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エピローグ
エピローグ しようぜ、野球! 後半
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「強、公園はあっちだろ? キャッチボールするだけなのにどこまで行くんだ?」
「うん。ついてきて」
僕はあんちゃんには行く先を黙って青島西グラウンドへ連れて行く。
あんちゃんは僕がお願いをすれば、キャッチボールだけはしてくれる。けど、野球は無理。野球は僕だけのお願いでは聞いてくれない。
姉さんでも、朝乃宮姉さんでも無理。
おじいちゃんかおばあちゃんなら可能性があるけど、きっとしてくれない。
あんちゃんが野球をしたいと言えば、同意してくれるけど、あんちゃんの気持ちを汲んで、言わないと思う。
おじいちゃんとおばあちゃんはいつもあんちゃんの意思を尊重するから。
あんちゃんをその気にさせるには……。
本当は僕一人の力であんちゃんの気持ちを変えたかった。あんちゃんに恩返ししたかった。
でも、僕一人の力では無理だから……お願いしたんだ……。
あと少しで青島西グラウンドにつく。
僕は内心ドキドキしながら目的地へと向かう。
「あんちゃん、ついた」
「ああっ……ってなんだ? あの集まりは?」
青島西グラウンドにはブルーリトルのメンバーと……。
「兄さん、遅いです」
「ホンマ、凍えそうやわ」
「上春? 朝乃宮? どうしてここに?」
姉さんと朝乃宮姉さんも一緒だ。
そして……。
「遅いぞ、正道」
「……仙石さん……何をしているんですか?」
監督代理の仙石監督に来てもらった。
月曜日の試合後、僕達は三田村監督と仙石監督にもげんこつ付きで怒られた。
けど、理由を話したら、三田村監督は大笑いして、仙石監督は渋い顔をしていた。
二人はあんちゃんがなぜ、あんなことをしたのか? ブルーフェザーを辞めた理由も分かってもらえた。
だから、お願いしたんだ。
「何寝ぼけてやがる。グラウンドでやることって言ったら野球だろ? ほら、さっさと準備しろ」
「準備って何を?」
「練習試合だ。コイツらが試合をしたいって言ってきかないから練習試合をするんだよ」
そう、これが奏の案。みんなであんちゃんと野球する作戦。
でも……。
「申し訳ございません。俺はもう、野球をしません。俺は野球を喧嘩の道具に使いました。だから、野球をやる資格はありません。青島西グラウンドは……野球を真剣にやるヤツらの場所です。俺のような愚か者がいていい場所ではありません」
あんちゃんは仙石監督に頭を下げて来た道を戻っていく。
みんながあんちゃんを呼ぶけど、あんちゃんの足は止まらない。
ダメ……いかないで……。
ここで帰られたら、あんちゃんから大切なモノがなくなってしまう気がする。
あんちゃんには背中を丸めてほしくない。いつものようにビシッと背筋を伸ばして堂々としてほしい。
あんちゃんは悲しそうな顔ですまないと頭を下げ、来た道を帰っていく。
ダメ……いかないで……。
どうしたらいい? どうすれば、あんちゃんを連れて行くことが出来る?
考えるけど、分からなくて、迷っている間にもあんちゃんは離れていって……。
「兄貴、電話。姉ちゃんから」
「……伊藤だと?」
あんちゃんの足が止まった。どうして?
