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二十六章
二十六話 カミツレ -苦難の中の力- その二
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一秒でも時間がおしい。でも、やっておくべきことはやらないと。
私はすぐさま、獅子王さんに今回の事を報告するべく、劇の練習場所へ向かった。
獅子王先輩達は……。
「古見君! また同じ所でとちってる! 落ち着いて!」
「は、はい! すみません、一さん。もう一度、お願いします!」
「おうよ! いくぜ!」
やってるやってる。古見君を怒鳴っている園田先輩にやる気満々の獅子王さん……この光景を見ると、ほっとしてしまう。彼らはまだあきらめていない。
だったら、私だって、獅子王さん達を応援したい。私は彼らの前に踏み出した。
「おはようございます、獅子王さん、古見君、園田先輩」
「おっす、伊藤」
「おはよう、伊藤さん」
「おはよう、ほのっち。その顔はふっきれたみたいね」
私は笑顔でうなずく。
「獅子王さん、聞いてほしいことが……」
「言わんでもいい。任せたぞ」
「……はい!」
獅子王さんはそれっきり劇の練習に戻った。古見君は一度だけ笑いかけてくれて、すぐさま劇の練習に戻る。
園田先輩はこっちを見ることなく二人の演技指導に入っている。
ここでやるべきことは終わった。次にいこう。
「先輩、いきましょうか」
「……分かった」
私は携帯を取り出し、校舎へと歩き出す。歩きながら、次にやるべきことを考えていた。
まずはあの人から仲間につけないと。正直、怖いんだけど、新見先生に比べたらマシ。そう思うと、気持ちが軽くなる。
「……分かりあえているんだな」
「えっ?」
先輩の声に、思考が止まる。先輩を見ると、少し羨ましそうに私を見つめている。
珍しい。先輩がそんな顔をするなんて。でも、先輩が思っているようなことは絶対にないと思う。
「まあ、獅子王さん達とはそれなりに時間を重ねていますし、少しは信頼もうまれるんじゃないんですかね?」
信頼というより、パシリ扱い。ははっ、泣けてきた。
「そっか……」
「……先輩もこの騒動が終わったら手伝ってくださいね。約束ですよ?」
「……ああっ、分かった。約束だったな」
「そうですよ。一緒にパシリをやりましょう!」
「……それは嫌だな」
先輩の顔がすぐさま、いつもの表情に戻る。そう、いつも通りの日常に戻るんだ。
さっさと決着をつけて、また小道具作りに劇をする為の打ち合わせ等が待っている。その日々を思い出すだけでため息は出るけど、いち早く戻りたいって思うんだ。
そんなことを考えていると、捜していた人が見つかった。
「おい! ちゃんとパスを通せ! 声を出していけ!」
グランドでサッカーの朝練を指導しているのは二上先輩。三年生で引退したけど、今も後輩に指導している。
冷たい人だけど、面倒見はいい人だよね。折を見て、二上先輩に話しかける。
「お疲れ様です、二上先輩」
「……伊藤か、練習の邪魔だ。後にしろ」
「すぐにすみます。私達、新見先生の決定に反対することにしました。力を貸していただきけませんでしょうか?」
「……」
絶句しちゃってるよ、いつもクールの二上先輩が。偉そうな男の子の驚いた顔を見るのが爽快になってきた。
この驚いた顔からして、私がこの件に関わるとは思っていなかったみたい。
「あの、もしもし?」
「……なぜだ? なぜ、伊藤が首を突っ込んでくる? 伊藤には何のメリットもないだろ?」
二上先輩は真剣な顔で尋ねてくる。
理由? メリット?
そんなもの……。
「ありますよ。でも、メリットが欲しいから首を突っ込むわけではありません。私の意地でやります。文句ありますか?」
「ないな。だがどうして、俺がお前の手伝いをしなければならない?」
二上先輩を説得するには小細工は必要ない。本心でぶつかるべきな。だから、私は隠し事せずに端的に答えた。
「私は浪花先輩と出し物を却下された人すべてを助けたいんです。だから、みんなの力を借りたいんです」
あっ、二上先輩がメガネをくいっとあげた。怒っているのかな? それとも、呆れていのかな?
