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二十章
二十話 サボテン -燃える心- その五
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「みんな!」
「おおっ、殿! ちょりーす!」
「ふざけた挨拶してる場合か! 超裂○弾!」
「ふべふ!」
私は男の子のお腹に向かって、ドロップキックをあびせた。男の子は多目的室の端へとぶっ飛んでいく。
「と、殿! どうして、こんな酷い仕打ちを!」
「ふざけたことぬかしてるからでしょ! ゴールデン青島賞は決死の覚悟で挑まなきゃとれないんですよ! もっと、真剣になってください! 今度ふざけたとことぬかしたら、スワンダイブ式ミサイルキックですから!」
どうして、みんなこんなにやる気がないの! 信じられないんですけど!
明日香から話を聞いた後、速攻で来てみれば……案の定、みんなは和気藹々としている。緊張感が足りない。
「おおっ、言ってくれるね。決死の覚悟とやらがあれば、とれるのか?」
はあ……。
私はため息をついてしまった。信じられない。とれるのかですって? とるつもりはないの。
最近の男の子ってみんなそうなの? 男の子なら少しくらい自意識過剰であってほしい。女鹿君のような人は困るけど。
私は咳を一つして、堂々と言い放つ。
「あえて言わせてもらいますけど、とれるのか、は流石にないでしょ? 言うのであれば、とる、でしょ! これくらい言えないとダメでしょ!」
おおおっ、と感嘆の声があがる。別に驚かれることでも称賛されることでもない。当たり前の事なんだから。
つい、某有名予備校講師みたいなことを言っちゃったよ。
私の意見が気に入らないのか、二上先輩がメガネをくいっと上げ、意見してきた。
「大した自信だな。まだ、何をするのかも決まっていないのに」
「そんなの青島祭までに決めてしまえば問題ありません。要は一番多く投票を得ればいいだけなんですから」
そう。一番すごい出し物をすればいいんじゃない。一番投票を得ればいいだけ。それなら勝算はみえてくる。
そう、このメンバーがいれば勝てる。勝てない方がおかしい。
ふふふっ……百万円、もらった!
私の脳はかつてないほど冴えわたっていた。
「ええっと、いきなりどうしたの、伊藤さん。凄いやる気だよね」
おずおずと馬淵先輩が言葉をはさんでくる。私はびしっと馬淵先輩を指さした。
「何を言っているんですか、馬淵先輩! 私はいつもやる気1000……いや2000%いっちゃってますよ!」
もう、どんなレアでもゲットできるくらい今の私はすごいんです! ミリオンだしね!
「そ、そう……でも、どうやったら勝てるの? 伊藤さん、そのことで悩んでいたんじゃないの?」
「はあ? 全然違いますよ! それよりも、百万でしょ!」
「百万? それってゴールデン青島賞のことか? さっきから大口をたたいているが、その根拠はなんだ?」
眉をひそめる二上先輩に私は堂々と答える。
「それはもちろん、みなさんがいるからです! これを見てください!」
私はスマホの画面をみんなに見せる。
スマホの画面には『特報! ゴールデン青島賞をとるのは誰だ!』と書かれた見出しがあった。
ゴールデン青島賞を誰がとるのか、その最有力候補がランキング形式で表示されている。当たり前だけど、馬淵君達の出し物はランキング外。もちろん、獅子王さん達の出し物も同じだった。
これはゴールデン青島賞を調べていたら見つけたサイトで、BL学園では学園の様子、イベント等の情報を発信している。
今は注目度が高い学園祭の特集記事が書かれている。その一ページに記載されているのがこの特報のページ。
「これが何か?」
二上先輩が眉をひそめている。ふふっ、仕方ありませんね、教えて差し上げますよ。
「みなさんはこのランキングを見て、どう思います?」
私のいきなりの問いに、みんなは戸惑いながらも答えてくれる。
「どうって……面白そうな出し物だよな?」
「ああっ、俺達なんかよりも凄いんだろうな。そう考えるとやっぱり……」
「ふふっ……成功です」
「? どういうこと、殿?」
