上 下
567 / 608
二章

556話

しおりを挟む
 夜会の前にすでにエンプティになるって、オシャレって大変だよね。私はほぼ立ってるだけだけど。

 珍しく大人の女性っぽく仕上げてもらえた。くびれも胸もないからあくまでも「ぽく」なんだけど。
 ドレスはジュリアスさまの赤と金でお飾りもドヤァっとなってるのに成金っぽくないのすごいと思う。
 豊満ボディだったらまた印象が違うんだろうかなぁ。
 
「うん、よく似合ってるぞ」
 
 着替えが終わって入って来たジュリアスさまは、私を褒めてくれた後、髪を崩さないように頭をポンとしてくれた。
 ジュリアスさまの衣装は、黒地に青紫と銀を取り入れた私の色。
 
「ジュリアスさまもよく似合っててかっこいいです」
 むふぅ。私の旦那さまですよ!って自慢せねば。

「ジュリアス~、リーシャちゃん、準備は整ったかしらぁ?」

 ジュリアスさまに見惚れてたら、お義母さまたちが入って来た。

「まぁ!よく似合ってるわねぇ、可愛いわぁ」
 弾丸ではなくソフトに抱きしめてくれた。
「んー、寂しかったわぁ」
 こんなに会えてないのは新婚旅行ぶり以来かな。お義母さまの変わらぬ行動にホッとしている自分がいる。

 お義母さまは完全武装な感じに仕上がってる。隙のない夫人だ。
 ドレスのデザインは私のと似せて、グレーデンですよって感じの赤と金がバァンと大迫力。

「母上、リーシャちゃんが胸で溺れる前に解放しなよー」
 ソフトでもグイグイっと抱きしめられてる間に、ブラーンと足は浮いちゃうし、主張の激しいお胸は私の顔を埋めてしまう。

 ヘブンなんだけど、呼吸は必要。

「あらあら?ごめんなさいねぇ」

 そして足を床につければ、お義父さまが頭にポンっと手を置く。行動がジュリアスさまと一緒だ。

「わしも会えない間が寂しかったからのぅ」
 さっきは王子さまと走り回ってたのに、今は威厳たっぷりの衣装で激渋マッチョだ。うーん、衰えない筋肉素晴らしい。

 ちなみにセリウスさまは、
「父上と兄上とルークが出席するんだから俺は護衛にって思ったらアンゼリカのエスコートをしろってさー」
とブツブツ言いつつ、赤基調のスーツだ。
 と言うことはアンゼリカさまは?

「伯母さまには敵わない」
っとお疲れな顔でお部屋に入って来た。

 アンゼリカさまは、赤を主体に金色をふんだんに入れて、お飾りも赤とピンクと金で。色合い的には派手過ぎぃってなるんだけど、見事なボディラインと、ゴージャスなローズレッドの髪がドレスに合ってて素敵だな。

「うふふ、アンゼリカちゃんもグレーデンの娘ですからねぇ!宣伝宣伝~」

 お肌ツヤピカと髪の毛トゥルントゥルン、パールのお粉にと垂涎の的である美容品をしっかり宣伝する役になってる。
 くぅ、私では物足りないからありがたいよ。

 お義母さまとニーナとアンゼリカさまで、グレーデンとカイダールの旅館エステと温泉を宣伝しまくってね。

 何気にセリウスさまも髪艶、お肌のハリがすんばらしい。
 王都の若い貴公子もモテのためにきっと欲しがってくれるよね。

 みんな揃ったと思えば、ジェイデン家のダレスさまが夫人と共に入って来た。

「待たせたかな」

 今回の夜会と言うか、歓迎会のために来られる貴族は来るようにお達しがあったので、ジェイデンはダレスさまが出席なのね。

 グレーデンもホーンもだけど、一族の代表を誰か残しておかないとまずい土地はそれなりにある。
 魔獣対策、野盗など防衛問題を抱えているとかね。
 
 みんなでお部屋を出て、会場に呼ばれるまではとホーン家、リュフェリー家と合流して、待機室に集まった。

「ふぅ、全域の貴族が集まるのはそうそうないが、すでにめんどくさいのに絡まれたぞ」
「ああ、どうも辺境は羽振りが良いと思われておるな」
 あらら。でもホーンもリュフェリーもお金持ちの部類なので羽振りがいいのは確かかと。

「うちはグレーデンのような産業はないのだぞ」
「うちだって大した変化はない」
 農業的なことは、相互関係でお手伝いしあってるし、魔道具も優先的に卸してるけど、権利関係はグレーデンが強い状態だからね。
 主に私のやらかしの結果なので知らんぷりだ。

「ワシの後妻にとまで言い出して来たぞ。ヘイト嬢だったか」
 あー、お色気色魔女~!!!
 お金に困ってるのかな。

「ミゲルの第二夫人でもいいとか」
 でもいいって、現ホーン家当主はそんな価値低くないでしょ。
 
 ルシードさまでもハンメルさまでもとにかく辺境に関わりたいらしい。

「グレーデンに入り込めないからかこっちに興味が移ったか」
 ルシードさまが言うと、
「いやー、あれはセリウスを見たらセリウスに迫るんじゃないか」
ってハンメルさまがうんざりした顔で言う。

「げ、あの人香水臭いからの近寄ってほしくないなぁー」
「あら?まだそんな使い方してるのねぇ」

 香水つけ過ぎが流行ったのは数年で、自分も耐えれない人が多かったから廃れたけど、鼻がおかしいのか香水大好きな人もいるから完全にいなくなったりはしないみたい。

「セリウス、そこまで必死だと妙な行動をされかねないから、アンゼリカと離れるなよ。アンゼリカも気をつけてやってくれ」

 うはー、前に絡まれた時のジュリアスさまの嫌悪感たっぷりな態度から何かあったんだとは思ってたけど、よっぽどな目にあったのかしら。

「ふぅむ?ヘイト・・・ヘイトか。あれなら私の顔を見れば寄ってこないから心配ない」

 アンゼリカさまがそう言うとジュリアスさまもハンメルさまもルークもなぜかルシードさまも、アンゼリカさまを憧れの勇者を見る目で拝めるように見た。

 この場合、そこまで嫌われるヘイト嬢がすごいのか?アンゼリカさまがすごいのか?

「まぁ、女性一人に何弱気でいるのぉ?お色気で迫る女性は色魔のおじさまにさりげなく紹介したらいいのよぉ~」

 あら、お義母さまが一番強そう。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

噂好きのローレッタ

水谷繭
恋愛
公爵令嬢リディアの婚約者は、レフィオル王国の第一王子アデルバート殿下だ。しかし、彼はリディアに冷たく、最近は小動物のように愛らしい男爵令嬢フィオナのほうばかり気にかけている。 ついには殿下とフィオナがつき合っているのではないかという噂まで耳にしたリディアは、婚約解消を申し出ることに。しかし、アデルバートは全く納得していないようで……。 ※二部以降雰囲気が変わるので、ご注意ください。少し後味悪いかもしれません(主人公はハピエンです) ※小説家になろうにも掲載しています ◆表紙画像はGirly Dropさんからお借りしました (旧題:婚約者は愛らしい男爵令嬢さんのほうがお好きなようなので、婚約解消を申し出てみました)

新人魔女は、のんびり森で暮らしたい!

田古みゆう
ファンタジー
 見習い学校を卒業して、正式に魔女になったばかりの新人魔女リッカは、就活解禁日となったその日、いくつかの求人票が貼り付けられた掲示板を睨みつけていた。 「おっ? どうした嬢ちゃん? 職探しか?」  就労斡旋所の所長ジャックスは、そんなリッカの姿を見かけ、声をかける。  新人魔女リッカの希望就職先は、森の中の工房。そこでのんびりと見習い仕事をしながら、実習に明け暮れる日々を送ることがリッカの希望だった。  しかし、そんなに都合の良い就職先を見つけることは出来るのか?  新人魔女のほのぼの(?)スローライフが始まります。 ※表紙画像及び挿絵は、フリー素材を加工使用しています。

よくある婚約破棄なので

おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。 その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。 言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。 「よくある婚約破棄なので」 ・すれ違う二人をめぐる短い話 ・前編は各自の証言になります ・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド ・全25話完結

前世で処刑された聖女、今は黒薬師と呼ばれています

矢野りと
恋愛
旧題:前世で処刑された聖女はひっそりと生きていくと決めました〜今世では黒き薬師と呼ばれています〜 ――『偽聖女を処刑しろっ!』 民衆がそう叫ぶなか、私の目の前で大切な人達の命が奪われていく。必死で神に祈ったけれど奇跡は起きなかった。……聖女ではない私は無力だった。 何がいけなかったのだろうか。ただ困っている人達を救いたい一心だっただけなのに……。 人々の歓声に包まれながら私は処刑された。 そして、私は前世の記憶を持ったまま、親の顔も知らない孤児として生まれ変わった。周囲から見れば恵まれているとは言い難いその境遇に私はほっとした。大切なものを持つことがなによりも怖かったから。 ――持たなければ、失うこともない。 だから森の奥深くでひっそりと暮らしていたのに、ある日二人の騎士が訪ねてきて……。 『黒き薬師と呼ばれている薬師はあなたでしょうか?』 基本はほのぼのですが、シリアスと切なさありのお話です。 ※この作品の設定は架空のものです。 ※一話目だけ残酷な描写がありますので苦手な方はご自衛くださいませ。 ※感想欄のネタバレ配慮はありません(._.)

【R18】お嫁さんスライム娘が、ショタお婿さんといちゃらぶ子作りする話

みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。 前話 【R18】通りかかったショタ冒険者に襲い掛かったスライム娘が、敗北して繁殖させられる話 https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/384412801 ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで

兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜

藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。 __婚約破棄、大歓迎だ。 そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った! 勝負は一瞬!王子は場外へ! シスコン兄と無自覚ブラコン妹。 そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。 周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!? 短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。

領主の妻になりました

青波鳩子
恋愛
「私が君を愛することは無い」 司祭しかいない小さな教会で、夫になったばかりのクライブにフォスティーヌはそう告げられた。 =============================================== オルティス王の側室を母に持つ第三王子クライブと、バーネット侯爵家フォスティーヌは婚約していた。 挙式を半年後に控えたある日、王宮にて事件が勃発した。 クライブの異母兄である王太子ジェイラスが、国王陛下とクライブの実母である側室を暗殺。 新たに王の座に就いたジェイラスは、異母弟である第二王子マーヴィンを公金横領の疑いで捕縛、第三王子クライブにオールブライト辺境領を治める沙汰を下した。 マーヴィンの婚約者だったブリジットは共犯の疑いがあったが確たる証拠が見つからない。 ブリジットが王都にいてはマーヴィンの子飼いと接触、画策の恐れから、ジェイラスはクライブにオールブライト領でブリジットの隔離監視を命じる。 捜査中に大怪我を負い、生涯歩けなくなったブリジットをクライブは密かに想っていた。 長兄からの「ブリジットの隔離監視」を都合よく解釈したクライブは、オールブライト辺境伯の館のうち豪華な別邸でブリジットを囲った。 新王である長兄の命令に逆らえずフォスティーヌと結婚したクライブは、本邸にフォスティーヌを置き、自分はブリジットと別邸で暮らした。 フォスティーヌに「別邸には近づくことを許可しない」と告げて。 フォスティーヌは「お飾りの領主の妻」としてオールブライトで生きていく。 ブリジットの大きな嘘をクライブが知り、そこからクライブとフォスティーヌの関係性が変わり始める。 ======================================== *荒唐無稽の世界観の中、ふんわりと書いていますのでふんわりとお読みください *約10万字で最終話を含めて全29話です *他のサイトでも公開します *10月16日より、1日2話ずつ、7時と19時にアップします *誤字、脱字、衍字、誤用、素早く脳内変換してお読みいただけるとありがたいです

私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。

木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアルティリアは、婚約者からある日突然婚約破棄を告げられた。 彼はアルティリアが上から目線だと批判して、自らの妻として相応しくないと判断したのだ。 それに対して不満を述べたアルティリアだったが、婚約者の意思は固かった。こうして彼女は、理不尽に婚約を破棄されてしまったのである。 そのことに関して、アルティリアは実の父親から責められることになった。 公にはなっていないが、彼女は妾の子であり、家での扱いも悪かったのだ。 そのような環境で父親から責められたアルティリアの我慢は限界であった。伯爵家に必要ない。そう言われたアルティリアは父親に告げた。 「私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。私はそれで構いません」 こうしてアルティリアは、新たなる人生を送ることになった。 彼女は伯爵家のしがらみから解放されて、自由な人生を送ることになったのである。 同時に彼女を虐げていた者達は、その報いを受けることになった。彼らはアルティリアだけではなく様々な人から恨みを買っており、その立場というものは盤石なものではなかったのだ。

処理中です...