すると、少しずつゆっくりと。つっかえながらも自分の言葉で自分のやりたいことを伝え始めた。
「あっ……わ、わたしは、その、こっここで教えてもらえること全部しり、たいです……」
「あい分かった。じゃあ少し待ってろ」
恐らく、彼女は極度のあがり症なのだろう。
ただ単に対人能力が低すぎるのかもしれないが、その場合ここまで私達と一緒に行動も出来ていないだろうし……何より、チャットではきちんと受け答えができるのだ。
単純に声を出すことを恥ずかしがっているのだろう。多くの人にそれを聞かれるのが恥ずかしいのだろう。
正直な話、そこさえ何とか通過してしまえば彼女は普通に話すことも出来る、と思う。
割とお節介というか、今回の件に関して言うならば確実に余計なお世話だったのだろうが……まぁ、思いついてしまったからには仕方ない。
……あとでちゃんと謝っておこうか。嫌われるのは嫌だしねぇ。
とりあえず今は。今だけは、私の隣で真っ赤になって固まっているこの小さな少女の頭をなで続ける事に専念しよう。
キングス工房で教えてもらえる『鍛冶』というコンテンツは、中々に興味深いものだった。
というのも、今までは適当にアイテムを組み合わせ『合成』というボタンを押すだけで作っていたアイテムを、ゲーム内で本格的に加工する為のコンテンツだったからだ。
主に使う素材アイテムは鉄の欠片。
それを炉によって熱し、どろどろに溶かした後。
他の様々なアイテムと組み合わせることで、様々な効果……例えば、ゾンビ系に対する特攻や、魔法の威力アップなどといったものを付与することが出来た。
最終的に作られる武器によってその効果量というのは変わってくるものの、それでも狙った効果を付けられるのはかなり便利なものだろう。
ゾンビや人型特攻なんてものを付けてしまえば、【劇場作家の洋館】の雑魚敵などは今よりもずっと楽になってしまうのだから。
「うーん、まぁ。こんなものかな……」
そんなこんなで作ってみた、私の『鍛冶』コンテンツを使った作品。
初めてやってみたにしては中々良いものが出来たと思う。
ーーーーーーーーーー
『』 武器:短剣
装備可能レベル:5~
効果:なし
説明:ゾンビの肉を練りこんだ短剣。
時々脈打っているように見えなくもない。
ーーーーーーーーーー
「流石にアクターゾンビから出た肉片じゃあ効果も出ないよねぇ……まぁ仕方ない」
混ぜたアイテムは腐った肉片。
他にも余ってはいたが、特に数多く残っていたのがそれだったために投入してみたのだ。
効果は何も発現しなかったのだが。
横を見ればメアリーがせっせと何かを作っているのが見えたため、チャットに『別の所を回ってくるよ』と一言入れた後、工房から離脱した。
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