74 / 255
第3章 聖竜襲来編
第74話 お兄ちゃんとの約束だぞ☆
しおりを挟む
俺達は人目を憚ることなく堂々とギルドマスター達がいる大広場へ歩いて行った。
堂々、これが大事なのだ。
いくらスタイリッシュとはいえ、仮面をつけたままおどおどするなど愚の骨頂だ。
僕は変質者ですよ——と自ら宣言しているようなものなのである。
堂々と広場にやってきた俺達を見たギルドマスターは大きな声を上げ、こちらに走ってきた。
「アリアス様、帰ってこられたのですか!?」
「えぇ、何があったのですか? 町が所々破壊されてしまっているようですが」
「それが——」
ギルドマスターはアリアスにシラルークで起きた全てを語った。
聖竜の来襲。
聖竜からシラルークを救ったのが神ユリウスであったこと。
神ユリウスと聖竜はどこかに消え去り、エレメンタルドラゴンが取り残されたのだが、彼らにはシラルークに攻撃の意思がない事等々である。
アリアスがアクアたちの方を見るとアクアはアリアスに軽く頭を下げた。
「それでユリウス様は大丈夫なのでしょうか?」
アリアスは聖竜と共に消えたユリウスの安否を気遣ってそう言うと、ギルドマスターは思い出したようにキョロキョロと辺りを見回し始めた。
「あの、『魔王』のクドウ様はどちらに?」
ギルドマスターがそう言うと、『魔王』と『光の剣』の面々の視線が俺に集中した。
それで察したギルドマスターが俺の方に歩いてきた。
「クドウ様、その仮面は?」
「かっこいいでしょう?」
「いや、それはそうかもしれませんが、そういう事でなく……」
「問題がありますか?」
「い、いえ、問題はありませんが」
ギルドマスターの俺を見る目が変な奴を見る目になっている気がするが、きっと気のせいに違いない。これは必要なことなのだ。
仮面の件は聞くのを諦めたのかギルドマスターは俺に言った。
「ユリウス様から伝言を預かっています」
どうせロクな事ではないだろう。だが、聞く他ない。
「フハハハハハ! これで貸し2つだ! これで最後だぞ! それと早く来い! あとワインが欲しいならくれてやるから次からは勝手に持って行くでない! 分かったか! ……だそうです」
見事だった。完全に一字一句漏らすことなくギルドマスターは伝言役を果たしたのだろう。
ボイスチェンジャーでも使っていればユリウスと区別がつかないほどの出来だった。
「なるほど」
(つまり、さっさと助けに来い! ってことね)
俺はワインの件と貸しの件は無視することにした。
貸しの一つ目は恐らく転生アイテムの事を言っているのだろうがアレは俺がユリウスを倒した時に得た正当な戦利品である。決して借りなどではない。
「さて……」
どうするか。ぶっちゃけあまり行きたくはない。
とはいえ、このまま無視するというのも後味が良くない。
正直、まともに戦ってユリウスではフィーリーアに勝つのは無理だろう。
逃げ切れるか? と問われればそれも多分無理だ。
「……仕方ない。行くか」
「行くってどこに?」
ギルドマスターは俺に問いかけた。
流れからしてユリウスとフィーリーアの所だと分かりそうなものだが。
「もちろんユリウスの所だ」
「いくらクドウ様でもあれを止めるのは無理です。貴方はこれから勇者になる逸材。こんな所で失うわけにはいきません。それ以前にどこにいるかも分からないでしょう」
できるかできないかはともかくこの場でそれができる可能性があるのは俺だけだ。
アリアスやアルジールはもちろんエレメントドラゴンでも不可能だろう。
ちなみにどこにいるかは分かっている。
目まぐるしい速度で転移を繰り返しているが大体の場所は……あ、捕まったな。
先程まで転移を繰り返していた2人のいる座標がほぼ一致し、その後転移が行われなくなった。
恐らく、攻撃を受け、転移する隙がなくなってしまったのだろう。
「分かりますよ。時間もない事ですし行って……ん?」
腰のあたりに違和感が。
俺が後ろを確認するとエレメントドラゴンの美少女が俺の腰にぴったりと抱き着いていた。
「あのー?」
「——君だ」
おい、ちょ! まっ!
