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十八章
十八話 ニゲラ -とまどい- その九
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んん?
何だろう? 唇に何かやわらかいものが……。
目をあけると目の前に浪花先輩の顔が……。
「きゃあああああああああ!」
「うわぁああああああああ!」
なななななななな!
私は必死に今起きたことを整理していた。
唇に何かふれるものを感じた。
目をあけると目の前に浪花先輩がいた。しかも目と鼻の先に。息遣いが肌で感じるくらいに……これって、これってまさか……。
唇をそっとなぞる。しめってる。
「浪花先輩」
「何かな、ほのかお嬢様」
「……キスしました?」
「うん」
パチン!
「あいた!」
「サイテー!」
酷い! 人の寝込みに唇を奪うなんて!
サイテーだ!
浪花先輩はなぜがテレたような顔をしている。
「ごめんね、ほのかクン。さくらんぼのようなみずみずしい唇につい……」
「犯罪ですよ、浪花先輩。私、一度強姦されそうになったんです。そのときに警察官とお知り合いになったんですけど」
「ごめんなさい! 自重します!」
ど、土下座って……。
何の躊躇もなく土下座する浪花先輩に私はドン引きしていた。
ここまでする浪花先輩に、尊敬の念を抱くべきか、呆れるというか……浪花先輩にはプライドがないの? しかも自重って……またする気なの?
はあ……。
私はため息をついた。
「もういいです……頭をあげてください」
「それは僕達との仲を認めてくれるってことかい? あたたたたたたたたたたた!」
私は思いっきり浪花先輩の頭をふみつけてあげた。
まったく! 全然反省していない!
さて、この後どうしよっか?
「首を可愛くかしげているところ申し訳ないんだけど、足をどけてくれるとうれしいです、ほのかクン」
「すごいですね、浪花先輩。どうしてわかっちゃうんですか?」
「コンパクトを使って見えるからね。それにしてもほのかクン、すごい下着履いて……あがががががががががっ!」
「死にます? 浪花先輩」
「頭蓋骨が割れる! 割れるから!」
はあ……何でこんな目にあうのかな? 結局、許しちゃう私って心が寛大だよね。
そういえば古見君達が見当たらない。私の膝にブレザーがあるけど、誰の?
私は何気に腕時計を見た。
……あれ? もしかして、五時間目? ってことは……。
「寝過ごした!」
なんてこと! どうして誰も教えてくれなかったの!
マズい! 授業をサボちゃったよ!
最近、よく眠れなかったからつい寝ちゃった。ううっ、風紀委員が授業サボるなんてバレたら大目玉。
「まあまあ、落ち着きなよ、ほのかお嬢様」
「……浪花先輩はどうしてここにいるんですか?」
「体育の授業がダルくなったから少しサボろうと思って。適当に散歩してたら眠り姫がいたから、王子様のキスでね」
ウインクしてみせた浪花先輩に私は怒りをこらえる。
「でね……じゃないでしょ! 普通に起こしてくださいよ! もう、古見君ったら! 起こしてくれてもいいのに!」
「いや、きっとその人はほのかクンが風邪をひかないよう上着をかけていたよ。優しいね」
「気遣いの方向が違う!」
ブレザーを丁寧にたたみ、私は立ちあがる。
授業に戻ろうとしたとき、私の腕が何か捕まれた。浪花先輩?
「待ちなよ、ほのかクン。授業に戻ったってもう遅いよ。少し話をしないかい?」
浪花先輩が隣の芝生をぱんぱんと叩いている。
私はジト目で睨みつけた。
浪花先輩の意図するものはなに? 私に話があるから授業をサボってきた?