みんなの頭の上にクエッションがでているが分かっちゃう。
私は安心させるように笑顔で自分の案を順序に話す。
「つまり、ここでランキング上位の出し物は面白そうだって思わせることができるんです。それは、ゴールデン青島賞をゲットする為の必須条件になります。いいですか」
私は多目的室にあったホワイトボードに自分の案を書いていく。
「まずはこのランキングトップになります。ランキングトップになれば、青島祭で出し物を見に来てくれる人が多くなります。そうなると、ゴールデン青島賞をとりやすくなるってことです」
「な、なるほど……流石は殿だ!」
「よっしゃ! 胴上げだ!」
「待って待って待って!」
私は腰を落として、両手で待てのポーズをとる。またもや、微妙な空間がうまれた。
私を取り囲むように微妙な空白の間ができている。
もう、胴上げなんてされてたまるものですか! 天井にぶつかるなんて、金輪際ごめんだからね。
「おい、待て。それはランキングトップになれたらの話だろ? どうやってなるつもりだ? 絵に描いた餅だろ、その案は」
「なれますよ」
「何?」
ふふっ、普段嫌味なキャラの二上先輩を言い負かせるのは気持ちいい。二上先輩の驚いた顔を見て、私は満足げに微笑む。
ランキングトップになる方法はある。その条件はもうすでにクリアしている。後は実行するだけ。
「よく見てください。このランキングは出し物一覧にある投票ボタンをクリックかタッチすると投票されます。つまり、多くの投票を得ることが出来ればランキングにのるってことです」
「それは知っている。問題なのはどうやって多くの投票数を得るかだ」
「だから、よく見てください。現在、一位の投票数は四百です。なので、五百を超える投票数を得ることが出来ればいいんですよ」
本当はこれからのことを考えて、もっと票が欲しい。五百では少ないくらい……倍の千くらいはあってもいいよね。
今ならまだ間にあう。この投票は始まったばかりだから、票の少ないうちが勝負どころ。
私の説明では分からないのか、二上先輩がメガネをくいっとあげ、問題点を指摘してくる。
「だから、その五百以上の投票を得る方法を聞いている。話が通じていないのか? それともそれすら分からないバカなのか?」
「私は言いましたよね、二上先輩。勝てる理由はみなさんがいるからって。みなさんがいれば負けることはありません! 一致団結すれば何も怖いものはありませんから!」
「と、殿……」
「……だから、さっさと理由を言え」
男の子達は感激のまなざしを、二上先輩は苛立った視線を私に送ってくる。
では、証明、結論といきましょうか。
私はホワイトボードにさらに書き込む。
「つまり、私達が自分で自分の出し物に投票すればいいんです。これを見てください」
私はスマホを操作して、目的の画面を見せる。
画面には『出し物名:スターフィッシュ(仮)』が表示されていた。投票数は2になっている。
「なんだ、このふざけた名前は。もしかして、俺達の出し物の名前か? お前、精神科にでもいってこい」
「お断りします。これはあくまでもテストの為の仮のものです。いいですか? 大切なのは投票数が2になっていることです。誰が投票したかわかりますか?」
「……伊藤さんとそのお友達?」
「馬淵先輩、おしい。半分正解で半分違います。正解は私だけです」
私の解に二上先輩が疑問を口にする。
「それはおかしいだろ? お前だけなら1になるはずだ。2はおかしい。それとも、伊藤の勘違いで、実は誰かがいれてくれたとみるべきか?」
「違いますよ。間違いなく私が2回投票しましたから」
「どういうことだ?」
私は先程おこなった実験結果を説明する。
「私のスマホから1回投票しました。投票した後、もう一回投票しましたが、カウントされませんでした。ですが、別の端末を使って投票したら一回カウントされました。つまりは同一人物であっても、端末かIPが違えば投票し続けることができるってことです」
「……まさか」
二上先輩は苦々しい顔をしている。私の案を理解してもらえたよう。
まあ、あまりほめられたことではない。でも、何の実績もない馬淵先輩達が成り上がっていくには多少、からめてが必要になる。
