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三章
三話 伊藤ほのかの猛省 失われた楽園 その二
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水泳部から奇声が聞こえてくるか……。
他愛のない調査依頼だけど私は強引に先輩についていくことにした。理由は男の子の上半身裸が見れるから。
ううっ、最近、煩悩まみれになってる……。
でも、フラストレーションは溜めたらいけないよね、体に毒だし。
だからいいよね? 不可抗力だよね~。
「伊藤、俺一人でも問題ないぞ?」
「問題大有りです。苦情を言ってきたのは水泳部女子ですよ? 調査内容を報告にいくとき、うっかり女の子の着替えをのぞいたらどうするつもりです? 問題になりますよ? それとも、先輩は女の子の水着姿が見たいんですか?」
私はジト目で先輩を睨みつける。先輩が他の女の子の水着姿で鼻の下伸ばしていたら、イヤだし! ありえない!
「そんなわけないだろ。俺は押水か。報告は左近がする。伊藤こそ、うっかり男子の着替えを見てしまう可能性があるぞ」
いや、それが目的ですし。少女漫画あるあるじゃないですか。
少年漫画に女の子の着替えを覗くラッキースケベがあるように、少女漫画にも、上半身裸がある。
けど、手が触れたり、キスしそうなくらい顔が近づいたり、後ろから抱きしめられたりと、そっちの方が多いんだけどね。
「いえ、問題ありません!」
「いや、あるだろ?」
ええっ~男の子って着替えを覗かれても、女の子が被害者っぽくなりません?
剛やパパは平気でパンツ一枚で家の中歩いているし。あれ、本当にやめてほしい。
好感度ダウンイベントなの、これって言いたい。
「そうですか? 男の人って筋肉見せたがりじゃないですか~?」
「いやいや、そんな変態みたいに言うな」
けどけど、格闘技やスポーツなんかで男の人って上半身裸になるじゃないですか~。
あの筋肉、セクシーすぎ。
「そんなこと言ったら、女性も雑誌で水着姿を披露しているだろうが」
「あれは売り上げアップのためですよ。先輩って水着姿の女の子が出てくる雑誌を買ってるんですか?」
「いや、買いたい雑誌に水着の女子が出てくるんだから、仕方ないだろ? 今時の男性用の雑誌って女子の表紙が多いよな? 本当に男性誌かって言いたくなる」
「ああっ~、それ分かる~」
ラノベなんて九割九分九厘、表紙が女の子だし。しかも、露出が高い。
本の内容はすごく面白いし、感動できるものがあるんだけど、表紙がいやらしいとその漫画が汚されている気がするんだよね。
硬派な先輩にとって、女の子だらけの表紙は納得いかないんだろうな。
「少女漫画はまだ男の子と女の子の比率はそう違わないんですけどね。昔の少年漫画は男の子の主人公がほぼ占めていたらしいですよ」
「嫌な時代だ」
「たかが表紙でそんな世紀末みたいな言い方しないでください。それよりも、今回は水泳ですけど、先輩は大丈夫なんですか?」
先輩って泳げるのかな? 私はあまり得意じゃない。二十五メートルは泳げるけど、それ以上は無理。
海の近くに住んでいるからといって、泳げるわけではない。
「一応泳げるが、なぜ、そんなことを聞く?」
「だって、今までの流れからいって、その部員と勝負することになるじゃないですか~。しかも、プロ顔負けですし」
「……嫌なこと言うなよ。水泳対決になったら、絶対に勝てる気がしないぞ」
私も禿同。けど、対決しちゃうんだろうな……。
奇声を上げているって言っていたけど、なんだろう? よくよく考えると嫌な予感しかしないよね?
「もう、夏は終わりましたけど、来年は海に行きませんか? 楽しく、のんびり過ごしたいですよね~」
やっぱり、海は恋愛の定番イベントだし、泳ぐならそっちの方がいいに決まってる。
あっ、今、素で先輩をデートに誘わなかった? あっ! あっ! 誘ってるよ、私!