「……全く、お人よしにも程があるだろ?」
「私、欲張りなんで」
そう、私って欲張りなの。だから、やれることはやっておきたい。最高の結果を目指して、全力でこの困難にぶつかりたい。
二上先輩の表情が柔らかくなる。
「……分かった。何をすればいい?」
「すみません。今、お願いしたいことをまとめているので、明日の放課後、時間をくれませんか?」
「明日だと? 伊藤、分かっているのか? もう青島祭まで時間がないぞ」
二上先輩のおっしゃりとおり、時間がない。私が考えている作戦には期限がある。だからこそ、確実に作戦をすすめなきゃ。
「はい、分かっています。ですが、時間がないからこそ、一発ですべてを片付けたいんです。そのためには入念な準備が必要なので」
「なるほどな。分かった。決まったら、メールしてくれ」
「はい」
ここでやるべきことは達成した。次に行かなきゃ。
私はグランドを背にして、次の目的地に歩き出した。
コンコン。
「……」
コンコン。
「……」
「先輩、お願いします」
ドンドン。
「俺だ」
がらがらがらがらがら!
「ど、どうぞ大佐殿!」
FLCの近藤先輩がドアを開けて、私達を出迎えてくれた。私達はやってきたのはFLCの部室。
それにしても、このやりとりってなんなの? 合言葉か何かなの? 先輩でないとドアを開けてくれないの? 居留守つかっちゃっていいの、この部は?
いろいろと言ってやりたかったけど、言葉を飲み込むことにした。そんなことを言いに来たわけじゃない。
中にはFLCのメンバーとスクールアイドルのみんなが勢ぞろいしていた。
私たち風紀委員を見て何事かと不審そうな目つきで睨んできた。あまり歓迎されていないよね。今までの事を考えたら当たり前か。
「あの……大佐殿。何かご用でしょうか?」
「近藤クン! 何風紀委員なんかにへりくだっているの? しっかりして!」
や、やめてあげて! 近藤先輩のライフ、なくなっちゃうよ! 顔が真っ青になってるよ!
以前、近藤先輩は先輩に戦いを挑んで負けている。(先輩が無理やり喧嘩を売った)
そのことで、近藤先輩は先輩の事を大佐殿と呼ぶようになった。(どうでもいいんだけど、私は軍曹扱い)
ヒューズのメンバーにとって、先輩は想い人、押水先輩を騙した悪人扱いになっている。
だから、ヒューズの皆さんは先輩の事を毛嫌いしている。そんな先輩にご機嫌をうかがうような態度をとる近藤先輩が許せないみたい。
近藤先輩としては、先輩と関わりたくないというのが本音だけど。
前門の虎、後門の龍、近藤先輩の運命は如何に!
まあ、それはまた後日に。っていうか、ここで近藤先輩が再起不能されたら困る。
「すみません、近藤先輩。今日は私が近藤先輩に用があってきました。用件は青島祭の出し物についてです」
「青島祭の出し物ですか? ですが、俺達のエントリーは取り消しに……」
「それも風紀委員の仕業なの? 確か、獅子王先輩と古見君だっけ? 同性愛者って。まあ、私は正直、恋愛は本人の自由だとは思う。でも、とばっちりはやめてほしいんですけど!」
ヒューズのメンバーの女の子が、私達の会話に割って入る。相当怒っているようだけど、今は相手にしていられない。
私はそっけなく答える。
「それは新見先生に言ってください。私達は関係ありませんので」
「なっ!」
私が堂々と反論するとは思っていなかったみたい。私に突っかかってきた女の子は唖然としている。
そりゃそうだよね。前の時は私、何も言えなくて泣きべそをかいていたもん。
だけど、状況が違う。今回の件に関しては私達は悪くない。だから、一歩も引くわけにはいかない。
「先程、獅子王さん達の名前が出ましたけど、ヒューズのみなさんは同性愛の件について関係ありませんよね? なのに、ライブは却下されてしまった」
「そうよ! なんで! なんでなのよ……せっかく、せっかくまたライブが……歌が歌えると思ったのに……」
「ナミさん……」
近藤先輩がやさしくナミさんの肩に手を置く。近藤先輩もこの状況をなんとかしたいと思っているはず。
なら、私達は協力出来るはず。
「近藤先輩、それにヒューズのみなさん、立ち向かいませんか? この理不尽な状況をひっくり返してみせませんか? 私達が手を組めばそれが可能です!」
「待て。何を根拠にそんなことが言える」
目つきの鋭い男の子が私に質問してくる。男の子の疑問はもっとも。彼らの協力を仰ぐために、納得がいきそうな説得をしないと。
「私達は今、浪花先輩の停学と実行委員長の復帰、却下された出し物の決定を撤回させる為に動いています。みんなで力を合わせればそれが可能だと思っています。だから、力を貸してほしいんです」
