上 下
183 / 255
第4章 魔界編

第183話 俺も行きたい

しおりを挟む
「王となんの話してたんっスか?」





カーティスの話が終わり、俺達は王城の外で待っていたアリアス達と合流した。

今は王宮を出たすぐの王都中心街を歩く最中だ。





「あぁ、それはだな——」





「——只の世間話ですよ。王は俺達がいきなり出てきたもんだから興味津々だったみたいですよ」





ガランの問いかけにアルジールが普通に玉座内での話をしようとしたので、俺はアルジールを遮り、適当な話をでっち上げた。



まぁ実際そんな話もした気もするので完全なでっちあげではないのだが。





ていうか勝手に王の秘密を喋ろうとするんじゃねぇよ。

世が世ならこの短時間でアルジールは何度斬首刑を喰らっていただろうか?

本当にカーティスが優しい王様で本当によかったと思う。





「あー、そうなんスね。まぁ普通じゃあり得ないっスもんね。なりたての冒険者がいきなり勇者なんて。しかも一気に2人っスし」





筋が通っているので、一応納得した風だが、ちょっとニヤついているので、多分ガランに嘘だとなんとなくバレていそうだ。

俺は話を変える為、今後の予定をアリアス達に尋ねる事にした。





「そういえばこれからどうするんですか?」





「そうですね。クドウさんが言っていた試練の塔に行ってみようかと思うのですが、その前に先生に会いに行こうかと」





試練の塔というのは謎の茶マスクが俺に伝言を頼んだ勇者になった者が挑むというユリウス運営のダンジョンの事だ。

なんかアリアスにはまだ資格がないが、今回は特別に開けておくとか訳の分からない事を言っていたので、アリアスはそれを受けに行くのだろう。



一般的な人間からすれば3神が課す神聖な試練らしいが、ユリウス本人を知る俺からすれば只の変な神の娯楽のようにしか思えない。

まぁ力をくれるとかそんな話らしいので、クリアしたらいい武器がもらえるとかそんな所だろう。

特に期待などしていないが、話の流れとして俺はアリアスの話に付き合う事にした。





「先生っていうのは先代勇者のソリュードさんの事ですか? そういえば先々代のルオルさんはいたのに先代のソリュードさんはいなかったんですか?」





俺も会った事はあるはずだが、いかんせん玉座の間にはそれなりに人数がいたし、会ったのは20年以上前な上、魔王城では瞬殺だったので俺はあまり鮮明にソリュードの顔を覚えてはいなかった。

まぁ確かそこそこ強かった気がするという程度は覚えているけどな。





「結構神出鬼没な方ですからね。ルオル様と違ってあまり王城には顔を出さないようですし、修行をつけてもらって以降はあまり僕も会えていないんです。試練の塔について何か知っていたら聞いておきたいんですが……」





そう言って、アリアスは苦笑を漏らした。

勇者にも色々あるらしい。

まぁ勇者と言っても強さはピンキリだし、実際俺が戦った歴代勇者の中でもアリアスに近い強さを持つ者もいれば、「えっ、君ホントに勇者?」みたいな奴も時々混ざっている時もあった。



強さでもそうなのだから性格や行動が違うのは当然だろう。



とはいえまだソリュードは40代くらいのはずなので、まだ現役でもやれるくらいには強いはずだし、隠居するにはまだ早いはずなのだが。





「状況が状況ですし、流石にお屋敷にいると思うのですが、会えそうになかったらそのまま向かうしかないかもしれませんね。試練がどの程度時間のかかるものなのかも分かりませんし」





時間があれば、ソリュードを待つのもよかったかもしれないが、魔王軍襲来までには既に3日を切っている。

アリアスの言う通り試練とやらがどの程度時間がかかるものかも分からないし、試練後の体力を回復させる時間と戦いの準備も整えなければならないのだから、情報を持っているか分からないソリュードの事など待ってはいられないという事だろう。