他の男の子達は、私が何を言いたいのか分からないようで戸惑っている。
「あ、あの……殿。結局俺達はどうしたらいいの?」
「簡単です。みんなが投票してくれたらいいんです。ただし、一回だけではありません。複数投票してもらいます」
「複数? どうやって?」
私は簡潔に内容をホワイトボードに書き、説明する。
「馬淵先輩。確か同性愛者は学園の三分の一はいるんですよね?」
「う、うん」
「その三分の一が投票すれば、少なくとも百は超える投票数を稼げます。うまくいけば三百はいけるはずです」
「? どうして? だって一回しか投票できないんでしょ?」
ちっちっちと私は指を振る。
「私の言葉を思いだしてください。同じ端末ならダメですが、違う端末ならOKなんです。つまり、私なら後、パパやママの携帯と家にあるパソコンで三回投票が可能になります。みなさんはどうですか? 携帯やパソコンから投票することが何台ありますか?」
「そりゃ、あるけど……第一、なんで同じ端末はダメなんだ?」
他の男の子の問いに私は憶測を伝える。
「きっと重複で投票するのを防ぐ為でしょう。何回も投票したら人数の多い部やクラスが有利になりますよね? だから、IPアドレスか端末名等から重複投票できないよう、プログラムされていると思われます」
「IPアドレス? 端末名?」
「IPアドレスはネットの住所みたいなもので、端末名は、ネットで判断する名前と思っていただけたら結構です。もしくはMACアドレスの可能性もありますが……まあ、詳しい話はおいておきましょう。話を戻します。重複投票をするのを防ぐ方法は人を見て判断するのではなく、パソコンや携帯の情報から判断しています。つまり、やりかた次第ではいくらでも重複投票できるというわけです」
ズルだけど、この際、大目に見てもらおう。HPには一人一票と書かれているけど、重複投票は禁止とは書かれていないからね。
私の説明でみんな、方法は分かってもらえたようだ。
「な、なるほど」
「いけるんじゃねえか! 流石は殿! やっぱり、俺達の救世主様だ!」
「野郎ども! 胴上げだ!」
「いや、いいから!」
もう、何度このやりとりをしたら気が済むの!
そのたびに必死に距離をとらなければならない私の身にもなってよ!
「いや、待て。例え、俺達が全員投票して、仮に一人三回投票できても三百ほどだ。五百には到底及ばないぞ」
二上先輩の疑問に、私は堂々と答える。
「いえ、届きます! 届かせます! この私が! でも、みなさんも出来る限り投票数を増やしてください。そして、私を信じてこの案に協力してください! お願いします!」
私はみんなに頭を下げる。ここにいるみんなの協力があれば、絶対にうまくいく。私には確信と打算があった。
これが五千や一万なら無理だけど、五百ならいける。うまくいけば千は集められる可能性を私は知っているし、方法も分かっている。私なら出来ると信じている。
みんなの返事は……。
「よっしゃ! 殿の案でいこうぜ!」
「OK! 俺、じっちゃんとばっちゃんがいるし、従兄妹にも頼んでみる!」
「友達にもお願いしてみるぜ! 殿だけに負担をかけるのも悪いしな!」
「だったら、誰が一番投票数をとれるか競争しようぜ!」
「いいね、それ! 一番とったヤツは何かご褒美がほしいよな?」
みんなノリノリだった。これも確信していた。みんなはいけると思ったら賛同してくれる、その場の空気とノリで了解してくれると今までの経緯で分かっていた。
考えが軽いとは思うけど、やっぱり楽しみながらやるのも大事だと思う。
モチベーションを維持するのに楽しいって気持ちは肝心なことだし。それに、みんなの笑顔を見ているとこっちも笑顔になって楽しくなる。
本当、いいことだらけだ。私って天才だよね! イケるかも! 目指せ、百万!
とんとん。
後ろから肩を叩かれた。振り向くと男の子がにやっと笑い、サムズアップしてくる。
しまった!
「では、前祝に殿を胴上げだ!」
「「「応!」」」
「ちょっと待って! イヤ! だから、どこ触ってるの!」
私はまたもや胴上げをされてしまった。
スカートが、スカートがめくれるから!