「具体的な案はなんだ?」
「それはまだ言えません。不明な点があり、それを今調査しています。それが分かり次第、対応策をこちらから出します。お願いします。私達にみなさんの力を貸してください」
私は頭を下げて、お願いする。
突破口は橘先輩にお願いした調査内容の結果と、青島祭実行委員の力を借りること。
そして、出し物を却下されたみんなの力。
「ダメだな。根拠がない以上、手伝うことなんてできねえよ」
「……分かりました。では、明日の放課後、もう一度、話をさせてくれませんか? そのときまでに案を出させていただきます」
「明日の放課後ってお前な……」
「いいじゃない。私はほのかの案にのるわ」
私に助け舟を出してくれたのは美月さんだった。美月さんは以前、押水先輩の事で私に恨みを持っていた女の子。
でも、今はメールをやり取りする間柄になっている。
「トシ。俺も軍曹殿の案に賛成だ。打開策がない以上、解決策の一つとして考えるべきだ」
美月さんだけでなく、近藤先輩もフォローしてくれた。FLCのリーダーの意見に目つきの鋭い男の子は顔をしかめている。
「しかし、近藤さん!」
「トシ、俺達がやるべきことはなんだ? ヒューズのライブを支援することだろ? だったら、利用できるものは利用するべきだ。それでも、いいんですよね、軍曹殿」
「はい。しっかりと利用してください。私達も近藤先輩達の力をあてにしていますので」
私は約束をとりつけ、部屋を出た。さて、次は……。
「待って!」
部屋から出てきたのは、美月さんと近藤先輩だった。
「ねえ、ほのか。本当に私達、ライブできるのかな?」
不安そうに見つめる美月さんに、私は真っ直ぐ見返して頷く。
「うん、任せて! 必ず私達が美月さんをステージにあげてみせるから!」
「分かった。期待しているからね!」
私と美月さんはパンと手を叩いた。
「あの、軍曹殿。先ほどは利用するなんて言ってしまってすみません。まだメンバーの中には、風紀委員をよく思っていない者もいますので」
近藤先輩の申し訳なさそうな顔を見ていると、こっちまで申し訳ない気持ちになっちゃう。
だから、私は大丈夫だということを伝えなきゃ。
「謝る必要なんてありませんよ、近藤先輩。私達は恨まれても仕方ないことをしたのですから。こちらこそ、援護していただき、ありがとうございました」
私は必ずヒューズをもう一度舞台に立たせる為、近藤先輩の願いをかなえる為に頑張ることを再度心の中で誓った。
「ただいま戻りました!」
「おかえり、伊藤さん、正道。どうだった?」
「順調です。今日中には全員、説得できそうです」
放課後、橘先輩から呼び出しを受け、私達は一度風紀委員室に戻った。
新見先生によって出し物を却下された人達に、私は会いに行って協力を呼び掛けた。私の提案にみんなからはOKをもらい続けている。
やっぱり、新見先生の判断にみんなは不満をもっていて、もう一度出し物ができるチャンスがあると知ったら、二つ返事で了承してもらえた。
この調子なら問題ない。みんなを説得して、誰ひとり、脱落者をなくしてみせる。みんなで楽しく青島祭に参加させてみせる!
「さっそくだけど、話を始めよっか。伊藤さんが気にしていた事、あらかた分かったよ。まずはなぜ、新見先生の意見が通るかだけど」
そうここが問題。新見先生の意見の良しあしはともかく、右翼派の先生方の反対意見は絶対にあったと思う。
左翼派の意見が通って一番面白くないのは右翼派の先生達のはず。なのに、新見先生の意見が通ったことに私は疑問を感じていた。
橘先輩にはそのことと、右翼派と左翼派の現状の力関係を調べてもらうようお願いした。
私は椅子に座り、先輩は壁に寄りかかって橘先輩の話に耳を傾けている。
「伊藤さんの予測通り、左翼派と右翼派は犬猿の仲で、何かにつけて因縁をつけあっているみたい。どんな些細なことでも揉めてしまって、中立派は迷惑してるって話だよ」
うわっ……私はドン引きしてしまった。子供だけじゃなく、いや大人だからこそ派閥争いがあるのね。しかも、根が深そう……。
中立派って多分どっちもつかずの先生だよね? 事なかれ主義っぽい。
「今回の新見先生の決定だけど、いつもは反対している先生方が何も言わなかったらしい。気になるよね?」
うわっ……橘先輩、悪人面で笑ってるよ。何か絶対に悪いこと考えてそうだよ。笑顔で人の弱みを突き止めていそうだよ。
案の定、橘先輩はある写真と書類を私達に見せてくれた。写真を見てみると……う、うわ……これが原因なの? 男の人って……。
「これをどう使うかは伊藤さんに任せるよ。これを使っておど……協力を求めてもいいから」
今、脅すと言いかけませんでしたか?