ど、どうしよう……そんなつもりはなかったけど、でもでも、これってチャンスなのでは?
先輩と一緒に遊びにいけるなんて、嬉しいし。
で、でも、水着は少し恥ずかしいな……。
自分では結構いい線いってるとおもうけど、ビキニとか絶対に無理!
けど、先輩がどうしても見たいって言うのなら……。
「いや、来年は受験だから」
「真面目か!」
えええっ~ありえねえ~。
女の子が勇気を出して誘ったのに、それはないよ、ふ~じこちゃ~ん!
はぁ……ほんと、興ざめ。先輩と遊びに行きたかったのに……。
それとも、先輩、私と一緒に遊びに行きたくないのかな……。
「……温水プールにいくか」
「え?」
「亜羅死の荒事を解決したとき、男が振ってきて打ち上げができなかっただろ? バスケの時も伊藤といけなかった。少し落ち着いたら遊びにいかないか、みんなで。それに温水プールがあるところは大浴場もあるからな。最近、疲れているだろ? 慰労もかねてだな……」
ぷっ!
私はつい、吹いてしまった。
先輩、もしかして、テレてます? 早口になってますよ。
ああっ、先輩って女の子を誘うの、苦手そう。奥手って感じがする。
私が笑っちゃったから、先輩、拗ねてる。普段は不良相手に勇ましいのに、子供っぽいからギャップがあって可愛いし、初々しい。
やっぱり、先輩を好きになってよかった。
「……はい。いきましょう! いつにしますか? 今日ですか? 明日ですか?」
「だから、落ち着いたらだ」
私の提案に先輩はほっとしたような顔をしている。
でもね、先輩。遊びに誘ってくれるのは嬉しいけど、みんなは違うよね? 二人きりだよね、フツウは。
……先輩ってやっぱりどこかズレてるし。
でもいっか。先輩と遊びに行く約束できたし。水着はワンピにしよっかな。露出は控えた方が先輩に喜んでもらえると思うから。
先輩が望むなら……私……海女さんの格好でもいいですよ。
部室前にたどり着く。特に奇声は聞こえない。
先輩が部室のドアをノックする。
ああっ、どんな人が現れるんだろう? 水泳ならやっぱりあれしかないよね。俺はフリーしか泳げない、みたいな!
「どうぞ」
さて、どんな展開になるのかな。
青島のマーメイド(自称)と言われた私のクロールは伊達じゃない……はず! リレー対決なら先輩の水着姿も見れるし、楽しみだな~。その後は、うふふな展開に……。今日はついてる!
部屋に入ると、先輩が立ち止まっていた。
どうしたのかな?
先輩の横から顔を出すと、そこには……全裸の男の子が立っていた!
私の視線はゆっくりと下に……ある一部分で止まり、時も止まった。
ら、ラララララララララッキースケベキターーーーーーー!
耐性ができたのか、鼻血も出てこない。声も出ない。両手で顔を隠していても、指の隙間からガン見してしまう。
大きい……。
でも、なんで隠さないの! この人!
耐えきれなくなって目をそらすと、他にも裸の男の子が! しかも、カッコいいし、筋肉質だ!
ここはイケメンパラダイスですか!
せ、先輩が私の方に近寄ってきた。せ、先輩も脱ぐの! 先輩、マジ神!
ぽいっ!
私は部室から放り出された。ですよね。
「せ~ん~ぱ~い!」
ひどい! ドアに爪をたて、ガリガリとひっかく!
ガリガリガリガリ!
「……」
ガリガリガリガリガリガリガリガリ!
「……」
ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ!
がちゃ!
「せ、先輩……」
天国の扉、ヘブンズ・ドアが開かれ……。
バシュ!
「静かにしてろ」
バタン!
げんこつされた。
やっぱり神はネットの中にしかいない!
私はドアに耳をくっつけた。
全然……聞こえないよ……。
うわぁ! 何か変なあえぎ声が聞こえてきた。CDだしたら、絶対売れるわ、これ。
えっ? なんなの? 何の声? この密室で何が起こってるの~。
他愛のない調査依頼だけど私は強引に先輩についていくことにした。理由は男の子の上半身裸が見れるから。
ううっ、最近、煩悩まみれになってる……。
でも、フラストレーションは溜めたらいけないよね、体に毒だし。
だからいいよね? 不可抗力だよね~。
「伊藤、俺一人でも問題ないぞ?」
「問題大有りです。苦情を言ってきたのは水泳部女子ですよ? 調査内容を報告にいくとき、うっかり女の子の着替えをのぞいたらどうするつもりです? 問題になりますよ? それとも、先輩は女の子の水着姿が見たいんですか?」
私はジト目で先輩を睨みつける。先輩が他の女の子の水着姿で鼻の下伸ばしていたら、イヤだし! ありえない!
「そんなわけないだろ。俺は押水か。報告は左近がする。伊藤こそ、うっかり男子の着替えを見てしまう可能性があるぞ」
いや、それが目的ですし。少女漫画あるあるじゃないですか。
少年漫画に女の子の着替えを覗くラッキースケベがあるように、少女漫画にも、上半身裸がある。
けど、手が触れたり、キスしそうなくらい顔が近づいたり、後ろから抱きしめられたりと、そっちの方が多いんだけどね。
「いえ、問題ありません!」
「いや、あるだろ?」
ええっ~男の子って着替えを覗かれても、女の子が被害者っぽくなりません?
剛やパパは平気でパンツ一枚で家の中歩いているし。あれ、本当にやめてほしい。
好感度ダウンイベントなの、これって言いたい。
「そうですか? 男の人って筋肉見せたがりじゃないですか~?」
「いやいや、そんな変態みたいに言うな」
けどけど、格闘技やスポーツなんかで男の人って上半身裸になるじゃないですか~。
あの筋肉、セクシーすぎ。
「そんなこと言ったら、女性も雑誌で水着姿を披露しているだろうが」
「あれは売り上げアップのためですよ。先輩って水着姿の女の子が出てくる雑誌を買ってるんですか?」
「いや、買いたい雑誌に水着の女子が出てくるんだから、仕方ないだろ? 今時の男性用の雑誌って女子の表紙が多いよな? 本当に男性誌かって言いたくなる」
「ああっ~、それ分かる~」
ラノベなんて九割九分九厘、表紙が女の子だし。しかも、露出が高い。
本の内容はすごく面白いし、感動できるものがあるんだけど、表紙がいやらしいとその漫画が汚されている気がするんだよね。
硬派な先輩にとって、女の子だらけの表紙は納得いかないんだろうな。
「少女漫画はまだ男の子と女の子の比率はそう違わないんですけどね。昔の少年漫画は男の子の主人公がほぼ占めていたらしいですよ」
「嫌な時代だ」
「たかが表紙でそんな世紀末みたいな言い方しないでください。それよりも、今回は水泳ですけど、先輩は大丈夫なんですか?」
先輩って泳げるのかな? 私はあまり得意じゃない。二十五メートルは泳げるけど、それ以上は無理。
海の近くに住んでいるからといって、泳げるわけではない。
「一応泳げるが、なぜ、そんなことを聞く?」
「だって、今までの流れからいって、その部員と勝負することになるじゃないですか~。しかも、プロ顔負けですし」
「……嫌なこと言うなよ。水泳対決になったら、絶対に勝てる気がしないぞ」
私も禿同。けど、対決しちゃうんだろうな……。
奇声を上げているって言っていたけど、なんだろう? よくよく考えると嫌な予感しかしないよね?
「もう、夏は終わりましたけど、来年は海に行きませんか? 楽しく、のんびり過ごしたいですよね~」
やっぱり、海は恋愛の定番イベントだし、泳ぐならそっちの方がいいに決まってる。
あっ、今、素で先輩をデートに誘わなかった? あっ! あっ! 誘ってるよ、私!
