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四章
四話 自慢させてくれよな その一
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平和だった。
青島西中の件も、レッドアーミーも今のところ、動きはない。
街は至って平和……なわけがなく、不良同士の喧嘩がそこそこ起こっている。
青島では特に日常茶飯事なので問題はない。
これも左近のおかげだろうか? ただ、油断せずに、何かあったときのために体力を温存させておきたい……のだが、俺の体は相変わらず特訓でボロボロだった。
歩くだけで筋肉が軋む。痛みで顔が引きつっている。
特訓の効果はすぐには反映されないが、塵積もりて山となるはず。そう信じて、鍛えるだけだ。
今日はもう帰るか。
俺は特訓後、かるく見回りをしただけで委員会の仕事を切り上げ、帰路についていた。このペースなら、四時過ぎには帰れるな。
帰ったら、何をしようか?
強がいたら、キャッチボールに誘うか。いなかったら、シュナイダーの散歩へ行こう。
強がシュナイダーの散歩に連れて行っていたら、バイクの整備をするか。
五時になったら、買い物に出かけて、帰ったら晩ご飯の準備ってところだな。手が汚れたらまずいから、整備する場合は軽く清掃する程度でとどめておこう。
俺は今日の予定を頭の中で組み立てながら歩いていると、携帯が鳴った。
だれだ?
画面を見ると、家からかかってきたみたいだ。何かあったのか?
「はい」
「……強です」
強だと? 珍しいな……。
まさか、問題が起きたのか? レッドアーミーか? それとも……。
「何かあったのか? 不良に襲われたのか?」
「……襲われてない」
ふぅ……。
最悪の事態ではなかったようだ。
だとしたら、なんだ? もしかして、帰りに買ってきて欲しいものがあったか?
それだと、厄介だな。もう、家は目の前……なんだが、なんだ?
家の前に三人の子供が立っている。男子一人に女子二人だ。
坊主頭の半袖半ズボンの少年。
短髪の活気ある少女。
メガネをかけた大人しそうな少女。
背格好からして小学生だと思うが、強の友達か?
見覚えがあるような気がするんだが……確かあの子供達は……ああっ、そうか。あの坊主頭、元旦に初詣に行ったときに見かけた子供達だ。
強の知り合いのようだし、遊びに来たってワケか。
おっ、子供達が俺の存在に気づいたようだ。
しかし、俺を睨んでいるのは気のせいか? しかも、活発そうで勝ち気な女子が俺の前に立ち塞がった。
「ねえ、何見ているの、ロリコン」
おおぅ……パンチの効いた第一声だ。
様々な罵倒を浴びてきたが、ロリコンはなかったな。少しショックだ。
さて、どう反応したらいい?
ハッキリ言って、関わりたくない。小学生女子にはロクな思い出がないからな。
主に菜乃花とか。
「ちょっと、無視する気? それと人と話すときは電話を切りなさいよ。失礼でしょ」
いや、電話していたところにお前が勝手に話しかけてきたのだが。
失礼かもしれないが、先に俺に話しかけてきたのは強だ。俺は背を向け、強の電話を優先させる。
「だとしたら、なんだ、強。家の前に強の友達が……あ痛ぁ!」
蹴られた。後ろから思いっきり蹴られた。
蹴ったのは先ほどの女子だ。お前、後ろから蹴ってはいけませんって学校で習わなかったのか?
素で痛かった。
「どうしてロリコンが強君と電話してるの? ショタコンなの?」
酷い言われようだ。一秒ごとに性犯罪者に格下げされていく。
かなりムカついたが、彼女は強の友達だ。ここは大人になるべきだろう。
とりあえず、自己紹介しておく。
「……俺はその家の住人で、強の兄だ」
「「「はぁあああああああ~~~? このゴリラがぁあああ~~~~~?」」」
……ぶっ飛ばしていいよな、コイツら。
人が下手に出ていれば、言いたい放題言いやがって。指を指すな、指を。
強の兄と信じてもらえなかったことが一番ショックかもしれん。
「ありえねえ~~~! 家事得意とか、嘘だろ! 放火犯の間違いだろ~~~!」
家事と火事をかけているのか?