私は写真と書類を受け取る。この書類は最悪の場合に使うことになりそう。
「この写真の内容のせいで、右翼派は不利になっているって理解していいんでしょうか?」
「そう。現状は左翼派が有利だね。それで、伊藤さんはこれからどうする気?」
「出し物を却下された人達の全員の協力を得たら、今度は青島祭実行委員の方に協力をお願いしたいと思っています。確認したいことがありますので」
実行委員の人に確認したいのは、浪花先輩の事。新見先生の言ったことを確認しておきたい。
浪花先輩は本当に無計画に出し物の申請を許可していたのか?
もしそのことで浪花先輩と実行委委員とで軋轢があった場合、それを解決しなければならない。
浪花先輩を復帰させたとしても、実行委員が浪花先輩を実行委員長として認めていなければ、何の意味もないから。
もし、新見先生の言う通りなら……。
顎に手を当て、うつむきながら今後の事を考えていたら……。
「伊藤さん、頼もしくなったね」
「はい?」
橘先輩の声に思考を止め、顔をあげると目がった。えっ、なに? 小さい子を見守るような生暖かい橘先輩の目は。
私、何か子供っぽかった?
「だって、風紀委員に入った頃は人の顔色をうかがって判断していたでしょ? それが今では自分で考えて行動している。同性愛の問題を通じて成長したみたいだね」
た、橘先輩に褒められた……。
橘先輩に逆らってばかりだから、きっと疎まれているか、呆れられていると思っていたのに。
少しむず痒い気持ちになっちゃう。髪の毛をくるくると回しながら、笑ってみせた。
「……そうですかね? みんなに迷惑をおかけしていますし、橘先輩にも頼ってばかりですし」
「そんなことはないよ。ねえ、正道」
「……」
あ、あれ? 先輩の返事がない。もしかして、まだまだって思われている?
ちょっと心配になってしまい、上目遣いで先輩の様子を伺う。
先輩は目を閉じてうつむいたまま、考え事をしている。
「正道?」
「……ああっ。伊藤はよく頑張っている。問題ない」
「大丈夫かい、正道? 顔色、悪いよ」
橘先輩の言うとおりで、先輩の顔はいつもの覇気がなく、目を細め、体力を温存しているように見えた。近くにいたのに、全然気づかなかった。
そういえば、私が交渉している間、ずっと黙っていたけど、任せてくれていただけじゃなかったんだ。
体調の悪い先輩を連れまわしていたことに申し訳ない気持ちになる。
そんな私を、先輩は優しく頭に手を置いてくる。
「問題ない。無理だと思ったら休む。それでいいか?」
「いいんですか? もし、お疲れなら私一人でも……」
そう言いつつも、一人だと不安になってしまう。
もしかしたら、先輩がいたから、説得がうまくいっていたのではないか?
自分の力では誰も話を訊いてくれないのでは?
