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二章

356話

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 旅の汚れ落としをしてからみんなでお茶を頂く。
 夕食前なのでお菓子を少し・・・じゃないけど少しね。グレーデン家基準で。

「リーシャちゃん、ゆっくりできたかしらぁ?」
「おかげさまで」

 温泉とか畑とか色々あったけど実働はポムたちだしね。

「魔獣が闊歩しない長閑なとこだったよー」
「兄さん、普通の場所は魔獣は闊歩しないんだよー」

 お約束ギャグのつもりらしく二人で笑い合ってる。

「魔の森がないと言うのは安心という反面、食糧や素材の入手が限られるのじゃ」
「そうねぇ、人の手で育てられる範囲では細々になるわねぇ」

 機械がない世界だから本当に人力なのだ。育てるのに精一杯だからあの渋みのある野菜も改良とかないままなんだろうな。
 腐葉土が広がって多少作物の育ちが良くなったらしいけど。

「温泉宿が出来ればお祖父様たちも遊びに行くといいですよ。穏やかで気持ちの良い場所です」
「あらぁ私たちには言ってくれないのかしらぁ☆」
「母上・・・しばらくは忙しいのでお祖父様たちの後にしてください」

 留守中のグレーデンのことも聞きながらオヤツを頬張る。

 お祖父様とクラウスさまは領主のお仕事、お義父さまとお祖母様は騎士団のお仕事をしてたそう。
 お祖父様は書類仕事は苦手そうなのにと思ったら過去二十年の領地の状況とか見ておきたかったそうでちょうど良かったとカカカと笑ってる。
 スピネルさんが補佐してくれてるから楽したそうだ。なるほどインテリオジだったか。

 時間になったのでそのまま夕食になった。

「ルルゥ、もう仕事してるの?」
「そうよぉ、私のお城♡落ち着くわぁ」

 村で仕入れたばかりの野菜をふんだんに使ったサラダをルルゥが持って来てくれた。

「こちらポムたちが舞をして育った美味しい野菜ですよぉ」

 ポムたちも嬉しそうにサラダに突進。ディディエのテンションが高い。とうもろこしを高速で突いてるよ。

「まぁ!」
 
 グレーデンで採れる作物はほとんど精霊の加護が行き渡ってるけどマシマシになってるから美味しさアップなんだよね。もう王都や他の地域の野菜食べれないよ。

 あとで干してもらう野菜も用意してもらおう。ポムたちのおやつになるし。

「ジュリアスさま、リーシャさま、こちらルドガーさまの狩ってこられたワイルドフレアボアです」

 おお。やっぱりご馳走用を用意してくれてた。ニックスが持って来てくれたのはローストビーフチックなボアのお皿。

「「ありがとうございます」」

 お義父さまのお礼を言うと今度はお祖父様が、
「俺の獲物も早く」
って急かして持って来させる。
「ジオルドさまの獲物、サンダービッグホーンでございます」
 
 痺れ牛ーー。嬉しいけどあまり食べさせてもらえないんだよ。

「お祖父様、ありがとうございます」

 ジュリアスさまがいい笑顔でお礼を言ったので首を傾げると、
「今日は徹夜なのでありがたいです」
って痺れ牛を私に一切れ食べさせたあとバクっと食べちゃった。
「あらぁ、そんなに切羽詰まったお仕事あったかしらぁ?」
「切迫詰まってなくともルークとセバスチャンの圧がすごいですからね」
 通常運転になるまで怖いオーラだものねぇ。
「良い側近が付いてて有難いさねぇ」

 食後のオヤツまでしっかり食べてから解散になった。

 お義母さまのケーキホール食いが相変わらずで安心しちゃうのはどうしてだろう。

 食後に、ジュリアスさまはやっぱり執務室に行っちゃったので、私は申し訳ないと思いつつ、ニーナとサラとメルにお風呂とマッサージのお世話を受けて休む。
 サラとメル、使用人さんたち用にお花の砂糖漬けなどお土産に渡したらとても喜んでもらえた。
 ニーナがジュリアスさまが戻るまで付いててるって言ってくれたけど旅の疲れもあるし、今日は大人しくしてるからって下がってもらった。

 今日もポムとティムはここで休むそうだ。アズライトは池、ディディエはルルゥだけどね。

 デローンと伸びたポムたちを横目にグレーデンに温泉が出たらスパを作りたいなって妄想を広げた。

 電気風呂と打たせ湯が欲しい。
 あとマッチョなおじさんたちが頑張るサウナっていいよね。いや、さすがにそれを覗くことは出来ないけど。
 
 カイダールの方も和風旅館っぽいのとかあったら良いかも。建物はすぐに手をつけられないから提案書を送ったりしよう。
 いっそ私がオーナーでも良いかも。税金をカイダール領に納めるんだから応援になるよね。

 そういえば転移陣をいじりたいんだった。リックさまと王様にお手紙を書かねば。

 グレーデンとカイダール間の開通を許可して欲しいし。

 マーベルハントのお祖父様にもカイダール家への協力のお礼と温泉のことなど書いて。
 
 やることやりたいことをリストアップしたりしながら気がついたら寝てた。


 起きたらジュリアスさまにガッチリ抱き込まれてたので身じろぎして抜け出そうとした。
 ジュリアスさまはお疲れなので起きない。
 なので腕から出られない。
 乙女のピンチなので脇をこしょこしょ。

 おーきーなーい。

 珍しいことにぐっすりだ。

 起こさないでいてあげたいけどピンチがピンチでピンチなので「んーーーーっ」とジタバタ。

 ギリギリのギリでジュリアスさまがうとうとと目を覚ましたので「お花を・・・」でやっと抜け出せたよ。

 





 
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