あんちゃんは振り返ったけど……顔は真っ青で唇が震えている。
剛の姉さんって確か……。
「ほら」
「……もしもし」
剛は携帯を渡して、あんちゃんは電話に出る。
剛の姉ちゃんが何を言っているのかは分からない。けど、あんちゃんの足を止めてくれた。
このチャンスを絶対に逃しちゃダメだ。
「ああっ、分かったよ。それじゃあな……体に気をつけてな」
あんちゃんは寂しそうな顔で携帯をきった。
すごく悲しい顔をしている。初めて見た、あんな顔……。
あんちゃんが悲しいと僕まで悲しくなる。
「なんだ? 彼女にでも怒られたのか?」
「……違いますよ。伊藤は……大事な相棒でした……」
「そっか……それで? 野球をするのか? しないのか?」
千石監督の問いにあんちゃんは黙ったままうつむている。
僕がなんとかしなきゃ……でも、何を言ったらいいの? しつこくして怒られたらどうしよう……。
怖くて足がすくんでいたら……。
「この石頭!」
あっ、雅があんちゃんのお尻を蹴った。
雅は顔を真っ赤にして怒っていた。
「いい加減にしなさいよね! あの試合はお兄さんだけが悪いんじゃない! 私達だって戦うって決めたんだから! だから、私達も一緒に背負ってあげる! そうでしょ、みんな!」
「そうだぜ! 正道は俺達と一緒に青島西中と戦った戦友だ!」
「ったりまえだ! もし、正道がやめるんなら、俺達全員、野球をやめる! そうだよな、強!」
「……うん。僕も野球をやめる」
あんちゃんは僕の肩を強く握り、怒鳴った。
「だ、ダメだ! そんなこと、絶対に認めないぞ! 強にとって、野球は! 野球は……」
あんちゃんは僕の両親の事がばれないよう、言葉を止めてくれる。
あんちゃんの言うとおり、野球をやめたら僕を見つけてもらう手段が消える。
でも……それでも……。
「あんちゃん、お願い。野球をやめないで……僕達のために犠牲にならないで……あんちゃんが傷ついてまで僕は……僕は野球をしたくないよ……」
「強……」
あんちゃんは拳を握りしめ、何かに耐えているような泣きそうな顔をしている。
「けど……みんなは俺を……」
「水くさいぞ、正道! まだ伝わらないのかよ! 俺達にとって正道は戦友でブルーリトルの補欠のキャッチャーなんだよ!」
「あんたの背番号、永久欠番にしておくぜ!」
「いや、バンザイ扇風機の正道に背番号なんてないだろ? せいぜい補欠にしておけよ」
みんながみんな、あんちゃんを認めてくれている。
仲間だと思っている。
「俺だって兄貴のこと、仲間だって認めてるし!」
剛が馴れ馴れしく僕の肩に肘を置き、つついてくる。
「……剛はあんちゃんのこと、嫌ってたじゃん」
「嫌ってねえっつーの! どうでもいいヤツの為にムカつく姉ちゃんに一晩中頼み込んでないわ! 少しは感謝しろってーの! まあ、姐さん達の頼みだから聞いたんだけどな」
姉ちゃん? 姐さん達?
姉ちゃんはさっきあんちゃんと電話していた人で、姐さん達は……姉さん達だよね。
「強、お前からもちゃんと伝えろよ。俺達は仲間だって!」
勿論、剛に言われるまでもない。
今度は僕があんちゃんに伝えるんだ。
「あんちゃん、僕達はずっと仲間。あんちゃんと一緒に野球できたこと、本当に嬉しかったから。だから、野球をしよう」
「「「しようぜ、野球!」」」
あんちゃんは目を丸くし、目頭を押さえた。
僕は知っている。
あんちゃんは案外、涙もろくて、優しいことを。
僕はあんちゃんが好きだ。みんな、好きだ。
だから、あんちゃんも僕達を好きになってほしい。
「……ありがとな、みんな。本当にありがとう。仙石さん……野球をしてもいいんでしょうか? あんなことをしておいて……あんな……ことを……」
「泣くな、ガキ。遊びなんだからとことん楽しめ。誰も文句言わねえよ」
あんちゃんは一度鼻をすすり、空を見上げた。
「……よし、やるか! 俺も試合に出させてくれ!」
「応よ!」
「よろしくしてやるよ!」
「一番下手くそなんだから頑張れよ!」
「真冬で扇風機は勘弁してくれよな!」
「バンザイもな!」
「返り討ちにしてやるぜ!」
「やりましょう! 兄さん!」
「はぁ……元気な子供達やね……」
あんちゃんは一人じゃない。みんながいる。
僕もあんちゃんがいる輪に入り、一緒の時間を過ごす。
「ああっ、言ってなかったが、俺も試合に出るからな」
「えええっ~監督もやるのかよ! しょうがねえな~」
「いやいや! 絶対、この人、本気で投げる気だ! 大人げない!」
