上 下
380 / 659
二章

370話

しおりを挟む
 少し間が空いてしまったけど久しぶりにフーゴの村に行くことになった。
 クラウスさまとお出かけ。
 お義父さまとジュリアスさまが悔しげなのをセリウスさまがちょっと揶揄ってた。

 ルルゥにたくさんオヤツを用意してもらったら「私もいくわよぉ~」ってキッチン馬車を出動させた。

 チェイスさんとアモンさんも付き添ってのちょっとだけでお出かけ。

 クラウスさまの魔馬に同乗させてもらうのはひさしぶりでちょっと楽しい。一人で馬に乗れるようになりたいな。

 フーゴの村に着くと子供達の賑やかな声が。畑で走り回ってたみたい。

 私たちの到着を大勢で出迎えてくれた。

「ようこそ、リーシャさま」
「「おくしゃまー」」 

 可愛いがいっぱい。ニーナの持つ籠に入ってたポムたちが出てくると子供達の興味はポムたちに移ってみんなで畑に戻って行った。
 獣人の子供達も自然に混じってるので問題はなさそう。

 畑や工場の見学をして、新しい玩具を渡して説明をする。
 なんとデイジー嬢がフーゴに定住することになってた。気に入ってるとは聞いてたけど思い切ったなって思ったら、婚約が決まったそうで。

 えええええ!!が連発しちゃう。
 どちらの果報者ですか!うちの騎士さんかしら?

 クラウスさまは知ってるようで私がびっくりしてるのを見て楽しんでる。

「グレーデンで雇ってもらえてやり甲斐のあるお仕事を頂けただけでも幸せでしたのに素敵な伴侶と巡り会えて・・・」
 デイジー嬢はとっても幸せそうでほっこりだ。

 あちらが婚約者ですって紹介された先には、予想外すぎると言うか納得というか。
 そう来たか!!

「お久しぶりです。若奥様」

 朗らかで優しげな笑みを浮かべて挨拶してくれたのは、ディードさんだった。
 おおおーーー!!

 熊獣人さんを選ぶとはツウだな。

 いろんな意味で令嬢の枠を吹き飛ばすデイジー嬢は潔くてかっこいい。

「こんな若くて綺麗な人が俺なんか・・・とお断りしていたんですがいつもさりげなく手を差し伸べてくれて、優しくて直向きな彼女を守って行きたいと思いまして・・・」

 テレテレと大きな肩を下げつつ報告してくれたディードさん。
 包容力抜群で何が来ても守ってくれそうな旦那さまだ。良かったねぇ。

 うちの騎士さんたちはヘタレか。若くて綺麗なデイジー嬢をゲット出来ないとはって思ったのも束の間、ディードさんなら仕方ないと納得した。

 なんか甘酸っぱい恋バナにちょっと興味が尽きないけど、周りのおばちゃんたちに散々ネタにされたんだろうな、な気がしたのでお祝いの気持ちだけ伝えた。

「クラウスさま、内緒にしてたのずるいですー」
「えー、直接見た方がいいでしょー」

 ポムたちがデイジー嬢とディードさんの前でお祝いの舞を始めた。
 可愛いお尻ダンスを二人は喜んでくれた。
 ディディエとアズライトは横でやんややんやと手を叩いていた。


 お昼の時間になったのでお庭でバーベキューを始めた。

 ルルゥとディードさんがキッチン馬車で色々作ってくれて、チェイスさんたちが鉄板でお肉を焼きまくる。

 大人も子供もワイワイ。

 採れたて野菜もたくさんで、ホコホコお芋が美味しい。

 子供達はポムたちとクッキーの取り合いをしてる。奪うとかじゃなくて戯れてるんだけど。

 そしてやっぱり途中でナタが飛んだ。

「いえーーーーい!俺の勝ちー」
 なんの勝負かと思えば今日獲れた獲物のサイズらしい。一日に何回ナタが飛んでるのよ。

 空を飛んでたらしい太めなサギみたいなのを持ってきたよ。
 うっかりこの辺りを飛んだばかりに。

 ディードさんがすぐ血抜きしたけど食卓に出るのは明日だそうだ。

 オヤツを配って移動することになった。
 次来る時はお祝いを忘れないようにしないとだ。

 今日はもう一箇所寄る予定でフーゴの村からちょっと言った先の牧場に向かった。

 フーゴの村を正式に開拓することになってお肉や乳製品を近くで入手するために移動させたそう。

 空いてた土地はいっぱいあるのでやりたい放題だ。

 牧場には引退騎士さんと引退ワイバーンがいるそうで。
 出迎えてくれたのはまだまだ強そうなおじさんたちだった。
 現役じゃないの!?