でも、それはおかしい。私が昼寝で寝過ごしたのはたまたまだし。
古見君が樫の木の下でお昼を食べようって提案したのは偶然だから意図してくることはできないはず。
浪花先輩の目的が分からない。もしかして、昨日のこと? だとしたら話したくない。
どうしよう……。
「きゃ!」
浪花先輩が強引に私の隣に座らせた。浪花先輩の綺麗な顔が目の前にある。浪花先輩のブルーアイに、何もかも吸い込まれそうになる。
浪花先輩の顔が近づき、また唇が……先輩……。
「ちゃんとしないとね」
乱れていた襟首を浪花先輩がもどしてくれた。まるでママのように優しくなおしてくれる。
戸惑う私に、浪花先輩は花が咲いたような笑顔を浮かべている。その笑顔に私はつい、見惚れてしまった。
綺麗……。
イケメン……いや美少女かな? どっちも得だよね。モテるための努力や頑張りを帳消しにしちゃうんだから。
浪花先輩は私の服装を直した後、満足げに微笑むとその場でごろんと横になった。
「何もしないんですか?」
「本気で好きな人には嫌がることはしないって決めたんだ」
「……キスした癖に」
「だから、今決めたの」
調子いいんだから。私は呆れて笑ってしまう。
キスされたこと、もうそこまでイヤだとは思っていない。これって、キスされることになれたのかな?
ファーストキスを獅子王さんに奪われた時は、それはもう泣きじゃくった。でも、二度目を先輩にささげて、三度目は浪花先輩。
はあ……ため息ばかり出てくる。たった一ヶ月で三回も別人とキスするなんて、私の青春は間違っているよね?
しかも、一人は女の子だし。そう考えると遅刻とかどうでもよくなっちゃった。
私も浪花先輩のように横になる。空が青い……それに気持ちが穏やかでいられる……。
浪花先輩がとりとめのないことを話してきた。私もそれに相槌をうってこたえる。
こんな日がたまにあってもいいよね。最近いろいろとあったから。きっとつかの間の休息だし、休んじゃおっか。
「それで、遅刻した理由はなんだ、伊藤?」
「ええっと……やむを得ない理由というかなんといいますか……」
私は先生に怒られていた。だよね~怒られるよね。教室に戻ったら六時間目の最中だし。浪花先輩とのおしゃべりが楽しくてつい長話しちゃった。
教室のみんなの前でお説教をされている私。ううっ情けないよ……。
何だろう? 唇に何かやわらかいものが……。
目をあけると目の前に浪花先輩の顔が……。
「きゃあああああああああ!」
「うわぁああああああああ!」
なななななななな!
私は必死に今起きたことを整理していた。
唇に何かふれるものを感じた。
目をあけると目の前に浪花先輩がいた。しかも目と鼻の先に。息遣いが肌で感じるくらいに……これって、これってまさか……。
唇をそっとなぞる。しめってる。
「浪花先輩」
「何かな、ほのかお嬢様」
「……キスしました?」
「うん」
パチン!
「あいた!」
「サイテー!」
酷い! 人の寝込みに唇を奪うなんて!
サイテーだ!
浪花先輩はなぜがテレたような顔をしている。
「ごめんね、ほのかクン。さくらんぼのようなみずみずしい唇につい……」
「犯罪ですよ、浪花先輩。私、一度強姦されそうになったんです。そのときに警察官とお知り合いになったんですけど」
「ごめんなさい! 自重します!」
ど、土下座って……。
何の躊躇もなく土下座する浪花先輩に私はドン引きしていた。
ここまでする浪花先輩に、尊敬の念を抱くべきか、呆れるというか……浪花先輩にはプライドがないの? しかも自重って……またする気なの?
はあ……。
私はため息をついた。
「もういいです……頭をあげてください」
「それは僕達との仲を認めてくれるってことかい? あたたたたたたたたたたた!」
私は思いっきり浪花先輩の頭をふみつけてあげた。
まったく! 全然反省していない!
さて、この後どうしよっか?
「首を可愛くかしげているところ申し訳ないんだけど、足をどけてくれるとうれしいです、ほのかクン」
「すごいですね、浪花先輩。どうしてわかっちゃうんですか?」
「コンパクトを使って見えるからね。それにしてもほのかクン、すごい下着履いて……あがががががががががっ!」
「死にます? 浪花先輩」
「頭蓋骨が割れる! 割れるから!」
はあ……何でこんな目にあうのかな? 結局、許しちゃう私って心が寛大だよね。
そういえば古見君達が見当たらない。私の膝にブレザーがあるけど、誰の?
