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本編
街の門番で騎士のロイさん
しおりを挟む「ロイさんー!」
「んあ?っておぉ!久しぶりだなぁ。今日はどうした?」
街の門まで行くと、門番をしてるのがちょうど、ストリートチルドレン時代に知り合いになったロイさんだった。
「ゴブリン討伐に行ってくるんだ~」
「ゴブリン? あぁ、やっと10歳になったのか」
「そう!今日10歳になったの! 念願の冒険者になれたの!」
「ずっと冒険者なりたいって言ってたもんなー お前の実力ならゴブリン程度、大丈夫だろうけど、一応気をつけるんだぞ」
「うん!」
盗賊を捕まえようと追いかけてる時にたまたま居合わせた私が魔法を使って仕留めたことがあって。それ以来こうやって声をかけてくれるようになった。あと、身分証がなくて街からまったくでられないって話をしたら、自分と一緒なら身分証なくても街に入れるから、って時々非番の日に外に連れてってくれたりもしてた優しいお兄さんだ。
10歳以下の身分証のない子供でも、身分がはっきりしてる大人がついてれば大人1人に対して子供2人くらいまでなら街の外に一旦出てその日の日暮れ前に戻る、くらいなら許されるらしい。
全くの外から来た場合(小さな子供がーなんてめったにあることじゃないけど)は、またちょっとちがうと言っていた。
ちなみにそうやって連れ出してもらった外で魔法の練習(と称した威力確認)をしたり、魔物を倒したりしてたから、ロイさんは私の魔法の威力が(子供のわりに)強いということを知っている。
だからたかがゴブリンの討伐と聞いて、心配はしない。代わりに隣で話を聞いていた他の門番さんがギョッとして話に入ってきた。
「いきなりゴブリン討伐なんて大丈夫なのか!? ロイ、いくら知り合いの子供だからって適当なこと言うな!」
「大丈夫っすよ、団長。コイツ、見た目こんな子供ですけど、俺なんかと大差ない中身してんで。まぁ常識知らずではありますけど」
一緒にいた人は団長さんだったようだ。
へぇ……団長さんもこういう仕事するんだね。ていうかまたロイさんが騎士ってこと、忘れてたな。 何回聞いても忘れちゃうんだよねぇ……騎士っぽくなさすぎて。
そしてこの世界の常識はイマイチわからないから否定できないわ。
「大差ない、って……あぁ。ロイの中身が子供っぽいってことか」
「んなっ!? ち、ちがいますよ!コイツが時々妙に大人びてて……」
団長がロイさんを揶揄うとちょっと焦ったように否定する。
「ロイさーん。私 行くね?」
なんかいろいろ必死に弁明っぽいことを始めたからそれを聞いているのは面倒だからそろそろ行こうかな。
「あ、おう!気をつけて行ってこいよ!」
「あ、ちょっと待ってな、お嬢ちゃん。ゴブリン討伐に行くにしては身軽すぎるけどそれで大丈夫なのか?」
「あ、は「こいつは魔法使いだから大丈夫っすよ。な?」
なぜロイさんがそんなに得意げに答える…… まぁいいけど。
「獣人ですけど、人族のそこらへんにいる魔法使いよりよっぽど優秀なのは俺が保証します」
「そうか。ロイが大丈夫っていうならそれなりの威力の魔法を使えるんだろうが……気をつけるんだぞ」
「ご心配ありがとうございます。でも心配には及びません。ロイさんのおっしゃる通り、私は自分の魔法にそれなりの自信を持っていますので。でも、気をつけていってきますね(ニコッ)」
「……おぉ」
あれ、なんでそんなびっくりされたの今?
何はともあれ、こうしてようやく街の外に出た。
◇ ◇ ◇
「俺の言いたいことなんとなくわかりました? ああいうところが子供っぽくないんすよ、団長」
マリアがいなくなったあと、ロイは困り顔で頬をポリポリと掻きながらそう言ったが、団長からの返事はなかったー……。
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