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本編
ギルドマスターと 01
しおりを挟む「「....................................」」
無言で視線を逸らすことなく顔を向き合わせて、かれこれ10分は経ったと思う。
.........なに、この状況?
謎の空間に耐えきれなくなった頃、
「ふふっ」
先に沈黙を破ったのは相手....ギルドマスターのリアードさんだった。
「やっぱり君、マリアちゃんはおもしろいね」
「.........何が、ですか」
「まぁ色々あるけど 1番は、あのロイを過保護な父親みたいにさせたことかな。
あ、それから 敬語は必要ないよ。君は子供なんだから好きなように話してくれて構わない」
慌てて語尾を敬語にしたのがバレたのか、
元々こういうキャラじゃないのを見抜かれたのか........ 両方かも。
まぁいいや。いまさらこの人相手に取り繕ってもあまり意味はないし。
「ロイさんの過去は、知らないからそう言われてもわかんないけど。 出会った当初から 今ほどじゃないにしても、根本的にはあんな感じだよ?」
「へぇ。それが本当だとしたら更におもしろいなぁ」
「他は?」
「他? あぁ.........おもしろいと思うところ?
マリアちゃんそのものが、かな。.......って言ったらなんか誤解を受けそうだけど」
「私が、おもしろい?」
「うん」
この部屋......ギルドマスターの執務室に来る前、ロイさんが私とリアードさんを2人だけにするのを物凄い勢いで反対した理由がなんかわかった気がする。
この人、たぶん見抜いてる。
ステータスそのものを...って意味じゃなくて、実力とか そういうのを。
「あとは、リルくんかな。あの子も興味深いね。随分賢いみたいだけど、種族が知りたいなぁ。ロイに聞いても頑なに教えてくれないんだよね」
リルの種族かぁ。
.........なんて設定にしてたっけ?
んーと、エミリーさんが登録手続きしてくれて......そのときにたしか....狼って言ってたな。そのまんま狼で登録したんだったっけ? .........やばい。全然思い出せないや。あとでギルドの登録確かめておかなきゃ。
「マリアちゃん?」
などと考えていて急に黙り込んだ私にリアードさんは不思議そうに声をかけてきた。
「ロイさんが、教えないって言うなら、教えない。.........怒られる」
「マリアちゃんの従魔なんだよね? なのに怒られるの?」
心底わからない、という顔をされた。
.........冷静に考えたらそうだ。なんで私が怒られるんだってなるか。 ロイさんに日頃から怒られすぎてて感覚麻痺ってきてるのかも。
「怒るよ。ロイさんは完全に パーティーメンバー兼保護者っていうより単に、“お父さん”って表現の方がしっくりくる感じだもん。リルは私が1人で街の外出たときに従魔契約したんだけど、契約しちゃった以上どうにもできないから怒るに怒れなくて頑張って色々諦めてた」
──そう。リルと契約したと知ってから数日、ロイさんは頑張って、一通りの喜怒哀楽を出したあと、諦めた。
契約初日の夜に仲良さそうにリルを抱っこしてたし、朝の起こし方だってなんだかんだ受け入れてくれて、以降それは日課になった。だけどやっぱり内心はかなり複雑だったみたい。
それが落ち着いたというか “考えないようにする”ことが出来るようになったところでリルの種族を知って、再び同じような状態に陥っていた。
まぁこれはロイさんが種族を知りたがったんだから頑張れって思っただけだけど。
「お父さん、か........。 まさかロイがそんな呼称をされる日が来るとはね。ルイスやエミリーがおもしろがったんじゃないかな」
「うん。ルイスは似合わねぇー!って事ある毎に大爆笑してたし、エミリーさんも顔は隠してたけど肩震えてたりにまにましてたりしてた」
「やっぱりおもしろいなぁ。ロイもだけど、マリアちゃんも、かなり」
そう言って笑ったリアードさんの顔は、嫌な予感がする....企み顔だった。
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