私は何気に腕時計を見た。
……あれ? もしかして、五時間目? ってことは……。
「寝過ごした!」
なんてこと! どうして誰も教えてくれなかったの!
マズい! 授業をサボちゃったよ!
最近、よく眠れなかったからつい寝ちゃった。ううっ、風紀委員が授業サボるなんてバレたら大目玉。
「まあまあ、落ち着きなよ、ほのかお嬢様」
「……浪花先輩はどうしてここにいるんですか?」
「体育の授業がダルくなったから少しサボろうと思って。適当に散歩してたら眠り姫がいたから、王子様のキスでね」
ウインクしてみせた浪花先輩に私は怒りをこらえる。
「でね……じゃないでしょ! 普通に起こしてくださいよ! もう、古見君ったら! 起こしてくれてもいいのに!」
「いや、きっとその人はほのかクンが風邪をひかないよう上着をかけていたよ。優しいね」
「気遣いの方向が違う!」
ブレザーを丁寧にたたみ、私は立ちあがる。
授業に戻ろうとしたとき、私の腕が何か捕まれた。浪花先輩?
「待ちなよ、ほのかクン。授業に戻ったってもう遅いよ。少し話をしないかい?」
浪花先輩が隣の芝生をぱんぱんと叩いている。
私はジト目で睨みつけた。
浪花先輩の意図するものはなに? 私に話があるから授業をサボってきた?
でも、それはおかしい。私が昼寝で寝過ごしたのはたまたまだし。
古見君が樫の木の下でお昼を食べようって提案したのは偶然だから意図してくることはできないはず。
浪花先輩の目的が分からない。もしかして、昨日のこと? だとしたら話したくない。
どうしよう……。
「きゃ!」
浪花先輩が強引に私の隣に座らせた。浪花先輩の綺麗な顔が目の前にある。浪花先輩のブルーアイに、何もかも吸い込まれそうになる。
浪花先輩の顔が近づき、また唇が……先輩……。
「ちゃんとしないとね」
乱れていた襟首を浪花先輩がもどしてくれた。まるでママのように優しくなおしてくれる。
戸惑う私に、浪花先輩は花が咲いたような笑顔を浮かべている。その笑顔に私はつい、見惚れてしまった。
綺麗……。
イケメン……いや美少女かな? どっちも得だよね。モテるための努力や頑張りを帳消しにしちゃうんだから。
浪花先輩は私の服装を直した後、満足げに微笑むとその場でごろんと横になった。
「何もしないんですか?」
「本気で好きな人には嫌がることはしないって決めたんだ」
「……キスした癖に」
「だから、今決めたの」
調子いいんだから。私は呆れて笑ってしまう。
キスされたこと、もうそこまでイヤだとは思っていない。これって、キスされることになれたのかな?
ファーストキスを獅子王さんに奪われた時は、それはもう泣きじゃくった。でも、二度目を先輩にささげて、三度目は浪花先輩。
はあ……ため息ばかり出てくる。たった一ヶ月で三回も別人とキスするなんて、私の青春は間違っているよね?
しかも、一人は女の子だし。そう考えると遅刻とかどうでもよくなっちゃった。
私も浪花先輩のように横になる。空が青い……それに気持ちが穏やかでいられる……。
浪花先輩がとりとめのないことを話してきた。私もそれに相槌をうってこたえる。
こんな日がたまにあってもいいよね。最近いろいろとあったから。きっとつかの間の休息だし、休んじゃおっか。
「それで、遅刻した理由はなんだ、伊藤?」
「ええっと……やむを得ない理由というかなんといいますか……」
私は先生に怒られていた。だよね~怒られるよね。教室に戻ったら六時間目の最中だし。浪花先輩とのおしゃべりが楽しくてつい長話しちゃった。
教室のみんなの前でお説教をされている私。ううっ情けないよ……。
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