俺は美少女を勢いよく引きはがして口を塞いだ。
更に俺はキョロキョロと周りをチェックする。
全員の目を集めていた俺だが、美少女の声が小さすぎたおかげか誰にも聞かれていなかったようだ。
その様子を見ていたアクアが小走りでこちらにやってきた。
「ちょっと、何をやってるの! シルフィル! 知らない人にいきなり抱きついてはいけません! すいません」
アクアは俺に俺の顔を見ながら、頭を下げた。
「……クドウさんでしたか? どこかで会ったことありませんか?」
アクアは謝罪の後、そんなことを言ってきた。
もちろん、気のせいだろう。そうに違いない。
仮に、仮にだ。もし、この目の前の美女と俺が過去に会っていたとして、数日前の俺と今の俺とでは容姿や体格が違いすぎる。
「……気のせいでしょう。貴方のような美人に会ったことがあればすぐに気づきますよ。あはははは」
「まぁ! お上手ですね」
俺はそうアクアに言った後、シルフィルという名の美少女ドラゴンに耳打ちした。
「シルフィル、今言った事は絶対に誰にも話してはいけない。お兄ちゃんとの約束だ」
すると、シルフィルは俺に耳打ちし返してきた。
「なんで? あとお兄ちゃんじゃないよ」
更に俺は耳打ちし返す。
「それはそうかもしれないけど。……仕方ない、これをシルフィルにあげよう。だからお姉ちゃん達には絶対内緒だよ」
そう言って俺はカバンをゴソゴソしてスタイリッシュ仮面
スペア
を取り出した。
「いいの? めっちゃくちゃカッコいい」
「そうだろうそうだろう。これは伝説の魔剣士あっくんの仮面だからな。カッコいいのは当然の事だ」
そうして俺は伝説のエレメントドラゴンの一体、シルフィルの買収に成功したのだった。
堂々、これが大事なのだ。
いくらスタイリッシュとはいえ、仮面をつけたままおどおどするなど愚の骨頂だ。
僕は変質者ですよ——と自ら宣言しているようなものなのである。
堂々と広場にやってきた俺達を見たギルドマスターは大きな声を上げ、こちらに走ってきた。
「アリアス様、帰ってこられたのですか!?」
「えぇ、何があったのですか? 町が所々破壊されてしまっているようですが」
「それが——」
ギルドマスターはアリアスにシラルークで起きた全てを語った。
聖竜の来襲。
聖竜からシラルークを救ったのが神ユリウスであったこと。
神ユリウスと聖竜はどこかに消え去り、エレメンタルドラゴンが取り残されたのだが、彼らにはシラルークに攻撃の意思がない事等々である。
アリアスがアクアたちの方を見るとアクアはアリアスに軽く頭を下げた。
「それでユリウス様は大丈夫なのでしょうか?」
アリアスは聖竜と共に消えたユリウスの安否を気遣ってそう言うと、ギルドマスターは思い出したようにキョロキョロと辺りを見回し始めた。
「あの、『魔王』のクドウ様はどちらに?」
ギルドマスターがそう言うと、『魔王』と『光の剣』の面々の視線が俺に集中した。
それで察したギルドマスターが俺の方に歩いてきた。
「クドウ様、その仮面は?」
「かっこいいでしょう?」
「いや、それはそうかもしれませんが、そういう事でなく……」
「問題がありますか?」
「い、いえ、問題はありませんが」
ギルドマスターの俺を見る目が変な奴を見る目になっている気がするが、きっと気のせいに違いない。これは必要なことなのだ。
仮面の件は聞くのを諦めたのかギルドマスターは俺に言った。
「ユリウス様から伝言を預かっています」
どうせロクな事ではないだろう。だが、聞く他ない。
「フハハハハハ! これで貸し2つだ! これで最後だぞ! それと早く来い! あとワインが欲しいならくれてやるから次からは勝手に持って行くでない! 分かったか! ……だそうです」
見事だった。完全に一字一句漏らすことなくギルドマスターは伝言役を果たしたのだろう。
ボイスチェンジャーでも使っていればユリウスと区別がつかないほどの出来だった。
「なるほど」
(つまり、さっさと助けに来い! ってことね)
俺はワインの件と貸しの件は無視することにした。
貸しの一つ目は恐らく転生アイテムの事を言っているのだろうがアレは俺がユリウスを倒した時に得た正当な戦利品である。決して借りなどではない。
「さて……」
どうするか。ぶっちゃけあまり行きたくはない。
とはいえ、このまま無視するというのも後味が良くない。
正直、まともに戦ってユリウスではフィーリーアに勝つのは無理だろう。
逃げ切れるか? と問われればそれも多分無理だ。
「……仕方ない。行くか」
「行くってどこに?」
ギルドマスターは俺に問いかけた。
流れからしてユリウスとフィーリーアの所だと分かりそうなものだが。
「もちろんユリウスの所だ」
「いくらクドウ様でもあれを止めるのは無理です。貴方はこれから勇者になる逸材。こんな所で失うわけにはいきません。それ以前にどこにいるかも分からないでしょう」
できるかできないかはともかくこの場でそれができる可能性があるのは俺だけだ。
アリアスやアルジールはもちろんエレメントドラゴンでも不可能だろう。
ちなみにどこにいるかは分かっている。
目まぐるしい速度で転移を繰り返しているが大体の場所は……あ、捕まったな。
先程まで転移を繰り返していた2人のいる座標がほぼ一致し、その後転移が行われなくなった。
恐らく、攻撃を受け、転移する隙がなくなってしまったのだろう。
「分かりますよ。時間もない事ですし行って……ん?」
腰のあたりに違和感が。
俺が後ろを確認するとエレメントドラゴンの美少女が俺の腰にぴったりと抱き着いていた。
「あのー?」
「——君だ」
おい、ちょ! まっ!
