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第4章 魔界編
第97話 真犯人2
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四天王が揃うこの場で大きな口を叩くセラフィーナをこの場に連れてきたゾデュスをブリガンティスは鋭い視線で睨みつけた。
「おいっ、ゾデュス、なんだこのガキは?」
セラフィーナが言ったミラージュミストについて少し考えこんでいたゾデュスは不意にブリガンティスに問われて慌てて返事を返した。
「あ、はい、すいません、ブリガンティス様。俺達がここに来る途中でガデュスの治療をしてくれた魔人です。なんでも野良のハルピュイア系魔人だとかなんとか」
「ほーぅ、加勢というのはどういうことだ?」
「言葉の通りよ。悪の冒険者クドウとアールを倒すために私も協力してあげるって言ってるの」
ブリガンティスとしてはゾデュスと話していたつもりだったのだが、セラフィーナはその会話に割って入った。
ブリガンティスは既にアルジールの部下にシャドウバイトで攻撃した件があるのでこれ以上事を大きくしたくはなかった。
仮にアルレイラとミッキーがこの場にいなければ既に3回は殺していただろうとブリガンティスは思う。
ブリガンティスは怒りを抑えつつ、視線をゾデュスからセラフィーナに移した。
「お前はそのE級冒険者のクドウとアールっていう人間を知っているのか? 何者だ?」
ブリガンティスに問われて、セラフィーナは考える。
(流石に正直に話しちゃまずいわよね? アルレイラ軍とアルジール軍は確実に敵に回ってしまうし、ブリガンティス軍が四面楚歌になってしまうわね)
セラフィーナの目的は魔界の戦力を利用してクドウとアルジールを討つこと。
なので、魔界の四天王達が味方同士で争う事はどうしても避けなくてはならなかった。
それに加えて、クドウ達の正体を魔界に流してしまうとユリウスにセラフィーナがこんな場所で暗躍していることがバレる可能性がかなり高い。
そうなれば、ユリウスに引き戻されるのは間違いなかった。
今のセラフィーナの半身はユリウスのいる天界にあるのだからバレてしまえばそれまでなのだ。
(そういえば、今日はユリウス様に呼ばれてないわね。いつもならワイン片手に話し相手をさせられるのに)
セラフィーナは分身していても半身がどういう状況にいるのかははっきりと分かるのだが、今日に限ってはあちらにいる半身はユリウスに呼び出しは受けてはいなかった。
この時ユリウスはフィーリーアとの決死の戦いを終えたばかりでいつものワインタイムに興じている場合でなかったのが真実だが、この時のセラフィーナには知る由もない事なのだった。
そんな事を考えつつもセラフィーナはブリガンティスの問いに答えた。
「アレは神ユリウスの加護を受けし人類の秘密兵器、いわばSSS級勇者よ。やつらは転移魔法を駆使して魔界の辺境にいる私たちのような野良魔人の里を襲っては密かに力を蓄えていたの」
セラフィーナは今考えた嘘八百を並べ立ててそれらしい感じを出す。
どうせ魔界にクドウとアールの正体を知るものなどいないのでバレることはないので問題ないはずだ。
「それは本当の話ですか?」
すると、その話に食いついたのはブリガンティスではなくアルレイラだった。
「えぇ、その通りよ。私の村もやつらに襲われたの。今やつらを討たないと魔界は大変な事になるわ」
セラフィーナがそう言うと、アルレイラは少し考えて、更にセラフィーナに問いかけた。
「……まさかギラスマティア様と我が弟アルジールはその者達に?」
「えっ、ちが——」
と言いかけて、セラフィーナは考えた。
クドウとアールは魔王ギラスマティアと魔人アルジールを殺してなどいない。
というか本人である。
どう考えてもアルレイラの勘違いだが、これは考えようによってはチャンスである。
四天王アルレイラは魔王ギラスマティアにアルジール同様忠誠を誓っていたはず。
つまり、そういうことにしておけばアルレイラの敵意もクドウとアールに向けられる。
「そう、あの2人が魔王と魔人アルジールを殺したのよ」
セラフィーナがそう言った瞬間、会議室全体が騒然となり、更にはアルジール軍の魔人から大きな怒号が上がった。
「なんだと! そのクドウとアールとかいう奴らが魔王様とアルジール様を!」「ブッ殺してやる! 人間共め!」
そんなアルジール軍から上がる多くの怒号を抑えたのはアルレイラだった。
「やめなさい! あなた達!」
アルレイラの制止の声に一瞬で静まり返るアルジール軍の魔人達。
そして、アルレイラはセラフィーナの発言に呆然としていたブリガンティスに言った。
