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二章 大国の第一王女、マイナ
テルイン公国の外交官
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シピウ大陸、テルイン公国の外務官。
ブロードウェル伯爵は調査のためエヌべディア王国にやってきた。
「ハズレくじを引かされたな」
そうブロードウェル伯爵は顔を顰めた。
技術レベル、文化レベルが高ければ、貿易を。
低ければ戦力を調査し植民地化できるかどうか。
天使の生まれ変わりだと大騒ぎし、別大陸までその名の轟くマイナ王女の話を聞き、
「あぁ……まだ蛮族の国か」
そういう印象を持っていた。
文化レベルが低い国は、国民をまとめるために理由がいる。
どこの国の王族でも、昔に遡れば神様の一族だったり、天からの使いであったり。
そういう権威を持って統治することはよくある。
「第一王女が天使の生まれ変わり。それも奇跡を起こしたわけでもなく、何かをなしたわけでもなく。ただ可愛いというだけでよく倒れる病弱なガキを神格化か」
誰に聞かせるでもなく、ブロードウェル伯爵はひとりごちた。
第一夫人も伴い、面会の申込み。
二日後に約束をとりつけ、伴った第一夫人はこの国の王妃に誘われて午後から王妃様の招待でお茶会。
異国のホテルでブロードウェル伯爵は暇を潰そうと街に降りた。
町の中央には貴族向けの店も並ぶが、その国を知るには庶民に近いほうがいいと、テントが張られたちいさな仮設店舗が集まる場所へと赴く。
ジュウジュウといい匂いがする串焼きを指さし、一本貰おうと言ってみる。
一口齧ると香ばしい匂いが鼻をつく。
庶民の店で香辛料。
庶民は貧しくなさそうだ。
善政を敷いているのだろうな、と少しだけエヌべディア王国の評価を上方修正する。
「ん、その絵はなんだ?」
「あぁ、これは我が国が誇る天からの使い。マイナ第一王女の肖像だよ」
可愛らしい幼女が描かれていた。
だがそれを見て、ブロードウェル伯爵は、『こんなものか』と思っていた。
えてして肖像とは本人よりも美しく、可愛らしく描かせるもの。
それを踏まえて、こんなものかと値踏みする。
「あんた、外国の人かい?」
「む、そうだが。なぜ解った?」
別大陸とはいえ、ブロードウェル伯爵の容姿はこの国の人達と似ている。
言語も完璧に習得し、どこで見破られたのかと尋ねてみる。
「やれやれ、マイナ様。第一王女様の肖像を見ても拝まないとはな」
拝む?何を言っているんだこいつは。
崇拝に近い感情を持っている庶民の手前、こんなクソガキを拝めだと!と憤慨するわけにもいかず。
一応手を合わせて拝みはしたがブロードウェルは納得できずホテルに帰りカバンを殴りつけた。
そこへ伯爵夫人が戻ってくる。
「ん、どうしたんだ?」
「聞いてよ、マイナ第一王女が倒れたと言って、ほとんど話もできずに追い返されたわ」
「な、なんだと!?誘っておきながらゲストを追い返すとは……何という国だ!」
例え子が倒れてもゲストをもてなす。それがマナーだ。自らの都合を優先するというのは、
「私を。私の妻を。そしてテルイン公国を軽く見ていると言う事だな」
愛する妻を蔑ろにされた事で、額に青筋をたて怒りのあまり震えるブロードウェル伯爵。
「王との面会は明後日だ。お前も来て一言皮肉くらい言ってもよかろう」
ブロードウェル伯爵は調査のためエヌべディア王国にやってきた。
「ハズレくじを引かされたな」
そうブロードウェル伯爵は顔を顰めた。
技術レベル、文化レベルが高ければ、貿易を。
低ければ戦力を調査し植民地化できるかどうか。
天使の生まれ変わりだと大騒ぎし、別大陸までその名の轟くマイナ王女の話を聞き、
「あぁ……まだ蛮族の国か」
そういう印象を持っていた。
文化レベルが低い国は、国民をまとめるために理由がいる。
どこの国の王族でも、昔に遡れば神様の一族だったり、天からの使いであったり。
そういう権威を持って統治することはよくある。
「第一王女が天使の生まれ変わり。それも奇跡を起こしたわけでもなく、何かをなしたわけでもなく。ただ可愛いというだけでよく倒れる病弱なガキを神格化か」
誰に聞かせるでもなく、ブロードウェル伯爵はひとりごちた。
第一夫人も伴い、面会の申込み。
二日後に約束をとりつけ、伴った第一夫人はこの国の王妃に誘われて午後から王妃様の招待でお茶会。
異国のホテルでブロードウェル伯爵は暇を潰そうと街に降りた。
町の中央には貴族向けの店も並ぶが、その国を知るには庶民に近いほうがいいと、テントが張られたちいさな仮設店舗が集まる場所へと赴く。
ジュウジュウといい匂いがする串焼きを指さし、一本貰おうと言ってみる。
一口齧ると香ばしい匂いが鼻をつく。
庶民の店で香辛料。
庶民は貧しくなさそうだ。
善政を敷いているのだろうな、と少しだけエヌべディア王国の評価を上方修正する。
「ん、その絵はなんだ?」
「あぁ、これは我が国が誇る天からの使い。マイナ第一王女の肖像だよ」
可愛らしい幼女が描かれていた。
だがそれを見て、ブロードウェル伯爵は、『こんなものか』と思っていた。
えてして肖像とは本人よりも美しく、可愛らしく描かせるもの。
それを踏まえて、こんなものかと値踏みする。
「あんた、外国の人かい?」
「む、そうだが。なぜ解った?」
別大陸とはいえ、ブロードウェル伯爵の容姿はこの国の人達と似ている。
言語も完璧に習得し、どこで見破られたのかと尋ねてみる。
「やれやれ、マイナ様。第一王女様の肖像を見ても拝まないとはな」
拝む?何を言っているんだこいつは。
崇拝に近い感情を持っている庶民の手前、こんなクソガキを拝めだと!と憤慨するわけにもいかず。
一応手を合わせて拝みはしたがブロードウェルは納得できずホテルに帰りカバンを殴りつけた。
そこへ伯爵夫人が戻ってくる。
「ん、どうしたんだ?」
「聞いてよ、マイナ第一王女が倒れたと言って、ほとんど話もできずに追い返されたわ」
「な、なんだと!?誘っておきながらゲストを追い返すとは……何という国だ!」
例え子が倒れてもゲストをもてなす。それがマナーだ。自らの都合を優先するというのは、
「私を。私の妻を。そしてテルイン公国を軽く見ていると言う事だな」
愛する妻を蔑ろにされた事で、額に青筋をたて怒りのあまり震えるブロードウェル伯爵。
「王との面会は明後日だ。お前も来て一言皮肉くらい言ってもよかろう」
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