「絶対子供相手にカーブとかフォークとか投げるよ、この人! ストライクゾーンとか絶対うるさい人でしょ!」
「大人げない!」
「やかましい! ハンデでそっちに正道をくれてやるから我慢しろ」
「いや、それがハンデじゃん! お荷物なんていらないから! それに我慢って言ったよね、今?」
「監督のチームに正道をいれてやれよ~」
「そうだ! そうだ! それで釣り合う!」
「言ってくれるな。いいだろう。本気を見せてやる」
「「「上等だ! かかってこい!!」」」
僕達は暖かい日だまりの中で野球を始める。
みんなで楽しく野球をするんだ。
父さん、母さん。
二人がいないと寂しいけど、でも、今はそんなに寂しくないんだ。
だって、あんちゃんや友達がそばにいるから……。
だから、心配しなくていいよ。
僕、頑張ってプロ野球選手になるから……いつか、僕を見つけてね。必ずだよ。
いっぱい話したいことがあるんだ。でも、一番話したいことは決まっている。
僕の自慢の兄の話をする。これは決定事項。
僕のことをずっと見守ってくれた優しくて頼りになるお兄ちゃん。それを伝えたいんだ。
僕は空を見上げる。
きっと同じ空の下に父さんも母さんもいる。僕達はいつでもこの空で繋がっていて、一緒に見上げているかもね。
そう思うと胸の奥が暖かくなる。
「強! なにぼけっとしてやがるんだ! さっさとこい!」
「お前がいないと、監督に対抗できないじゃん!」
「強。よろしく頼むな」
「強! 頑張ってね!」
友達の声が……あんちゃんの声が……姉さんの声が……僕を呼ぶ。僕は駆け足でみんなの元へ向かう。
外は寒かったけど、心はとても暖かった。
▲▲▲
―END―
「うん。ついてきて」
僕はあんちゃんには行く先を黙って青島西グラウンドへ連れて行く。
あんちゃんは僕がお願いをすれば、キャッチボールだけはしてくれる。けど、野球は無理。野球は僕だけのお願いでは聞いてくれない。
姉さんでも、朝乃宮姉さんでも無理。
おじいちゃんかおばあちゃんなら可能性があるけど、きっとしてくれない。
あんちゃんが野球をしたいと言えば、同意してくれるけど、あんちゃんの気持ちを汲んで、言わないと思う。
おじいちゃんとおばあちゃんはいつもあんちゃんの意思を尊重するから。
あんちゃんをその気にさせるには……。
本当は僕一人の力であんちゃんの気持ちを変えたかった。あんちゃんに恩返ししたかった。
でも、僕一人の力では無理だから……お願いしたんだ……。
あと少しで青島西グラウンドにつく。
僕は内心ドキドキしながら目的地へと向かう。
「あんちゃん、ついた」
「ああっ……ってなんだ? あの集まりは?」
青島西グラウンドにはブルーリトルのメンバーと……。
「兄さん、遅いです」
「ホンマ、凍えそうやわ」
「上春? 朝乃宮? どうしてここに?」
姉さんと朝乃宮姉さんも一緒だ。
そして……。
「遅いぞ、正道」
「……仙石さん……何をしているんですか?」
監督代理の仙石監督に来てもらった。
月曜日の試合後、僕達は三田村監督と仙石監督にもげんこつ付きで怒られた。
けど、理由を話したら、三田村監督は大笑いして、仙石監督は渋い顔をしていた。
二人はあんちゃんがなぜ、あんなことをしたのか? ブルーフェザーを辞めた理由も分かってもらえた。
だから、お願いしたんだ。
「何寝ぼけてやがる。グラウンドでやることって言ったら野球だろ? ほら、さっさと準備しろ」
「準備って何を?」
「練習試合だ。コイツらが試合をしたいって言ってきかないから練習試合をするんだよ」
そう、これが奏の案。みんなであんちゃんと野球する作戦。
でも……。
「申し訳ございません。俺はもう、野球をしません。俺は野球を喧嘩の道具に使いました。だから、野球をやる資格はありません。青島西グラウンドは……野球を真剣にやるヤツらの場所です。俺のような愚か者がいていい場所ではありません」
あんちゃんは仙石監督に頭を下げて来た道を戻っていく。
みんながあんちゃんを呼ぶけど、あんちゃんの足は止まらない。
ダメ……いかないで……。
ここで帰られたら、あんちゃんから大切なモノがなくなってしまう気がする。
あんちゃんには背中を丸めてほしくない。いつものようにビシッと背筋を伸ばして堂々としてほしい。
あんちゃんは悲しそうな顔ですまないと頭を下げ、来た道を帰っていく。
ダメ……いかないで……。
どうしたらいい? どうすれば、あんちゃんを連れて行くことが出来る?
