成田さんの切実なる事情

世羅

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プロローグ

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 世間一言われる有名大学を卒業し、高学歴を手にした私だった。けれども、私は重い睡眠障害を患っているため、「普通」の人と同じリズムで生活することができずに、大手企業から内定を勝ち取ったものの、辞退した。そして、生活のためにネオンがぎらぎらときらめく街に飛び込んだ。




ーーー……いわゆる、キャバ嬢ってやつ。





 顔も悪くなければ、他の女の子たちよりも頭がキレる私は入店してそれなりに売れるようになって、一定数のお客さんを抱えるようになった。その中には、有名企業のお偉いさんもいたり、出版関係の人もいたりして「接待」という名目でよくお店に来てくれる。そのせいか、月にもらえる額も新入社員よりは多い。






 けれども、なんとなくそんな生活に対して虚しさを抱くようになっていた。
お金は手に入るけれども、「私」になることができない生活。








 今日も作り笑顔で、お客さんに接している。今日のお客さんは某出版社の編集さんで、どうやらそばにいるのは作家の方らしいい。まだ見た目的に若いから売れ出しというところだろうか。







「えみりちゃん、俺はいいからここ座って成田さんと話してあげて」



「わかったよー。じゃあ、また後で話そうね」

と言って、成田さんの隣に座った。






「成田さん、初めまして。えみりです」





 とびっきりの接客スマイルに成田さんはどうもと無愛想そうに頭を下げた。全然お酒飲んでないですよーっと言って、飲むように促すが慣れてないんでと言ってグラスに口をつけることはなかった。こっそり耳打ちして「お茶、用意してもらいますね」と言えば、はいとだけ返された。私はこっそり、黒服にサインを送り、こっそり連れの人たちに見えないように彼のグラスを交換した。



 ーーー……嫌々ながら来たって感じね。

 私は彼にそんな印象を抱いた。
 普通に整った顔はしているが、性格が、ね。
 他人と合わせるつもりも打ち解けるつもりもないって感じ。



 私は営業のつもりで彼に名刺を差し出して、よかったら連絡くださいとまたこっそり耳打ちした。




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