そう思ってしまい不安がどんどんふくれあがる。
だけど、そんな不安も先輩に頭を撫でてもらっていると落ち着いてくる。
不謹慎だけど、先輩に撫でてもらえないから離れてほしくないって、少し思ってしまった。
「伊藤は頼もしくなったが、一人で抱え込む必要はない。それに時間がないのは伊藤にだって分かっているだろ? 今は大変な時だが、頑張って確実に進めていこう。俺もフォローする」
もう、先輩が言っても全然説得力ないですよ。何でも一人で抱え込むくせに。
だけど、一人じゃないって思うと安心しちゃう。まだまだ頑張れるって気がする。
先輩は私が無理しないかのお目付け役だけど、今度は私が先輩のお目付け役になろう。少しでも先輩が無理そうなら絶対に休ませる。
そう心に誓い、橘先輩と今後の方針を話し合った。
私はすぐさま、獅子王さんに今回の事を報告するべく、劇の練習場所へ向かった。
獅子王先輩達は……。
「古見君! また同じ所でとちってる! 落ち着いて!」
「は、はい! すみません、一さん。もう一度、お願いします!」
「おうよ! いくぜ!」
やってるやってる。古見君を怒鳴っている園田先輩にやる気満々の獅子王さん……この光景を見ると、ほっとしてしまう。彼らはまだあきらめていない。
だったら、私だって、獅子王さん達を応援したい。私は彼らの前に踏み出した。
「おはようございます、獅子王さん、古見君、園田先輩」
「おっす、伊藤」
「おはよう、伊藤さん」
「おはよう、ほのっち。その顔はふっきれたみたいね」
私は笑顔でうなずく。
「獅子王さん、聞いてほしいことが……」
「言わんでもいい。任せたぞ」
「……はい!」
獅子王さんはそれっきり劇の練習に戻った。古見君は一度だけ笑いかけてくれて、すぐさま劇の練習に戻る。
園田先輩はこっちを見ることなく二人の演技指導に入っている。
ここでやるべきことは終わった。次にいこう。
「先輩、いきましょうか」
「……分かった」
私は携帯を取り出し、校舎へと歩き出す。歩きながら、次にやるべきことを考えていた。
まずはあの人から仲間につけないと。正直、怖いんだけど、新見先生に比べたらマシ。そう思うと、気持ちが軽くなる。
「……分かりあえているんだな」
「えっ?」
先輩の声に、思考が止まる。先輩を見ると、少し羨ましそうに私を見つめている。
珍しい。先輩がそんな顔をするなんて。でも、先輩が思っているようなことは絶対にないと思う。
「まあ、獅子王さん達とはそれなりに時間を重ねていますし、少しは信頼もうまれるんじゃないんですかね?」
信頼というより、パシリ扱い。ははっ、泣けてきた。
「そっか……」
「……先輩もこの騒動が終わったら手伝ってくださいね。約束ですよ?」
「……ああっ、分かった。約束だったな」
「そうですよ。一緒にパシリをやりましょう!」
「……それは嫌だな」
先輩の顔がすぐさま、いつもの表情に戻る。そう、いつも通りの日常に戻るんだ。
さっさと決着をつけて、また小道具作りに劇をする為の打ち合わせ等が待っている。その日々を思い出すだけでため息は出るけど、いち早く戻りたいって思うんだ。
そんなことを考えていると、捜していた人が見つかった。
「おい! ちゃんとパスを通せ! 声を出していけ!」
グランドでサッカーの朝練を指導しているのは二上先輩。三年生で引退したけど、今も後輩に指導している。
冷たい人だけど、面倒見はいい人だよね。折を見て、二上先輩に話しかける。
「お疲れ様です、二上先輩」
「……伊藤か、練習の邪魔だ。後にしろ」
「すぐにすみます。私達、新見先生の決定に反対することにしました。力を貸していただきけませんでしょうか?」
「……」
絶句しちゃってるよ、いつもクールの二上先輩が。偉そうな男の子の驚いた顔を見るのが爽快になってきた。
この驚いた顔からして、私がこの件に関わるとは思っていなかったみたい。
「あの、もしもし?」
「……なぜだ? なぜ、伊藤が首を突っ込んでくる? 伊藤には何のメリットもないだろ?」
二上先輩は真剣な顔で尋ねてくる。
理由? メリット?
そんなもの……。
「ありますよ。でも、メリットが欲しいから首を突っ込むわけではありません。私の意地でやります。文句ありますか?」
「ないな。だがどうして、俺がお前の手伝いをしなければならない?」
二上先輩を説得するには小細工は必要ない。本心でぶつかるべきな。だから、私は隠し事せずに端的に答えた。
「私は浪花先輩と出し物を却下された人すべてを助けたいんです。だから、みんなの力を借りたいんです」
あっ、二上先輩がメガネをくいっとあげた。怒っているのかな? それとも、呆れていのかな?