「絶対、眼鏡かける優男だと思ってたのに~! 詐欺じゃん!」
言いたいことは分かる。
女子の料理好き男子は優男のメガネと相場は決まっているからな。(偏見)
「きっと次男なんだよ、この人。長男がイケメンなんだよ」
悪かったな、イケメンじゃなくて。
「「「マジありえない~~~~!」」」
ひとつ言っておくが、ゴリラは温厚で繊細だが、平均握力が五百kg説があるんだぞ。
目の前にいる子供達に俺は……。
「……」
無視することにした。下手に行動すれば、強の学校生活に支障をきたすかもしれない。
家に入ろうとしたとき、玄関の引き戸が開いた。
強が出てきて、俺と子供達をキョロキョロとみる。
「ただいま、強」
「……お帰り、兄さん」
兄さん? あんちゃんじゃないのな。
まあ、友達の前だし、無難な呼び方がいいよな。俺は何もツッコまず、家に入ろうとした。
「おい、強! 騙したな! あんなゴリラが家事とか、頭いいとか、ありえないだろ?」
「ううん……私も剛と同じ意見。本当に家事が得意なの、あの人?」
「じ、次男なんだよね? あの人」
おおい、本人を前に言いたい放題だな、お前ら。いい加減、ブチギレるぞ。
「……嘘はついていない。それと、あんちゃんを悪く言うな」
おい、強。素が出てるぞ。
それに、そんな言い方をしたら……。
「ぷっ! あんちゃんだって! 何それ? あのクールボーイ強がギャグ言いやがったぞ! マジうける!」
だよな……今時、あんちゃんはないかもな。
「……」
強が丸坊主の男子の胸ぐらを掴もうとしたが、俺が強の後ろ襟を掴み、止めた。
「強、やめておけ。それと坊主頭共……調子に乗るなよ」
俺はガキ共を睨みつける。恨まれるなら俺だけでいいからな。
俺は今後、ガキ共と会うことはないだろうが、強はそうはいかない。
だから、俺が悪役を買って出ればいい。
俺の睨みに、意外にも強気な女子が睨み返してきた。足は震えてるがな。
残りの二人は睨んでくる女子の後ろに隠れている。
おい、坊主頭。お前男だろ? 女子の後ろに隠れるなよ。
だが、何の躊躇もなく女子の背中に隠れた坊主頭に、なぜか親近感がわいた。
「……あんちゃん、ごめんなさい」
「なぜ、強が謝る? 俺こそ悪かったな。騒がせてしまって。それで、電話の件はもういいのか?」
「うん」
強は三人の前に立ち、
「帰れ」
それだけを言い放つ。
強が怒っていることに気づいたのだろう。三人……いや、強気な女子が泣きそうな顔をしている。
「あっ、ごめん、強君。私、そんなつもりじゃあ……」
「あん? てめえ! 友達が来てやったのに、その態度は何だよ!」
強相手なら強気なんだな、坊主頭。
強は三人に背を向け、三人を拒絶するように引き戸を閉めた。
俺は強を追いかけ、優しく問いかける。
「強、俺のことで怒ってくれたのは嬉しいんだが、いいのか? 友達なんだろ?」
「違う。クラスメイト」
きっぱりと言い切りやがったな。しかも、ごく自然に。
友達じゃないのか? それとも、あの三人だけが強を友達と思っていたのか?
俺の勘が正しければ……。
「そっか」
「うん。あんちゃん、ごめんなさい。嫌な思いをさせて」
「いや。俺のことはいい。強、ちょっと出かけてくる」
「……」
強は少し残念そうな顔をしている。もしかして、遊んでほしかったのか?
「……その十分ほどで帰ってくる。帰ってきたら、キャッチボールかシュナイダーの散歩に行かないか?」
「……うん、待ってる」
強は嬉しそうにしてくれている。表情はほとんど変わらないが、大体分かるようになったな。
さて、とっとと用事を終わらせるか。
俺は荷物を部屋に置いて、すぐに家を出た。
すると……。
「「「……」」」
三人のガキが家の前で途方に暮れていた。
やっぱりか。
女子達は家から出てきた俺を見て、落胆していた。男子は俺と距離をとっている。素直なヤツらだ。
「少し強の事で話がある。いいか?」
強の名前を聞くと、三人は興味ありげに俺を見つめてくる。本当に分かりやすいヤツらだ。
俺はストレートにガキ共に尋ねてきた。
「お前達は強の友達か?」
「……ええっ、そうよ。何か文句ある?」
やっぱりな……。
強気な女子が口をへの字にして俺を睨んできたが、泣きそうな目をしている。
強は言っていた。彼らはクラスメイトだと。
友達であることを否定した。
それに対して、ガキ共は強を友達だという。
なぜなのか?
