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番外編 その一
私が正道を幸せにしてあげる! その二
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「えっ」
「黙れって言ったんだ。俺に母親はいない……」
「はぁ? 何言ってるの? そんなわけ……」
「いないと言ってるだろうが!」
ひぃ!
な、何なのよ! いきなり怒鳴って……。
母親がいない? そんなわけ……って、もしかして……死んじゃったとか?
うっ……私、やっちゃった?
そっか……そうだよね……両親が亡くなって、それでグレたわけね……。
「うっ……ぐすっ……」
悲しいよね……親がいないって……寂しいよね……。
「お、おい。なんでお前が泣くんだ? それとも、怖がらせたか? わ、悪い……」
「だって、悲しいじゃない……でも、負けちゃダメ……天国のお母さんもきっと草葉の陰から見守っているから」
だから、元気出しなさい。そう言おうとしたとき。
「く、草葉の陰? いや、別に死んでないぞ」
「はい?」
「だから……その……なんだ……死んでないんだ」
えっ? 死んでない? 死んでない……ですって!
騙された! 無垢な女の子を騙すなんて、許せない! やはり、この男は最低のロリコン野郎だ!
私はノーモーションからの中段蹴りを正道の股間に向かって放つ。
「うぉ!」
ちっ! またガードして! いい加減、潰されなさいよ!
「アンタ……殺すわ……乙女の涙をなんだと思ってるの……」
「いや、待て! お前が勝手に誤解しただけだろ! それと、女が男の股間ばかり狙うな!」
コイツ……地雷を踏んだわ。必ず殺す。
「……私にはどうしても許せない事が三つあるの。一つは納豆。体にいいからって、口臭がひどくなる。乙女が食べるべき食事ではないわ。二つ目は小動物。猫だの犬だの鼠だの……全然可愛くない! イラストが可愛いからって、本体が可愛い事なんて全然ない! ヤツらは糞や尿をまき散らし、匂いもキツいのよ! しかも、吠えるし! 三つ目は煙草の投げ捨て! ねえ、いつから排水溝や道路は煙草の捨て場所って決まったの? バカなの? キチガイなの? 自分で掃除するわけでもなく、他人に掃除してもらおうとする身勝手さ、まさに外道ね! 四つ目は……」
「おい、待て。三つじゃなかったのか? それに鼠や猫は吠えないだろ? 好き嫌い多すぎだ。少しは忍耐をつけろ。それと、慎みと常識を……」
出たわ……空気読めない男の発言。人の話は最後まで聞けって習わなかったの?
私はコキッコキッと指を鳴らす。
「私はね……アンタのような空気が読めず、嘘をつく男が……女はああだ、こうだと決めつける男が大嫌いなの!」
「最初からその三つを言え! ガキだからってナメてるんじゃねえぞ!」
正道が構える前に、私の二段中段蹴りが正道に炸裂する。
全て股間を狙ったが、防御されてしまう。
「このガキ! いい加減にしろ! 男の股間に何か恨みがあるのか!」
「私の二つ名は『王殺しの菜乃花』なの! だから、タマを潰すだけ!」
「駄洒落か!」
私は更に中段蹴りと正拳突きの前蹴り二回、拳の三連撃を放つ。もちろん、全て股間に集中砲火だ。
顔ががら空き! もらった!
私は上段蹴り……のフェイクからの前蹴りで股間を狙った。
くっ! また、ガードするなんて!
この、男……できる。
「いい加減、潰されなさいよ!」
「アホか! ここまで金的にこだわった女は見たことがねえ! 調子にのるな!」
やっ! この変態!
正道が私の体を触ってきた! 私を取り押さえて、ナニするつもりなの!
「は、離せ、ヘンタイ! 痴漢! ロリコン!」
「人聞きの悪い事を言うな! お前の方が犯罪者だろうが!」
「何事だ? まさみ……」
正道の部屋に入ってきたのは、おじいちゃんだ。これぞ、天の助け!
「おじいちゃん! 助けて! 正道が私に襲いかかってきたの!」
「違うだろうが! マジでたたきのめすぞ!」
「たたきのめす?」
うわ……おじいちゃんの目が……。
「正道……今すぐ菜乃花を解放してあげなさい」
「ですが!」
「二度も言われるな。そして、お仕置きだ」
「はぁ? 意味が分から……ひでぶ!」
おじいちゃんの鉄拳が正道を成敗した。
「ねえ、お母さん! 正道ってどうして、お母さんがいないの?」
私はお母さんに正道のことについて尋ねてみた。冷静に考えてみると、正道の発言には引っかかるものがある。
お母さんが亡くなっていないのなら、正道はなぜ、両親と離れて暮らしているの?
