上 下
371 / 608
二章

361話

しおりを挟む
 そんなわけで王都に向かう朝。
 見事にみんなピカピカ艶々してる。
 リックさまもお肌がツルンと髪までピカピカになっててもはや十代に見えるよ。十分若く見えてたけど過労気味だったのかな。
「いやー、自分で自分の肌を触って楽しいのは初めてです」
 なぜかお祖母様とかお互いの肌を褒めあってるよ。
 ルルゥもルークも五割り増しぐらいイケメン度がアップしてる。隣立ちたくないな。
 でもポムとティム、ディディエが二人のそばでポージングして張り合ってる。種族が違うから勝ち負けないよね。毛皮持ってるだけで最高な生き物だよ。

 今回はホーンで活躍した騎士は全員参加とかしたいわけだけど警備の問題でみんな離れるのは無理なわけで代表が行く。
 グレーデン家もみんなお呼ばれなのだけど責任者不在な訳にも行かないのでお義父さまとお義母さまが残る。
 セリウスさまとクラウスさまは祝賀会の直前に移動してその後すぐ戻る感じだそう。

 お義父さまとお義母さまに行ってきますのハグをして転移陣のある塔に。
 セリウスさまとクラウスさまも手を振ってお見送りしてくれる。
「また明日ねー」

 すでに騎士さんたちが待機してて荷物と馬車も順次送られてる。

「では留守を頼むぞ」

 相変わらず一瞬で移動が完了。

「「「「お帰りなさいませ」」」」
 
 タウンハウスの執事長セバスティアンに出迎えられて大勢の侍従侍女に挨拶を受ける。

 私はジュリアスさまに抱き上げられてタウンハウスのみんなに生暖かく見守られる。くぅ。グレーデンと違ってちょっと照れ臭いよ。タウンハウス組も慣れて普通にして欲しい。
 リックさまは王宮に帰って、お祖父様たちは友人に会いに行くと出かけた。

 お部屋に案内されるとニーナがお世話をしてくれるので「今回はニーナもお世話を受ける側にならないと」って。
 無茶苦茶眉を寄せて断腸の思いをあらわにしてるけどタウンハウスの敏腕メイドたちが「おまかせを」っと連れていちゃった。

「ニーナはリーシャが大好きだな」
 うふふ。私もニーナが好き。でも今回はルークのお相手として綺麗に着飾った姿を見たいの。
 
 今日はジュリアスさまが王都でのお仕事をするので私も私宛に届いてるお手紙の返事を書くことに。
 ほとんどはお義母さまやハロルドとかセバスチャンが処理してくれてるけどね。

 テーブルでウダウダ文面を考えてたら扉の向こうで何か騒がしい。

 誰か帰ってきたのかな。

「リーシャさま、お客様なのですが・・・」
 なぜかルークがめっちゃ怖い顔でお伺いに来た。

「?」
「リーシャ嬢、会いにきたぞ」

 ルークを押し除けて入ってきたのは王様だった。いや王様って今忙しいよね!?

「ルーデウスの菓子を食いながら気安い会話がしたいのだ」

 王様、仕事にうんざりしておやつをおねだりに来たよ。

「王妃さまも同じなんじゃ・・・?」
 自分だけ息抜きとか怒られちゃうよ。
「王妃は化粧水を自慢して楽しく茶会を催したりして元気だから良いのだ」
 王妃さまってばいつも嫌味を言うような夫人を呼んでお肌を見せびらかしてるんだそう。
「私にも一滴も分けてくれないほど気に入っておる。妻の機嫌がいいのは平和でありがたいことだ」
 王様はちょっとクマさん飼ってるね。

 ルークが戻ってきてお茶の準備が整ったとテラスに案内してくれた。

「ルークも同席してて」
 
 王様とサシでお茶とか無理すぎる。

「良いぞ。ルークも一緒に座るといい」
 ルークが微妙な顔で私を見てきたけど知らない。

 ルルゥがパンケーキを運んできた。さすがに焼き菓子とか時間が足りないよね。

「おお、ルーデウス座れ」
「あらぁ追加はいいのかしらぁ?」
「一時間しかおれぬのよ」

 さすがに王様にルルゥと呼べは言わないね。

 鼻のいいポムたちがすでにおやつを待ってるのでアイテムボックスからクッキーを出して皿に盛る。喜びの舞をしてくれた。

「お前たちなんか煌めきが増しておるな。モテる要素を足してくるとは明日はまた騒がしくなるな」
 ルルゥとルークを見て王様が首を傾げる。さっき化粧品の話しをしてたのに二人が化粧水を使ってると思いつかないのかしら。
「まぁ!モテたいわけじゃないわぁ。ただ化粧水を欲しがる人への牽制よぅ」
「ん?化粧水を使っておるのか?そんなに効果があるなら牽制しても欲しがる者は黙らぬだろう?」
 王様はルルゥの頬をツンツンした。ちょっと可愛い反応だ。

「リーシャさまに直接殺到出来ないよう視線を分散するのです」
「そうなのよぉ、私たちを見て突撃したい女性は減るんじゃないかしら?」
 化粧水で綺麗になってもうルルゥたちに勝てない現実を突きつけるとか鬼じゃん!