それはこのガキ共が優しいからだろう。
「ああん? こら、亀! 誰があんな根暗なヤツと友達だ! 吐き気がすることを言うな、ボケ!」
優しくないヤツもいるようだ。
「ボケはあんたでしょ、剛! ぶっ飛ばすわよ!」
「でも、伊藤君の言うとおり雅ちゃんは強君の事、好きなんだから友達じゃあ困るよね」
「か、奏! 変な事言わないで! か、奏だってそうでしょ!」
「ちっ! なんであんな根暗野郎がモテるんだ? 頭おかしいだろ?」
三人の強への想いが案外簡単に理解できたな。
雅と呼ばれていた強気の女子は、強の事が好きで、眼鏡を掛けた大人しそうな女子、奏も強の事が好きなのだろう。
強も隅に置けないな。
坊主頭の男子、伊藤剛は強にライバル意識を燃やしている。
強がモテていることに腹を立てているが、あの二人の中に意中の相手がいるのだろうか?
後、伊藤剛って名前に聞き覚えがある。
以前の相棒である伊藤と同じ性をもち、確か伊藤の弟の名前は剛だったはず。
もしかして……。
「なあ、伊藤君。もしかして、キミには高一の姉がいないか?」
「ああん? なに、ねーちゃん狙いなの、あんた? やめたほうがいいぜ。巨乳で外面はいいけど、性格は最悪だぜ!」
やはりな。コイツは伊藤の弟だ。
ならば、謝罪するべき……だろうな。
「最悪じゃない。芯が強くて、頼りになる後輩だ」
「後輩?」
「俺は藤堂正道。伊藤の相棒だった男だ」
青島西中の件も、レッドアーミーも今のところ、動きはない。
街は至って平和……なわけがなく、不良同士の喧嘩がそこそこ起こっている。
青島では特に日常茶飯事なので問題はない。
これも左近のおかげだろうか? ただ、油断せずに、何かあったときのために体力を温存させておきたい……のだが、俺の体は相変わらず特訓でボロボロだった。
歩くだけで筋肉が軋む。痛みで顔が引きつっている。
特訓の効果はすぐには反映されないが、塵積もりて山となるはず。そう信じて、鍛えるだけだ。
今日はもう帰るか。
俺は特訓後、かるく見回りをしただけで委員会の仕事を切り上げ、帰路についていた。このペースなら、四時過ぎには帰れるな。
帰ったら、何をしようか?
強がいたら、キャッチボールに誘うか。いなかったら、シュナイダーの散歩へ行こう。
強がシュナイダーの散歩に連れて行っていたら、バイクの整備をするか。
五時になったら、買い物に出かけて、帰ったら晩ご飯の準備ってところだな。手が汚れたらまずいから、整備する場合は軽く清掃する程度でとどめておこう。
俺は今日の予定を頭の中で組み立てながら歩いていると、携帯が鳴った。
だれだ?
画面を見ると、家からかかってきたみたいだ。何かあったのか?
「はい」
「……強です」
強だと? 珍しいな……。
まさか、問題が起きたのか? レッドアーミーか? それとも……。
「何かあったのか? 不良に襲われたのか?」
「……襲われてない」
ふぅ……。
最悪の事態ではなかったようだ。
だとしたら、なんだ? もしかして、帰りに買ってきて欲しいものがあったか?
それだと、厄介だな。もう、家は目の前……なんだが、なんだ?
家の前に三人の子供が立っている。男子一人に女子二人だ。
坊主頭の半袖半ズボンの少年。
短髪の活気ある少女。
メガネをかけた大人しそうな少女。
背格好からして小学生だと思うが、強の友達か?
