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第4章 魔界編
第99話 みんな友達
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「おいっ、今からでもブリガンティス様に謝れ!」
会議室にゾデュスの大声が響き渡っていた。
今回はなんとか間に合ったようで、未だにブリガンティスの魔法は行使されていなかった。
「イヤよ。だって私、嘘言ってないし」
本当は嘘だらけだが、セラフィーナはブリガンティスの第2級魔法シャドウバイトを防ぐ自信だけはあったのだ。
(てめぇの訳の分からん意地はどうでもいいんだよ!)
一方、ゾデュスはそうは思っていなかった。
ゾデュス自身はブリガンティスのシャドウバイトを受けた事はなかったが、少なくてもタダで済む自信など皆無である。
屈強な肉体を持つゾデュスでさえそんななのに目の前の細腕に細い首にオマケに低身長のセラフィーナが耐えられるはずがないと思っていた。——まぁ低身長は関係ないのだが。
(……もうダメだ。短い付き合いだったな。次生まれ変わったら空気の読める魔人に生まれ変われよ)
ゾデュスにブリガンティス止めるという選択肢はなかった。
実力的に止めるのは不可能だし、説得するのも不可能だ。
唯一のセラフィーナが助かる道は地べたに顔を擦り付け命乞いをするのみだった。
それは無理にしても素直に謝ればまだ助かる可能性もあったかもしれない。
だが、セラフィーナはそれすらしなかった。
ゆえにゾデュスができるのはセラフィーナが死んだあと空気の読める魔人に転生することを願うことくらいだったのである。
だが、結果的にブリガンティスのシャドウバイトが行使される事はなかった。
「おい、リル、お前何してる?」
ブリガンティスの右腕にはブリガンティスが信頼を寄せている魔人リルがしがみついていたのだ。——ブリガンティスがシャドウバイトを行使することを止めるかのように。
「殺しちゃダメだよ」
「何言ってる? こいつは俺を侮辱した。殺すのは当然だ」
物騒な話をしているが、実際ブリガンティスはこれまでずっとそうしてきた。
結果的に会議室でアルジール軍幹部の魔人ギャガを殺す事はなかったが、ミッキーは介入しなければギャガはあの場で死んでいただろう。
「今度会った時にアルレイラとミッキーになんて説明するの? ガンちゃん日頃の行いが悪いからバレバレだよ? ……それにこの子使えるよ。多分だけどゾデュスよりも強いかも」
リルはそう言ってゾデュスを見た。
「えっ、まぁ強いとは思います。俺よりもと言われれば分かりませんが」
ゾデュスはいきなり話を振られて思わずそう答える。
ゾデュスが知るのはセラフィーナの普通の飛行タイプの魔人を遥かに超える速度とホーリーデスプロ—ジョンと呼ばれる爆裂魔法を使える事とあとは回復魔法をそこそこ使えるという程度の物だ。
とはいえどれを取っても普通の魔人の能力を超えるものには違いなかった。
「ね、殺すには勿体ない逸材だよ。それに——」
リルはセラフィーナをジロジロと見ながらセラフィーナの周りをクルクルと回る。
「……な、何よ?」
何か勘づかれたのかとセラフィーナが警戒する中、リルは零れんばかりの笑顔で言った。
「めっちゃ可愛いよ! この子! こんな可愛い友達が欲しかったの! だってさ、うちって男ばっかりじゃん?」
リルはそう言って無理やりセラフィーナの手を取りブンブンと握手した。
「今日からフィーナちゃんは私の友達! フィーナちゃんに手を出したらガンちゃんの事嫌いになるよ?」
「いや、だが……」
「うー、ガンちゃんは私の数少ない女の子友達を虐めるの?」
うるうるとリルは目に涙を浮べながら分かりやすいジェスチャーで泣き真似をする。
ゾデュスから見ても演技にしか見えないリルのウソ泣きだったがブリガンティスには効果覿面だった。
「分かった! 分かったから泣くな。リル」
ゾデュス達の前で明らかに狼狽えるブリガンティス。
こんな光景は長年ブリガンティスに仕えているゾデュスにとってもかなり珍しい光景だった。
ブリガンティスの傍に常に控えている魔人リル。
ゾデュスもいつからこの2人が一緒にいるかは知らないが、どう考えてもゾデュスより戦闘能力で劣るリルにゾデュスが頭が上がらないのはブリガンティスがリルに対する時の態度が原因だった。
ブリガンティスがそう言うとリルは俯けていた顔を上げ笑顔で言った。
「ホント? じゃあ仲直りね!」
リルはブリガンティスとセラフィーナの手を取り、2人を握手させた。
ブリガンティスもセラフィーナも突然のリルの行動に呆気に取られつつも——
「く、くそっ、よろしくしてやる」
「えぇ、こっちこそよろしくしてあげるわ」
「わーい、友達増えたー!」
微妙な雰囲気のまま握手と交わした2人の周りをリルはグルグルと楽しそうに回り続けるのだった。
そんな3人を見たガデュスは隣にいたゾデュスにだけ聞こえる声で一言呟いた。
「セラフィーナちゃん……リル様……いい」
そんなガデュスをゾデュスは残念そうな物を見るような目で見つめるのだった。
会議室にゾデュスの大声が響き渡っていた。
今回はなんとか間に合ったようで、未だにブリガンティスの魔法は行使されていなかった。
「イヤよ。だって私、嘘言ってないし」
本当は嘘だらけだが、セラフィーナはブリガンティスの第2級魔法シャドウバイトを防ぐ自信だけはあったのだ。
(てめぇの訳の分からん意地はどうでもいいんだよ!)
