28 / 171
28:相棒のいない日 -伊藤ほのか編-
しおりを挟む
「……」
「……」
「ねえ、伊藤さん」
「何っすか、橘先輩」
「暇なら書類整理、手伝って欲しいんだけど」
「すみません。先輩がいないので休業中です。それに今私、『大航海時代 グランドライン』で胡椒をイスカンダルまで届けなければなりませんので、忙しいです。ほ~ら、マサーミチ、サーコン。人参をお食べ。今日も馬車馬の如く、荷台を引っ張ってね」
「伊藤さん、ツッコミどころが多くてついていけないよ。それって、貿易のゲームなの? 航海なのに、馬車で品を運んでいるの? それと僕達の名前を馬につけてないよね?」
「主人公が船酔いする性質ですので。それと馬の名前は架空の名前です。決して風紀委員の誰かの名前ではありません」
「……まあ、頑張って」
「……」
「……」
「あ、あの、橘先輩」
「なんだい?」
「怒らないんですか? 私が言うのもなんですけど、今の態度、人としてかなりアレな態度だったと思うんですけど」
「もしかして、僕のことを試したのかな? 僕はね、伊藤さん。人に試されることが一番嫌いなの。これはおしおきが必要かな?」
「ごめんなさいすみません申し訳ございませんでも橘先輩が悪いんです!」
「どさくさに紛れて僕のこと、デスったでしょ?」
「いやいやいや! 橘先輩が悪いんですよ、本当に!」
「? 僕、伊藤さんに嫌われること、したかな? もしかして、正道を借りたこと、根に持ってる? でも、今日の正道が行っている作業は体育倉庫の整理だよ。力作業だし、汚れるから、伊藤さんを外してあげたんだけど」
「……あ、あの、橘先輩、単刀直入に聞いていいですか?」
「なんだい? 答えられることなら返答するけど」
「橘先輩って……私のこと、好きなんですか?」
「はい?」
「いや! 返答はいいですから! 私には先輩がいますので無理ですごめんなさい勘弁してください! 秘蔵のBL本を奉納しますからあきらめてください!」
「あれ? これって僕がフラれたことになってる?」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
「とりあえず落ち着こう、伊藤さん」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
「僕にそんな気はないから」
「えっ、うそ、本当ですか? 全く、これっぽっちも興味がないんですか? やっぱり、橘先輩は攻めで先輩が受けなんですかっ!」
「伊藤さん、指ささないでね。それと、どっちがいいの? 好きな方がいいの? それとも嫌いな方がいいの?」
「いえ、橘先輩にはよくしていただいていますので嫌われたくはないんですけど、LOVEだと困るというか、先輩一筋というか、二股はしたくないというか、その……」
「それはないから安心して。そもそも、どうして、そんな誤解をしたの?」
「だ、だって、橘先輩が私を優遇してくれるのは、私のことが好きだからって言われたから……」
「誰がそんなことを言ってるの」
「私と同じクラスの明日香とるりかです。これがヤツらの写メです」
「何のためらいもなく瞬時に親友を売る伊藤さんってある意味すごいよね」
「あれ? 私、橘先輩に明日香とるりかとつるんでいること、話しましたっけ?」
「さっき、言ったじゃない」
「同じクラスとしか言ってませんけど?」
「……僕は風紀委員長だから。委員の交友関係は掴んでいるから」
「怖っ!」
「それより、伊藤さんは正道のこと、嫌いになったりしないの? お仕置きとか小言ばかり言われてるんじゃないの?」
「なりません」
「即答だね」
「だって、好きですから。それが恋ですから」
「……すごいね、キミは」
「そうですか? あっ、私、やっぱり先輩に会いたくなったので、手伝いにいってきます!」
「ちょ、ちょっと、伊藤さん! 僕、正道から伊藤さんの事、頼まれてるんだけど!」
「私が勝手に来たと言っておきますから! 橘先輩が怒られそうになったら、一緒に怒られてあげます!」
「全く、人の言うこと聞いてくれないんだから。そこがあの子らしいというか、似ているというか……僕が伊藤さんを優遇する理由か……ごめんね、伊藤さん。キミは正直に答えてくれたのに、僕は嘘をついている。本当に失礼なのは僕なのにね」
「……」
「ねえ、伊藤さん」
「何っすか、橘先輩」
「暇なら書類整理、手伝って欲しいんだけど」
「すみません。先輩がいないので休業中です。それに今私、『大航海時代 グランドライン』で胡椒をイスカンダルまで届けなければなりませんので、忙しいです。ほ~ら、マサーミチ、サーコン。人参をお食べ。今日も馬車馬の如く、荷台を引っ張ってね」
「伊藤さん、ツッコミどころが多くてついていけないよ。それって、貿易のゲームなの? 航海なのに、馬車で品を運んでいるの? それと僕達の名前を馬につけてないよね?」