見覚えがあるような気がするんだが……確かあの子供達は……ああっ、そうか。あの坊主頭、元旦に初詣に行ったときに見かけた子供達だ。
強の知り合いのようだし、遊びに来たってワケか。
おっ、子供達が俺の存在に気づいたようだ。
しかし、俺を睨んでいるのは気のせいか? しかも、活発そうで勝ち気な女子が俺の前に立ち塞がった。
「ねえ、何見ているの、ロリコン」
おおぅ……パンチの効いた第一声だ。
様々な罵倒を浴びてきたが、ロリコンはなかったな。少しショックだ。
さて、どう反応したらいい?
ハッキリ言って、関わりたくない。小学生女子にはロクな思い出がないからな。
主に菜乃花とか。
「ちょっと、無視する気? それと人と話すときは電話を切りなさいよ。失礼でしょ」
いや、電話していたところにお前が勝手に話しかけてきたのだが。
失礼かもしれないが、先に俺に話しかけてきたのは強だ。俺は背を向け、強の電話を優先させる。
「だとしたら、なんだ、強。家の前に強の友達が……あ痛ぁ!」
蹴られた。後ろから思いっきり蹴られた。
蹴ったのは先ほどの女子だ。お前、後ろから蹴ってはいけませんって学校で習わなかったのか?
素で痛かった。
「どうしてロリコンが強君と電話してるの? ショタコンなの?」
酷い言われようだ。一秒ごとに性犯罪者に格下げされていく。
かなりムカついたが、彼女は強の友達だ。ここは大人になるべきだろう。
とりあえず、自己紹介しておく。
「……俺はその家の住人で、強の兄だ」
「「「はぁあああああああ~~~? このゴリラがぁあああ~~~~~?」」」
……ぶっ飛ばしていいよな、コイツら。
人が下手に出ていれば、言いたい放題言いやがって。指を指すな、指を。
強の兄と信じてもらえなかったことが一番ショックかもしれん。
「ありえねえ~~~! 家事得意とか、嘘だろ! 放火犯の間違いだろ~~~!」
家事と火事をかけているのか?
「絶対、眼鏡かける優男だと思ってたのに~! 詐欺じゃん!」
言いたいことは分かる。
女子の料理好き男子は優男のメガネと相場は決まっているからな。(偏見)
「きっと次男なんだよ、この人。長男がイケメンなんだよ」
悪かったな、イケメンじゃなくて。
「「「マジありえない~~~~!」」」
ひとつ言っておくが、ゴリラは温厚で繊細だが、平均握力が五百kg説があるんだぞ。
目の前にいる子供達に俺は……。
「……」
無視することにした。下手に行動すれば、強の学校生活に支障をきたすかもしれない。
家に入ろうとしたとき、玄関の引き戸が開いた。
強が出てきて、俺と子供達をキョロキョロとみる。
「ただいま、強」
「……お帰り、兄さん」
兄さん? あんちゃんじゃないのな。
まあ、友達の前だし、無難な呼び方がいいよな。俺は何もツッコまず、家に入ろうとした。
「おい、強! 騙したな! あんなゴリラが家事とか、頭いいとか、ありえないだろ?」
「ううん……私も剛と同じ意見。本当に家事が得意なの、あの人?」
「じ、次男なんだよね? あの人」
おおい、本人を前に言いたい放題だな、お前ら。いい加減、ブチギレるぞ。
「……嘘はついていない。それと、あんちゃんを悪く言うな」
おい、強。素が出てるぞ。
それに、そんな言い方をしたら……。
「ぷっ! あんちゃんだって! 何それ? あのクールボーイ強がギャグ言いやがったぞ! マジうける!」
だよな……今時、あんちゃんはないかもな。
「……」
強が丸坊主の男子の胸ぐらを掴もうとしたが、俺が強の後ろ襟を掴み、止めた。
「強、やめておけ。それと坊主頭共……調子に乗るなよ」
俺はガキ共を睨みつける。恨まれるなら俺だけでいいからな。
俺は今後、ガキ共と会うことはないだろうが、強はそうはいかない。
だから、俺が悪役を買って出ればいい。
俺の睨みに、意外にも強気な女子が睨み返してきた。足は震えてるがな。
残りの二人は睨んでくる女子の後ろに隠れている。
おい、坊主頭。お前男だろ? 女子の後ろに隠れるなよ。
だが、何の躊躇もなく女子の背中に隠れた坊主頭に、なぜか親近感がわいた。
「……あんちゃん、ごめんなさい」
「なぜ、強が謝る? 俺こそ悪かったな。騒がせてしまって。それで、電話の件はもういいのか?」
「うん」
強は三人の前に立ち、
「帰れ」
それだけを言い放つ。
強が怒っていることに気づいたのだろう。三人……いや、強気な女子が泣きそうな顔をしている。
「あっ、ごめん、強君。私、そんなつもりじゃあ……」
「あん? てめえ! 友達が来てやったのに、その態度は何だよ!」
強相手なら強気なんだな、坊主頭。
強は三人に背を向け、三人を拒絶するように引き戸を閉めた。
俺は強を追いかけ、優しく問いかける。
「強、俺のことで怒ってくれたのは嬉しいんだが、いいのか? 友達なんだろ?」
「違う。クラスメイト」
きっぱりと言い切りやがったな。しかも、ごく自然に。
友達じゃないのか? それとも、あの三人だけが強を友達と思っていたのか?
