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68:織田ほのか信長の野望 兄弟編

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「私、伊藤ほのか十五歳。五時限目の歴史の授業で居眠りして気がつくと、戦国時代にきちゃった。しかも、織田信長になってるし! 女の子のままだけど、信長として生きてます!」
「と、殿……どうかされたのですか? いきなり誰もいないところに話しかけて」
「気にしないで、長秀クン。お約束だから……」
「は、はあ……(流石は尾張の大うつけ。何を考えているのかさっぱり分からん)」

(今、私に話しかけてきたイケメンは丹羽長秀クン。本家信長が『木綿藤吉 米五郎左 懸かれ柴田に 退き佐久間』と四人の武将を表した詠に出てくる米五郎左に該当する人が長秀クンってわけ。米のように地味だけど欠かせない存在って意味だよ。乙女ゲームに出てくる長髪イケメンで、もちろん、ちょんまげはしてない。これもお約束だよね。まあ、私が女の子のまま織田信長やってるし、そこはご都合主義ってことで)

「それよりも殿、一大事でございます。弟君おとうごぎみの信勝様が……」
「逆心を抱いているって言いたいんでしょ?」
「あ、あくまで噂ですが……」
「はぁ……どうして、愚弟って姉に逆らう習性があるのやら……これはキツイお仕置きが必要ね」
「お、お言葉ですが殿、信勝様は殿と違って、常識人といいますか、折目高なる肩衣、袴めし候へて、あるべきごとくの御沙汰なりといいますか……」

「ああぁ、こっちの話しだから。それにしても、長秀クン。ちょっと毒があるよね? 殿に対してさ」
「殿、いい加減、態度を改めてください。男色の物語ばかりお読みになられて……嘆かわしい」
「ええっ~、女の子ならBLはフツウだって」
「び、び~える? 南蛮の言葉ですか?」
「そう……なのかな? とにかく、武士同士の恋愛は素敵ってこと。趣もあるし、かの有名な藤原頼長も男色家だったし。男色の開祖は空海って知ってた? それにあっ、そうだ! 長秀クンにも貸してあげようか? おすすめの本を五十冊ほど」
「ご、五十冊! 結構です!(殿の闇が深すぎる!) それよりも、信勝様のことです!」

「だよね~。戦国時代ってホント、家督争いで兄弟とか戦うよね~。仁義なき戦いじゃん。周りにはいっぱい敵がいるのにさ~」
「兄弟と言わず、親と戦う事もありますからね。殿の心中お察しします」
「ありがとね、長秀クン。でも、これも長男の定めだし、頑張りますか。確かあっちには柴田……」
「殿……殿は長男ではありません」
「えっ? そりゃそうだけど、一応、私は織田家の長男ってポジションだし。女の子だけど」
「いえ、信長様は次男でございます。長男は信広様でございます」
「えっ? 信広って人、いたの? 私……っていうか、信長って長男じゃなかったの!」

『丹羽長秀の言う通り、織田家の長男は信広だよ、伊藤さん。ちなみに腹違いの兄だけど』
「あ、頭の中に直接声が聞こえてきた! って、この声って……橘先輩?」
『違う。僕の名はサコーン。天の声だと思ってくれていいよ。ほら、○○○系でよくあるじゃない』
「いや、ありますけど! いろいろとツッコミどころがあるんですけど、信広って人、どこにいるんです?」
『今川家の捕虜になってたけど、竹千代と人質交換されて、戻ってきているはずだけど』
「ダサ! 竹千代って徳川家康だっけ?」
『そうだよ。信広も信勝と同じく裏切るから注意してね。まあ、裏切り者の末路は大抵同じ結末だけどね』
「怖ぁ! 聞きたくなかった……はぁ……私、長男じゃないんだ……いや、女の子だからいいだんけど……」
『ちなみに信広の娘がそこにいる長秀の嫁になるわけだけどね』

「殿? 大丈夫ですか? もし、心労がたまっているのなら、この長秀めにお話しください。何が出来るというわけではありませんが、それでも……」
「ありがとね、長秀クン。とりあえず、尾張をなんとかしないとね。そこに住む民のためにも……」
「左様でございますね……(殿は時々、まともなことをおっしゃるから手を焼かされる。ですが、この長秀、殿のためにこの命を賭して尽くす所存です)」






――――――――――――――――――――――――――――――
このお話は戦国武将である織田信長のトレビアのお話です。
諸説の一つを独断と偏見で書いていますので、温かい目で見守っていただけたら幸いです。
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