「主人公が船酔いする性質ですので。それと馬の名前は架空の名前です。決して風紀委員の誰かの名前ではありません」
「……まあ、頑張って」
「……」
「……」
「あ、あの、橘先輩」
「なんだい?」
「怒らないんですか? 私が言うのもなんですけど、今の態度、人としてかなりアレな態度だったと思うんですけど」
「もしかして、僕のことを試したのかな? 僕はね、伊藤さん。人に試されることが一番嫌いなの。これはおしおきが必要かな?」
「ごめんなさいすみません申し訳ございませんでも橘先輩が悪いんです!」
「どさくさに紛れて僕のこと、デスったでしょ?」
「いやいやいや! 橘先輩が悪いんですよ、本当に!」
「? 僕、伊藤さんに嫌われること、したかな? もしかして、正道を借りたこと、根に持ってる? でも、今日の正道が行っている作業は体育倉庫の整理だよ。力作業だし、汚れるから、伊藤さんを外してあげたんだけど」
「……あ、あの、橘先輩、単刀直入に聞いていいですか?」
「なんだい? 答えられることなら返答するけど」
「橘先輩って……私のこと、好きなんですか?」
「はい?」
「いや! 返答はいいですから! 私には先輩がいますので無理ですごめんなさい勘弁してください! 秘蔵のBL本を奉納しますからあきらめてください!」
「あれ? これって僕がフラれたことになってる?」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
「とりあえず落ち着こう、伊藤さん」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
「僕にそんな気はないから」
「えっ、うそ、本当ですか? 全く、これっぽっちも興味がないんですか? やっぱり、橘先輩は攻めで先輩が受けなんですかっ!」
「伊藤さん、指ささないでね。それと、どっちがいいの? 好きな方がいいの? それとも嫌いな方がいいの?」
「いえ、橘先輩にはよくしていただいていますので嫌われたくはないんですけど、LOVEだと困るというか、先輩一筋というか、二股はしたくないというか、その……」
「それはないから安心して。そもそも、どうして、そんな誤解をしたの?」
「だ、だって、橘先輩が私を優遇してくれるのは、私のことが好きだからって言われたから……」
「誰がそんなことを言ってるの」
「私と同じクラスの明日香とるりかです。これがヤツらの写メです」
「何のためらいもなく瞬時に親友を売る伊藤さんってある意味すごいよね」
「あれ? 私、橘先輩に明日香とるりかとつるんでいること、話しましたっけ?」
「さっき、言ったじゃない」
「同じクラスとしか言ってませんけど?」
「……僕は風紀委員長だから。委員の交友関係は掴んでいるから」
「怖っ!」
「それより、伊藤さんは正道のこと、嫌いになったりしないの? お仕置きとか小言ばかり言われてるんじゃないの?」
「なりません」
「即答だね」
「だって、好きですから。それが恋ですから」
「……すごいね、キミは」
「そうですか? あっ、私、やっぱり先輩に会いたくなったので、手伝いにいってきます!」
「ちょ、ちょっと、伊藤さん! 僕、正道から伊藤さんの事、頼まれてるんだけど!」
「私が勝手に来たと言っておきますから! 橘先輩が怒られそうになったら、一緒に怒られてあげます!」
「全く、人の言うこと聞いてくれないんだから。そこがあの子らしいというか、似ているというか……僕が伊藤さんを優遇する理由か……ごめんね、伊藤さん。キミは正直に答えてくれたのに、僕は嘘をついている。本当に失礼なのは僕なのにね」
0
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
風紀委員 藤堂正道 -最愛の選択-
Keitetsu003
恋愛
終わりが失恋だとしても、彼らは愛し続けるだろう。愚かなまでに……。
不良の楽園と呼ばれる町、青島で『不良狩り』と呼ばれる風紀委員がいた。
その名は、藤堂正道。
不良達の起こす理不尽な行動が許せなくて、今日も自分の信念に基づいて不良と真っ向からぶつかっていた。
そんな正道の前に、青島高等学校最大の問題児があらわれる。
予想もしなかった、予測すらできなかった問題児に、正道はどう立ち向かっていくのか。
*この物語は様々な恋愛がテーマとなっています。
第一部……ハーレム
第三部……同性愛
第四部……失恋
番外編……友情
第五部~……家族愛
『アルファポリス』様のサイトで番外編『藤堂正道のおしゃべり』を投稿しています。もし、よろしければ読んでみてください。
『小説家になろう』様『カクヨム』で投稿しています。
尚、『第七部 俺達の家族 -団結編-』の『兄さんなんて大嫌いです! 藤堂正道SIDE』は小説家になろう様のみ投稿していますので、そちらもぜひ寄ってみてください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる