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88:青島高等学校七不思議 その一 開かずの音楽室

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「犯罪じゃない? 中の校舎に入るのって」
「ほのか、今更過ぎ」
「でも……私、そんな話聞いてないし。私だけハブなの……」
「大丈夫だし。それよりも夜の学校って何かありそうで楽しそうだし」
「そ、そうだよね!! では、テンションあげて……やってきました、音楽室!」
「ほのか、うるさい」
「ほのか、夜の学校で騒がない方がいいし」
「おたくら言っていることが違うでしょ! 私、見たい番組があったのに、それを我慢して来たんだよ! 無理矢理テンションあげているんだから、水を差さないでよね!」
「「はいはい」」

「……納得いかない。それで? 七不思議の一つで音楽室に来たんだけど、目が光るベートーベンなの」
「目が光るベートーベン! 怖ぁ!」
「ありえないし!」
「いいリアクション、ありがとう。ちなみに目が光るのは、画鋲が刺さっていて、そこに懐中電灯の光が当たるとキラッと光るわけ」
「定番ね。私の学校は音楽室のピアノがひとりでになり出して、何回か聞くと死ぬみたい。曲名は『エリーゼのために』だったと思う。自殺した女の子がなんたらって話」
「ウチの学校はバッハの肖像画が憤怒の形相に変わるだし」
「あるあるね。それで? ここの七不思議ってなに? 私、あまり怖いの嫌なんだけど」

「開かずの音楽室よ」
「開かずの音楽室? もう入っているじゃん」
「入ったら出られないってヤツだし。午後七時以降に音楽室に入ると、閉じ込められて、『月光』が四回鳴り止む前に音楽室の主の質問に答えられなかったら死ぬし」
「おたくらおバカさんなの! もう入っちゃったじゃん! えっ? どうするの! い、一応度を確認するね。どうせ、ホラですけどね~」

 ガチャガチャ!

「マジですか! ドアが開かないんですけど! って、きゃあああああ!」
「ほのか、騒ぎすぎよ」
「ほのかの方がいい演技してるし!」
「いやいやいやいや! ドアの向こう! ドアのガラスに人影がうつってたし! 大男がドアを押さえているからでられないよ!」
「オカルトじゃなくて人力じゃない」
「冷めるし」
「いやいやいやいやいやいやいや! そっちの方が怖いでしょ! うそ! うそでしょ! もう、家に帰りたい! 冗談じゃあ……」

 ~~~♪ ~~~~~~♪

「ひぃいいいいい! げ、月光が流れてきた! ヤバいヤバいヤバい! 外に連絡って? えええっ! 電波がないってどういうこと! 繋がらない!」

 ピンポン!

「我が開かずの音楽室に迷い込んだ愚かな生徒、伊藤ほのか。血の制約により、貴様に制裁を加える。だが、慈悲がないわけではない。この月光が四回鳴り止む前に、我が問いに答えよ。正解なら見逃してやる」
「はぁ? えっ? なにこれ? 百回は使い回されているデスゲーム系の理不尽的なアレ? 入ってこれたんだから、開かずの音楽室じゃないじゃん! ど、どうしよう、るりか、明日香?」
「えっ? どういうこと? 二人がいない……まさか、私を見捨てて逃げたわけ! ひどい! 絶対に夏休みの宿題、みせてあげない!」

「では音楽室にちなんで問おう。そこの壁にかかっている肖像画、おいくらでしょうか?」
「いやいやいやいやいやいやいやいや! 知らんがな!」
「正解は価格14,300円(税込)。2021/0804現在」
「知らんがな! って、月光がリプレイしてるし! これ、クイズ王並にむずいんですけど!」
「では、特別ボーナスクイズ! なぜ、音楽室に肖像画が置かれているのでしょうか?」
「ええっと、1967年に文部省が世界の作曲家の肖像画を教材基準を定めていたからだっけ? 元々、楽器を売るためのおまけで肖像画のカレンダーが配られたことから飾り始めた……ですよね?」
「よろしい! 汝の罪を許そう。では、月光が後一回鳴り止む前に部屋を脱出せよ!」

「自動的に開けてくれないの……って、あかないんですけど!」
「そのドアはひくんじゃなくて、ボタンを押すと出っ張りがでるから、それを回せば開きます」
「……なんでそんなややこしいの。このドア開けたの明日香だよね? あ、あの子、知ってたわね! 知ってて騙したな!」
「ちなみにそのドアを壊したの、藤堂だから。力込め過ぎちゃったみたい」
「せんぱぁあああああああああああああああああいいいいいいいいいいいいいい!」
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