「そうだわぁ!陛下も艶々になって視線を集めていただきましょうよぉ~♡」
 ルルゥの悪ノリでルークも悪い顔で二人がかりで私に化粧水とポーションを出すように言って。
 王様に化粧水を塗りたくって、百目ポーションと百目の肝ポーションを飲んでもらった。
 肝ポーションはお疲れだからちょっと奮発なつもりで。

 お義母さまの時のようにお肌がピーン、王様が若返りました。
「おいおいおい、こんなのを王妃が見たら私は恨まれそうだ・・・」
 せっかくクマさんを退治して十歳以上若く見えて綺麗なイケオジ度がアップしたのに真っ青。王妃さまどんだけ怖いの。
「王妃さまにはお義母さまからフルセットで定期的にお送りしてますよ?」
「このポーションもか・・・?」
 ん?ポーションはどうだったかな。肝ポーションは送ってないかな。多分、元気溌剌は必要ないし。

「陛下の美しさがアップして王妃さまもお喜びになって惚れ直すに違いないわぁ⭐︎」
「お、そうか?」
「ええ、王妃さまも陛下の昔の姿を思い出して当時の思いを再燃されるのでないでしょうか?」

 ルークとルルゥが流れるような連携で王様を煽てて機嫌の良くなっ多分ところをサクッと王妃さまに見ていただきましょうって追い返しちゃった。
 なんか適当にあしらわれてるのが気の毒で王妃さまにお土産をってクッキーと百目ポーションを渡したよ。

「お忍びで兵を撒く陛下を甘やかさなくていいんですよ」

 ルークからやんわりお叱りを受けた。

「陛下があの状態だと明日は私たち目立たないかもよねぇ?」
 全然残念そうじゃない口調でルルゥは紅茶を飲む。

 王様、本当におやつ食べたかっただけだったのかな?


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

噂好きのローレッタ

水谷繭
恋愛
公爵令嬢リディアの婚約者は、レフィオル王国の第一王子アデルバート殿下だ。しかし、彼はリディアに冷たく、最近は小動物のように愛らしい男爵令嬢フィオナのほうばかり気にかけている。 ついには殿下とフィオナがつき合っているのではないかという噂まで耳にしたリディアは、婚約解消を申し出ることに。しかし、アデルバートは全く納得していないようで……。 ※二部以降雰囲気が変わるので、ご注意ください。少し後味悪いかもしれません(主人公はハピエンです) ※小説家になろうにも掲載しています ◆表紙画像はGirly Dropさんからお借りしました (旧題:婚約者は愛らしい男爵令嬢さんのほうがお好きなようなので、婚約解消を申し出てみました)

新人魔女は、のんびり森で暮らしたい!

田古みゆう
ファンタジー
 見習い学校を卒業して、正式に魔女になったばかりの新人魔女リッカは、就活解禁日となったその日、いくつかの求人票が貼り付けられた掲示板を睨みつけていた。 「おっ? どうした嬢ちゃん? 職探しか?」  就労斡旋所の所長ジャックスは、そんなリッカの姿を見かけ、声をかける。  新人魔女リッカの希望就職先は、森の中の工房。そこでのんびりと見習い仕事をしながら、実習に明け暮れる日々を送ることがリッカの希望だった。  しかし、そんなに都合の良い就職先を見つけることは出来るのか?  新人魔女のほのぼの(?)スローライフが始まります。 ※表紙画像及び挿絵は、フリー素材を加工使用しています。

よくある婚約破棄なので

おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。 その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。 言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。 「よくある婚約破棄なので」 ・すれ違う二人をめぐる短い話 ・前編は各自の証言になります ・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド ・全25話完結

