藤堂正道と伊藤ほのかのおしゃべり

Keitetsu003

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29:相棒のいない日 -藤堂正道編-

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「須藤、第二体育倉庫の荷物、全部表に出したぞ」
「サンキュ、藤堂。やっぱ、藤堂がいてくれると作業がはかどるわ。二人分の働きをしてくれるからな」
「力になれる事ならいつでも声を掛けてくれ。それにしても、ホコリが多いな」
「第一体育倉庫と違って、第二体育倉庫は体育祭や青島祭でしか使わない備品だらけだからな。ホコリもつもるだろ」
「とっとと終わらせようぜ」
「ああっ」
「……」
「……」
「なあ、藤堂。伊藤ちゃんとはどうよ?」
「どうとは?」
「よろしくやっているか」
「ボチボチだな」
「なんだ、その煮え切らない返答は。あんな可愛い子、もう二度と知り合えないかもしれないんだぞ。もっと出会いを大切にしろよ」
「そうだな」
「素っ気ないよな。心配じゃないのかよ」
「心配なんかしていない。アイツはしっかりしているからな」
「(他の男にとられないか心配じゃないのかよって言ったつもりなんだけどな)信頼厚いのな」
「ああっ。アイツは普段、おちゃらけているが、やるときはやる。度胸もあるし、根性もある。いい相棒だよ」
「ベタ褒めだな。直接本人に言ってやれよ」
「調子に乗るから言えるわけないだろ。須藤も今の話はしないでくれ」
「分かってるって。けど、来年は藤堂も俺も風紀委員を引退するだろ? その後のことはどうするつもりだ?」
「……もしも、叶うのなら伊藤には風紀委員に残ってほしい。俺達がやってきたことを次に伝えて欲しいんだ」
「驚いた。後継者にするつもりか。荷が重くないか?」
「アイツはきっと、俺とは違っていい風紀委員になれる。俺は暴力で物事を解決してきたが、伊藤なら相手に寄り添って、本当の意味で問題児を更生できる。だから、期待できるんだ」
「珍しいな、おい。人に期待するのもされるのも嫌っていただろ? 伊藤ちゃんにはいいのかよ?」
「相棒なんだ。大目に見てくれ。おしゃべりは終わりだ。清掃の続きをやるぞ」
「そうだな」
「……」

「ただいま戻りました」
「ん? おかえり、伊藤さん。早かったね。正道に怒られて戻ってきたの?」
「……」
「どうしたの、伊藤さん? 顔が赤いよ」
「べ、別になんでもありません。それより、書類整理、手伝います」
「そう? ありがとう」
「橘先輩」
「何?」
「橘先輩が抜けても、私が風紀委員を盛り上げていきますんで、そこんとこよろしこ!」
「えっ、何急に? 嬉しいこと言ってくれるじゃない。成長したね、伊藤さん。こんなに嬉しいことはないよ」
「橘先輩。私が書類整理頑張っていたこと、先輩に報告、よろしくお願いしますね!」
「……伊藤さんらしくてほっとしたよ」
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