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第4章 魔界編
第146話 捕縛命令
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「ていうかお前達は何者じゃ? クドウさんに何を聞きたいのじゃ?」
システアが少し不機嫌そうに問うと女は全く表情を変えることなくそれに答える。
「私達が知りたいのはフィーリーア様の所在です。クドウという勇者ならばフィーリーア様に関して何か知っているのではないかと思いまして」
「お前達が何者かという問いに答えておらんが? それにフィーリーアとは誰じゃ? クドウさんとその者が何の関係があるというのじゃ?」
女はクドウに尋ねたい事しか答えていない。
女の言葉は自らの要求を提示しているだけで一切何の説明にもなっていなかった。
システアからすれば女の正体も分からなければ、そもそもクドウに尋ねたいというフィーリーアという人物すら何者か定かではないのである。
「申し訳ありませんがお答えできません」
もし、女——つまりクロナがシステアの事をハーフエルフだと気付いていたのだとすれば正直に自分達がエルフだという事を打ち明けられただろう。
だが、この時点ではクロナはそれを知る由もなかった。
明らかに魔人と人間が敵対しているこの世界で自分達が魔人の一種と位置付けられているエルフだと打ち明けることなどできるはずがなかったのである。
そして、システアもクロナ達がエルフだという事を知らない。
クロナの返答によりシステアの中でクロナとレナザードは完全に自らの存在を明かす事のできない不審者という位置付けとなった。
「すまぬが、お前達をクドウさんにこのまま会わすわけにはいかんな。……ガラン。この2人を捕らえるんじゃ」
「いや、それはやり過ぎじゃないっスか? 確かに怪しすぎるけど会わせるだけ会わせてみてもいいと思うッスけど」
ビシッと決めたシステアにガランがそんな否定的な意見を出す。
「そんなことはない。クドウさんを狙った魔人の刺客の可能性がある」
エルフが分類上は魔人の一種と考えるとクロナが魔人であるという事にはあながち間違いはない。
ただクロナもレナザードもクドウを狙う理由などあるはずはなかった。
昨日初めてその名を知り、フィーリーアの所在を尋ねる為にクドウに会いたいというのは嘘ではないのだから。
諦めたように溜息を吐いたガランが椅子から立ち上がり、クロナとレナザードを見る。
「申し訳ないけどそう言う事らしいっス。クドウさん達にはちゃんと会わせるっスから今は大人しく捕まってくださいッス。苦情ならあとでシステアさんに言うといいっスよ」
そう言い終えるとガランはあまり警戒することなくクロナ達の方へと歩いていく。
本当にシステアの言う通りクロナが魔人だったとして抵抗されてもガランにはその攻撃を防ぐ自信があった。
仮に苦戦するようなら傍にはアリアスとシステアがいる。
最悪助太刀に入ってくれるだろう。
ただそれ以前にガランから見て、クロナとレナザードが強いようには全く見えなかった。
ガランもシステア程ではないがある程度魔力を感知することはできる。
なんとなく魔力が強いか弱いか程度しか判断できない粗末なものだが、それでも目の前のクロナとレナザードからはほとんど魔力を感じる事が出来ないので、魔力感知の熟練度はあまり関係ないとガランは思っていた。
ガランが歩き始めるとすぐにクロナがガランを見て言った。
「言っても無駄でしょうからあえて反論はしませんが、一つだけ聞いてもいいですか?」
こんな状況だというのにクロナの表情はほとんど変わることなく慌てる素振りは一切見えなかった。
捕まったとしても潔白を証明するだけの自信があるということだろうか。
そもそもガランはシステアとは違い、目の前の2人を魔人などとは思っていないので、別におかしい事ではないかと思う。
目の前の2人を捕まえるのはただシステアに言われたからだ。
問題がなければそれで一向に構わない。
「どうぞっス」
ガランは2人に少し同情していたのでクロナの質問を許した。