私は強くスカートを押さえつけながら、スパッツを履いてこようと強く心に誓った。
「おおっ、殿! ちょりーす!」
「ふざけた挨拶してる場合か! 超裂○弾!」
「ふべふ!」
私は男の子のお腹に向かって、ドロップキックをあびせた。男の子は多目的室の端へとぶっ飛んでいく。
「と、殿! どうして、こんな酷い仕打ちを!」
「ふざけたことぬかしてるからでしょ! ゴールデン青島賞は決死の覚悟で挑まなきゃとれないんですよ! もっと、真剣になってください! 今度ふざけたとことぬかしたら、スワンダイブ式ミサイルキックですから!」
どうして、みんなこんなにやる気がないの! 信じられないんですけど!
明日香から話を聞いた後、速攻で来てみれば……案の定、みんなは和気藹々としている。緊張感が足りない。
「おおっ、言ってくれるね。決死の覚悟とやらがあれば、とれるのか?」
はあ……。
私はため息をついてしまった。信じられない。とれるのかですって? とるつもりはないの。
最近の男の子ってみんなそうなの? 男の子なら少しくらい自意識過剰であってほしい。女鹿君のような人は困るけど。
私は咳を一つして、堂々と言い放つ。
「あえて言わせてもらいますけど、とれるのか、は流石にないでしょ? 言うのであれば、とる、でしょ! これくらい言えないとダメでしょ!」
おおおっ、と感嘆の声があがる。別に驚かれることでも称賛されることでもない。当たり前の事なんだから。
つい、某有名予備校講師みたいなことを言っちゃったよ。
私の意見が気に入らないのか、二上先輩がメガネをくいっと上げ、意見してきた。
「大した自信だな。まだ、何をするのかも決まっていないのに」
「そんなの青島祭までに決めてしまえば問題ありません。要は一番多く投票を得ればいいだけなんですから」
そう。一番すごい出し物をすればいいんじゃない。一番投票を得ればいいだけ。それなら勝算はみえてくる。
そう、このメンバーがいれば勝てる。勝てない方がおかしい。
ふふふっ……百万円、もらった!
私の脳はかつてないほど冴えわたっていた。
「ええっと、いきなりどうしたの、伊藤さん。凄いやる気だよね」
おずおずと馬淵先輩が言葉をはさんでくる。私はびしっと馬淵先輩を指さした。
「何を言っているんですか、馬淵先輩! 私はいつもやる気1000……いや2000%いっちゃってますよ!」
もう、どんなレアでもゲットできるくらい今の私はすごいんです! ミリオンだしね!
「そ、そう……でも、どうやったら勝てるの? 伊藤さん、そのことで悩んでいたんじゃないの?」
「はあ? 全然違いますよ! それよりも、百万でしょ!」
「百万? それってゴールデン青島賞のことか? さっきから大口をたたいているが、その根拠はなんだ?」
眉をひそめる二上先輩に私は堂々と答える。
「それはもちろん、みなさんがいるからです! これを見てください!」
私はスマホの画面をみんなに見せる。
スマホの画面には『特報! ゴールデン青島賞をとるのは誰だ!』と書かれた見出しがあった。
ゴールデン青島賞を誰がとるのか、その最有力候補がランキング形式で表示されている。当たり前だけど、馬淵君達の出し物はランキング外。もちろん、獅子王さん達の出し物も同じだった。
これはゴールデン青島賞を調べていたら見つけたサイトで、BL学園では学園の様子、イベント等の情報を発信している。
今は注目度が高い学園祭の特集記事が書かれている。その一ページに記載されているのがこの特報のページ。
「これが何か?」
二上先輩が眉をひそめている。ふふっ、仕方ありませんね、教えて差し上げますよ。
「みなさんはこのランキングを見て、どう思います?」
私のいきなりの問いに、みんなは戸惑いながらも答えてくれる。
「どうって……面白そうな出し物だよな?」
「ああっ、俺達なんかよりも凄いんだろうな。そう考えるとやっぱり……」
「ふふっ……成功です」
「? どういうこと、殿?」
みんなの頭の上にクエッションがでているが分かっちゃう。
私は安心させるように笑顔で自分の案を順序に話す。
