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第4章 魔界編
第90話 魔人ブリガンティス
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ゴロゴロピッシャーン。
ごごごごごごぉ——。
ここはかつて魔王ギラスマティアが現れる以前は魔界東部の覇者として君臨していた魔人ブリガンティスが住まう居城ブリガンティス城。
魔王城にすら負けずとも劣らない荘厳かつ豪華絢爛に作られたこの城の最奥にその男の姿があった。
——魔人ブリガンティス。
四天王の一角にして数の上では魔王軍内でも最大勢力を誇る魔界と人間界にその名を轟かす強大な魔人。
身長は2m程と魔人の中では少し大きい程度の体格だが、体のほぼ全てを漆黒で覆いつくすその外見が人間達の間では恐怖の象徴として魔人アルジールと並び、数多くの歴史書に遺されている。
ゴロゴロピッシャーン。
ごごごごごごぉ——。
「さっきからゴロゴロうるせえぞ! リル!」
部屋の最奥で踏ん反り返っていた魔人ブリガンティスは部屋の中心にいた小さな少女に怒鳴り声を上げると小さな少女はシュンとしながら小さな声で答えた。
「いや、なんか雰囲気出るかなと思って……」
ブリガンティスに怒られた少女の肌もブリガンティスと同じく漆黒に彩られていた。
少女の名は魔人リル。
特にブリガンティス軍内で特別な役職を与えられているわけではない少女だが、その存在はブリガンティス軍内で一目置かれる存在だった。
魔人ブリガンティスは数多くの種族を纏めるブリガンティス軍の頂点に君臨しているが、魔王軍の仕事の時以外では決して群れることはなく配下の魔人でもブリガンティスの許可なくブリガンティスの自室を訪れることはブリガンティスの配下の中では暗黙のルールとなっている。
そんな中で唯一例外的に魔人ブリガンティスの傍にいる事が許されているのがこの魔人リルだった。
シュンとしているリルを見てブリガンティスは優しい声で話しかけた。
「すまん、言いすぎた。飴ちゃん食うか?」
「うん! 食べるー!」
さっきまでの落ち込んでいたのはどこへやらリルはブリガンティスの元まで歩み寄るとブリガンティスが持っていた飴玉を受け取り、勢いよく口の中に放り込んだ。
「人間界侵攻作戦うまくいくといいねー!」
元気いっぱいになったリルがブリガンティスに言うと、ブリガンティスは「そうだな」と小さな声で呟いた。
人間界侵攻作戦はブリガンティスにとって手段でしかない。
全ての魔人に己の力を認めさせ、自らが魔王になるための。
その為の最大の障害であった魔王ギラスマティアと最大のライバルであった魔人アルジールは数日前を境に魔界から姿を消した。
最初はその事が信じられず、魔力探知の優れた数人の部下を使い何度も確認を取った。
だがそれでも魔界はおろか人間界の隅々を探しても魔王ギラスマティアと魔人アルジールの存在は確認できなかった。
今こそブリガンティスが人間界と魔界を支配し、魔王となる最大のチャンスなのだ。
その為の手も打った。
ブリガンティス軍軍団長である魔人ゾデュスとその弟である魔人ガデュス、それに加えて戦闘タイプの魔人20名を人間界に送り込んだのだ。
作戦は他の四天王が気づかれる前に進める必要があった。
その為に必要最低限かつ確実に作戦が成功する戦力をブリガンティスは人間界に送り込んだのだ。
ブリガンティスは人間界側の戦力について知っている。
人間界の最高戦力たる歴代勇者の力を分析して、更にその他の上位冒険者の戦力を加味した上で確実に勝てる戦力があの22名の魔人達だった。
あれだけの戦力があれば、一度の侵攻で人間界全土の支配は難しくとも、人間界西部の多くの町は支配下に収めることは十分に可能だとブリガンティスは確信している。