俺の勘が正しければ……。
「そっか」
「うん。あんちゃん、ごめんなさい。嫌な思いをさせて」
「いや。俺のことはいい。強、ちょっと出かけてくる」
「……」
強は少し残念そうな顔をしている。もしかして、遊んでほしかったのか?
「……その十分ほどで帰ってくる。帰ってきたら、キャッチボールかシュナイダーの散歩に行かないか?」
「……うん、待ってる」
強は嬉しそうにしてくれている。表情はほとんど変わらないが、大体分かるようになったな。
さて、とっとと用事を終わらせるか。
俺は荷物を部屋に置いて、すぐに家を出た。
すると……。
「「「……」」」
三人のガキが家の前で途方に暮れていた。
やっぱりか。
女子達は家から出てきた俺を見て、落胆していた。男子は俺と距離をとっている。素直なヤツらだ。
「少し強の事で話がある。いいか?」
強の名前を聞くと、三人は興味ありげに俺を見つめてくる。本当に分かりやすいヤツらだ。
俺はストレートにガキ共に尋ねてきた。
「お前達は強の友達か?」
「……ええっ、そうよ。何か文句ある?」
やっぱりな……。
強気な女子が口をへの字にして俺を睨んできたが、泣きそうな目をしている。
強は言っていた。彼らはクラスメイトだと。
友達であることを否定した。
それに対して、ガキ共は強を友達だという。
なぜなのか?
それはこのガキ共が優しいからだろう。
「ああん? こら、亀! 誰があんな根暗なヤツと友達だ! 吐き気がすることを言うな、ボケ!」
優しくないヤツもいるようだ。
「ボケはあんたでしょ、剛! ぶっ飛ばすわよ!」
「でも、伊藤君の言うとおり雅ちゃんは強君の事、好きなんだから友達じゃあ困るよね」
「か、奏! 変な事言わないで! か、奏だってそうでしょ!」
「ちっ! なんであんな根暗野郎がモテるんだ? 頭おかしいだろ?」
三人の強への想いが案外簡単に理解できたな。
雅と呼ばれていた強気の女子は、強の事が好きで、眼鏡を掛けた大人しそうな女子、奏も強の事が好きなのだろう。
強も隅に置けないな。
坊主頭の男子、伊藤剛は強にライバル意識を燃やしている。
強がモテていることに腹を立てているが、あの二人の中に意中の相手がいるのだろうか?
後、伊藤剛って名前に聞き覚えがある。
以前の相棒である伊藤と同じ性をもち、確か伊藤の弟の名前は剛だったはず。
もしかして……。
「なあ、伊藤君。もしかして、キミには高一の姉がいないか?」
「ああん? なに、ねーちゃん狙いなの、あんた? やめたほうがいいぜ。巨乳で外面はいいけど、性格は最悪だぜ!」
やはりな。コイツは伊藤の弟だ。
ならば、謝罪するべき……だろうな。
「最悪じゃない。芯が強くて、頼りになる後輩だ」
「後輩?」
「俺は藤堂正道。伊藤の相棒だった男だ」
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