魔王たまの伝説

星馴染

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魔王たまの就任

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 魔王の元に集まる万を越す軍勢の魔王軍。

 その息吹は絶対零度、アイスドラゴンのドラ
 腕の一振りで灰燼と化す、アースゴーレムのゴレ
 なんでも溶かす原初の炎、サラマンダーのサラ
 水を自在に操る知恵の探求者、セイレーンのセイ
 魔界屈指の実力者、彼女達をまとめて四天王と呼ぶ。

 彼らをまとめるのは元魔王。膨大な魔力と魔法を操る奇跡、ヴァンパイア王、ヴァン

「魔王様、就任式です。さぁ、この服を着て愚民の前に姿をお見せください」
 ヴァンにそう言われ、魔王はよきにはからえと言うように寝起きの目を擦って、腕を伸ばす。
「はっ、お着替えをさせていただきます。何という至福、愛らしい魔王様のお着替えを手伝えるとは!」
 そして元魔王のヴァンは服を着替えさせて、よくお似合いですと頷いた。

 魔王様はゆっくりと魔王城のバルコニーに向かい、城を囲む万の魔物に声をかける。

「にゃぁーん」

うぉぉぉぉ!!!

 魔物達が歓喜の声を上げる。
「かわいいいいい!!!」
「魔王様!!!こっちを向いて!!!」
「魔王様、可愛いよ、可愛いよ。ハァハァ」

第三百五十九代目、魔王。猫の『たま』

今、最強の魔王軍が動き始める。

「魔王様、本日のお食事。カリカリにございます」
「にゃん」
カリカリカリカリ。
 あぁぁぁ……。
 ヴァンは可愛らしい自分の主に身悶えする。

 この世界に猫は居ない。
 魔王は勇者たちの進行により窮地に立たされていた。
 個の力は魔物達の方が強いが、魔物たちは全員が身勝手で誰かのために行動するということはなかった。

 何だと?あいつのダンジョンが潰された?ざまぁwww

 え、勇者が炎の耐性を持った装備を着てる?
 氷属性の俺が出撃?やだよめんどくさい。
 それに前に氷耐性の装備を着ていた時にあいつ助けてくれなかったじゃん。

 魔物たちは疑心暗鬼になり仲間を仲間として信頼することができなかった。

 どんどん削られていく領地。
 減る人望。
 寝返る魔物たち。

「さすがにこれはまずいだろう」
 第三百五十八代目魔王のヴァンは、状況を変えようと異世界召喚に手を出した。

「異世界召喚で強力な仲間を呼ぶ。膨大な魔力を使えば、この世界では考えられないくらい恐ろしく強い最強の魔物を召喚する事ができるだろう」

 そして魔王が召喚した結果

「にゃーーん。フスフス」

 この世界には存在しない猫という生き物が召喚されたのであった。
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