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二十三章
二十三話 ヒヤシンス -悲しみを超えた愛- その九
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「おはようございます!」
「おはよう、伊藤さん」
「おっはよう! ほのっち」
「おっす」
朝練にきた私を、古見君、園田先輩、獅子王さんが挨拶してくれた。
結局、昨日は先輩の背中で寝てしまい、そのまま下校時間を過ぎても起きれなかった。保健室の先生がウチに連絡してくれて、ママが私を家に連れて帰ったとのこと。
私を保健室からママの車まで運んでくれたのは先輩だったと保健室の先生から教えてもらった。
これから先、私と先輩の関係はどうなるのか?
先輩は誰とも付き合う気はないって言っていたけど、私はそんなこと認めたくない。先輩が誰かを好きにならない理由が悲しすぎるから。
今度こそ、私が先輩の傷を癒してあげたい。
橘先輩との勝負もあるし、馬淵先輩達との約束もある。
一つ一つが大変で、まだ解決の目途も立っていないけど、頑張ろう。あきらめなければきっと、大丈夫だよね。
ただ、気がかりもある。
新聞部に馬淵先輩達が同性愛者だと伝えた人はまだ分かっていない。それに、先輩が私に隠していることも分かっていない。
先輩の隠し事ってなに? 見当もつかないけど、私は信じることにした。
きっと私に隠しているのは何か理由があるはず。だったら、先輩が教えてくれるまで待ってみよう。
何の保証もなく、うまくいく算段もないけど、恐れはなかった。
ただ確実なことは、私の胸の中にあるのは先輩を好きって気持ちだけ。でも、それだけで十分だよね。
上を向いて、前を見て進もう。
まずは劇の準備を頑張るぞ!
「どんまい古見君」
「伊藤さんだけだよ、甘やかしてくれるのは」
はははっ、完璧主義者の園田先輩と獅子王さんは厳しいからね……お気の毒様。今日もたっぷりと園田先輩にしごかれ、古見君は落ち込んでいる。
でも、私は知っている。怒られている回数が減っていることに。
私と古見君は朝練を終え、昇降口へ向かっていた。吐く息が白い。今年の冬は寒くなりそう。
こんな寒い日に先輩と手をつないだら、身も心も暖かくなるのにな……。
そんなふうに思っていたら。
「んん?」
何か目の前に紙が……。
紙が何枚も何枚も空から降ってくる。まるで紙ふぶきのようにひらひらと舞い降りてきた。
A4用紙の大きさの紙を拾い上げる。
えっと、なになに……。
「号外、BL学園に存在する同性……愛……者について?」
なにこれ……。
記事の内容は馬淵先輩達、同性愛者についてだった。
どうして? 記事は差し押さえたはずなのに。
古見君も記事を見て、真っ青になっている。周りの生徒の声がどんどん増えていく。騒ぎが大きくなっていく。
私は感じていた。平穏な日々は崩れ去り、新たな試練がやってくることを。
今、最大の難関が私達に襲い掛かろうとしていた。
「おはよう、伊藤さん」
「おっはよう! ほのっち」
「おっす」
朝練にきた私を、古見君、園田先輩、獅子王さんが挨拶してくれた。
結局、昨日は先輩の背中で寝てしまい、そのまま下校時間を過ぎても起きれなかった。保健室の先生がウチに連絡してくれて、ママが私を家に連れて帰ったとのこと。
私を保健室からママの車まで運んでくれたのは先輩だったと保健室の先生から教えてもらった。
これから先、私と先輩の関係はどうなるのか?
先輩は誰とも付き合う気はないって言っていたけど、私はそんなこと認めたくない。先輩が誰かを好きにならない理由が悲しすぎるから。
今度こそ、私が先輩の傷を癒してあげたい。
橘先輩との勝負もあるし、馬淵先輩達との約束もある。
一つ一つが大変で、まだ解決の目途も立っていないけど、頑張ろう。あきらめなければきっと、大丈夫だよね。
ただ、気がかりもある。
新聞部に馬淵先輩達が同性愛者だと伝えた人はまだ分かっていない。それに、先輩が私に隠していることも分かっていない。
先輩の隠し事ってなに? 見当もつかないけど、私は信じることにした。
きっと私に隠しているのは何か理由があるはず。だったら、先輩が教えてくれるまで待ってみよう。
何の保証もなく、うまくいく算段もないけど、恐れはなかった。
ただ確実なことは、私の胸の中にあるのは先輩を好きって気持ちだけ。でも、それだけで十分だよね。
上を向いて、前を見て進もう。
まずは劇の準備を頑張るぞ!
「どんまい古見君」
「伊藤さんだけだよ、甘やかしてくれるのは」
はははっ、完璧主義者の園田先輩と獅子王さんは厳しいからね……お気の毒様。今日もたっぷりと園田先輩にしごかれ、古見君は落ち込んでいる。
でも、私は知っている。怒られている回数が減っていることに。
私と古見君は朝練を終え、昇降口へ向かっていた。吐く息が白い。今年の冬は寒くなりそう。
こんな寒い日に先輩と手をつないだら、身も心も暖かくなるのにな……。
そんなふうに思っていたら。
「んん?」
何か目の前に紙が……。
紙が何枚も何枚も空から降ってくる。まるで紙ふぶきのようにひらひらと舞い降りてきた。
A4用紙の大きさの紙を拾い上げる。
えっと、なになに……。
「号外、BL学園に存在する同性……愛……者について?」
なにこれ……。
記事の内容は馬淵先輩達、同性愛者についてだった。
どうして? 記事は差し押さえたはずなのに。
古見君も記事を見て、真っ青になっている。周りの生徒の声がどんどん増えていく。騒ぎが大きくなっていく。
私は感じていた。平穏な日々は崩れ去り、新たな試練がやってくることを。
今、最大の難関が私達に襲い掛かろうとしていた。
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