「……全く、お人よしにも程があるだろ?」
「私、欲張りなんで」
そう、私って欲張りなの。だから、やれることはやっておきたい。最高の結果を目指して、全力でこの困難にぶつかりたい。
二上先輩の表情が柔らかくなる。
「……分かった。何をすればいい?」
「すみません。今、お願いしたいことをまとめているので、明日の放課後、時間をくれませんか?」
「明日だと? 伊藤、分かっているのか? もう青島祭まで時間がないぞ」
二上先輩のおっしゃりとおり、時間がない。私が考えている作戦には期限がある。だからこそ、確実に作戦をすすめなきゃ。
「はい、分かっています。ですが、時間がないからこそ、一発ですべてを片付けたいんです。そのためには入念な準備が必要なので」
「なるほどな。分かった。決まったら、メールしてくれ」
「はい」
ここでやるべきことは達成した。次に行かなきゃ。
私はグランドを背にして、次の目的地に歩き出した。
コンコン。
「……」
コンコン。
「……」
「先輩、お願いします」
ドンドン。
「俺だ」
がらがらがらがらがら!
「ど、どうぞ大佐殿!」
FLCの近藤先輩がドアを開けて、私達を出迎えてくれた。私達はやってきたのはFLCの部室。
それにしても、このやりとりってなんなの? 合言葉か何かなの? 先輩でないとドアを開けてくれないの? 居留守つかっちゃっていいの、この部は?
いろいろと言ってやりたかったけど、言葉を飲み込むことにした。そんなことを言いに来たわけじゃない。
中にはFLCのメンバーとスクールアイドルのみんなが勢ぞろいしていた。
私たち風紀委員を見て何事かと不審そうな目つきで睨んできた。あまり歓迎されていないよね。今までの事を考えたら当たり前か。
「あの……大佐殿。何かご用でしょうか?」
「近藤クン! 何風紀委員なんかにへりくだっているの? しっかりして!」
や、やめてあげて! 近藤先輩のライフ、なくなっちゃうよ! 顔が真っ青になってるよ!
以前、近藤先輩は先輩に戦いを挑んで負けている。(先輩が無理やり喧嘩を売った)
そのことで、近藤先輩は先輩の事を大佐殿と呼ぶようになった。(どうでもいいんだけど、私は軍曹扱い)
ヒューズのメンバーにとって、先輩は想い人、押水先輩を騙した悪人扱いになっている。
だから、ヒューズの皆さんは先輩の事を毛嫌いしている。そんな先輩にご機嫌をうかがうような態度をとる近藤先輩が許せないみたい。
近藤先輩としては、先輩と関わりたくないというのが本音だけど。
前門の虎、後門の龍、近藤先輩の運命は如何に!
まあ、それはまた後日に。っていうか、ここで近藤先輩が再起不能されたら困る。
「すみません、近藤先輩。今日は私が近藤先輩に用があってきました。用件は青島祭の出し物についてです」
「青島祭の出し物ですか? ですが、俺達のエントリーは取り消しに……」
「それも風紀委員の仕業なの? 確か、獅子王先輩と古見君だっけ? 同性愛者って。まあ、私は正直、恋愛は本人の自由だとは思う。でも、とばっちりはやめてほしいんですけど!」
ヒューズのメンバーの女の子が、私達の会話に割って入る。相当怒っているようだけど、今は相手にしていられない。
私はそっけなく答える。
「それは新見先生に言ってください。私達は関係ありませんので」
「なっ!」
私が堂々と反論するとは思っていなかったみたい。私に突っかかってきた女の子は唖然としている。
そりゃそうだよね。前の時は私、何も言えなくて泣きべそをかいていたもん。
だけど、状況が違う。今回の件に関しては私達は悪くない。だから、一歩も引くわけにはいかない。
「先程、獅子王さん達の名前が出ましたけど、ヒューズのみなさんは同性愛の件について関係ありませんよね? なのに、ライブは却下されてしまった」
「そうよ! なんで! なんでなのよ……せっかく、せっかくまたライブが……歌が歌えると思ったのに……」
「ナミさん……」
近藤先輩がやさしくナミさんの肩に手を置く。近藤先輩もこの状況をなんとかしたいと思っているはず。
なら、私達は協力出来るはず。
「近藤先輩、それにヒューズのみなさん、立ち向かいませんか? この理不尽な状況をひっくり返してみせませんか? 私達が手を組めばそれが可能です!」
「待て。何を根拠にそんなことが言える」
目つきの鋭い男の子が私に質問してくる。男の子の疑問はもっとも。彼らの協力を仰ぐために、納得がいきそうな説得をしないと。
「私達は今、浪花先輩の停学と実行委員長の復帰、却下された出し物の決定を撤回させる為に動いています。みんなで力を合わせればそれが可能だと思っています。だから、力を貸してほしいんです」
