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第3章 聖竜襲来編

第74話 お兄ちゃんとの約束だぞ☆

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俺達は人目を憚ることなく堂々とギルドマスター達がいる大広場へ歩いて行った。

堂々、これが大事なのだ。

いくらスタイリッシュとはいえ、仮面をつけたままおどおどするなど愚の骨頂だ。

僕は変質者ですよ——と自ら宣言しているようなものなのである。

堂々と広場にやってきた俺達を見たギルドマスターは大きな声を上げ、こちらに走ってきた。


「アリアス様、帰ってこられたのですか!?」


「えぇ、何があったのですか? 町が所々破壊されてしまっているようですが」


「それが——」

ギルドマスターはアリアスにシラルークで起きた全てを語った。

聖竜の来襲。

聖竜からシラルークを救ったのが神ユリウスであったこと。

神ユリウスと聖竜はどこかに消え去り、エレメンタルドラゴンが取り残されたのだが、彼らにはシラルークに攻撃の意思がない事等々である。

アリアスがアクアたちの方を見るとアクアはアリアスに軽く頭を下げた。


「それでユリウス様は大丈夫なのでしょうか?」


アリアスは聖竜と共に消えたユリウスの安否を気遣ってそう言うと、ギルドマスターは思い出したようにキョロキョロと辺りを見回し始めた。


「あの、『魔王』のクドウ様はどちらに?」


ギルドマスターがそう言うと、『魔王』と『光の剣』の面々の視線が俺に集中した。

それで察したギルドマスターが俺の方に歩いてきた。


「クドウ様、その仮面は?」


「かっこいいでしょう?」


「いや、それはそうかもしれませんが、そういう事でなく……」


「問題がありますか?」


「い、いえ、問題はありませんが」


ギルドマスターの俺を見る目が変な奴を見る目になっている気がするが、きっと気のせいに違いない。これは必要なことなのだ。

仮面の件は聞くのを諦めたのかギルドマスターは俺に言った。


「ユリウス様から伝言を預かっています」


どうせロクな事ではないだろう。だが、聞く他ない。


「フハハハハハ! これで貸し2つだ! これで最後だぞ! それと早く来い! あとワインが欲しいならくれてやるから次からは勝手に持って行くでない! 分かったか! ……だそうです」


見事だった。完全に一字一句漏らすことなくギルドマスターは伝言役を果たしたのだろう。

ボイスチェンジャーでも使っていればユリウスと区別がつかないほどの出来だった。


「なるほど」


(つまり、さっさと助けに来い! ってことね)


俺はワインの件と貸しの件は無視することにした。

貸しの一つ目は恐らく転生アイテムの事を言っているのだろうがアレは俺がユリウスを倒した時に得た正当な戦利品である。決して借りなどではない。

「さて……」

どうするか。ぶっちゃけあまり行きたくはない。

とはいえ、このまま無視するというのも後味が良くない。

正直、まともに戦ってユリウスではフィーリーアに勝つのは無理だろう。

逃げ切れるか? と問われればそれも多分無理だ。


「……仕方ない。行くか」


「行くってどこに?」


ギルドマスターは俺に問いかけた。

流れからしてユリウスとフィーリーアの所だと分かりそうなものだが。


「もちろんユリウスの所だ」


「いくらクドウ様でもあれを止めるのは無理です。貴方はこれから勇者になる逸材。こんな所で失うわけにはいきません。それ以前にどこにいるかも分からないでしょう」


できるかできないかはともかくこの場でそれができる可能性があるのは俺だけだ。

アリアスやアルジールはもちろんエレメントドラゴンでも不可能だろう。

ちなみにどこにいるかは分かっている。

目まぐるしい速度で転移を繰り返しているが大体の場所は……あ、捕まったな。

先程まで転移を繰り返していた2人のいる座標がほぼ一致し、その後転移が行われなくなった。

恐らく、攻撃を受け、転移する隙がなくなってしまったのだろう。


「分かりますよ。時間もない事ですし行って……ん?」


腰のあたりに違和感が。

俺が後ろを確認するとエレメントドラゴンの美少女が俺の腰にぴったりと抱き着いていた。


「あのー?」


「——君だ」


おい、ちょ! まっ!

俺は美少女を勢いよく引きはがして口を塞いだ。

更に俺はキョロキョロと周りをチェックする。

全員の目を集めていた俺だが、美少女の声が小さすぎたおかげか誰にも聞かれていなかったようだ。


その様子を見ていたアクアが小走りでこちらにやってきた。


「ちょっと、何をやってるの! シルフィル! 知らない人にいきなり抱きついてはいけません! すいません」


アクアは俺に俺の顔を見ながら、頭を下げた。


「……クドウさんでしたか? どこかで会ったことありませんか?」


アクアは謝罪の後、そんなことを言ってきた。

もちろん、気のせいだろう。そうに違いない。

仮に、仮にだ。もし、この目の前の美女と俺が過去に会っていたとして、数日前の俺と今の俺とでは容姿や体格が違いすぎる。


「……気のせいでしょう。貴方のような美人に会ったことがあればすぐに気づきますよ。あはははは」


「まぁ! お上手ですね」


俺はそうアクアに言った後、シルフィルという名の美少女ドラゴンに耳打ちした。


「シルフィル、今言った事は絶対に誰にも話してはいけない。お兄ちゃんとの約束だ」


すると、シルフィルは俺に耳打ちし返してきた。


「なんで? あとお兄ちゃんじゃないよ」


更に俺は耳打ちし返す。


「それはそうかもしれないけど。……仕方ない、これをシルフィルにあげよう。だからお姉ちゃん達には絶対内緒だよ」


そう言って俺はカバンをゴソゴソしてスタイリッシュ仮面
スペア
を取り出した。


「いいの? めっちゃくちゃカッコいい」


「そうだろうそうだろう。これは伝説の魔剣士あっくんの仮面だからな。カッコいいのは当然の事だ」


そうして俺は伝説のエレメントドラゴンの一体、シルフィルの買収に成功したのだった。
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