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134:実は勘違いしていること

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「伊藤!」
「な、なんっすか、先輩?」
「……俺に言うことあるだろ?」
「……何を? まさか、プライベイトまで包み隠さず報告しろって言うんですか? 先輩のエッチ!」
「それがファイナルアンサーか?」
「……若(宮)×草(薙)物語を持ってきてしまいました」

 ゴン!

「あ痛ぁ!」
「いい加減にしろ! いかがわしい本を持ってくるな! 俺が……俺が! どんな気持ちでこんな情けない報告を受けているのか! お前に分かるか!」
「ひ、酷い! 私は素直に告白したのに! ワシントンは正直に桜の木を切ったことを告白して許されたのに!」
「それはウソだ」
「えっ?」
「ワシントンは桜の木を切ってない」

「えっ? このお話しの教訓は嘘をついてはいけない、正直なことは大事ってことじゃないんですか! だとしたら、この話しはどうしてうまれたんですか!」
「ワシントンの伝記の売り上げをアップさせるためだ」
「ある意味正直! 欲望に! あっ、これって前にやった板垣退助のネタの流れっすか? 有名な話しは実は作り話ってオチの」
「……おい、話をそらすな」

「先輩! せっかくだから、そのお話をしましょうよ~。私、このネタ話し、大好きなんですよ~。何かありません?」
「……例えば、ナポレオンは三時間しか寝ていないとあるが、実際は昼寝とかしていた、だな。馬の上で寝ていたって話しもある」
「それ以外は!」

「西郷隆盛の『隆盛』の名前が違う。本当は隆永だ」
「えっ? それは知りませんでした。どういうことっすか?」
「西郷隆永は明治政府樹立に貢献したことで明治天皇から正三位の位を授かることになった。その際、書類にその名を記すために西郷の本名を書く必要があるが、政府は知らなかった。西郷は普段、吉之助という名前を使っていたからな」
「へえ~、そうなんですね」
「西郷本人に聞こうとしたが、箱館戦争を終えて、鹿児島に帰る途中だった為、連絡がとれなかった。そこで、西郷の友人である吉井友実に本名を聞いた。だが、吉井本人も西郷を吉之助と呼んでいたから、本名が思い出せず、隆盛と答えた。それで西郷隆盛の名前で正三位の位を与えてしまい、本人もそれで名乗ることになったわけだ。ちなみに隆盛は西郷隆永の父親の名前だ。後、西郷の弟の名前も違う。西郷従道ではなく隆道だ。これは『りゅうどう』と口頭で告げたとき、薩摩訛りのせいで『じゅうどう』と聞き違えられてしまったオチだ」

「へえ……いろいろとあるんですね。でも、どうして、歴史の本ではそういうこと、書いてくれないんでしょ?」
「ややこしいからだと思うぞ。ただでさえ、歴史は莫大な暗記科目だからな。いちいち覚えていられないだろ?」
「それは確かに。覚えるのが大変ですからね。他にもいろいろとありますので、皆さんも探してみてね!」
「……おい、こら! 話をそらすな……って、いねえ! アイツの逃げ足は逃げの小五郎並か! って、逃げの小五郎も当時のあだ名や異名ではなく、司馬遼太郎の『逃げの小五郎』に由来してるだけどな。いや、そんなことはどうでもいい! 待て、伊藤!」
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