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二章

464話

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 そう言えば小さいお皿や小鉢はあんまり種類が無いんだよね。
 大皿に一盛りずつの方が運ぶのも楽だし、いいかな。
 一口ずつじゃ物足りないよね。

 んーーーーーーー。
 とりあえず出来たものを大皿にちょっとずつ。鉢物と煮付けは別皿にして。

 ニーナとアズライト、ポム、ティムに試食をしてもらう。

「少しずつたくさん食べられるのは素敵ですね」
 一口二口だなんて、グレーデンの食卓には無いもんね。

「プキュ」
「モキュ」
『ふむ。少しずつだと味わいがしっかり楽しめるの。薄味だが野菜の味がわかって良いの』

 アズライトが京風の味を褒めてくれた。
 ほのかに出汁が香ってくるのが好きだ。
 卵焼きと茶碗蒸しもおかわりを所望されちゃったけど、味見だってば!

 牛鍋とカニ鍋にウドーんまで。

 ポムとティムのお腹はぽんぽこりんなんだけど、あれだけ食べた後にしてはそこまでじゃ無い。二匹もイリュージョンな胃袋持ってるよね。

 オヤツは梅酒ゼリーとスパイスケーキにした。
 本当は抹茶とか使いたいけど、抹茶に出来そうな茶葉には出会ってない。
 紅茶のプリンも好きだけど。

 あ、好きならば作ればいいんだ。

 濃いめの紅茶を煮出して甘く甘く。生クリームと卵もたっぷり。

 ぐっふふ。カフェの味。
 
「プキュプキュ」
「モキュン」
 待ちきれなくて鍋の周りで謎のステップを踏むポムとティム。和む。

 ニーナが悶え死にするからほどほどにね。

 冷蔵庫に入れてしばし待ってる間に、果物のゼリーも。ついでに。

 これは旅館全部で共有して、旬の果物とハーブの宣伝にしたい。

 あまりハーブを主張すると殿方の好き嫌いが分かれるから果物が主役ね。

 和風じゃ無い旅館には、洋風のコースを考えないと。
 どちらにしても魔の森のお肉が主役かな。
 魔素が濃いものを食べて、英気を養ってもらう。
 療養施設では、お客様の状態によっては魔素が濃すぎるのは逆効果なのでちゃんと見極めて対応出来るスタッフを雇って、定期的に研修してもらわないとだね。

 女性のエステがある施設にはお花のお茶やお菓子が多いといいかなぁ。

 いっぱいレシピを考えないとだね。

 ルルゥたちも協力してくれるだろうし、他所では食べられないものを食べてもらおうね。

 そう言えば、王宮や他の貴族のコックさんが研修に来るのも増えて来たら大変だから、お料理学校みたいなの作った方が良いかも。
 宿泊施設付きで。
 これは儲かりまっせ!じゃなくて。
 旅館で美食に目覚めた貴族のコックさんをうちの厨房で預かりきれなくなるのを防がないとね。

 ん?自信過剰かな。
 でもうちの料理と食材を味わったらきっと飛びつくよね。

 ちょっと楽しくなって来た。

 旅先で美味しいものが食べれるようになるには、平民の料理人も育って欲しいところ。
 料理学校もらおうね他に料理教室もあっても良いかも。
 講師はうちで修行したコックさんのみ。

 明日は企画書作ろうかな。

 プリンとゼリーが固まったので味見タイム。

「プッキューーーン!!」
「モッキューーーーン!!」
 ポムとティムがばたりと倒れた。

「なんで!?」
「ポムちゃん!ティムちゃん!!」

 え、ニーナ?って今はそれどころじゃなかった。

「ププー」
「モッキュー」
『美味しすぎたらしいの』
 アズライトがペロリと口元を舐めてから教えてくれた。

 ポムたちはしばらく幸せそうに目を瞑って恍惚としていたけど、起きて再び口に入れるとものすごい勢いで食べた。

「確かに昇天しそうな美味しさです」
 ミルク紅茶プリン恐るべし。
 生クリームいっぱいでブリュレのような濃厚さと甘さが口に広がるからね。
 ルルゥに教えたやつより濃厚にしたから。

「バケツいっぱい欲しいです」
 バケツプリンに憧れるのは異世界でもあるんだ!

「プーキュゥ」
「モーキュゥ」
 ニーナと同じポーズでうんうんやってる。

「んー、そこまでいっぱい食べると多分飽きるよ。今度作るときは大きめにするね」

 流石に時間が足りないよ。

 そんなわけでお片付けして料理はおしまい。

 外に出るとアランとジェイクがいい汗かいてた。

「「お疲れ様です」」
「お待たせ」
 料理はジュリアスさまに出すまで内緒なので、ゼリーをオヤツに渡した。
「お部屋で食べてね」
「「ありがとうございます」」
 マジックバッグにしまってほんのり笑ってるから、彼女と食べる気かも。

 まぁ、青春だね。楽しんで欲しい。

 そう言えばニーナもルークに持って行きたいかな?お宿に付き添うからお楽しみでいいか。

 庭を通っているとポムとティムがちょっと走っていって戻って来た。

「プキュ」
「モキュ」
 二匹が私に種と石を持って来た。

 どこかにしまってたのかな。

『今日のご飯が美味しかったお礼だそうだの』
 おお、そこまで美味しかったんだ。チップもらっちゃった。

「ありがとう、また作るね」

 種は〈銀杏〉で石はインカローズっぽい色合いの可愛い石だ。

 銀杏かー。焼きたいね。ただ臭いよね。
 雌雄ないとダメだっけ。そこは不思議植物かな。

「茶碗蒸しが一段上にいくね」
「「キュッッ!!??」」
 ポムとティムが飛んだ。飛んだ後踊り出したよ。すごい嬉しいらしい。

 食べすぎると毒だからあまり布教しない方がいいかな。
 〈無毒化〉使える人を雇うか。

 屋敷に戻るまでずっとポムたちがダンシングなのでアランとジェイク、ニーナまで歩みが浮ついてる。

 楽しそうだからいいか。



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