上 下
178 / 255
第4章 魔界編

第178話 王とロリバ……少女①

しおりを挟む
カーティスが頭を下げると、玉座の間にいる貴族達は色めき立った。



王としての立ち振る舞いが間違っている事への苦言を漏らすというよりは、ただ単純に驚きが大きかったのだろう。

俺が気づいた限りではルオルが唯一こちらへ——というかシステアへとガンを飛ばし続けているが、この状態がデフォルトだと思う。

ちなみにガンをつけられているシステアはルオルの視線に気づいているっぽいが、これもデフォルトなのか完全無視を決め込んでいた。



まぁルオルの事はこの際放っておくにしても、頭を下げたカーティスには名指しされた【魔王】のリーダーとして俺は何かアクションを起こさなくてはならないだろう。

ここ数百年、魔王として君臨し、頭を下げられることしかなかった俺だがいくら勇者相手とはいえ、一国の王が頭を下げるべきではないことくらい理解はしている。



だが、カーティスが頭を上げるとほぼ同時に口を開いたのは【魔王】のリーダーである俺でも【光の剣】のリーダーであるアリアスでもなくシステアだった。





「カーティス、王がそんな簡単に頭を下げてはいけない。それがたとえ救世の勇者であってもです」





先程までのルオルとの罵り合いの時のような言葉よりはまだ丁寧な言葉でシステアはカーティスに苦言を呈した。

だが、確かに言葉遣い的には丁寧かもしれないが、そもそも普通は王に対して直接苦言を呈したりなどしない。



『頭をお上げください』が普通だろう。



カーティスがなまじイケメンなのでそれなりに絵になっているが、普通に考えると、中年の王が少女にしか見えないシステアに軽く説教されている状況なのだ。

多分システアとカーティスは知り合いなのだろうが、森の奥に籠っていたと言っていた割に案外システアには知り合いは多いようだ。



そんなシステアの言葉に特に気分を害した様子もなくカーティスはシステアへと笑顔を向けた。





「ふふ、システア様、お変わりになられましたね。良き出会いがあったようで、なによりです」





「う、うるさいのじゃ……」





なにやら意味深な事を言って、笑みを溢すカーティスになぜかシステアは少しだけ顔を赤くさせてブツブツと呟いた。

やはり知り合いなのは間違いなさそうで、かなり親しい間柄のように思える。





「それでシステア様、先程上がってきた報告は事実なのでしょうか?」





笑みを薄めて、やや真剣味を増した表情でカーティスはシステアに尋ねた。



恐らく、3日後の四天王軍による人間界侵攻作戦の件だ。

歓迎の為に俺達を王城へと呼んだのも間違いではないのだろうが、恐らくカーティスがしたかった本題はこちらだろう。

システアもカーティス同様、表情に真剣味を取り戻す。





「あぁ、3日後に四天王軍が人間界に攻めてくる」





システアがそう言った瞬間、玉座の間が騒めいた。

この程度で済んでいるのは予め情報をカーティスから伝えられていたからだろう。

この場にいる貴族が少ないのはまだ全ての貴族に話を回していないということもあるのかもしれない。





「だが、心配する事はない。クドウさんはかの伝説の聖竜さえも退けたほどの強者。3日後、勝利するのは私達だ」





そんなシステアの力強い言葉に玉座の間中から「おぉ」と感嘆の声が次々と漏れる。



だが、もちろん俺は母さんを撃退などしていない。

まぁ四天王相手でも後れを取るつもりはないので、否定はしないが。

貴族たちの反応を無視して、更にシステアの話は続く。





「冒険者協会とユリウス教会には既にシラルークや近辺の街へと戦力を送るよう言ってあるので、騎士団にはシラルークの後方で魔獣と魔人の人間界進出を防ぐ最後の盾になってもらいたい」





「前線に立たせなくてもよろしいのですか?」





「あぁ、いるだけ冒険者達の邪魔になる。だから国軍は冒険者達が討ち漏らした敵の排除に全力を尽くしてもらいたい」





このシステアの意見は俺も賛成だ。

正直、A級未満の冒険者はいるだけ邪魔になる。

せめて魔人ではなくとも魔界産の強大な魔獣相手に五分に戦える程度の実力がないと前線で戦う上で話にもならない。

指示する側とされる側が完全に逆な気はするが、カーティスは余程システアに絶大な信頼を置いているのか指示への疑問を口にすることはあっても否定する言葉はまったく口にしなかった。





「そうですか。私達はまたシステア様の助けになることができないのですね」





そう言ってカーティスは悲しそうに目を伏せた。

そんなカーティスへと近づいたシステアはカーティスの肩をポンポンと叩いた。





「まぁそう言うな。騎士団の仕事も重要だぞ。如何にクドウさん達が強いと言っても全ての魔人達を完全に防ぎきれる訳じゃないからな。お主はお主で出来る事をすればいい」





「……はい」





美少女のシステアがイケメン青年カーティスを慰めているさまはとても絵になっていた。

理由は分からないが、所々ですすり泣く声すら聞こえてくる。



まぁ絵になっているとは言っても、それは一般的に言えばの話で俺目線からすればユリウス激似のおっさんが美少女に慰められているキモむず痒い光景でしかないのだが、周囲の状況的にツッコめる状況ではない。

そんな時、アルジールの向こう側にいたメイヤが俺の隣まで歩いてくると意味不明な事を耳打ちしてきた。





「元彼では? どうされるのですか? クドウ様」





「はぁ?」





意味が分からない。





確かによくよく考えてみると、今現在パーティーを組んでいるアリアス達以上にカーティスとシステアの関係は親密に見えなくもないのでまったくあり得ない事もないのかもしれない。