「具体的な案はなんだ?」
「それはまだ言えません。不明な点があり、それを今調査しています。それが分かり次第、対応策をこちらから出します。お願いします。私達にみなさんの力を貸してください」
私は頭を下げて、お願いする。
突破口は橘先輩にお願いした調査内容の結果と、青島祭実行委員の力を借りること。
そして、出し物を却下されたみんなの力。
「ダメだな。根拠がない以上、手伝うことなんてできねえよ」
「……分かりました。では、明日の放課後、もう一度、話をさせてくれませんか? そのときまでに案を出させていただきます」
「明日の放課後ってお前な……」
「いいじゃない。私はほのかの案にのるわ」
私に助け舟を出してくれたのは美月さんだった。美月さんは以前、押水先輩の事で私に恨みを持っていた女の子。
でも、今はメールをやり取りする間柄になっている。
「トシ。俺も軍曹殿の案に賛成だ。打開策がない以上、解決策の一つとして考えるべきだ」
美月さんだけでなく、近藤先輩もフォローしてくれた。FLCのリーダーの意見に目つきの鋭い男の子は顔をしかめている。
「しかし、近藤さん!」
「トシ、俺達がやるべきことはなんだ? ヒューズのライブを支援することだろ? だったら、利用できるものは利用するべきだ。それでも、いいんですよね、軍曹殿」
「はい。しっかりと利用してください。私達も近藤先輩達の力をあてにしていますので」
私は約束をとりつけ、部屋を出た。さて、次は……。
「待って!」
部屋から出てきたのは、美月さんと近藤先輩だった。
「ねえ、ほのか。本当に私達、ライブできるのかな?」
不安そうに見つめる美月さんに、私は真っ直ぐ見返して頷く。
「うん、任せて! 必ず私達が美月さんをステージにあげてみせるから!」
「分かった。期待しているからね!」
私と美月さんはパンと手を叩いた。
「あの、軍曹殿。先ほどは利用するなんて言ってしまってすみません。まだメンバーの中には、風紀委員をよく思っていない者もいますので」
近藤先輩の申し訳なさそうな顔を見ていると、こっちまで申し訳ない気持ちになっちゃう。
だから、私は大丈夫だということを伝えなきゃ。
「謝る必要なんてありませんよ、近藤先輩。私達は恨まれても仕方ないことをしたのですから。こちらこそ、援護していただき、ありがとうございました」
私は必ずヒューズをもう一度舞台に立たせる為、近藤先輩の願いをかなえる為に頑張ることを再度心の中で誓った。
「ただいま戻りました!」
「おかえり、伊藤さん、正道。どうだった?」
「順調です。今日中には全員、説得できそうです」
放課後、橘先輩から呼び出しを受け、私達は一度風紀委員室に戻った。
新見先生によって出し物を却下された人達に、私は会いに行って協力を呼び掛けた。私の提案にみんなからはOKをもらい続けている。
やっぱり、新見先生の判断にみんなは不満をもっていて、もう一度出し物ができるチャンスがあると知ったら、二つ返事で了承してもらえた。
この調子なら問題ない。みんなを説得して、誰ひとり、脱落者をなくしてみせる。みんなで楽しく青島祭に参加させてみせる!
「さっそくだけど、話を始めよっか。伊藤さんが気にしていた事、あらかた分かったよ。まずはなぜ、新見先生の意見が通るかだけど」
そうここが問題。新見先生の意見の良しあしはともかく、右翼派の先生方の反対意見は絶対にあったと思う。
左翼派の意見が通って一番面白くないのは右翼派の先生達のはず。なのに、新見先生の意見が通ったことに私は疑問を感じていた。
橘先輩にはそのことと、右翼派と左翼派の現状の力関係を調べてもらうようお願いした。
私は椅子に座り、先輩は壁に寄りかかって橘先輩の話に耳を傾けている。
「伊藤さんの予測通り、左翼派と右翼派は犬猿の仲で、何かにつけて因縁をつけあっているみたい。どんな些細なことでも揉めてしまって、中立派は迷惑してるって話だよ」
うわっ……私はドン引きしてしまった。子供だけじゃなく、いや大人だからこそ派閥争いがあるのね。しかも、根が深そう……。
中立派って多分どっちもつかずの先生だよね? 事なかれ主義っぽい。
「今回の新見先生の決定だけど、いつもは反対している先生方が何も言わなかったらしい。気になるよね?」
うわっ……橘先輩、悪人面で笑ってるよ。何か絶対に悪いこと考えてそうだよ。笑顔で人の弱みを突き止めていそうだよ。
案の定、橘先輩はある写真と書類を私達に見せてくれた。写真を見てみると……う、うわ……これが原因なの? 男の人って……。
「これをどう使うかは伊藤さんに任せるよ。これを使っておど……協力を求めてもいいから」
今、脅すと言いかけませんでしたか?