俺は美少女を勢いよく引きはがして口を塞いだ。
更に俺はキョロキョロと周りをチェックする。
全員の目を集めていた俺だが、美少女の声が小さすぎたおかげか誰にも聞かれていなかったようだ。
その様子を見ていたアクアが小走りでこちらにやってきた。
「ちょっと、何をやってるの! シルフィル! 知らない人にいきなり抱きついてはいけません! すいません」
アクアは俺に俺の顔を見ながら、頭を下げた。
「……クドウさんでしたか? どこかで会ったことありませんか?」
アクアは謝罪の後、そんなことを言ってきた。
もちろん、気のせいだろう。そうに違いない。
仮に、仮にだ。もし、この目の前の美女と俺が過去に会っていたとして、数日前の俺と今の俺とでは容姿や体格が違いすぎる。
「……気のせいでしょう。貴方のような美人に会ったことがあればすぐに気づきますよ。あはははは」
「まぁ! お上手ですね」
俺はそうアクアに言った後、シルフィルという名の美少女ドラゴンに耳打ちした。
「シルフィル、今言った事は絶対に誰にも話してはいけない。お兄ちゃんとの約束だ」
すると、シルフィルは俺に耳打ちし返してきた。
「なんで? あとお兄ちゃんじゃないよ」
更に俺は耳打ちし返す。
「それはそうかもしれないけど。……仕方ない、これをシルフィルにあげよう。だからお姉ちゃん達には絶対内緒だよ」
そう言って俺はカバンをゴソゴソしてスタイリッシュ仮面
スペア
を取り出した。
「いいの? めっちゃくちゃカッコいい」
「そうだろうそうだろう。これは伝説の魔剣士あっくんの仮面だからな。カッコいいのは当然の事だ」
そうして俺は伝説のエレメントドラゴンの一体、シルフィルの買収に成功したのだった。
0
お気に入りに追加
522
あなたにおすすめの小説
無名のレベル1高校生、覚醒して最強無双
絢乃
ファンタジー
無類の強さを誇る高校二年生・ヤスヒコ。
彼の日課は、毎週水曜日にレベル1のダンジョンを攻略すること。
そこで手に入れた魔石を売ることで生活費を立てていた。
ある日、彼の学校にTVの企画でアイドルのレイナが来る。
そこでレイナに一目惚れしたヤスヒコは、なんと生放送中に告白。
だが、レイナは最強の男にしか興味がないと言って断る。
彼女の言う最強とは、誰よりもレベルが高いことを意味していた。
レイナと付き合いたいヤスヒコはレベル上げを開始。
多くの女子と仲良くなりながら、着実にレベルを上げていく。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
異世界で生きていく。
モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。
素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。
魔法と調合スキルを使って成長していく。
小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。
旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。
3/8申し訳ありません。
章の編集をしました。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
新人神様のまったり天界生活
源 玄輝
ファンタジー
死後、異世界の神に召喚された主人公、長田 壮一郎。
「異世界で勇者をやってほしい」
「お断りします」
「じゃあ代わりに神様やって。これ決定事項」
「・・・え?」
神に頼まれ異世界の勇者として生まれ変わるはずが、どういうわけか異世界の神になることに!?
新人神様ソウとして右も左もわからない神様生活が今始まる!
ソウより前に異世界転生した人達のおかげで大きな戦争が無い比較的平和な下界にはなったものの信仰が薄れてしまい、実はピンチな状態。
果たしてソウは新人神様として消滅せずに済むのでしょうか。
一方で異世界の人なので人らしい生活を望み、天使達の住む空間で住民達と交流しながら料理をしたり風呂に入ったり、時にはイチャイチャしたりそんなまったりとした天界生活を満喫します。
まったりゆるい、異世界天界スローライフ神様生活開始です!
錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。
いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成!
この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。
戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。
これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。
彼の行く先は天国か?それとも...?
誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。
小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中!
現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる