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気分転換
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気分転換を兼ねて、パイルバンカー(っぽい)仕組みを入れた盾の設計図をまじめに作り始める。こちらは挟み込むと言う事を考えなくていい分まだ構造がすっきりするはずだ。必要な物は打ち出される杭、その杭を支える部分、そして打ち出す機構。それらを盾の中に納まるようにしないといけない……
(杭はぶっとい物にするのは無理だな。細く頑丈なものにするべきだろう。長さも限られるが、そもそもパイルバンカーは超接近戦で放つものだ。相手の鎧や装甲をぶち抜いてその内部に届く長さが確保できればいいんだ)
だが、まだ問題がある。本来パイルバンカーってのは地面に固定して杭を打つものだ。もしこれを盾に仕込んで放ったとしても──杭が相手の鎧を貫く前にその勢いに腕が押し戻されるだろう。鎧だって貫かれないようにする為に抵抗力がある……それを固定もしていない腕で打ち抜くのは無理なのは想像に難くない。
(メカ物はその腕自体が重量があって、その重量で固定できるからパイルバンカーの杭による衝撃にも耐えられるわけで。でもこっちは生身の人間。普通にやったら、杭の貫通力を出来る限り上げたとしても鎧に押し返されるよな。流石に直接皮膚に当てれば別だろうけど……やっぱり、強引だけどこうするしかないか)
自分はパイルバンカーの機構の背後に、小型のブースターを模した物を二基追加する。固定できないなら、ブースターの出力で押し込む事で無理やり相手に密着させて杭をぶち込もうと言う訳だ。こんなものを使う相手は普通の相手ではない。普通の相手だったら、それこそシールドバッシュでぶん殴った方が早いのだから。
(動力は火薬一択だよな。やっぱりこういう武器として使うパイルバンカーは火薬の爆炎と音があってこそだと自分は思う。ただその爆炎に耐えられるだけの耐久性が必要になるのだが──その辺もまずは設計図を書いて、試作して、悪い部分を修正してとやらないと。やっぱり実際にやってみないと分からないって所は多いからな)
なんて事を考えながら設計図を書いていると、一組の男女が近寄ってきた。もちろんこの男女も親方のお弟子さんである。
「どうですか? 相当悩んでたみたいですけど」
どうやら自分を心配してくれたらしい。申し訳ない事をしてしまったな……そう思いつつ「ちょっと気分転換に、別の仕込み武器の設計図を書いて気分を変えようかなと。こういう感じなんだけど」と、パイルバンカーの設計図を見せたとたん──その男女はすごい勢いで食いついてきた。
「パイルバンカー作るんですか!?」「この設計図……面白そうね」
大きな声でそんな事を口にし、鼻息も一気に荒くなっていた。どうやらこの二人も……同好の士って奴か? なのでちょっと話を振ってみる。
「個人的にメカ物も好きなんですが、このパイルバンカーって奴にはどうしても引かれるんですよね。射程も短い、扱いも難しい、でも刺さればそれこそ硬い相手だろうが一発でスクラップみたいなロマンがあるんですよ」
この自分の言葉に、二人とも分かる分かるとばかりに頷いていた。
「俺もメカ物は好きなんだけど、やっぱりパイルは担ぎたくなるんだよなー。理解してくれる人は多くないけど、やっぱり相手に刺さった時の瞬間はこう、痺れる物があるんだよなー。そこから対戦の流れがガラッと変わる事もよくあるし」
と、男性のお弟子さん。
「そうそう、やっぱりあの相手を確実に殺すっていう殺気があるのも良いのよねー。同性じゃ絶対分かってもらえないんだけど」
こちらは女性の方のお弟子さん。しかし、殺気ときましたか。なかなか、業がお深いようで。でも、両者の言いたい事は自分も理解できる。ぶっとい杭を相手にぶっ刺すって武器だからね……ロマンもあるし殺気も一切隠してない武器だから。
「なら、ちょっと協力してもらえませんか? 気分転換とはいえ、せっかく作る以上はネタ武器で終わらせたくはないんですよ。ただ、今の自分一人で設計すると悔しい話なんですがネタ武器で終わってしまいそうなので……知識がある人に意見を出してもらって、その上でワンモア内でいざという時には使える武器として確立させるためにはどうしたらいいかと考えたいんです。協力をお願いできないでしょうか?」
この自分の申し出に、二人は親方に確認を取ってからOKを出してくれた。で、ここで男性の方がストラス、女性の方はカーネリアンという名前であることを教えてもらった。
「まず、何度も使うメイン武器としては扱わないって事は前提で良いよな? あくまで奇襲、もしくはメインの武器が飛ばされたから使う緊急時の武器って事で」
ストラスの意見に自分は頷く。もちろんメカ物のゲームの中には両手にパイルバンカーを担いでとにかく一撃必殺に全てを賭けるパイラーと呼ばれるスタイルがあることぐらいは知っている。でも、それはあくまで短時間の対戦に用いるものだから許される。冒険では、一瞬で最大火力を出せばハイ終わりとなる物じゃない。出さなきゃいけない時も多いが、それだけではダメなのだ。
「後は重量も問題よね、あまりにも重くなって扱えないんじゃ話にならないもの。それを考えると……何度も使える形にするよりは残弾式が良いかもしれないわ。パイルバンカーで杭を打ち込みつつ、その打ち込んだ杭を内部で炸裂させてダメージを与えるって奴があるのよ。それにした方が一撃必殺性が上がるし、イチかバチかの逆転を狙うという面でもコンセプトに合うんじゃないかしら」
カーネリアンの意見はこれだ。なるほどな……確かにそれならば途轍もないダメージを与える事は出来るだろう。まさに一撃必殺だな……しかし、その内部で爆発する杭の開発はかなり難しいのではないだろうか? そう考えた自分の表情を見たのか、ストラスが口を開いた。
「あ、アースさん。もしその杭を使うという方向に行くならカーネリアンに任せればいいぜ。カーネリアンは鍛冶の他に薬剤も限界までスキルを上げてるからな、火薬系の扱いも得意だ。俺達の中で爆発物の知識も一番長けてるからな……だから、火薬系の悩みはカーネリアンに全部やらせりゃ良い」
ストラスの言葉を聞いて、カーネリアンに視線を向けると彼女は頷いていた。
「了解です、じゃあその辺りを詰めて行ってまずは最初の試作品をどう作るかを考えましょう」
そうして話し合っていると時間はあったという間に過ぎた。ベースは過去に自分が作った変形する弓を仕込んだ盾。あれを改造していく事になった。ただ盾のサイズが中盾となる為自分は使えない……なので、試作品が出来上がった時の試し打ち役はストラスが務めてくれることとなった。ここに居る三人の中で一番筋力が高そうなのが彼なのだ。
そうして翌日から試作品に取り掛かる事と流れを確認し合って今日はログアウト。うん、明日から面白くなりそうだな。同好の士がいるなんて想定外だったが……彼らの発送、着目点を取り入れれば、ハサミを仕込んだ盾の制作に関してもいい考えが浮かぶ可能性がある。そうなることを期待しよう……
****
ちょっと時間が取れたので更新しました。やや短めですが……
(杭はぶっとい物にするのは無理だな。細く頑丈なものにするべきだろう。長さも限られるが、そもそもパイルバンカーは超接近戦で放つものだ。相手の鎧や装甲をぶち抜いてその内部に届く長さが確保できればいいんだ)
だが、まだ問題がある。本来パイルバンカーってのは地面に固定して杭を打つものだ。もしこれを盾に仕込んで放ったとしても──杭が相手の鎧を貫く前にその勢いに腕が押し戻されるだろう。鎧だって貫かれないようにする為に抵抗力がある……それを固定もしていない腕で打ち抜くのは無理なのは想像に難くない。
(メカ物はその腕自体が重量があって、その重量で固定できるからパイルバンカーの杭による衝撃にも耐えられるわけで。でもこっちは生身の人間。普通にやったら、杭の貫通力を出来る限り上げたとしても鎧に押し返されるよな。流石に直接皮膚に当てれば別だろうけど……やっぱり、強引だけどこうするしかないか)
自分はパイルバンカーの機構の背後に、小型のブースターを模した物を二基追加する。固定できないなら、ブースターの出力で押し込む事で無理やり相手に密着させて杭をぶち込もうと言う訳だ。こんなものを使う相手は普通の相手ではない。普通の相手だったら、それこそシールドバッシュでぶん殴った方が早いのだから。
(動力は火薬一択だよな。やっぱりこういう武器として使うパイルバンカーは火薬の爆炎と音があってこそだと自分は思う。ただその爆炎に耐えられるだけの耐久性が必要になるのだが──その辺もまずは設計図を書いて、試作して、悪い部分を修正してとやらないと。やっぱり実際にやってみないと分からないって所は多いからな)
なんて事を考えながら設計図を書いていると、一組の男女が近寄ってきた。もちろんこの男女も親方のお弟子さんである。
「どうですか? 相当悩んでたみたいですけど」
どうやら自分を心配してくれたらしい。申し訳ない事をしてしまったな……そう思いつつ「ちょっと気分転換に、別の仕込み武器の設計図を書いて気分を変えようかなと。こういう感じなんだけど」と、パイルバンカーの設計図を見せたとたん──その男女はすごい勢いで食いついてきた。