それに、正道が母親がいないって言っていたときのあの目……あれは……恨み? それとも……悲しみ?
気になって仕方がないのよね。
「菜乃花」
「何よ?」
「お母さん、人様の過去を興味本位で知ろうとするのは許しません」
「ええっ~、お母さんがまともなこと言ってる~」
「お母さんはいつもまともなことしか言ってないんだけど?」
嘘だ。私が男の子と歩いているだけで、いろいろと聞いてくるくせに。
はぁ……この様子だと教えてもらえそうにない。誰に聞けば分かるんだろう……。
「菜乃花……どうして、正道君の事、知ろうとしているんだい? お父さんにだけ、教えてくれないかな~?」
出たよ。お父さんの病気。
私とお母さんのおしゃべりにお父さんが割り込んできた。
お父さんは不気味な笑みを浮かべながら、木刀を磨いている。男の子が私に近づけば、いつも過剰反応する、お父さんの悪いクセ。病気といってもいい。
「どうでもいいんだけど、お父さん。その木刀、どこから仕入れたの?」
「ここに来る途中で買ったんだよ。お土産コーナーで売ってたんだ~。早く妖刀青雨が血を吸いたいと囁いてるよ~」
ここは京都か! いくら不良の楽園だからって、木刀がお土産コーナーにあって売れるの?
お母さんがニコニコと笑顔を浮かべながら、お父さんの鼻を掴み、そのままテーブルに叩きつけた。
「ぎゃああああああああああああああああああああああ!」
これで静かになったかな。正直、ウザかったし。
でも、他に正道のこと、知ってそうなのは……。
「正道さんのお母さんのこと?」
「そうなの。私、正道のこと、何も知らなくて、キズつけちゃったの。だから、お詫びがしたい。そのためには、正道のお母さんのこと、知っておきたいから」
私は一番話してもらえそうな人、おばあちゃんにかけあってみた。
我ながらうまい言い訳を考えたわ。キズついたかどうかは知らないけど。
後は潤んだ瞳でおばあちゃんに聞けば、絶対におとせるはず!
そう思っていたのに……。
「ダメよ、菜乃花ちゃん。正道さんのことを詮索したら。それに嘘もついちゃダメよ」
一瞬でバレた。アカデミー賞ものの演技なのに、瞬殺された!
はぁ……これで打つ手なしか……おじいちゃんは絶対に教えてくれないだろうし。
「菜乃花……菜乃花」
えっ、お父さん?
廊下を歩いていたら、お父さんが小声で私を呼んでいる。なによ、もう!
「どうしたの、お父さん? お母さんに浮気、バレた?」
「やめて……本当にやめて……僕が愛しているのは古都音と菜乃花だけだから。キャバクラは接客という名の接待だから」
本当、男って……。
あの正道って男も、女にだらしないのかな?
「それで?」
「いや、菜乃花は正道君の事、調べてるでしょ?」
「そうだけど?」
「お義母さんに言っていたこと、本当なの?」
盗み聞きしてたんだ……。
ストーカーかっ!
「……本当だけど」
「……そう。それなら、いいかな。お母さん達には内緒だよ。僕、知ってるんだ。正道君のこと」
「知ってるの!」
嘘でしょ! 今までの私の時間、利息つけて返しなさいよ!
けど、好都合だわ。お父さんなら簡単に聞き出せる。
「うん……全部ってわけじゃないけど……でも、絶対に内緒だよ? 僕が言ったって言わないでよね」
「言わない」
こうして、私は正道の過去を聞き出せたわけなんだけど……。
「……なにそれ……絶対に許せない!」
最悪の気分……なんなの、それ……ありえないでしょ!
私は壁を何度も何度も蹴りつけた。でも、全然気分がおさまらない。これほどの悪がこの世にあるの?