「ブリガンティス、そのクドウとアールというSSS級勇者を討つまでは私達龍神族の力を貸しましょう。だが、それ以上の事を行うならば私達龍神族はあなた達の敵となります。いいですね?」
「……あぁ、それでいい」
「ミッキー殿もそれでよろしいですか?」
「ん~、多分大丈夫だと思う」
当初、ブリガンティスと真っ向から対立していたアルレイラだったが、セラフィーナの登場によりクドウとアールの討伐という事で意思統一が成される事になったのだった。
「おいっ、ゾデュス、なんだこのガキは?」
セラフィーナが言ったミラージュミストについて少し考えこんでいたゾデュスは不意にブリガンティスに問われて慌てて返事を返した。
「あ、はい、すいません、ブリガンティス様。俺達がここに来る途中でガデュスの治療をしてくれた魔人です。なんでも野良のハルピュイア系魔人だとかなんとか」
「ほーぅ、加勢というのはどういうことだ?」
「言葉の通りよ。悪の冒険者クドウとアールを倒すために私も協力してあげるって言ってるの」
ブリガンティスとしてはゾデュスと話していたつもりだったのだが、セラフィーナはその会話に割って入った。
ブリガンティスは既にアルジールの部下にシャドウバイトで攻撃した件があるのでこれ以上事を大きくしたくはなかった。
仮にアルレイラとミッキーがこの場にいなければ既に3回は殺していただろうとブリガンティスは思う。
ブリガンティスは怒りを抑えつつ、視線をゾデュスからセラフィーナに移した。
「お前はそのE級冒険者のクドウとアールっていう人間を知っているのか? 何者だ?」
ブリガンティスに問われて、セラフィーナは考える。
(流石に正直に話しちゃまずいわよね? アルレイラ軍とアルジール軍は確実に敵に回ってしまうし、ブリガンティス軍が四面楚歌になってしまうわね)
セラフィーナの目的は魔界の戦力を利用してクドウとアルジールを討つこと。
なので、魔界の四天王達が味方同士で争う事はどうしても避けなくてはならなかった。
それに加えて、クドウ達の正体を魔界に流してしまうとユリウスにセラフィーナがこんな場所で暗躍していることがバレる可能性がかなり高い。
そうなれば、ユリウスに引き戻されるのは間違いなかった。
今のセラフィーナの半身はユリウスのいる天界にあるのだからバレてしまえばそれまでなのだ。
(そういえば、今日はユリウス様に呼ばれてないわね。いつもならワイン片手に話し相手をさせられるのに)
セラフィーナは分身していても半身がどういう状況にいるのかははっきりと分かるのだが、今日に限ってはあちらにいる半身はユリウスに呼び出しは受けてはいなかった。
この時ユリウスはフィーリーアとの決死の戦いを終えたばかりでいつものワインタイムに興じている場合でなかったのが真実だが、この時のセラフィーナには知る由もない事なのだった。
そんな事を考えつつもセラフィーナはブリガンティスの問いに答えた。
「アレは神ユリウスの加護を受けし人類の秘密兵器、いわばSSS級勇者よ。やつらは転移魔法を駆使して魔界の辺境にいる私たちのような野良魔人の里を襲っては密かに力を蓄えていたの」
セラフィーナは今考えた嘘八百を並べ立ててそれらしい感じを出す。
どうせ魔界にクドウとアールの正体を知るものなどいないのでバレることはないので問題ないはずだ。
「それは本当の話ですか?」
すると、その話に食いついたのはブリガンティスではなくアルレイラだった。
「えぇ、その通りよ。私の村もやつらに襲われたの。今やつらを討たないと魔界は大変な事になるわ」
セラフィーナがそう言うと、アルレイラは少し考えて、更にセラフィーナに問いかけた。
「……まさかギラスマティア様と我が弟アルジールはその者達に?」
「えっ、ちが——」
と言いかけて、セラフィーナは考えた。
クドウとアールは魔王ギラスマティアと魔人アルジールを殺してなどいない。
というか本人である。
どう考えてもアルレイラの勘違いだが、これは考えようによってはチャンスである。
四天王アルレイラは魔王ギラスマティアにアルジール同様忠誠を誓っていたはず。
つまり、そういうことにしておけばアルレイラの敵意もクドウとアールに向けられる。
「そう、あの2人が魔王と魔人アルジールを殺したのよ」
セラフィーナがそう言った瞬間、会議室全体が騒然となり、更にはアルジール軍の魔人から大きな怒号が上がった。
「なんだと! そのクドウとアールとかいう奴らが魔王様とアルジール様を!」「ブッ殺してやる! 人間共め!」
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「やめなさい! あなた達!」
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