そして、それだけの町を支配下に収めてしまえば、なし崩し的に強引に事を進める事も可能になるだろう。
そんな思惑を巡らせている中、突如としてブリガンティスとリルがいる部屋に1人の魔人が勢いよく中に入ってきた。
「大変です! ブリガンティス様!」
名も記憶にない魔人はブリガンティスが許可しているわけでもないのに愚かにもブリガンティスの部屋の中へとどんどん入ってきた。
まだ若い魔人である彼は知らなかった。——四天王ブリガンティスに仕える上で決して破ってはいけない暗黙のルールが存在していることに。
「そうだなぁ、大変だなぁ」
ブリガンティスは魔人に冷たい視線を送るが、魔人は動揺しているのか自分の間違いに未だ気づかない。
「そうなんです! ブリガンティ——ぐえっ」
喋っている最中の魔人の身体が不意に宙に浮いた。
そのまま宙に浮いた魔人の首がメリメリと軋みを上げながら凄まじい力で締め付けられる。
「ブ、ブリガ——やめっ!」
名も知らぬ魔人は何かを言おうとしていたが、それを言い終える前に「ゴキッ」っと鈍い音を響かせて、地面に崩れ落ちた。
「……バカが。で、何の要件だ?」
ブリガンティスは既に亡骸となった魔人の後ろで恐怖の表情で固まっている別の魔人に声をかけると、その魔人は思い出したかのようにブリガンティスに報告を始めた。
「えっ、あっ、四天王アルレイラ様と四天王ミッキー様、それにその部下の方々がお見えになっています」
「そうか、意外と早かったな。会議室にでもご案内差し上げろ。すぐに向かう」
ブリガンティスは立ち上がると、部屋の外へと歩き始めたが、魔人の横まで来たところで立ち止まり言った。
「あ、そこのゴミ片づけておけよ。おい、リル、お前もついてこい」
ブリガンティスに呼ばれた魔人リルは、ちょこちょこと小走りでブリガンティスの傍までやってきた。
「憂鬱? 多分苦情言いに来たんだよね?」
「憂鬱ってほどでもねぇさ。ただ面倒は面倒だがな」
リルの問いにブリガンティスが答えると、2人は部屋を出て会議室へと向かうのだった。
ごごごごごごぉ——。
ここはかつて魔王ギラスマティアが現れる以前は魔界東部の覇者として君臨していた魔人ブリガンティスが住まう居城ブリガンティス城。
魔王城にすら負けずとも劣らない荘厳かつ豪華絢爛に作られたこの城の最奥にその男の姿があった。
——魔人ブリガンティス。
四天王の一角にして数の上では魔王軍内でも最大勢力を誇る魔界と人間界にその名を轟かす強大な魔人。
身長は2m程と魔人の中では少し大きい程度の体格だが、体のほぼ全てを漆黒で覆いつくすその外見が人間達の間では恐怖の象徴として魔人アルジールと並び、数多くの歴史書に遺されている。
ゴロゴロピッシャーン。
ごごごごごごぉ——。
「さっきからゴロゴロうるせえぞ! リル!」
部屋の最奥で踏ん反り返っていた魔人ブリガンティスは部屋の中心にいた小さな少女に怒鳴り声を上げると小さな少女はシュンとしながら小さな声で答えた。
「いや、なんか雰囲気出るかなと思って……」
ブリガンティスに怒られた少女の肌もブリガンティスと同じく漆黒に彩られていた。
少女の名は魔人リル。
特にブリガンティス軍内で特別な役職を与えられているわけではない少女だが、その存在はブリガンティス軍内で一目置かれる存在だった。
魔人ブリガンティスは数多くの種族を纏めるブリガンティス軍の頂点に君臨しているが、魔王軍の仕事の時以外では決して群れることはなく配下の魔人でもブリガンティスの許可なくブリガンティスの自室を訪れることはブリガンティスの配下の中では暗黙のルールとなっている。
そんな中で唯一例外的に魔人ブリガンティスの傍にいる事が許されているのがこの魔人リルだった。
シュンとしているリルを見てブリガンティスは優しい声で話しかけた。
「すまん、言いすぎた。飴ちゃん食うか?」
「うん! 食べるー!」
