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本編
子狼? と性別 ロイSide
しおりを挟む今日はギルドマスターからの直々の依頼をこなしていた。
今回の依頼の難易度はCランク相当。
元Bランク冒険者だったとはいえ、最近冒険者として復活した現在Eランクの冒険者には受けられないランクの依頼なのだが……指名依頼という制度を使えば、そんなことは簡単にできる。
その依頼も、本来であればブランクがあったところで大して手こずるような内容ではなかったのだが……依頼に直接関係のないトラブルに何度か見舞われた結果、思っていたよりも帰る時間が遅くなってしまった。
疲れ果てた状態で宿に戻った。部屋に戻ったらすぐにでも寝たいほどだった。飯よりもとにかくもう休みたいと思っていた。
ーだが 現実は、それを許さなかった。
「……は?」
部屋に入るなり、俺は自分の目を疑った。
一瞬、疲れすぎたあまり、部屋を間違えたのかとも思った。
「あ、ロイさん。おかえなさい!」
だか部屋は間違えていないとすぐにわかる。マリアがいるのだから、ここは俺らの借りてる部屋だ。間違っていない。
「きゃうん?」
ー部屋にはマリアと1匹の魔物が、いたー……。
◇ ◇ ◇
「……と、いうことで、私の契約獣になった、リルです」
マリアの語る、契約獣になった経緯はこうだ。
他の魔物に襲われていたところを助けたら懐かれて、契約獣になった、と。
ーどうにも信じ難い話だが……契約獣になってしまっている以上、どうにかすることは難しい。
怒る気力もわかないほどに俺は疲れていた。
マリアはこの魔物……リルを、子犬だと言うが……犬ではない。それは間違いない。
たしかに見た目は子犬っぽいが……。犬は魔物じゃない。動物だ。 だからどう頑張ったって契約獣にはできないし、契約自体成立することはない。
しかし、ただの子狼と言うには何とも言い難い違和感を覚えた。
契約獣とはいえ、魔物なことに変わりはないからな。
いくら契約者のパーティーメンバーとはいえ、無関係な人間には当然とばかりに威嚇してくる魔物も少なくない。
だがコイツ……リルは、大人しくしているどころか、俺に よろしく!と挨拶でもしてるのかと思うほど愛想を振りまいてきた。
こんなに人慣れしている魔物なんて、よほど優秀なテイマーの契約獣たちくらいだ。
マリアにはテイマーの素質まであるのか?とふと思ったが…… それについては、考えることを脳が拒否した。
ーなんとなく、リルの種族を知ってしまうとさらに面倒な、悩みの種になるのだろうな、と思った。
この直感は恐らく間違っていない。
◇ ◇ ◇
ーそして。
「……リル」
「きゃうん?」
俺に触られることにまるで抵抗を見せないのをいいことに、リルのもふもふの毛を堪能しつつ、気になっていたことを確認する。
「お前……オスだよな」
「きゃん!」
“リル”なんて随分と可愛いらしい名前をつけられているが、
コイツ……リルは、オスだー……。
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