見た目的な事だけを言えば30過ぎのおっさんと10代前半に見えなくもない美少女と言った感じなので恋愛対象になりえない気もするが、実際の所はシステアの方が多分年上だ。



そう考えれば、別にシステアとカーティスがそういう関係であってもおかしくはないがだからと言って俺にどうしろと言いたいのだろうか。





「どうするって何がだ?」





「え? あ、いや、私の勘違いだったようです。お忘れください」





俺の回答にメイヤは少し驚いた様子を見せたが、特にそれ以上何も言うことなく、元居た位置へと戻って行った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

お持ち帰り召喚士磯貝〜なんでも持ち運び出来る【転移】スキルで異世界つまみ食い生活〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ひょんなことから男子高校生、磯貝章(いそがいあきら)は授業中、クラス毎異世界クラセリアへと飛ばされた。 勇者としての役割、与えられた力。 クラスメイトに協力的なお姫様。 しかし能力を開示する魔道具が発動しなかったことを皮切りに、お姫様も想像だにしない出来事が起こった。 突如鳴り出すメール音。SNSのメロディ。 そして学校前を包囲する警察官からの呼びかけにクラスが騒然とする。 なんと、いつの間にか元の世界に帰ってきてしまっていたのだ! ──王城ごと。 王様達は警察官に武力行為を示すべく魔法の詠唱を行うが、それらが発動することはなく、現行犯逮捕された! そのあとクラスメイトも事情聴取を受け、翌日から普通の学校生活が再開する。 何故元の世界に帰ってきてしまったのか? そして何故か使えない魔法。 どうも日本では魔法そのものが扱えない様で、異世界の貴族達は魔法を取り上げられた平民として最低限の暮らしを強いられた。 それを他所に内心あわてている生徒が一人。 それこそが磯貝章だった。 「やっべー、もしかしてこれ、俺のせい?」 目の前に浮かび上がったステータスボードには異世界の場所と、再転移するまでのクールタイムが浮かび上がっていた。 幸い、章はクラスの中ではあまり目立たない男子生徒という立ち位置。 もしあのまま帰って来なかったらどうなっていただろうというクラスメイトの話題には参加させず、この能力をどうするべきか悩んでいた。 そして一部のクラスメイトの独断によって明かされたスキル達。 当然章の能力も開示され、家族ごとマスコミからバッシングを受けていた。 日々注目されることに辟易した章は、能力を使う内にこう思う様になった。 「もしかして、この能力を金に変えて食っていけるかも?」 ──これは転移を手に入れてしまった少年と、それに巻き込まれる現地住民の異世界ドタバタコメディである。 序章まで一挙公開。 翌日から7:00、12:00、17:00、22:00更新。 序章 異世界転移【9/2〜】 一章 異世界クラセリア【9/3〜】 二章 ダンジョンアタック!【9/5〜】 三章 発足! 異世界旅行業【9/8〜】 四章 新生活は異世界で【9/10〜】 五章 巻き込まれて異世界【9/12〜】 六章 体験! エルフの暮らし【9/17〜】 七章 探索! 並行世界【9/19〜】 95部で第一部完とさせて貰ってます。 ※9/24日まで毎日投稿されます。 ※カクヨムさんでも改稿前の作品が読めます。 おおよそ、起こりうるであろう転移系の内容を網羅してます。 勇者召喚、ハーレム勇者、巻き込まれ召喚、俺TUEEEE等々。 ダンジョン活動、ダンジョンマスターまでなんでもあります。

俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした

宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。 聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。 「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」 イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。 「……どうしたんだ、イリス?」 アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。 だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。 そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。 「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」 女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。

未来人が未開惑星に行ったら無敵だった件

藤岡 フジオ
ファンタジー
四十一世紀の地球。殆どの地球人が遺伝子操作で超人的な能力を有する。 日本地区で科学者として生きるヒジリ(19)は転送装置の事故でアンドロイドのウメボシと共にとある未開惑星に飛ばされてしまった。 そこはファンタジー世界そのままの星で、魔法が存在していた。 魔法の存在を感知できず見ることも出来ないヒジリではあったが、パワードスーツやアンドロイドの力のお陰で圧倒的な力を惑星の住人に見せつける!

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

ぽっちゃり無双 ~まんまる女子、『暴食』のチートスキルで最強&飯テロ異世界生活を満喫しちゃう!~

空戯K
ファンタジー
ごく普通のぽっちゃり女子高生、牧 心寧(まきころね)はチートスキルを与えられ、異世界で目を覚ました。 有するスキルは、『暴食の魔王』。 その能力は、“食べたカロリーを魔力に変換できる”というものだった。 強大なチートスキルだが、コロネはある裏技に気づいてしまう。 「これってつまり、適当に大魔法を撃つだけでカロリー帳消しで好きなもの食べ放題ってこと!?」 そう。 このチートスキルの真価は新たな『ゼロカロリー理論』であること! 毎日がチートデーと化したコロネは、気ままに無双しつつ各地の異世界グルメを堪能しまくる! さらに、食に溺れる生活を楽しんでいたコロネは、次第に自らの料理を提供したい思いが膨らんできて―― 「日本の激ウマ料理も、異世界のド級ファンタジー飯も両方食べまくってやるぞぉおおおおおおおお!!」 コロネを中心に異世界がグルメに染め上げられていく! ぽっちゃり×無双×グルメの異世界ファンタジー開幕! ※基本的に主人公は少しずつ太っていきます。 ※45話からもふもふ登場!!

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...