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本編
いつもの感じ
しおりを挟むーコンコンッ
「はーい?」
夜。宿の借りてる私の部屋に誰かが来た。
……誰か、っていうか、来るとしたらロイさん、ルイス、宿の人 っていう3択なんだけど。この部屋は週払いで借りているから呼んでないのに宿の人が来ることはめったにないし、ルイスはノックなんてしてこないし、何より 足音がすごくうるさい。ノックどころか、寝てても足音だけで起きるレベルのうるささ。
ほとんど足音しなかったし、ロイさんだな。
「マリア」
ー案の定、部屋に来たのはロイさんだった。
「おかえりなさい、ロイさん」
ー努めて冷静に、いつも通り……ううん。“今まで通り”を装う。
「……ただいま。ってなんか不思議な感じだな。ここはマリアの部屋だから余計に」
「もー ロイさん!迷宮での訓練だったとか聞いてないよ? 門のところ行っても全然ロイさん見当たらないからびっ……心配したよ。なんかあったのかなーって」
そしてあれだね。なんかあったとしたらそれ半分以上 私のせいだよね、って実は内心ビクビクしてた。
ー1週間まったく顔合わせないとか、かなり久しぶりだったからそれがさらにビクビクする原因になっていた。(……と、思われる。)
「あぁ、それな。悪かった。お前に言い忘れたことに 迷宮入ってから思い出したんだよ。その前にいろいろあったから言ったような気になってたんだな」
「疲れてない? 帰ってきたばっかりなんだよね?」
「これくらいでへばるかよ。余裕だわ、って言いたいところだが……ちょっと疲れたな」
「……泊まっていく? 宿舎に戻るのめんどくさくない?」
「いいのか」
「? 何が?? 泊まるのが、ってことなら
ロイさんの部屋に泊まったこと何回もあるんだからいまさらじゃない?」
誰の部屋か、ってちがいだけでたいして変わらないと思うけど。
そう言うとロイさんはものすごく複雑そうな顔をしたあと、
「……そうだな。帰るのめんどくせぇし、泊まっていくわ」
「うん」
ー思っていたより全然普通に、いままで通りって感じの会話ができることに私はひそかにホッとした。
それはロイさんも一緒だったことには、気づかなかったけどー……。
◇ ◇ ◇
「あ、そうだロイさん。体どうする?」
「…………はっ!?」
え、なんでそんな焦るの? ?
「汗かいてるでしょ? 樽に水だそうか?それとも生活魔法使う?」
「あ、あぁそっちか。って、生活魔法?」
「あ、もしかしてロイさんも使える?それなら自分でやっちゃえば済む話か」
「生活魔法は俺も使えるが……だからなんだってんだ?」
「? 生活魔法で体を綺麗にできるでしょ?でも汗をかいたなら水で流した方がすっきりするかなーって」
「ああ、リフレッシュのことか」
「ロイさん、何言ってるの?」
「は?」
一向に噛み合わない会話。
「クリーンだけど」
「クリーン?」
………………………………
………………………
………………
え、何この沈黙。クリーンって生活魔法、ないの??
慌てて記憶をたどる。誰か使ってる人……誰か……あ、なんだ。いたわ。家族が使ってた。
びっくりしたぁ~
またやらかしたかと思った。
「あーそういやあったな、そんな魔法。普段使わねぇから忘れてたな」
その発言から考えて、普段クリーンは使わないのにリフレッシュは使ってるってこと? え、逆じゃなくて??
ロイさんこういうとこ、たまに謎だよねぇ……。
「で、結局どうするの?水いるならだすよ」
「あー頼むわ。俺も出せないことねぇけど、これ以上魔法使ったら倒れる気がする」
「わかった。ちょっと待ってて~」
ロイさんは水魔法が使えるのね。そして枯渇寸前のようで。疲れてるなーとは顔からしてわかったてたけど、単純に体力的に限界きてるだけかと思ったけど魔力も尽きかけてるみたい。
迷宮のこととか訓練内容とか、いろいろ聞きたかったけどそれは明日にしようかな。
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