「な、菜乃花! ダメだよ! 壁を蹴っちゃ!」
「だって、許せるはずがないでしょ! お父さんはどうなのよ! 私が正道と同じ事があったら、見捨てる?」
「絶対に見捨てない!」
「私もよ! お父さんとお母さんを悪く言うヤツがいたら、ぶっ飛ばすわ!」
「菜乃花……」
「でも、セクハラや痴漢行為をしたら即、縁をきらせてもらうけどね!」
「それはない!」
ああ、私はとんだ勘違いを……。
正道に謝らなきゃ。まさか、嘘が本当になっちゃうなんて……。
でも、なんて言って謝ろう……。
「……」
「……」
私は正道に謝罪するために、外に連れ出した。
お腹すいた、おやつ買って。
その一声で正道を連れ出した。
正確に言えば、もし、拒絶すれば、おじいちゃんに泣きつくって言ったけど。
正道は思いっきり不機嫌そうな顔で歩いている。全く、ロリコンのくせにこの菜乃花様と一緒に歩けることを光栄に思いなさいよね!
コンビニなら年始も開いてるし、おやつは確保できるんだけど……遠い。歩いて十五分って遠すぎない?
ほんと、不便だよね、田舎は。
時間は沢山あるんだけど、さて、どう切り出そう。
「おい。さっさと出せよ」
「お年玉、もらったんだろう? 早く渡せよ」
少し離れた場所に目が腐りそうな外道がいた。
高校生くらいの男三人が、小学生の兄妹二人をカツアゲしている。体格が勝っているくせに、数でも幼い兄妹を脅している。
「兄貴、頭いいっすね! 元旦にカツアゲって」
「だろ? 絶対に金持ってる日だろ?」
「だな。一気に稼ごうぜ。ノルマもあるしな」
いや、バカでしょ。自分でカスと言っているものじゃない。
けど、厄介なのは人数ね。一人なら奇襲で倒せるけど、もう二人を相手にするのが面倒。
とりあえず、出たとこ勝負かな。
「おい! やめろ!」
うぇええええ! 正道、なんで声を掛けてるのよ! 奇襲が出来ないじゃない!
正道は堂々と不良達に立ち向かっていく。私はため息をついた。
男ってどうして、作戦とか考えないの? 特攻したいの? でも、あの三人よりは好感が持てるわね。
私は物陰に隠れながら、不良達の背後にまわった。
「黙れって言ったんだ。俺に母親はいない……」
「はぁ? 何言ってるの? そんなわけ……」
「いないと言ってるだろうが!」
ひぃ!
な、何なのよ! いきなり怒鳴って……。
母親がいない? そんなわけ……って、もしかして……死んじゃったとか?
うっ……私、やっちゃった?
そっか……そうだよね……両親が亡くなって、それでグレたわけね……。
「うっ……ぐすっ……」
悲しいよね……親がいないって……寂しいよね……。
「お、おい。なんでお前が泣くんだ? それとも、怖がらせたか? わ、悪い……」
「だって、悲しいじゃない……でも、負けちゃダメ……天国のお母さんもきっと草葉の陰から見守っているから」
だから、元気出しなさい。そう言おうとしたとき。
「く、草葉の陰? いや、別に死んでないぞ」
「はい?」
「だから……その……なんだ……死んでないんだ」
えっ? 死んでない? 死んでない……ですって!
騙された! 無垢な女の子を騙すなんて、許せない! やはり、この男は最低のロリコン野郎だ!
私はノーモーションからの中段蹴りを正道の股間に向かって放つ。
「うぉ!」
ちっ! またガードして! いい加減、潰されなさいよ!
「アンタ……殺すわ……乙女の涙をなんだと思ってるの……」
「いや、待て! お前が勝手に誤解しただけだろ! それと、女が男の股間ばかり狙うな!」
コイツ……地雷を踏んだわ。必ず殺す。
「……私にはどうしても許せない事が三つあるの。一つは納豆。体にいいからって、口臭がひどくなる。乙女が食べるべき食事ではないわ。二つ目は小動物。猫だの犬だの鼠だの……全然可愛くない! イラストが可愛いからって、本体が可愛い事なんて全然ない! ヤツらは糞や尿をまき散らし、匂いもキツいのよ! しかも、吠えるし! 三つ目は煙草の投げ捨て! ねえ、いつから排水溝や道路は煙草の捨て場所って決まったの? バカなの? キチガイなの? 自分で掃除するわけでもなく、他人に掃除してもらおうとする身勝手さ、まさに外道ね! 四つ目は……」
「おい、待て。三つじゃなかったのか? それに鼠や猫は吠えないだろ? 好き嫌い多すぎだ。少しは忍耐をつけろ。それと、慎みと常識を……」
出たわ……空気読めない男の発言。人の話は最後まで聞けって習わなかったの?
私はコキッコキッと指を鳴らす。
「私はね……アンタのような空気が読めず、嘘をつく男が……女はああだ、こうだと決めつける男が大嫌いなの!」
「最初からその三つを言え! ガキだからってナメてるんじゃねえぞ!」
正道が構える前に、私の二段中段蹴りが正道に炸裂する。
全て股間を狙ったが、防御されてしまう。
「このガキ! いい加減にしろ! 男の股間に何か恨みがあるのか!」
「私の二つ名は『王殺しの菜乃花』なの! だから、タマを潰すだけ!」
「駄洒落か!」
私は更に中段蹴りと正拳突きの前蹴り二回、拳の三連撃を放つ。もちろん、全て股間に集中砲火だ。
顔ががら空き! もらった!
私は上段蹴り……のフェイクからの前蹴りで股間を狙った。
くっ! また、ガードするなんて!
この、男……できる。
「いい加減、潰されなさいよ!」
「アホか! ここまで金的にこだわった女は見たことがねえ! 調子にのるな!」
やっ! この変態!
正道が私の体を触ってきた! 私を取り押さえて、ナニするつもりなの!
「は、離せ、ヘンタイ! 痴漢! ロリコン!」
「人聞きの悪い事を言うな! お前の方が犯罪者だろうが!」
「何事だ? まさみ……」
正道の部屋に入ってきたのは、おじいちゃんだ。これぞ、天の助け!
「おじいちゃん! 助けて! 正道が私に襲いかかってきたの!」
「違うだろうが! マジでたたきのめすぞ!」
「たたきのめす?」
うわ……おじいちゃんの目が……。
「正道……今すぐ菜乃花を解放してあげなさい」
「ですが!」
「二度も言われるな。そして、お仕置きだ」
「はぁ? 意味が分から……ひでぶ!」
おじいちゃんの鉄拳が正道を成敗した。
「ねえ、お母さん! 正道ってどうして、お母さんがいないの?」
私はお母さんに正道のことについて尋ねてみた。冷静に考えてみると、正道の発言には引っかかるものがある。
お母さんが亡くなっていないのなら、正道はなぜ、両親と離れて暮らしているの?
それに、正道が母親がいないって言っていたときのあの目……あれは……恨み? それとも……悲しみ?
気になって仕方がないのよね。
「菜乃花」
「何よ?」
「お母さん、人様の過去を興味本位で知ろうとするのは許しません」
「ええっ~、お母さんがまともなこと言ってる~」
「お母さんはいつもまともなことしか言ってないんだけど?」
嘘だ。私が男の子と歩いているだけで、いろいろと聞いてくるくせに。
はぁ……この様子だと教えてもらえそうにない。誰に聞けば分かるんだろう……。
「菜乃花……どうして、正道君の事、知ろうとしているんだい? お父さんにだけ、教えてくれないかな~?」
出たよ。お父さんの病気。
私とお母さんのおしゃべりにお父さんが割り込んできた。
お父さんは不気味な笑みを浮かべながら、木刀を磨いている。男の子が私に近づけば、いつも過剰反応する、お父さんの悪いクセ。病気といってもいい。
「どうでもいいんだけど、お父さん。その木刀、どこから仕入れたの?」
「ここに来る途中で買ったんだよ。お土産コーナーで売ってたんだ~。早く妖刀青雨が血を吸いたいと囁いてるよ~」
ここは京都か! いくら不良の楽園だからって、木刀がお土産コーナーにあって売れるの?
お母さんがニコニコと笑顔を浮かべながら、お父さんの鼻を掴み、そのままテーブルに叩きつけた。
「ぎゃああああああああああああああああああああああ!」
これで静かになったかな。正直、ウザかったし。
でも、他に正道のこと、知ってそうなのは……。
「正道さんのお母さんのこと?」
「そうなの。私、正道のこと、何も知らなくて、キズつけちゃったの。だから、お詫びがしたい。そのためには、正道のお母さんのこと、知っておきたいから」
私は一番話してもらえそうな人、おばあちゃんにかけあってみた。
我ながらうまい言い訳を考えたわ。キズついたかどうかは知らないけど。
後は潤んだ瞳でおばあちゃんに聞けば、絶対におとせるはず!