「つまり、ここでランキング上位の出し物は面白そうだって思わせることができるんです。それは、ゴールデン青島賞をゲットする為の必須条件になります。いいですか」
私は多目的室にあったホワイトボードに自分の案を書いていく。
「まずはこのランキングトップになります。ランキングトップになれば、青島祭で出し物を見に来てくれる人が多くなります。そうなると、ゴールデン青島賞をとりやすくなるってことです」
「な、なるほど……流石は殿だ!」
「よっしゃ! 胴上げだ!」
「待って待って待って!」
私は腰を落として、両手で待てのポーズをとる。またもや、微妙な空間がうまれた。
私を取り囲むように微妙な空白の間ができている。
もう、胴上げなんてされてたまるものですか! 天井にぶつかるなんて、金輪際ごめんだからね。
「おい、待て。それはランキングトップになれたらの話だろ? どうやってなるつもりだ? 絵に描いた餅だろ、その案は」
「なれますよ」
「何?」
ふふっ、普段嫌味なキャラの二上先輩を言い負かせるのは気持ちいい。二上先輩の驚いた顔を見て、私は満足げに微笑む。
ランキングトップになる方法はある。その条件はもうすでにクリアしている。後は実行するだけ。
「よく見てください。このランキングは出し物一覧にある投票ボタンをクリックかタッチすると投票されます。つまり、多くの投票を得ることが出来ればランキングにのるってことです」
「それは知っている。問題なのはどうやって多くの投票数を得るかだ」
「だから、よく見てください。現在、一位の投票数は四百です。なので、五百を超える投票数を得ることが出来ればいいんですよ」
本当はこれからのことを考えて、もっと票が欲しい。五百では少ないくらい……倍の千くらいはあってもいいよね。
今ならまだ間にあう。この投票は始まったばかりだから、票の少ないうちが勝負どころ。
私の説明では分からないのか、二上先輩がメガネをくいっとあげ、問題点を指摘してくる。
「だから、その五百以上の投票を得る方法を聞いている。話が通じていないのか? それともそれすら分からないバカなのか?」
「私は言いましたよね、二上先輩。勝てる理由はみなさんがいるからって。みなさんがいれば負けることはありません! 一致団結すれば何も怖いものはありませんから!」
「と、殿……」
「……だから、さっさと理由を言え」
男の子達は感激のまなざしを、二上先輩は苛立った視線を私に送ってくる。
では、証明、結論といきましょうか。
私はホワイトボードにさらに書き込む。
「つまり、私達が自分で自分の出し物に投票すればいいんです。これを見てください」
私はスマホを操作して、目的の画面を見せる。
画面には『出し物名:スターフィッシュ(仮)』が表示されていた。投票数は2になっている。
「なんだ、このふざけた名前は。もしかして、俺達の出し物の名前か? お前、精神科にでもいってこい」
「お断りします。これはあくまでもテストの為の仮のものです。いいですか? 大切なのは投票数が2になっていることです。誰が投票したかわかりますか?」
「……伊藤さんとそのお友達?」
「馬淵先輩、おしい。半分正解で半分違います。正解は私だけです」
私の解に二上先輩が疑問を口にする。
「それはおかしいだろ? お前だけなら1になるはずだ。2はおかしい。それとも、伊藤の勘違いで、実は誰かがいれてくれたとみるべきか?」
「違いますよ。間違いなく私が2回投票しましたから」
「どういうことだ?」
私は先程おこなった実験結果を説明する。
「私のスマホから1回投票しました。投票した後、もう一回投票しましたが、カウントされませんでした。ですが、別の端末を使って投票したら一回カウントされました。つまりは同一人物であっても、端末かIPが違えば投票し続けることができるってことです」
「……まさか」
二上先輩は苦々しい顔をしている。私の案を理解してもらえたよう。
まあ、あまりほめられたことではない。でも、何の実績もない馬淵先輩達が成り上がっていくには多少、からめてが必要になる。
他の男の子達は、私が何を言いたいのか分からないようで戸惑っている。
「あ、あの……殿。結局俺達はどうしたらいいの?」