「システアさん達もアリアスさんについていくんですか?」





町中を歩く中、俺は次にシステアに話しかけた。



ちなみに町中にあれだけいた民衆たちは既に解散し、普段の街並みを取り戻していた。

恐らくだが、3日後の戦いに備える俺達の邪魔にならないよう歓迎が終われば解散するように指示が出ていたのだろう。

とはいえ、時々街を歩く人々がこちらをちらちら見てくるが、話しかけてくる様子もない。



徹底した指示が早い段階で為された証拠だ。



一見頼りなさそうなカーティスだが十分な仕事をしているように俺には思える。





「えぇ、その予定です。……クドウさん達は来てくれないのですか?」





システアの様子から察するにシステア達は俺達もアリアスに同行するものだと思っていたらしい。

確かにユリウス運営とはいえ、俺も試練の塔とやらには興味がある。

だが、俺にはそんな興味そそるダンジョンよりも優先しなければならない用事があった。





「すいません。俺達ちょっと用事がありまして。そんなに時間はかからないとは思うので、そちらの用事が終わればまた合流しましょう」





そう言うと、なぜかシステアは残念そうな表情で俺を見上げた。





「そうですか。それなら仕方ありませんね。また3日後に」





「はい」





俺だってできることならそちらに行きたい。





あぁ、久しぶりの里帰りがこんなにも憂鬱なんてな。





俺は何事も起きない事を願いながら、町の途中でアルジール達と共に【光の剣】の面々としばしの別れを告げる事となった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

二度目の異世界に来たのは最強の騎士〜吸血鬼の俺はこの世界で眷族(ハーレム)を増やす〜

北条氏成
ファンタジー
一度目の世界を救って、二度目の異世界にやってきた主人公は全能力を引き継いで吸血鬼へと転生した。 この物語は魔王によって人間との混血のハーフと呼ばれる者達が能力を失った世界で、最強種の吸血鬼が眷族を増やす少しエッチな小説です。 ※物語上、日常で消費する魔力の補給が必要になる為、『魔力の補給(少しエッチな)』話を挟みます。嫌な方は飛ばしても問題はないかと思いますので更新をお待ち下さい。※    カクヨムで3日で修正という無理難題を突き付けられたので、今後は切り替えてこちらで投稿していきます!カクヨムで読んで頂いてくれていた読者の方々には大変申し訳ありません!! *毎日投稿実施中!投稿時間は夜11時~12時頃です。* ※本作は眷族の儀式と魔力の補給というストーリー上で不可欠な要素が発生します。性描写が苦手な方は注意(魔力の補給が含まれます)を読まないで下さい。また、ギリギリを攻めている為、BAN対策で必然的に同じ描写が多くなります。描写が単調だよ? 足りないよ?という場合は想像力で補って下さい。できる限り毎日更新する為、話数を切って千文字程度で更新します。※ 表紙はAIで作成しました。ヒロインのリアラのイメージです。ちょっと過激な感じなので、運営から言われたら消します!

女神様から同情された結果こうなった

回復師
ファンタジー
 どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

ぽっちゃり無双 ~まんまる女子、『暴食』のチートスキルで最強&飯テロ異世界生活を満喫しちゃう!~

空戯K
ファンタジー
ごく普通のぽっちゃり女子高生、牧 心寧(まきころね)はチートスキルを与えられ、異世界で目を覚ました。 有するスキルは、『暴食の魔王』。 その能力は、“食べたカロリーを魔力に変換できる”というものだった。 強大なチートスキルだが、コロネはある裏技に気づいてしまう。 「これってつまり、適当に大魔法を撃つだけでカロリー帳消しで好きなもの食べ放題ってこと!?」 そう。 このチートスキルの真価は新たな『ゼロカロリー理論』であること! 毎日がチートデーと化したコロネは、気ままに無双しつつ各地の異世界グルメを堪能しまくる! さらに、食に溺れる生活を楽しんでいたコロネは、次第に自らの料理を提供したい思いが膨らんできて―― 「日本の激ウマ料理も、異世界のド級ファンタジー飯も両方食べまくってやるぞぉおおおおおおおお!!」 コロネを中心に異世界がグルメに染め上げられていく! ぽっちゃり×無双×グルメの異世界ファンタジー開幕! ※基本的に主人公は少しずつ太っていきます。 ※45話からもふもふ登場!!

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

退屈な人生を歩んでいたおっさんが異世界に飛ばされるも無自覚チートで無双しながらネットショッピングしたり奴隷を買ったりする話

菊池 快晴
ファンタジー
無難に生きて、真面目に勉強して、最悪なブラック企業に就職した男、君内志賀(45歳)。 そんな人生を歩んできたおっさんだったが、異世界に転生してチートを授かる。 超成熟、四大魔法、召喚術、剣術、魔力、どれをとっても異世界最高峰。 極めつけは異世界にいながら元の世界の『ネットショッピング』まで。 生真面目で不器用、そんなおっさんが、奴隷幼女を即購入!? これは、無自覚チートで無双する真面目なおっさんが、元の世界のネットショッピングを楽しみつつ、奴隷少女と異世界をマイペースに旅するほんわか物語です。

処理中です...