私は写真と書類を受け取る。この書類は最悪の場合に使うことになりそう。
「この写真の内容のせいで、右翼派は不利になっているって理解していいんでしょうか?」
「そう。現状は左翼派が有利だね。それで、伊藤さんはこれからどうする気?」
「出し物を却下された人達の全員の協力を得たら、今度は青島祭実行委員の方に協力をお願いしたいと思っています。確認したいことがありますので」
実行委員の人に確認したいのは、浪花先輩の事。新見先生の言ったことを確認しておきたい。
浪花先輩は本当に無計画に出し物の申請を許可していたのか?
もしそのことで浪花先輩と実行委委員とで軋轢があった場合、それを解決しなければならない。
浪花先輩を復帰させたとしても、実行委員が浪花先輩を実行委員長として認めていなければ、何の意味もないから。
もし、新見先生の言う通りなら……。
顎に手を当て、うつむきながら今後の事を考えていたら……。
「伊藤さん、頼もしくなったね」
「はい?」
橘先輩の声に思考を止め、顔をあげると目がった。えっ、なに? 小さい子を見守るような生暖かい橘先輩の目は。
私、何か子供っぽかった?
「だって、風紀委員に入った頃は人の顔色をうかがって判断していたでしょ? それが今では自分で考えて行動している。同性愛の問題を通じて成長したみたいだね」
た、橘先輩に褒められた……。
橘先輩に逆らってばかりだから、きっと疎まれているか、呆れられていると思っていたのに。
少しむず痒い気持ちになっちゃう。髪の毛をくるくると回しながら、笑ってみせた。
「……そうですかね? みんなに迷惑をおかけしていますし、橘先輩にも頼ってばかりですし」
「そんなことはないよ。ねえ、正道」
「……」
あ、あれ? 先輩の返事がない。もしかして、まだまだって思われている?
ちょっと心配になってしまい、上目遣いで先輩の様子を伺う。
先輩は目を閉じてうつむいたまま、考え事をしている。
「正道?」
「……ああっ。伊藤はよく頑張っている。問題ない」
「大丈夫かい、正道? 顔色、悪いよ」
橘先輩の言うとおりで、先輩の顔はいつもの覇気がなく、目を細め、体力を温存しているように見えた。近くにいたのに、全然気づかなかった。
そういえば、私が交渉している間、ずっと黙っていたけど、任せてくれていただけじゃなかったんだ。
体調の悪い先輩を連れまわしていたことに申し訳ない気持ちになる。
そんな私を、先輩は優しく頭に手を置いてくる。
「問題ない。無理だと思ったら休む。それでいいか?」
「いいんですか? もし、お疲れなら私一人でも……」
そう言いつつも、一人だと不安になってしまう。
もしかしたら、先輩がいたから、説得がうまくいっていたのではないか?
自分の力では誰も話を訊いてくれないのでは?
そう思ってしまい不安がどんどんふくれあがる。
だけど、そんな不安も先輩に頭を撫でてもらっていると落ち着いてくる。
不謹慎だけど、先輩に撫でてもらえないから離れてほしくないって、少し思ってしまった。
「伊藤は頼もしくなったが、一人で抱え込む必要はない。それに時間がないのは伊藤にだって分かっているだろ? 今は大変な時だが、頑張って確実に進めていこう。俺もフォローする」
もう、先輩が言っても全然説得力ないですよ。何でも一人で抱え込むくせに。
だけど、一人じゃないって思うと安心しちゃう。まだまだ頑張れるって気がする。
先輩は私が無理しないかのお目付け役だけど、今度は私が先輩のお目付け役になろう。少しでも先輩が無理そうなら絶対に休ませる。
そう心に誓い、橘先輩と今後の方針を話し合った。
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