「簡単です。みんなが投票してくれたらいいんです。ただし、一回だけではありません。複数投票してもらいます」
「複数? どうやって?」
私は簡潔に内容をホワイトボードに書き、説明する。
「馬淵先輩。確か同性愛者は学園の三分の一はいるんですよね?」
「う、うん」
「その三分の一が投票すれば、少なくとも百は超える投票数を稼げます。うまくいけば三百はいけるはずです」
「? どうして? だって一回しか投票できないんでしょ?」
ちっちっちと私は指を振る。
「私の言葉を思いだしてください。同じ端末ならダメですが、違う端末ならOKなんです。つまり、私なら後、パパやママの携帯と家にあるパソコンで三回投票が可能になります。みなさんはどうですか? 携帯やパソコンから投票することが何台ありますか?」
「そりゃ、あるけど……第一、なんで同じ端末はダメなんだ?」
他の男の子の問いに私は憶測を伝える。
「きっと重複で投票するのを防ぐ為でしょう。何回も投票したら人数の多い部やクラスが有利になりますよね? だから、IPアドレスか端末名等から重複投票できないよう、プログラムされていると思われます」
「IPアドレス? 端末名?」
「IPアドレスはネットの住所みたいなもので、端末名は、ネットで判断する名前と思っていただけたら結構です。もしくはMACアドレスの可能性もありますが……まあ、詳しい話はおいておきましょう。話を戻します。重複投票をするのを防ぐ方法は人を見て判断するのではなく、パソコンや携帯の情報から判断しています。つまり、やりかた次第ではいくらでも重複投票できるというわけです」
ズルだけど、この際、大目に見てもらおう。HPには一人一票と書かれているけど、重複投票は禁止とは書かれていないからね。
私の説明でみんな、方法は分かってもらえたようだ。
「な、なるほど」
「いけるんじゃねえか! 流石は殿! やっぱり、俺達の救世主様だ!」
「野郎ども! 胴上げだ!」
「いや、いいから!」
もう、何度このやりとりをしたら気が済むの!
そのたびに必死に距離をとらなければならない私の身にもなってよ!
「いや、待て。例え、俺達が全員投票して、仮に一人三回投票できても三百ほどだ。五百には到底及ばないぞ」
二上先輩の疑問に、私は堂々と答える。
「いえ、届きます! 届かせます! この私が! でも、みなさんも出来る限り投票数を増やしてください。そして、私を信じてこの案に協力してください! お願いします!」
私はみんなに頭を下げる。ここにいるみんなの協力があれば、絶対にうまくいく。私には確信と打算があった。
これが五千や一万なら無理だけど、五百ならいける。うまくいけば千は集められる可能性を私は知っているし、方法も分かっている。私なら出来ると信じている。
みんなの返事は……。
「よっしゃ! 殿の案でいこうぜ!」
「OK! 俺、じっちゃんとばっちゃんがいるし、従兄妹にも頼んでみる!」
「友達にもお願いしてみるぜ! 殿だけに負担をかけるのも悪いしな!」
「だったら、誰が一番投票数をとれるか競争しようぜ!」
「いいね、それ! 一番とったヤツは何かご褒美がほしいよな?」
みんなノリノリだった。これも確信していた。みんなはいけると思ったら賛同してくれる、その場の空気とノリで了解してくれると今までの経緯で分かっていた。
考えが軽いとは思うけど、やっぱり楽しみながらやるのも大事だと思う。
モチベーションを維持するのに楽しいって気持ちは肝心なことだし。それに、みんなの笑顔を見ているとこっちも笑顔になって楽しくなる。
本当、いいことだらけだ。私って天才だよね! イケるかも! 目指せ、百万!
とんとん。
後ろから肩を叩かれた。振り向くと男の子がにやっと笑い、サムズアップしてくる。
しまった!
「では、前祝に殿を胴上げだ!」
「「「応!」」」
「ちょっと待って! イヤ! だから、どこ触ってるの!」
私はまたもや胴上げをされてしまった。
スカートが、スカートがめくれるから!
私は強くスカートを押さえつけながら、スパッツを履いてこようと強く心に誓った。
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