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第4章 魔界編
第210話 ユリウスの記憶④ 魔人の恐怖
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「……ま、魔人のオス?」
初めて見た灰色の巨人を見たユリウスがまともに言葉にできた単語がそれだった。
それを聞いた女はふんと鼻を鳴らして、ユリウスの言葉を訂正する。
「お前は本当に魔人が好きなのだな。確かにアレはオスだと思うが、ジャイアントオーガという。なに、大した相手ではない。お前の才能を測るにはちょうどいい相手だろう。まぁ好きにやってみろ」
先程まで女に釘付けになっていたユリウスだったが、今釘付けになっているのは女が言ったジャイアントオーガ(オス)だった。
ユリウスが気付いたのを察したジャイアントオーガは巨大な棍棒を担いだ状態でこちらへと走ってくる。
「ま、待って! あんなの勝てるわけない! 助けてよ!」
今もユリウスに迫ってくるジャイアントオーガの身長はゆうに4mを越えていた。
今までユリウスが戦ってきた大型動物やゴブリンなどの魔獣とは強さも迫力も比べるまでもない。
ユリウスが助けを求める声を上げると女は不思議そうな表情で首を捻る。
「おかしなことを言うな? 魔人だと思っていた私相手にあれだけ威勢がよかったというのに、あの程度の魔獣のどこに恐れる事がある。分かっていると思うが、アレより弱い魔人など存在しないぞ。魔王ともなればアレくらいの魔獣であれば100体いても3秒もしない内に全て消し炭にする」
「……は?」
(魔人ってそんなに強いのか? 父さんが言っていた事は本当だったのか)
女の言葉でユリウスは父の言っていた言葉の意味をようやく理解した。
あんな化け物よりも強い化け物相手に人間が勝てるわけがないと。
ユリウスは前言を撤回し、すぐに足元に落ちていた剣を拾い上げた。
(……お、重い)
ユリウスは初めて持った金属製の武器に思わずそんな感想を抱く。
ジャイアントオーガは大きな喚き声を上げながらユリウスへとまっすぐ棍棒を振り下ろした。
「ごぉあー!」
ユリウスはジャイアントオーガの振り下ろした巨大な棍棒をギリギリで回避した。
ユリウスが巨大棍棒を振り下ろされた地面を見ると、ジャイアントオーガが棍棒を振り下ろした地面は人間の力ではありえない程に抉れ、その威力を物語っていた。
(あ、あんなの喰らったら死ぬ)
それでも思いの他、ユリウスは冷静だった。
巨大棍棒を振り下ろした隙にユリウスはジャイアントオーガの足首に狙いを定めた。
しかし——。
見事足首に斬撃を当てる事に成功させたユリウスだったが、少しだけ皮膚を切り裂くことしかできなかった。
(デカすぎて顔どころか腹も狙えない。どうすれば)
ユリウスとジャイアントオーガでは体格が違い過ぎて、足首くらいしか狙える所がなかった。しかし思いのほかジャイアントオーガは硬く、まともなダメージを与える事ができない。
ユリウスの心中を察したわけではないが、ほとんどダメージを受けなかったジャイアントオーガはニヤリと大きく卑しい笑みを浮かべた。
そして何かに気付いたのか再度棍棒を背負いなおしたかと思うと。
(……あ、やばい)
ジャイアントオーガはかなり腰を落とした姿勢で巨大な棍棒を凄まじい速度で横スイングしたのだ。
縦の攻撃はなんとか回避できたユリウスだったが、3m以上ある棍棒から逃れる程後ろには回避できないし、かと言って丸太ほどのある棍棒を飛び越える事も不可能だった。
(父さん、ごめん、言う事聞いとけばよかった)
ユリウスは避ける事を諦め、目を瞑りその場に立ち尽くした。
だが、いつまで経ってもジャイアントオーガの棍棒はやってこなかった。
不思議に思ったユリウスはゆっくりと目を開けるとそこには衝撃の光景があった。
「威勢が良かったわりに大したことないな。お前」
ジャイアントオーガが薙いだ棍棒を女が片手一本で受け止めていたのだ。
そして、女はゆっくりと受け止めていた棍棒を離したかと思うと、棍棒を離した女の手がユリウスの目から消えた。
パンッ!
そんな音が聞こえると同時にユリウスの目の前で巨大棍棒がジャイアントオーガの持っていた持ち手部分を残して炸裂した。
「お? おぉ?」
ユリウスと同じくその光景を見ていたジャイアントオーガは目の前で起きた事が理解できなかったのか間抜けな声を上げた。
そしてそんな間抜けな声がジャイアントオーガの最後の声となった。
パンっ!