さっきまでの落ち込んでいたのはどこへやらリルはブリガンティスの元まで歩み寄るとブリガンティスが持っていた飴玉を受け取り、勢いよく口の中に放り込んだ。
「人間界侵攻作戦うまくいくといいねー!」
元気いっぱいになったリルがブリガンティスに言うと、ブリガンティスは「そうだな」と小さな声で呟いた。
人間界侵攻作戦はブリガンティスにとって手段でしかない。
全ての魔人に己の力を認めさせ、自らが魔王になるための。
その為の最大の障害であった魔王ギラスマティアと最大のライバルであった魔人アルジールは数日前を境に魔界から姿を消した。
最初はその事が信じられず、魔力探知の優れた数人の部下を使い何度も確認を取った。
だがそれでも魔界はおろか人間界の隅々を探しても魔王ギラスマティアと魔人アルジールの存在は確認できなかった。
今こそブリガンティスが人間界と魔界を支配し、魔王となる最大のチャンスなのだ。
その為の手も打った。
ブリガンティス軍軍団長である魔人ゾデュスとその弟である魔人ガデュス、それに加えて戦闘タイプの魔人20名を人間界に送り込んだのだ。
作戦は他の四天王が気づかれる前に進める必要があった。
その為に必要最低限かつ確実に作戦が成功する戦力をブリガンティスは人間界に送り込んだのだ。
ブリガンティスは人間界側の戦力について知っている。
人間界の最高戦力たる歴代勇者の力を分析して、更にその他の上位冒険者の戦力を加味した上で確実に勝てる戦力があの22名の魔人達だった。
あれだけの戦力があれば、一度の侵攻で人間界全土の支配は難しくとも、人間界西部の多くの町は支配下に収めることは十分に可能だとブリガンティスは確信している。
そして、それだけの町を支配下に収めてしまえば、なし崩し的に強引に事を進める事も可能になるだろう。
そんな思惑を巡らせている中、突如としてブリガンティスとリルがいる部屋に1人の魔人が勢いよく中に入ってきた。
「大変です! ブリガンティス様!」
名も記憶にない魔人はブリガンティスが許可しているわけでもないのに愚かにもブリガンティスの部屋の中へとどんどん入ってきた。
まだ若い魔人である彼は知らなかった。——四天王ブリガンティスに仕える上で決して破ってはいけない暗黙のルールが存在していることに。
「そうだなぁ、大変だなぁ」
ブリガンティスは魔人に冷たい視線を送るが、魔人は動揺しているのか自分の間違いに未だ気づかない。
「そうなんです! ブリガンティ——ぐえっ」
喋っている最中の魔人の身体が不意に宙に浮いた。
そのまま宙に浮いた魔人の首がメリメリと軋みを上げながら凄まじい力で締め付けられる。
「ブ、ブリガ——やめっ!」
名も知らぬ魔人は何かを言おうとしていたが、それを言い終える前に「ゴキッ」っと鈍い音を響かせて、地面に崩れ落ちた。
「……バカが。で、何の要件だ?」
ブリガンティスは既に亡骸となった魔人の後ろで恐怖の表情で固まっている別の魔人に声をかけると、その魔人は思い出したかのようにブリガンティスに報告を始めた。
「えっ、あっ、四天王アルレイラ様と四天王ミッキー様、それにその部下の方々がお見えになっています」
「そうか、意外と早かったな。会議室にでもご案内差し上げろ。すぐに向かう」
ブリガンティスは立ち上がると、部屋の外へと歩き始めたが、魔人の横まで来たところで立ち止まり言った。
「あ、そこのゴミ片づけておけよ。おい、リル、お前もついてこい」
ブリガンティスに呼ばれた魔人リルは、ちょこちょこと小走りでブリガンティスの傍までやってきた。
「憂鬱? 多分苦情言いに来たんだよね?」
「憂鬱ってほどでもねぇさ。ただ面倒は面倒だがな」
リルの問いにブリガンティスが答えると、2人は部屋を出て会議室へと向かうのだった。
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