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vs Bランク冒険者
しおりを挟む「ルールは武器あり、魔法あり。時間は無制限。勝敗は相手を気絶させるか降参宣言をする、もしくは審判が勝敗を宣言するまで、だ。 相手を死に至らしめるのはもちろん、回復不能な怪我を追わせるのも禁止。施設破壊はしてもいいが修繕時の費用は破壊者が全額支払う。わかったな?」
「うん、ルールはわかった。ルールはね。
でもそもそも戦う意味がわからないんだけど。そしてなんでこんなに観覧?してる人、大量にいるの」
ジュードと話をしてから数日が経ったある日、
アリスはジュードたちに半ば強引にギルドにある訓練場へと連れてこられていた。
そしてアリスが言った通り、なぜか訓練場の周囲には観覧と思しき人達で溢れ、賑わっていた。
「よし、わかったんなら始めるか」
「え、ガン無視? スルー?説明一切する気なし?」
アリスは、今目の前で起きてるこの状況はいわゆる決闘だということは、経験がなくともなんとなくわかっていた。
だがしかし。 だがしかし、である。
理由がまったくわからなかった。
なぜ戦うのか。せめてその疑問だけは解消してから挑みたいと思うアリスだが、ジュードから答えは返ってこない。
「簡単に言うと、アリスが俺らのパーティーに入ってるのがどうしても納得いかねぇつって絡んでくる奴が多すぎてうぜぇから、そういう奴ら全員を黙らせるのが目的だな」
説明するまで戦わないぞ、と目で訴えるとようやく、
非常にめんどくさそうに…ではあるがジュードが説明を始めた。
「……なるほど。そこそこ本気出せってこと?」
「まぁ、そういうことだな。
ちなみに、相手はBランクだ」
「わかった」
【レオンハルトSide】
「ではー はじめっ!」
開始の合図のあと、先に攻撃を仕掛けたのはBランク冒険者のハイドだった。
──10歳の子供との決闘に駆り出されたというだけでもハイドのBランク冒険者としてのプライドが許さなかったようだ。
さらにそこにハンデはなしでいいというジュードの宣言とアリスの承諾が、余計にハイドのプライドに火をつけた…では済まず、焚き付けたらしい。
一発目からハイドはアリスを瞬殺する気満々なのは誰が見ても明らかだった。
ものすごい勢いでアリスの前まで迫って、腕を振り落とす。
ーが、その腕がアリスにあたることはなかった。
「いっ…………てぇぇぇ!!!!」
ハイドの振り落とした腕は、アリスの作った恐ろしく強度の高い土壁(後にジュードから聞いて知った)によって阻まれたのだった。
訓練場に響き渡るハイドの叫び声。
折れるどころか砕けたのでは?と思ったがまぁ砕けたくらいなら自然治癒でも回復魔法でも治るからルール違反にはならない。
「エアショット」
「ーぐわっ!」
そして、腕を痛がって悶えてるハイドの体にアリスはエアショットを放ち、もろに食らったハイドはそのまま壁まで吹っ飛び、気絶。
「「「「……………………」」」」
「しょ、勝者 アリス!」
あまりにもあっさりと着いた決着に、
審判も観覧者も、俺とライムにジュードですら、一瞬言葉を失った。
かろうじて審判は アリスの視線にハッとしたらしく、勝敗の宣言をした。
それでもそのあと少しの間、訓練場は静まり返ったままだった。
そしてようやく事態を飲み込めた奴らが複数人、歓声をあげたことにより訓練場は一気に騒がしくなった。
「……ね、今 何が起きた?」
「エアショットで吹っ飛んだな」
「吹っ飛んだね……。てかその前の、ハイドの手をダメにしたやつ、アレ、何」
「ライムが知らないのに俺が知るわけないだろう」
「だよねぇ……」
そんな会話をしつつも、俺はジュードの反応に違和感を覚えていた。
たしかにジュードも、驚いていた。
驚いていたのだが……どこか少し、納得したような反応を見せた気がした。
ージュードは鑑定スキルを持っている。ジュードの鑑定スキルが優秀なことを、俺もライムも知っている。
だから俺やライムみたいに体感的に、なんとなく、などではなく しっかりとアリスのステータスを知っているのだろう。
もしかしたらジュードは、戦う前から アリスがハイドに楽勝に勝てると確信していたんだと思う。
だからこその反応だったのだろう。……恐らく。
「エアショットで人間でもあそこまで勢いよく吹っ飛ばせるんだねぇ……。魔力量の差ってこういうことかな。俺はできる気がしないけど」
「その前に最初のやつ どうやったのかだろ」
「たしかに。それは聞かなきゃだね~ だいぶ硬そうだから対魔物にも使えそうだ」
「あぁ」
そんなことを話していたらアリスが戻ってきた。
そして。
「ごめんジュード。
まさかエアショット1発で倒れるとは思わなかった……」
「「「は?」」」
サラっとそんなことを言ってきたのだった。
──その後、アリスはハイドの腕の骨が砕けたことを知り、回復魔法によって完治させたのだが、それがダメ押しだったのだろう。
俺達の思惑通り、というかそれ以上に効いたようだ。
この日以降、アリスが他の冒険者たちに絡まれることも、陰口を言われることもなくなったのだった。
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