考えるけど、分からなくて、迷っている間にもあんちゃんは離れていって……。
「兄貴、電話。姉ちゃんから」
「……伊藤だと?」
あんちゃんの足が止まった。どうして?
あんちゃんは振り返ったけど……顔は真っ青で唇が震えている。
剛の姉さんって確か……。
「ほら」
「……もしもし」
剛は携帯を渡して、あんちゃんは電話に出る。
剛の姉ちゃんが何を言っているのかは分からない。けど、あんちゃんの足を止めてくれた。
このチャンスを絶対に逃しちゃダメだ。
「ああっ、分かったよ。それじゃあな……体に気をつけてな」
あんちゃんは寂しそうな顔で携帯をきった。
すごく悲しい顔をしている。初めて見た、あんな顔……。
あんちゃんが悲しいと僕まで悲しくなる。
「なんだ? 彼女にでも怒られたのか?」
「……違いますよ。伊藤は……大事な相棒でした……」
「そっか……それで? 野球をするのか? しないのか?」
千石監督の問いにあんちゃんは黙ったままうつむている。
僕がなんとかしなきゃ……でも、何を言ったらいいの? しつこくして怒られたらどうしよう……。
怖くて足がすくんでいたら……。
「この石頭!」
あっ、雅があんちゃんのお尻を蹴った。
雅は顔を真っ赤にして怒っていた。
「いい加減にしなさいよね! あの試合はお兄さんだけが悪いんじゃない! 私達だって戦うって決めたんだから! だから、私達も一緒に背負ってあげる! そうでしょ、みんな!」
「そうだぜ! 正道は俺達と一緒に青島西中と戦った戦友だ!」
「ったりまえだ! もし、正道がやめるんなら、俺達全員、野球をやめる! そうだよな、強!」
「……うん。僕も野球をやめる」
あんちゃんは僕の肩を強く握り、怒鳴った。
「だ、ダメだ! そんなこと、絶対に認めないぞ! 強にとって、野球は! 野球は……」
あんちゃんは僕の両親の事がばれないよう、言葉を止めてくれる。
あんちゃんの言うとおり、野球をやめたら僕を見つけてもらう手段が消える。
でも……それでも……。
「あんちゃん、お願い。野球をやめないで……僕達のために犠牲にならないで……あんちゃんが傷ついてまで僕は……僕は野球をしたくないよ……」
「強……」
あんちゃんは拳を握りしめ、何かに耐えているような泣きそうな顔をしている。
「けど……みんなは俺を……」
「水くさいぞ、正道! まだ伝わらないのかよ! 俺達にとって正道は戦友でブルーリトルの補欠のキャッチャーなんだよ!」
「あんたの背番号、永久欠番にしておくぜ!」
「いや、バンザイ扇風機の正道に背番号なんてないだろ? せいぜい補欠にしておけよ」
みんながみんな、あんちゃんを認めてくれている。
仲間だと思っている。
「俺だって兄貴のこと、仲間だって認めてるし!」
剛が馴れ馴れしく僕の肩に肘を置き、つついてくる。
「……剛はあんちゃんのこと、嫌ってたじゃん」
「嫌ってねえっつーの! どうでもいいヤツの為にムカつく姉ちゃんに一晩中頼み込んでないわ! 少しは感謝しろってーの! まあ、姐さん達の頼みだから聞いたんだけどな」
姉ちゃん? 姐さん達?