一方、ゾデュスはそうは思っていなかった。
ゾデュス自身はブリガンティスのシャドウバイトを受けた事はなかったが、少なくてもタダで済む自信など皆無である。
屈強な肉体を持つゾデュスでさえそんななのに目の前の細腕に細い首にオマケに低身長のセラフィーナが耐えられるはずがないと思っていた。——まぁ低身長は関係ないのだが。
(……もうダメだ。短い付き合いだったな。次生まれ変わったら空気の読める魔人に生まれ変われよ)
ゾデュスにブリガンティス止めるという選択肢はなかった。
実力的に止めるのは不可能だし、説得するのも不可能だ。
唯一のセラフィーナが助かる道は地べたに顔を擦り付け命乞いをするのみだった。
それは無理にしても素直に謝ればまだ助かる可能性もあったかもしれない。
だが、セラフィーナはそれすらしなかった。
ゆえにゾデュスができるのはセラフィーナが死んだあと空気の読める魔人に転生することを願うことくらいだったのである。
だが、結果的にブリガンティスのシャドウバイトが行使される事はなかった。
「おい、リル、お前何してる?」
ブリガンティスの右腕にはブリガンティスが信頼を寄せている魔人リルがしがみついていたのだ。——ブリガンティスがシャドウバイトを行使することを止めるかのように。
「殺しちゃダメだよ」
「何言ってる? こいつは俺を侮辱した。殺すのは当然だ」
物騒な話をしているが、実際ブリガンティスはこれまでずっとそうしてきた。
結果的に会議室でアルジール軍幹部の魔人ギャガを殺す事はなかったが、ミッキーは介入しなければギャガはあの場で死んでいただろう。
「今度会った時にアルレイラとミッキーになんて説明するの? ガンちゃん日頃の行いが悪いからバレバレだよ? ……それにこの子使えるよ。多分だけどゾデュスよりも強いかも」
リルはそう言ってゾデュスを見た。
「えっ、まぁ強いとは思います。俺よりもと言われれば分かりませんが」
ゾデュスはいきなり話を振られて思わずそう答える。
ゾデュスが知るのはセラフィーナの普通の飛行タイプの魔人を遥かに超える速度とホーリーデスプロ—ジョンと呼ばれる爆裂魔法を使える事とあとは回復魔法をそこそこ使えるという程度の物だ。
とはいえどれを取っても普通の魔人の能力を超えるものには違いなかった。
「ね、殺すには勿体ない逸材だよ。それに——」
リルはセラフィーナをジロジロと見ながらセラフィーナの周りをクルクルと回る。
「……な、何よ?」
何か勘づかれたのかとセラフィーナが警戒する中、リルは零れんばかりの笑顔で言った。
「めっちゃ可愛いよ! この子! こんな可愛い友達が欲しかったの! だってさ、うちって男ばっかりじゃん?」
リルはそう言って無理やりセラフィーナの手を取りブンブンと握手した。
「今日からフィーナちゃんは私の友達! フィーナちゃんに手を出したらガンちゃんの事嫌いになるよ?」
「いや、だが……」
「うー、ガンちゃんは私の数少ない女の子友達を虐めるの?」
うるうるとリルは目に涙を浮べながら分かりやすいジェスチャーで泣き真似をする。
ゾデュスから見ても演技にしか見えないリルのウソ泣きだったがブリガンティスには効果覿面だった。
「分かった! 分かったから泣くな。リル」
ゾデュス達の前で明らかに狼狽えるブリガンティス。
こんな光景は長年ブリガンティスに仕えているゾデュスにとってもかなり珍しい光景だった。
ブリガンティスの傍に常に控えている魔人リル。
ゾデュスもいつからこの2人が一緒にいるかは知らないが、どう考えてもゾデュスより戦闘能力で劣るリルにゾデュスが頭が上がらないのはブリガンティスがリルに対する時の態度が原因だった。
ブリガンティスがそう言うとリルは俯けていた顔を上げ笑顔で言った。
「ホント? じゃあ仲直りね!」
リルはブリガンティスとセラフィーナの手を取り、2人を握手させた。
ブリガンティスもセラフィーナも突然のリルの行動に呆気に取られつつも——
「く、くそっ、よろしくしてやる」
「えぇ、こっちこそよろしくしてあげるわ」
「わーい、友達増えたー!」
微妙な雰囲気のまま握手と交わした2人の周りをリルはグルグルと楽しそうに回り続けるのだった。
そんな3人を見たガデュスは隣にいたゾデュスにだけ聞こえる声で一言呟いた。
「セラフィーナちゃん……リル様……いい」
そんなガデュスをゾデュスは残念そうな物を見るような目で見つめるのだった。
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