「パイルバンカー作るんですか!?」「この設計図……面白そうね」
大きな声でそんな事を口にし、鼻息も一気に荒くなっていた。どうやらこの二人も……同好の士って奴か? なのでちょっと話を振ってみる。
「個人的にメカ物も好きなんですが、このパイルバンカーって奴にはどうしても引かれるんですよね。射程も短い、扱いも難しい、でも刺さればそれこそ硬い相手だろうが一発でスクラップみたいなロマンがあるんですよ」
この自分の言葉に、二人とも分かる分かるとばかりに頷いていた。
「俺もメカ物は好きなんだけど、やっぱりパイルは担ぎたくなるんだよなー。理解してくれる人は多くないけど、やっぱり相手に刺さった時の瞬間はこう、痺れる物があるんだよなー。そこから対戦の流れがガラッと変わる事もよくあるし」
と、男性のお弟子さん。
「そうそう、やっぱりあの相手を確実に殺すっていう殺気があるのも良いのよねー。同性じゃ絶対分かってもらえないんだけど」
こちらは女性の方のお弟子さん。しかし、殺気ときましたか。なかなか、業がお深いようで。でも、両者の言いたい事は自分も理解できる。ぶっとい杭を相手にぶっ刺すって武器だからね……ロマンもあるし殺気も一切隠してない武器だから。
「なら、ちょっと協力してもらえませんか? 気分転換とはいえ、せっかく作る以上はネタ武器で終わらせたくはないんですよ。ただ、今の自分一人で設計すると悔しい話なんですがネタ武器で終わってしまいそうなので……知識がある人に意見を出してもらって、その上でワンモア内でいざという時には使える武器として確立させるためにはどうしたらいいかと考えたいんです。協力をお願いできないでしょうか?」
この自分の申し出に、二人は親方に確認を取ってからOKを出してくれた。で、ここで男性の方がストラス、女性の方はカーネリアンという名前であることを教えてもらった。
「まず、何度も使うメイン武器としては扱わないって事は前提で良いよな? あくまで奇襲、もしくはメインの武器が飛ばされたから使う緊急時の武器って事で」
ストラスの意見に自分は頷く。もちろんメカ物のゲームの中には両手にパイルバンカーを担いでとにかく一撃必殺に全てを賭けるパイラーと呼ばれるスタイルがあることぐらいは知っている。でも、それはあくまで短時間の対戦に用いるものだから許される。冒険では、一瞬で最大火力を出せばハイ終わりとなる物じゃない。出さなきゃいけない時も多いが、それだけではダメなのだ。
「後は重量も問題よね、あまりにも重くなって扱えないんじゃ話にならないもの。それを考えると……何度も使える形にするよりは残弾式が良いかもしれないわ。パイルバンカーで杭を打ち込みつつ、その打ち込んだ杭を内部で炸裂させてダメージを与えるって奴があるのよ。それにした方が一撃必殺性が上がるし、イチかバチかの逆転を狙うという面でもコンセプトに合うんじゃないかしら」
カーネリアンの意見はこれだ。なるほどな……確かにそれならば途轍もないダメージを与える事は出来るだろう。まさに一撃必殺だな……しかし、その内部で爆発する杭の開発はかなり難しいのではないだろうか? そう考えた自分の表情を見たのか、ストラスが口を開いた。
「あ、アースさん。もしその杭を使うという方向に行くならカーネリアンに任せればいいぜ。カーネリアンは鍛冶の他に薬剤も限界までスキルを上げてるからな、火薬系の扱いも得意だ。俺達の中で爆発物の知識も一番長けてるからな……だから、火薬系の悩みはカーネリアンに全部やらせりゃ良い」
ストラスの言葉を聞いて、カーネリアンに視線を向けると彼女は頷いていた。
「了解です、じゃあその辺りを詰めて行ってまずは最初の試作品をどう作るかを考えましょう」
そうして話し合っていると時間はあったという間に過ぎた。ベースは過去に自分が作った変形する弓を仕込んだ盾。あれを改造していく事になった。ただ盾のサイズが中盾となる為自分は使えない……なので、試作品が出来上がった時の試し打ち役はストラスが務めてくれることとなった。ここに居る三人の中で一番筋力が高そうなのが彼なのだ。
そうして翌日から試作品に取り掛かる事と流れを確認し合って今日はログアウト。うん、明日から面白くなりそうだな。同好の士がいるなんて想定外だったが……彼らの発送、着目点を取り入れれば、ハサミを仕込んだ盾の制作に関してもいい考えが浮かぶ可能性がある。そうなることを期待しよう……
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ちょっと時間が取れたので更新しました。やや短めですが……
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