そう思っていたのに……。
「ダメよ、菜乃花ちゃん。正道さんのことを詮索したら。それに嘘もついちゃダメよ」
一瞬でバレた。アカデミー賞ものの演技なのに、瞬殺された!
はぁ……これで打つ手なしか……おじいちゃんは絶対に教えてくれないだろうし。
「菜乃花……菜乃花」
えっ、お父さん?
廊下を歩いていたら、お父さんが小声で私を呼んでいる。なによ、もう!
「どうしたの、お父さん? お母さんに浮気、バレた?」
「やめて……本当にやめて……僕が愛しているのは古都音と菜乃花だけだから。キャバクラは接客という名の接待だから」
本当、男って……。
あの正道って男も、女にだらしないのかな?
「それで?」
「いや、菜乃花は正道君の事、調べてるでしょ?」
「そうだけど?」
「お義母さんに言っていたこと、本当なの?」
盗み聞きしてたんだ……。
ストーカーかっ!
「……本当だけど」
「……そう。それなら、いいかな。お母さん達には内緒だよ。僕、知ってるんだ。正道君のこと」
「知ってるの!」
嘘でしょ! 今までの私の時間、利息つけて返しなさいよ!
けど、好都合だわ。お父さんなら簡単に聞き出せる。
「うん……全部ってわけじゃないけど……でも、絶対に内緒だよ? 僕が言ったって言わないでよね」
「言わない」
こうして、私は正道の過去を聞き出せたわけなんだけど……。
「……なにそれ……絶対に許せない!」
最悪の気分……なんなの、それ……ありえないでしょ!
私は壁を何度も何度も蹴りつけた。でも、全然気分がおさまらない。これほどの悪がこの世にあるの?
「な、菜乃花! ダメだよ! 壁を蹴っちゃ!」
「だって、許せるはずがないでしょ! お父さんはどうなのよ! 私が正道と同じ事があったら、見捨てる?」
「絶対に見捨てない!」
「私もよ! お父さんとお母さんを悪く言うヤツがいたら、ぶっ飛ばすわ!」
「菜乃花……」
「でも、セクハラや痴漢行為をしたら即、縁をきらせてもらうけどね!」
「それはない!」
ああ、私はとんだ勘違いを……。
正道に謝らなきゃ。まさか、嘘が本当になっちゃうなんて……。
でも、なんて言って謝ろう……。
「……」
「……」
私は正道に謝罪するために、外に連れ出した。
お腹すいた、おやつ買って。
その一声で正道を連れ出した。
正確に言えば、もし、拒絶すれば、おじいちゃんに泣きつくって言ったけど。
正道は思いっきり不機嫌そうな顔で歩いている。全く、ロリコンのくせにこの菜乃花様と一緒に歩けることを光栄に思いなさいよね!
コンビニなら年始も開いてるし、おやつは確保できるんだけど……遠い。歩いて十五分って遠すぎない?
ほんと、不便だよね、田舎は。
時間は沢山あるんだけど、さて、どう切り出そう。
「おい。さっさと出せよ」
「お年玉、もらったんだろう? 早く渡せよ」
少し離れた場所に目が腐りそうな外道がいた。
高校生くらいの男三人が、小学生の兄妹二人をカツアゲしている。体格が勝っているくせに、数でも幼い兄妹を脅している。
「兄貴、頭いいっすね! 元旦にカツアゲって」
「だろ? 絶対に金持ってる日だろ?」
「だな。一気に稼ごうぜ。ノルマもあるしな」
いや、バカでしょ。自分でカスと言っているものじゃない。
けど、厄介なのは人数ね。一人なら奇襲で倒せるけど、もう二人を相手にするのが面倒。
とりあえず、出たとこ勝負かな。
「おい! やめろ!」
うぇええええ! 正道、なんで声を掛けてるのよ! 奇襲が出来ないじゃない!
正道は堂々と不良達に立ち向かっていく。私はため息をついた。
男ってどうして、作戦とか考えないの? 特攻したいの? でも、あの三人よりは好感が持てるわね。
私は物陰に隠れながら、不良達の背後にまわった。
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