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オッサン異世界へ行く前の人生を終える

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人がそこそこいる平原の道を歩くオッサンが居た。

見た目はどこにでもいるような特に目立つ特徴もないオッサン。

髪の毛も自然任せ、ヒゲも剃られているがところどころ剃り残しがあり
無精髭っぽくもある。

まぁ酒場にいれば記憶にも残らないようなモブ扱いだろう。

「今日もいい天気だねぇ~」

そんな道をのんびりと歩くオッサン。
実は異世界人である。



俺は日本では自営業で食料品売り場兼飲食店を営んでいた。
だが日本を襲った驚異的な流行病で客足が減り店は立ち行かなくなった。

銀行へ借りていたお金を返し、従業員の退職金や給料を払い、
転職先を面倒を見てすべてをたたみ終えた後オッサンには何も残らなかった。

高校卒業してから20年ちょい。
会社勤めから独立しそこそこ景気が良かった時期もあった。
だが、最終的には何も残らなかった。
結婚もしなかったので嫁さんも子供も居ない。

店をたたみ実家で農家の親でも手伝うかと思いバッグ一つを持って
実家に帰ろうと駅の階段を登っている途中、上から悲鳴が聞こえてきた。

悲鳴がした方を見ようと顔を上げた瞬間何かが落ちてきて
顔でそれを受け止める形となった。

オッサンはその衝撃で持っていた手すりから手が離れ頭から
階下へ倒れ込み強烈な衝撃と同時に意識は無くなった。


う・・・とうめき声とともに意識が覚醒し目を開けると
優しそうな老人が目の前に居た。

老人が言うにはいわゆる俺は死んだとのこと。
あの時降ってきたのはベビーカーで俺はそれを受け止める形に
なったらしい。

「その赤ん坊は大丈夫でした?」

老人は頷き肯定しその状況を教えてくれた。

ちょうど踊り場に足をかけた所だったのでベビーカーは
そこで止まりかすり傷一つなく助かったようだ。

その子の親の気持ちを考えると申し訳ない気もするが
まぁこういう考えに育てた俺の親は責めることもなくすませてくれるだろう。

生命保険も切り替え手続きは実家に帰って親の保険を見てから切り替える
つもりだったからそれなりな金額は親に入ってるだろう。

まぁ、何一つ残せなかった俺が人一人の命を助けれたというのは
大したものじゃないだろうか。

自分の人生何も無かったと思ったが、結果的によくやったと
思える最後だった。


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