するとクロナから返ってきた言葉はガランにとって意外なものだった。
「ガランさん、あなたはこの世界の強者ですか?」
システアが少し不機嫌そうに問うと女は全く表情を変えることなくそれに答える。
「私達が知りたいのはフィーリーア様の所在です。クドウという勇者ならばフィーリーア様に関して何か知っているのではないかと思いまして」
「お前達が何者かという問いに答えておらんが? それにフィーリーアとは誰じゃ? クドウさんとその者が何の関係があるというのじゃ?」
女はクドウに尋ねたい事しか答えていない。
女の言葉は自らの要求を提示しているだけで一切何の説明にもなっていなかった。
システアからすれば女の正体も分からなければ、そもそもクドウに尋ねたいというフィーリーアという人物すら何者か定かではないのである。
「申し訳ありませんがお答えできません」
もし、女——つまりクロナがシステアの事をハーフエルフだと気付いていたのだとすれば正直に自分達がエルフだという事を打ち明けられただろう。
だが、この時点ではクロナはそれを知る由もなかった。
明らかに魔人と人間が敵対しているこの世界で自分達が魔人の一種と位置付けられているエルフだと打ち明けることなどできるはずがなかったのである。
そして、システアもクロナ達がエルフだという事を知らない。
クロナの返答によりシステアの中でクロナとレナザードは完全に自らの存在を明かす事のできない不審者という位置付けとなった。
「すまぬが、お前達をクドウさんにこのまま会わすわけにはいかんな。……ガラン。この2人を捕らえるんじゃ」
「いや、それはやり過ぎじゃないっスか? 確かに怪しすぎるけど会わせるだけ会わせてみてもいいと思うッスけど」
ビシッと決めたシステアにガランがそんな否定的な意見を出す。
「そんなことはない。クドウさんを狙った魔人の刺客の可能性がある」
エルフが分類上は魔人の一種と考えるとクロナが魔人であるという事にはあながち間違いはない。
ただクロナもレナザードもクドウを狙う理由などあるはずはなかった。
昨日初めてその名を知り、フィーリーアの所在を尋ねる為にクドウに会いたいというのは嘘ではないのだから。
諦めたように溜息を吐いたガランが椅子から立ち上がり、クロナとレナザードを見る。
「申し訳ないけどそう言う事らしいっス。クドウさん達にはちゃんと会わせるっスから今は大人しく捕まってくださいッス。苦情ならあとでシステアさんに言うといいっスよ」
そう言い終えるとガランはあまり警戒することなくクロナ達の方へと歩いていく。
本当にシステアの言う通りクロナが魔人だったとして抵抗されてもガランにはその攻撃を防ぐ自信があった。
仮に苦戦するようなら傍にはアリアスとシステアがいる。
最悪助太刀に入ってくれるだろう。
ただそれ以前にガランから見て、クロナとレナザードが強いようには全く見えなかった。
ガランもシステア程ではないがある程度魔力を感知することはできる。
なんとなく魔力が強いか弱いか程度しか判断できない粗末なものだが、それでも目の前のクロナとレナザードからはほとんど魔力を感じる事が出来ないので、魔力感知の熟練度はあまり関係ないとガランは思っていた。
ガランが歩き始めるとすぐにクロナがガランを見て言った。
「言っても無駄でしょうからあえて反論はしませんが、一つだけ聞いてもいいですか?」
こんな状況だというのにクロナの表情はほとんど変わることなく慌てる素振りは一切見えなかった。
捕まったとしても潔白を証明するだけの自信があるということだろうか。
そもそもガランはシステアとは違い、目の前の2人を魔人などとは思っていないので、別におかしい事ではないかと思う。
目の前の2人を捕まえるのはただシステアに言われたからだ。
問題がなければそれで一向に構わない。
「どうぞっス」
ガランは2人に少し同情していたのでクロナの質問を許した。
するとクロナから返ってきた言葉はガランにとって意外なものだった。
「ガランさん、あなたはこの世界の強者ですか?」
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