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二章

435話

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 薬用素材はチェック終わったけど、翻訳は少し苦戦。
 デレード語は古代神聖語や古代語に近いようで近くない。
 公用語がちょっと不思議な引用だなってとデレード語を読むと正反対になってたりで、どっちが正解か?みたいになる。
 訳した人のクセかなぁ?クセで正反対はないか。

 多分リーシャのおかげかで、言語能力が高いんだけど、そもそも間違った文の正解はわかるわけないんだよね。
 誤訳されてる素材を鑑定しながら訳すと正解はなんとかわかるんだけど、公用語が違ってたり、デレード語の方が違ってたりでどっちかだけ翻訳したらあかんやつ。
 二カ国分の仕様書が送られたのはこのためなのかなぁ。

 基本的には公用語で書かれた物が信用度が高いとされているけど、翻訳者の能力次第なんだよね。

 送って貰ったお礼にヤバそうな誤用だけはお知らせしよう。
 今まで問題がなかったらなら向こうでは効いた可能性もある?

 翻訳に飽きたので先ほどの龍涎香らしきものを出して匂いを嗅ぐ。
 素材をいじっていたポムとティムが齧ろうとにじり寄ってくる。
 多分不味いよ。

 塊のままだとさほど匂わないので少し削ってみる。
 んー、好きかも。
 焚いてみる?

 小皿をニーナに出してもらって少し削ったのを載せて火をちょろり。

 アンバーやイサナ香って人工的な香りは嗅いだことあるけど、本物は初めて。

 なんとも言えない幸せな香り。
 私的な好みだと思うけど。

「なんだか甘い香りですね」
「ほっとする気がします」

 鑑定さんによると海魔獣レビィアタンの肝臓の化石らしい。
 ありゃ結石とか糞石じゃないのね。
 肝臓が良い匂いって不思議。
 
 これは和風な宿に使いたいなぁ。お香入れで焚きたい。

 ラグビーボールくらいはあるのでかち割って分けよう。
 カイダールやアッガスの和風宿にも置かないとね。お譲りはしません!!
 でもお義父さまの独り占めは無しの精神に外れちゃうかな。
 王様たちくらいなら配っても良いかなぁ。

 あっちの世界の龍涎香は高嶺の花だけど、レビィアタンってレアかしら。
 化石じゃなかなかゲットできないか。
 このサイズならそんな減らないかなぁ。

「プキュン」
「モキュ・・・」
 ポムとティムが齧って変な顔してる。まずいでしょ。生レバーならともかく化石だよ。
 
 石なんだよ!あ、でも燃えたからちょっと違う?

 ほんのりにしておかないと匂いが濃くなっちゃうから化石はしまっておこう。

 ニーナがお茶を淹れてくれたのでみんなで休憩してからまた翻訳に戻った。

 魔導書を訳したり、写本したりの方が気楽だったかも。
 薬術関係は頭にパッと浮かんでこない。
 魔導陣や魔法式はわりと浮かんでくるから、リーシャは薬学が好きでも得意じゃなかったのかな。

 アーロンお兄さまは、公用語はほぼ読めるけど話せない、アルモンド語が母国語なので、レイドラアース語は勉強中らしい。
 訳さず丸投げはまずいよね。
 公用語にも間違ってる部分があるから。
 
 マーベルハントのお祖父様たちならイケたかな。仕事押し付けちゃ悪いか。
 ただでさえ、伯爵から侯爵になって面倒かけちゃったし。

 途中でニーナに「夕刻です」って言われて。
 本日はここで終了。

 
 離れの庭から訓練場の庭へと歩いてると、お祖父様たちが池の方からやってきた。

「おお、リーシャちゃん」
「お祖父様、お祖母様」
 スピネルさんたちと池ダンジョンに行ってきたらしい。
「今日はなぁ、すごいのが出たぞ」
「キラキラだ」
 嬉しそうに言う彼らの手には黄金のリンゴ。
 ポンカンサイズ。デッカい。

「この世で一番美しい方にあげましょう」
 ギリシャ神話のやつー!思わず口に出しちゃった。
「お?なんだ。そう言ったものなのか?」
 
 でも一個じゃないから喧嘩にならないね。
 だってお祖父様がお祖母様に、スピネルさんとマルゴさんが私にりんごをくれたよ。
「たくさん採ってきたからみんなに配れるぞ」
 不和にならず!

「これは甘くてうまいから酒にもなるかね?」
 黄金のリンゴで酒造りってめっちゃ贅沢。
「明日にでもタンクに入れましょう」
「そうかね。楽しみだねぇ」

 途中からお祖父様に肩車されて本邸に着いた。
「あらぁ、お義父さま、お義母さま、リーシャちゃん、おかえりなさぁい」

 お義母さまがちょうど玄関ホールに降りてきて、お帰りのハグをしてくれた。
 スピネルさんとザイルさんがお義母さまに「お美しい貴方に」って黄金のリンゴを差し出した。
 キッザー!!
「あらぁ?どうしたのぉ?綺麗な果物ねぇ」
 金ピカのリンゴはインパクトあるよね。
「私も美しさには自信があるわぁ?」
 ってルルゥが参戦しちゃったよ。

 私の方が美しいと言い合いにはならないから良いけど。

「ルルゥ、パイとタルトが食べたいな」
「そうねぇ、おいし・・・あら?」
 ルルゥが私をぐいって抱き上げて首とお腹の匂いががれた。

 へんたーーーーーぃ!!!

「リーシャちゃん。変わった匂いねぇ?香水?」

 あ、龍涎香か。

「石みたいな素材のが香りの素だよ」
「あれがこんな匂いなのぉ?」
「臭い?」
「臭くないわぁ?何か変わった香りよねぇ、獣っぽいような甘い果物のような??印象がバラバラ?」
 料理人の鼻だからかな?

「お宿に焚く香にしようと思って」
「そうなのねぇ」
 ルルゥが抱き上げたままの私にお義母さまもお祖母様も顔を近づけて匂いを嗅いだ。

「確かに何か惹かれる香りねぇ」
「蠱惑的だね」

 流石にお祖父様とスピネルさんたちは少し離れた場所で手を仰いで匂いを確かめてた。

「嫌味のない香りだ」
「うん、都会のキツイやつじゃないな」
 香水嫌いでも嫌じゃないようで安心。

『我は好かんの』
 アズライトは私に魔獣の香りが付いてるのが気に入らなくて、離れの時から静かだったらしい。

 えー、でもこの香りは使いたいなぁ。ダメ?





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