前世で処刑された聖女、今は黒薬師と呼ばれています

矢野りと
恋愛
旧題:前世で処刑された聖女はひっそりと生きていくと決めました〜今世では黒き薬師と呼ばれています〜 ――『偽聖女を処刑しろっ!』 民衆がそう叫ぶなか、私の目の前で大切な人達の命が奪われていく。必死で神に祈ったけれど奇跡は起きなかった。……聖女ではない私は無力だった。 何がいけなかったのだろうか。ただ困っている人達を救いたい一心だっただけなのに……。 人々の歓声に包まれながら私は処刑された。 そして、私は前世の記憶を持ったまま、親の顔も知らない孤児として生まれ変わった。周囲から見れば恵まれているとは言い難いその境遇に私はほっとした。大切なものを持つことがなによりも怖かったから。 ――持たなければ、失うこともない。 だから森の奥深くでひっそりと暮らしていたのに、ある日二人の騎士が訪ねてきて……。 『黒き薬師と呼ばれている薬師はあなたでしょうか?』 基本はほのぼのですが、シリアスと切なさありのお話です。 ※この作品の設定は架空のものです。 ※一話目だけ残酷な描写がありますので苦手な方はご自衛くださいませ。 ※感想欄のネタバレ配慮はありません(._.)

【R18】お嫁さんスライム娘が、ショタお婿さんといちゃらぶ子作りする話

みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。 前話 【R18】通りかかったショタ冒険者に襲い掛かったスライム娘が、敗北して繁殖させられる話 https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/384412801 ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで

兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜

藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。 __婚約破棄、大歓迎だ。 そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った! 勝負は一瞬!王子は場外へ! シスコン兄と無自覚ブラコン妹。 そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。 周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!? 短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。

領主の妻になりました

青波鳩子
恋愛
「私が君を愛することは無い」 司祭しかいない小さな教会で、夫になったばかりのクライブにフォスティーヌはそう告げられた。 =============================================== オルティス王の側室を母に持つ第三王子クライブと、バーネット侯爵家フォスティーヌは婚約していた。 挙式を半年後に控えたある日、王宮にて事件が勃発した。 クライブの異母兄である王太子ジェイラスが、国王陛下とクライブの実母である側室を暗殺。 新たに王の座に就いたジェイラスは、異母弟である第二王子マーヴィンを公金横領の疑いで捕縛、第三王子クライブにオールブライト辺境領を治める沙汰を下した。 マーヴィンの婚約者だったブリジットは共犯の疑いがあったが確たる証拠が見つからない。 ブリジットが王都にいてはマーヴィンの子飼いと接触、画策の恐れから、ジェイラスはクライブにオールブライト領でブリジットの隔離監視を命じる。 捜査中に大怪我を負い、生涯歩けなくなったブリジットをクライブは密かに想っていた。 長兄からの「ブリジットの隔離監視」を都合よく解釈したクライブは、オールブライト辺境伯の館のうち豪華な別邸でブリジットを囲った。 新王である長兄の命令に逆らえずフォスティーヌと結婚したクライブは、本邸にフォスティーヌを置き、自分はブリジットと別邸で暮らした。 フォスティーヌに「別邸には近づくことを許可しない」と告げて。 フォスティーヌは「お飾りの領主の妻」としてオールブライトで生きていく。 ブリジットの大きな嘘をクライブが知り、そこからクライブとフォスティーヌの関係性が変わり始める。 ======================================== *荒唐無稽の世界観の中、ふんわりと書いていますのでふんわりとお読みください *約10万字で最終話を含めて全29話です *他のサイトでも公開します *10月16日より、1日2話ずつ、7時と19時にアップします *誤字、脱字、衍字、誤用、素早く脳内変換してお読みいただけるとありがたいです

私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。

木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアルティリアは、婚約者からある日突然婚約破棄を告げられた。 彼はアルティリアが上から目線だと批判して、自らの妻として相応しくないと判断したのだ。 それに対して不満を述べたアルティリアだったが、婚約者の意思は固かった。こうして彼女は、理不尽に婚約を破棄されてしまったのである。 そのことに関して、アルティリアは実の父親から責められることになった。 公にはなっていないが、彼女は妾の子であり、家での扱いも悪かったのだ。 そのような環境で父親から責められたアルティリアの我慢は限界であった。伯爵家に必要ない。そう言われたアルティリアは父親に告げた。 「私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。私はそれで構いません」 こうしてアルティリアは、新たなる人生を送ることになった。 彼女は伯爵家のしがらみから解放されて、自由な人生を送ることになったのである。 同時に彼女を虐げていた者達は、その報いを受けることになった。彼らはアルティリアだけではなく様々な人から恨みを買っており、その立場というものは盤石なものではなかったのだ。

処理中です...