 案内されて行った先では予想できる牛豚などいなかった。

 ラオウの馬くらい大きな牛・・・牛?とそれに張り合うヤギ?とでぶつかり合いをしてた。
 その側のボアっぽいけど毛がないタイプの寝転がってる豚?がいた。

「若奥様は初めて見るかー?」

 案内役をしてくれたボイドさんがガハハと言いながらピョンと飛んで、気が立ってるらしい牛?のお尻をバシンと叩くとおとなしくなった。
 すごい音したぞ!おっちゃんすごいな。

「こいつらはこの辺境で生き残るために魔獣と交配させた混合種ってやつだわ」

 どうやら普通の家畜では魔素が多くて魔獣の多い土地じゃ繁殖できないそうでワイルド種って言う原種に近い血筋と類種の魔獣とでミックスさせてるんだそうだ。

 基本的には牛もヤギもミルク用で雄は強い個体を種用で残して他は食べちゃうんだそう。
 豚は全部食用らしい。
 切ないけど仕方なし。

 って、あの喧嘩してたのはメスなの!?
 マジか。
 あれからミルクもらうとか大変じゃないの。

「リーシャちゃん、ここにいる従業員はみんなボイドくらい強いんだよ」
 牧場にそんな人材がいっぱい!!

 クラウスさまはボイドさんから書類を受け取ってパラパラっと確認すると頷いた。

 ワイバーンたちはこの牧場の子が暴れたり逃げ出したりしたら押さえてくれるんだそう。
 普通の牧場じゃないね!

 ルルゥが牧場のコックさんと料理を作ってくれて。
 ミルク鍋と豚?を串焼きにしたのをみんなで食べた。
 ポムたちはここでも人気者で、アズライトは牛?を一回威圧してた。何があったのか。

 ここでもうチーズ工場を作る予定になってるらしくて今から腕がなるとおっちゃんたちが盛り上がってた。
 
 帰りもクラウスさまに乗せてもらって、途中の原っぱで少し採取をしてから戻った。





 


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【魅了の令嬢】婚約者を簒奪された私。父も兄も激怒し徹底抗戦。我が家は連戦連敗。でも大逆転。王太子殿下は土下座いたしました。そして私は……。

川嶋マサヒロ
恋愛
「僕たちの婚約を破棄しよう」 愛しき婚約者は無情にも、予測していた言葉を口にした。 伯爵令嬢のバシュラール・ディアーヌは婚約破棄を宣告されてしまう。 「あの女のせいです」 兄は怒り――。 「それほどの話であったのか……」 ――父は呆れた。 そして始まる貴族同士の駆け引き。 「ディアーヌの執務室だけど、引き払うように通達を出してくれ。彼女も今は、身の置き所がないだろうしね」 「我が家との取引を中止する? いつでも再開できるように、受け入れ体勢は維持するように」 「決闘か……、子供のころ以来だよ。ワクワクするなあ」 令嬢ディアーヌは、残酷な現実を覆せるのか?

石女を理由に離縁されましたが、実家に出戻って幸せになりました

お好み焼き
恋愛
ゼネラル侯爵家に嫁いで三年、私は子が出来ないことを理由に冷遇されていて、とうとう離縁されてしまいました。なのにその後、ゼネラル家に嫁として戻って来いと手紙と書類が届きました。息子は種無しだったと、だから石女として私に叩き付けた離縁状は無効だと。 その他にも色々ありましたが、今となっては心は落ち着いています。私には優しい弟がいて、頼れるお祖父様がいて、可愛い妹もいるのですから。

ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません

野村にれ
恋愛
人としての限界に達していたヨルレアンは、 婚約者であるエルドール第二王子殿下に理不尽とも思える注意を受け、 話の流れから婚約を解消という話にまでなった。 ヨルレアンは自分の立場のために頑張っていたが、 絶対に婚約を解消しようと拳を上げる。

酷い扱いを受けていたと気付いたので黙って家を出たら、家族が大変なことになったみたいです

柚木ゆず
恋愛
 ――わたしは、家族に尽くすために生まれてきた存在――。  子爵家の次女ベネディクトは幼い頃から家族にそう思い込まされていて、父と母と姉の幸せのために身を削る日々を送っていました。  ですがひょんなことからベネディクトは『思い込まれている』と気付き、こんな場所に居てはいけないとコッソリお屋敷を去りました。  それによって、ベネディクトは幸せな人生を歩み始めることになり――反対に3人は、不幸に満ちた人生を歩み始めることとなるのでした。

夫から国外追放を言い渡されました

杉本凪咲
恋愛
夫は冷淡に私を国外追放に処した。 どうやら、私が使用人をいじめたことが原因らしい。 抵抗虚しく兵士によって連れていかれてしまう私。 そんな私に、被害者である使用人は笑いかけていた……

婚約破棄ですか? では、最後に一言申しあげます。

にのまえ
恋愛
今宵の舞踏会で婚約破棄を言い渡されました。

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

【完結】それではご機嫌よう、さようなら♪

山葵
恋愛
「最後まで可愛げの無い女だ。さっさと荷物を纏めて出ていけ!」 夫であったマウイに離縁を言い渡され、有無を言わさず離婚届にサインをさせられた。 屋敷の使用人達は絶句し、動けないでいる。 「おいビルダ!何を呆けているのだ。この届けを直ぐに役所に届けろ」 「旦那様、本当に宜しいのですか?」 「宜しいに決まっているだろう?ああそうだ。離婚届を出した序でに婚姻届を貰ってきてくれ。ライナが妊娠したから早急に籍を入れる予定だ。国王陛下に許可をしてくれる様に手紙も頼む」 私はビルダと共に部屋を出る。 その顔はきっと喜びで微笑んでいただろう。

処理中です...