姉ちゃんはさっきあんちゃんと電話していた人で、姐さん達は……姉さん達だよね。
「強、お前からもちゃんと伝えろよ。俺達は仲間だって!」
勿論、剛に言われるまでもない。
今度は僕があんちゃんに伝えるんだ。
「あんちゃん、僕達はずっと仲間。あんちゃんと一緒に野球できたこと、本当に嬉しかったから。だから、野球をしよう」
「「「しようぜ、野球!」」」
あんちゃんは目を丸くし、目頭を押さえた。
僕は知っている。
あんちゃんは案外、涙もろくて、優しいことを。
僕はあんちゃんが好きだ。みんな、好きだ。
だから、あんちゃんも僕達を好きになってほしい。
「……ありがとな、みんな。本当にありがとう。仙石さん……野球をしてもいいんでしょうか? あんなことをしておいて……あんな……ことを……」
「泣くな、ガキ。遊びなんだからとことん楽しめ。誰も文句言わねえよ」
あんちゃんは一度鼻をすすり、空を見上げた。
「……よし、やるか! 俺も試合に出させてくれ!」
「応よ!」
「よろしくしてやるよ!」
「一番下手くそなんだから頑張れよ!」
「真冬で扇風機は勘弁してくれよな!」
「バンザイもな!」
「返り討ちにしてやるぜ!」
「やりましょう! 兄さん!」
「はぁ……元気な子供達やね……」
あんちゃんは一人じゃない。みんながいる。
僕もあんちゃんがいる輪に入り、一緒の時間を過ごす。
「ああっ、言ってなかったが、俺も試合に出るからな」
「えええっ~監督もやるのかよ! しょうがねえな~」
「いやいや! 絶対、この人、本気で投げる気だ! 大人げない!」
「絶対子供相手にカーブとかフォークとか投げるよ、この人! ストライクゾーンとか絶対うるさい人でしょ!」
「大人げない!」
「やかましい! ハンデでそっちに正道をくれてやるから我慢しろ」
「いや、それがハンデじゃん! お荷物なんていらないから! それに我慢って言ったよね、今?」
「監督のチームに正道をいれてやれよ~」
「そうだ! そうだ! それで釣り合う!」
「言ってくれるな。いいだろう。本気を見せてやる」
「「「上等だ! かかってこい!!」」」
僕達は暖かい日だまりの中で野球を始める。
みんなで楽しく野球をするんだ。
父さん、母さん。
二人がいないと寂しいけど、でも、今はそんなに寂しくないんだ。
だって、あんちゃんや友達がそばにいるから……。
だから、心配しなくていいよ。
僕、頑張ってプロ野球選手になるから……いつか、僕を見つけてね。必ずだよ。
いっぱい話したいことがあるんだ。でも、一番話したいことは決まっている。
僕の自慢の兄の話をする。これは決定事項。
僕のことをずっと見守ってくれた優しくて頼りになるお兄ちゃん。それを伝えたいんだ。
僕は空を見上げる。
きっと同じ空の下に父さんも母さんもいる。僕達はいつでもこの空で繋がっていて、一緒に見上げているかもね。
そう思うと胸の奥が暖かくなる。
「強! なにぼけっとしてやがるんだ! さっさとこい!」
「お前がいないと、監督に対抗できないじゃん!」
「強。よろしく頼むな」
「強! 頑張ってね!」
友達の声が……あんちゃんの声が……姉さんの声が……僕を呼ぶ。僕は駆け足でみんなの元へ向かう。
外は寒かったけど、心はとても暖かった。
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