またそんな破裂音だけが聞こえた後、首が無くなったジャイアントオーガは重力に従うように膝から崩れ落ちた。
初めて見た灰色の巨人を見たユリウスがまともに言葉にできた単語がそれだった。
それを聞いた女はふんと鼻を鳴らして、ユリウスの言葉を訂正する。
「お前は本当に魔人が好きなのだな。確かにアレはオスだと思うが、ジャイアントオーガという。なに、大した相手ではない。お前の才能を測るにはちょうどいい相手だろう。まぁ好きにやってみろ」
先程まで女に釘付けになっていたユリウスだったが、今釘付けになっているのは女が言ったジャイアントオーガ(オス)だった。
ユリウスが気付いたのを察したジャイアントオーガは巨大な棍棒を担いだ状態でこちらへと走ってくる。
「ま、待って! あんなの勝てるわけない! 助けてよ!」
今もユリウスに迫ってくるジャイアントオーガの身長はゆうに4mを越えていた。
今までユリウスが戦ってきた大型動物やゴブリンなどの魔獣とは強さも迫力も比べるまでもない。
ユリウスが助けを求める声を上げると女は不思議そうな表情で首を捻る。
「おかしなことを言うな? 魔人だと思っていた私相手にあれだけ威勢がよかったというのに、あの程度の魔獣のどこに恐れる事がある。分かっていると思うが、アレより弱い魔人など存在しないぞ。魔王ともなればアレくらいの魔獣であれば100体いても3秒もしない内に全て消し炭にする」
「……は?」
(魔人ってそんなに強いのか? 父さんが言っていた事は本当だったのか)
女の言葉でユリウスは父の言っていた言葉の意味をようやく理解した。
あんな化け物よりも強い化け物相手に人間が勝てるわけがないと。
ユリウスは前言を撤回し、すぐに足元に落ちていた剣を拾い上げた。
(……お、重い)
ユリウスは初めて持った金属製の武器に思わずそんな感想を抱く。
ジャイアントオーガは大きな喚き声を上げながらユリウスへとまっすぐ棍棒を振り下ろした。
「ごぉあー!」
ユリウスはジャイアントオーガの振り下ろした巨大な棍棒をギリギリで回避した。
ユリウスが巨大棍棒を振り下ろされた地面を見ると、ジャイアントオーガが棍棒を振り下ろした地面は人間の力ではありえない程に抉れ、その威力を物語っていた。
(あ、あんなの喰らったら死ぬ)
それでも思いの他、ユリウスは冷静だった。
巨大棍棒を振り下ろした隙にユリウスはジャイアントオーガの足首に狙いを定めた。
しかし——。
見事足首に斬撃を当てる事に成功させたユリウスだったが、少しだけ皮膚を切り裂くことしかできなかった。
(デカすぎて顔どころか腹も狙えない。どうすれば)
ユリウスとジャイアントオーガでは体格が違い過ぎて、足首くらいしか狙える所がなかった。しかし思いのほかジャイアントオーガは硬く、まともなダメージを与える事ができない。
ユリウスの心中を察したわけではないが、ほとんどダメージを受けなかったジャイアントオーガはニヤリと大きく卑しい笑みを浮かべた。
そして何かに気付いたのか再度棍棒を背負いなおしたかと思うと。
(……あ、やばい)
ジャイアントオーガはかなり腰を落とした姿勢で巨大な棍棒を凄まじい速度で横スイングしたのだ。
縦の攻撃はなんとか回避できたユリウスだったが、3m以上ある棍棒から逃れる程後ろには回避できないし、かと言って丸太ほどのある棍棒を飛び越える事も不可能だった。
(父さん、ごめん、言う事聞いとけばよかった)
ユリウスは避ける事を諦め、目を瞑りその場に立ち尽くした。
だが、いつまで経ってもジャイアントオーガの棍棒はやってこなかった。
不思議に思ったユリウスはゆっくりと目を開けるとそこには衝撃の光景があった。
「威勢が良かったわりに大したことないな。お前」
ジャイアントオーガが薙いだ棍棒を女が片手一本で受け止めていたのだ。
そして、女はゆっくりと受け止めていた棍棒を離したかと思うと、棍棒を離した女の手がユリウスの目から消えた。
パンッ!
そんな音が聞こえると同時にユリウスの目の前で巨大棍棒がジャイアントオーガの持っていた持ち手部分を残して炸裂した。
「お? おぉ?」
ユリウスと同じくその光景を見ていたジャイアントオーガは目の前で起きた事が理解できなかったのか間抜けな声を上げた。
そしてそんな間抜けな声がジャイアントオーガの最後の声となった。
パンっ!
またそんな破裂音だけが聞こえた後、首が無くなったジャイアントオーガは重力に従うように膝から崩れ落ちた。
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