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04:アジサイ

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「先輩先輩、今日も雨が……以下略!」
「なら、言わなければいいだろうが」
「言いたくもなりますよ。ジメジメしていい加減ウザくて……そんな私の心を癒やしてくれるのはアジサイだけです。綺麗ですよね、アジサイって。私、この花が大好きです」

「確かに色鮮やかだな。ちなみにアジサイの花の色は何で決まるか知っているか?」
「今日は逆バージョンですね。ええっと……土の酸度で決まるんでしたっけ。アルカリ性なら赤、酸性なら青ですよね?」
「そうだ。品種によっては色が固定されているものもあるらしいがな。アジサイには『アントシアニン』という色素が含まれている。その色素がアルミニウムと結合すると、色が変化するわけだな。花の色は『アントシアニン』の量で決まる。酸性の土にはアルミニウムが溶け込んでいるから、酸性土で育てたアジサイは青くなる。逆にアルカリ性の土はアルミニウムが溶けにくいから、アルカリ性の土で育てたアジサイは赤くなるって寸法だな」

「土の性質で花の色を変えるわけですから、アジサイの花言葉の一つに『移り気』があるんですよね~」
「勝手な言い分だな。他の花だって環境によっては花の色は様々だ。それに人間だって育った環境で考え方や性格だって変わるだろうに……納得がいかない」

「先輩って意外にも熱いですよね。私、先輩って青紫色のアジサイの花言葉みたいに『冷淡』だって思っていましたけど。ほら、先輩って私に冷たいですし」
「俺はただ、伊藤に風紀委員としてまっとうになってほしいだけだ。俺と組むのが嫌なら左近に言ってコンビを解消してもらえ」
「……やっぱり冷たい」

 キキキキキーーーーー!

「伊藤!」
「きゃ! な、なんですか! って危なっ! 私をひき殺すつもりですか、あの自転車!」
「伊藤、怪我はないか!」
「は、はい……」

「ふう……何事もなくてよかったな」
「先輩……私のこと、心配してくれたんですか?」
「当たり前だろうが。伊藤は俺の後輩だ。お前が俺の後輩である限り、護るのは当然だろ? だがな、少しは周りに注意しろ。お前はいつもいつも……」
「……先輩ってやっぱり青紫色のアジサイの花言葉みたいな人です。私、先輩に逆らってばかりなのに、なんだかんだでいつも私のこと、護ってくれますし。これって『辛抱強い愛情』なんですかね」
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