上 下
133 / 171

134:実は勘違いしていること

しおりを挟む
「伊藤!」
「な、なんっすか、先輩?」
「……俺に言うことあるだろ?」
「……何を? まさか、プライベイトまで包み隠さず報告しろって言うんですか? 先輩のエッチ!」
「それがファイナルアンサーか?」
「……若(宮)×草(薙)物語を持ってきてしまいました」

 ゴン!

「あ痛ぁ!」
「いい加減にしろ! いかがわしい本を持ってくるな! 俺が……俺が! どんな気持ちでこんな情けない報告を受けているのか! お前に分かるか!」
「ひ、酷い! 私は素直に告白したのに! ワシントンは正直に桜の木を切ったことを告白して許されたのに!」
「それはウソだ」
「えっ?」
「ワシントンは桜の木を切ってない」

「えっ? このお話しの教訓は嘘をついてはいけない、正直なことは大事ってことじゃないんですか! だとしたら、この話しはどうしてうまれたんですか!」
「ワシントンの伝記の売り上げをアップさせるためだ」
「ある意味正直! 欲望に! あっ、これって前にやった板垣退助のネタの流れっすか? 有名な話しは実は作り話ってオチの」
「……おい、話をそらすな」

「先輩! せっかくだから、そのお話をしましょうよ~。私、このネタ話し、大好きなんですよ~。何かありません?」
「……例えば、ナポレオンは三時間しか寝ていないとあるが、実際は昼寝とかしていた、だな。馬の上で寝ていたって話しもある」
「それ以外は!」

「西郷隆盛の『隆盛』の名前が違う。本当は隆永だ」
「えっ? それは知りませんでした。どういうことっすか?」
「西郷隆永は明治政府樹立に貢献したことで明治天皇から正三位の位を授かることになった。その際、書類にその名を記すために西郷の本名を書く必要があるが、政府は知らなかった。西郷は普段、吉之助という名前を使っていたからな」
「へえ~、そうなんですね」
「西郷本人に聞こうとしたが、箱館戦争を終えて、鹿児島に帰る途中だった為、連絡がとれなかった。そこで、西郷の友人である吉井友実に本名を聞いた。だが、吉井本人も西郷を吉之助と呼んでいたから、本名が思い出せず、隆盛と答えた。それで西郷隆盛の名前で正三位の位を与えてしまい、本人もそれで名乗ることになったわけだ。ちなみに隆盛は西郷隆永の父親の名前だ。後、西郷の弟の名前も違う。西郷従道ではなく隆道だ。これは『りゅうどう』と口頭で告げたとき、薩摩訛りのせいで『じゅうどう』と聞き違えられてしまったオチだ」

「へえ……いろいろとあるんですね。でも、どうして、歴史の本ではそういうこと、書いてくれないんでしょ?」
「ややこしいからだと思うぞ。ただでさえ、歴史は莫大な暗記科目だからな。いちいち覚えていられないだろ?」
「それは確かに。覚えるのが大変ですからね。他にもいろいろとありますので、皆さんも探してみてね!」
「……おい、こら! 話をそらすな……って、いねえ! アイツの逃げ足は逃げの小五郎並か! って、逃げの小五郎も当時のあだ名や異名ではなく、司馬遼太郎の『逃げの小五郎』に由来してるだけどな。いや、そんなことはどうでもいい! 待て、伊藤!」
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

義姉の不倫をバラしたら

ほったげな
恋愛
兄と結婚したのにも関わらず、兄の側近と不倫している義姉。彼らの不倫は王宮でも噂になっていた。だから、私は兄に義姉の不倫を告げた……。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

風紀委員 藤堂正道 -最愛の選択-

Keitetsu003
恋愛
 終わりが失恋だとしても、彼らは愛し続けるだろう。愚かなまでに……。  不良の楽園と呼ばれる町、青島で『不良狩り』と呼ばれる風紀委員がいた。  その名は、藤堂正道。  不良達の起こす理不尽な行動が許せなくて、今日も自分の信念に基づいて不良と真っ向からぶつかっていた。  そんな正道の前に、青島高等学校最大の問題児があらわれる。  予想もしなかった、予測すらできなかった問題児に、正道はどう立ち向かっていくのか。  *この物語は様々な恋愛がテーマとなっています。  第一部……ハーレム   第三部……同性愛  第四部……失恋  番外編……友情  第五部~……家族愛  『アルファポリス』様のサイトで番外編『藤堂正道のおしゃべり』を投稿しています。もし、よろしければ読んでみてください。  『小説家になろう』様『カクヨム』で投稿しています。 尚、『第七部 俺達の家族 -団結編-』の『兄さんなんて大嫌いです! 藤堂正道SIDE』は小説家になろう様のみ投稿していますので、そちらもぜひ寄ってみてください。

処理中です...