ど、どうしよう……そんなつもりはなかったけど、でもでも、これってチャンスなのでは?
先輩と一緒に遊びにいけるなんて、嬉しいし。
で、でも、水着は少し恥ずかしいな……。
自分では結構いい線いってるとおもうけど、ビキニとか絶対に無理!
けど、先輩がどうしても見たいって言うのなら……。
「いや、来年は受験だから」
「真面目か!」
えええっ~ありえねえ~。
女の子が勇気を出して誘ったのに、それはないよ、ふ~じこちゃ~ん!
はぁ……ほんと、興ざめ。先輩と遊びに行きたかったのに……。
それとも、先輩、私と一緒に遊びに行きたくないのかな……。
「……温水プールにいくか」
「え?」
「亜羅死の荒事を解決したとき、男が振ってきて打ち上げができなかっただろ? バスケの時も伊藤といけなかった。少し落ち着いたら遊びにいかないか、みんなで。それに温水プールがあるところは大浴場もあるからな。最近、疲れているだろ? 慰労もかねてだな……」
ぷっ!
私はつい、吹いてしまった。
先輩、もしかして、テレてます? 早口になってますよ。
ああっ、先輩って女の子を誘うの、苦手そう。奥手って感じがする。
私が笑っちゃったから、先輩、拗ねてる。普段は不良相手に勇ましいのに、子供っぽいからギャップがあって可愛いし、初々しい。
やっぱり、先輩を好きになってよかった。
「……はい。いきましょう! いつにしますか? 今日ですか? 明日ですか?」
「だから、落ち着いたらだ」
私の提案に先輩はほっとしたような顔をしている。
でもね、先輩。遊びに誘ってくれるのは嬉しいけど、みんなは違うよね? 二人きりだよね、フツウは。
……先輩ってやっぱりどこかズレてるし。
でもいっか。先輩と遊びに行く約束できたし。水着はワンピにしよっかな。露出は控えた方が先輩に喜んでもらえると思うから。
先輩が望むなら……私……海女さんの格好でもいいですよ。
部室前にたどり着く。特に奇声は聞こえない。
先輩が部室のドアをノックする。
ああっ、どんな人が現れるんだろう? 水泳ならやっぱりあれしかないよね。俺はフリーしか泳げない、みたいな!
「どうぞ」
さて、どんな展開になるのかな。
青島のマーメイド(自称)と言われた私のクロールは伊達じゃない……はず! リレー対決なら先輩の水着姿も見れるし、楽しみだな~。その後は、うふふな展開に……。今日はついてる!
部屋に入ると、先輩が立ち止まっていた。
どうしたのかな?
先輩の横から顔を出すと、そこには……全裸の男の子が立っていた!
私の視線はゆっくりと下に……ある一部分で止まり、時も止まった。
ら、ラララララララララッキースケベキターーーーーーー!
耐性ができたのか、鼻血も出てこない。声も出ない。両手で顔を隠していても、指の隙間からガン見してしまう。
大きい……。
でも、なんで隠さないの! この人!
耐えきれなくなって目をそらすと、他にも裸の男の子が! しかも、カッコいいし、筋肉質だ!
ここはイケメンパラダイスですか!
せ、先輩が私の方に近寄ってきた。せ、先輩も脱ぐの! 先輩、マジ神!
ぽいっ!
私は部室から放り出された。ですよね。
「せ~ん~ぱ~い!」
ひどい! ドアに爪をたて、ガリガリとひっかく!
ガリガリガリガリ!
「……」
ガリガリガリガリガリガリガリガリ!
「……」
ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ!
がちゃ!
「せ、先輩……」
天国の扉、ヘブンズ・ドアが開かれ……。
バシュ!
「静かにしてろ」
バタン!
げんこつされた。
やっぱり神はネットの中にしかいない!
私はドアに耳をくっつけた。
全然……聞こえないよ……。
うわぁ! 何か変なあえぎ声が聞こえてきた。CDだしたら、絶対売れるわ、これ。
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