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二章

313話

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 私は自室に籠るから護衛は必要ないのでアランとジェイクに離れまで行って、甘酒の木の樹液があるだけと仕上がってるお酒を全部厨房に運んでくれるようにお願いした。
 誰か一人は付いてないといけないそうなのでアランだけ行ってくれることに。

「タンクの使い方はわかる?」
「はい」
「じゃぁ〈洗浄〉してケビンに新たに庭の果物かハーブを入れてもらうようにお願いしてくれる?」
「承知しました」
 
 あまり大っぴらに出したくないけど、極寒の地ではウォッカとかで体温下げないようにしてるって何かで読んだから、今回は使ってもらおう。うちからも騎士さん出てるし。

 ニーナに手伝ってもらって簡易錬金セットをテーブルに並べて、素材もバンバンと出していく。

「リーシャさま、今日はもうたくさん魔力を消費していますが大丈夫ですか?」
 ニーナが心配そうに聞いてきた。
「うん。今のところ大丈夫っぽい。無理そうだったら休むね」

 まずは百目の肝を処理しないと。
 取り出した巨大な毒々しい紫色の肝をとりあえず半分を風魔法でバラバラに刻んで大鍋の中で撹拌する。
 臭いはアイテムボックスから出した時は無臭だったけど、切り刻んだ一瞬にムワァっとしたので遮断した。マジ勘弁。

 お母さまの残した薬草に滋養強壮のが何種類かあったので確かお母さまの残したレシピに百目の肝について書いてあったなって記憶を探って必要な素材を鍋に入れていく。
 今回はポーションとまではいかない滋養強壮薬なので多少簡単。

 弱ってる人には強いので年齢と体格別に希釈度を変えて使う。

 ホーン領に向かった人たちにも身体を温める栄養剤をってことでさっきのに加えて辛味のあるボムの根と内緒だけど虫から生えた薬草とセクシーポーズしてるみたいな根菜を混ぜる。
 平時に飲むと別の意味で漲っちゃうので飲んじゃダメだぞ。

 隣でニーナが虫の草を見てドン引きしてるけど薬に使う素材なんて得体の知れないものが多いんだよ。

 あとお酒に混ぜる薬草も煎じておく。

 作った物は一旦アイテムボックスに仕舞って厨房に向かう。
 アランも戻ってきていたので

「ルルゥ、妊婦さんたちにはまずこの甘酒の樹液とかなり煮込んだ米と麦を混ぜてあげて」
 栄養がたっぷりだから。
 
「お酒は何に使うのぉ?」
「薬草を混ぜてホーンにいる騎士さんたちに渡すの。向こうで寒さに耐えてる領民にはこれを薄めたものとこっちの栄養剤も配ってほしい」

 厨房のコックさんたちが全員フル稼働だ。
 マギー先生から胃に優しいものや逆に栄養の吸収力の高い食べやすいものなどいろいろ指示が出てるみたい。

「ルルゥ、栄養剤は侍女さんやメイドさんに任せた方がいい?」
「あら、状態別に場所を分けてあるからこっちでやるわよぉ」

 私は大鍋と希釈の説明書をルルゥに任せた。

 ニックスとベンに手伝ってもらって酒樽に薬草を煎じた物を混ぜて、こっち用を少し残して残りを転移陣のある塔に運ぶことに。

「リーシャさまはお休みになってください」
「この状況で私だけ休むのはできないよ」

 途中でセバスチャンが追いかけてきたけど流石に却下だよ。

「やれることやったら休むから」

 グレーデンに薬師も医師もいるけど百目とか高ランク素材を使うのを短時間でこなすのは私しかいないと思う。自惚れてるかも?だけど。

 アランに運ばれてるからカッコつかないけどね!

 塔に入るとまだまだ人が移動してきていた。

 かなりの人数だよ。

「寒さに慣れた私らでもあれは堪える」

 ちょっとお年のマッチョさんがボヤきながら荷物を転移陣から出してた。

 私はちょうど騎士帯を送り出してるサーキスさまに、身体を温める栄養剤の説明をして、お酒も全部渡した。
 一瞬眉を顰めたけど、緊急時なので受け取ってもらえた。

「リーシャさま、可能ならカイロのような物をたくさん用意してください。素材はセバスチャンに言えばすぐ用意されます」

 おお!お仕事もらった。

「あとアズライトがホーンに残ってるようですが何か指示を出しましたか?」

 え?そう言えばいないと思ったらホーンに忘れてきちゃったのかしら?ずっと肩に乗せてかから自分の意思で降りたんだよね?

「何も言ってないです」
「そうですか・・・」

 まぁアズライトなら心配ないと思う。寒さに強いかは知らないけど。
 
「じゃぁ温かい道具を用意してきます」
「よろしくお願いします」

 リュフェリー家や王家の騎士団も動いてるようでホーン家の転移陣はずっと稼働中で合間に運び入れてるから大変だそう。
 ついでなのでグレーデン家の転移陣の装置に魔力を充填しておく。

「・・・底無しですか」

 こっそりのつもりがサーキスさまに見られててめちゃくちゃ呆れられた。

「感謝します」

 でもちゃんとお礼を言われたので問題なし。

 大広間の方も何か必要ないかと顔を出すことにして向かってもらったら、寝かせられてる人とお世話する人で部屋は豪華なのに野戦場の如く忙しなく人が動き回ってた。

「リーシャさま、いかがなさいましたか?」
 侍女さんが声を掛けてくれたので聞いてみた。
「何か必要なものとかありますか?」
「リーシャさまが用意してくださった甘酒の粥と栄養剤で状況は良くなってきましたので大丈夫ですよ」
 ってことなので少し安心。

 落ち着いたら天幕みたいなので個室っぽくするらしい。

 客間の方には妊婦さんたちがいるそうで今は医師たちに任せてるそうだ。
 そっちは何もできそうにない。

 お湯とかも魔法でやれちゃうしね。

 大人しくお部屋で温かい魔道具を量産しよう。
 そう伝えるとニーナもアランもジェイクもかなりホッとした。解せぬ。






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