上 下
278 / 662
二章

269話

しおりを挟む
 デーンと洒落っ気無しのコンテナ風のマイ酒蔵。
 入り口は認証しなくちゃだし、中は空調管理、温度湿度を一定に保てるようにしてあるわけで。
 おそらく今までで一番本気出した作り。
 
 そんなの見ちゃったらポカーンってなるのも仕方ないよね。
 アランとジェイク、ニーナはちょっと私のやることに慣れてきてたから気にしてなかったけど、やっぱちょっとやりすぎたっぽい。

 中に並んでるタンクも初見だと異様だよねぇ。

「これはまたすごいのぅ」
「まぁ!どんな武器が出来るのかしら?」

 いや武器は作ってません。
 物々しく見えちゃうかな。

 でもお酒ってある意味武器かも。酩酊したら判断力も運動能力も落ちそう。

「えーと・・・この機械に種と実や薬草を入れて発酵させて蒸留させています」

 ざっと言うとブランデーとかの作りかな?でも異世界の不思議?使う素材でなんか違うみたいだし、飲めれば良いや。

「ほほう」

 確認窓を覗いたりしても匂いが出てこないからよくわかんないよ。

「ふぬぅ、これではすぐ無くなるのぅ、人を雇って量産させるのは可能かのぅ?」

 まだ仕上がりがどうなるのかわかんないのに設備作っちゃうの?

「うまく出来て次が飲みたい時に飲めんのは悲しかろう」

 うーん、でもこれポムたちがやっちゃったから人に任せてもランクが落ちちゃうんだよねぇ。多分。

「あー、うーん、うーん?」

 頭を抱えちゃった私をお義父さまがびっくりした顔で抱き上げる。

「無理なら良いんじゃ!!」

 魔道具が難しいと思われちゃった。

「えーと、ここのお酒はアズライトとポムとティムが何かしちゃったんで仕上がりが表に出来ない代物になりそうなんです」

 それを聞いてお義父さまとお義母さまがギョッとアズライトたちを見る。
 きゅるーんと見上げるポムとティム。
『どうせなら美味いのが飲みたいであろう?』
 って全然悪びれないアズライト。

「なるほどのぅ」
 しばし沈黙して。

「工場には手出ししてはならぬぞ」
 いやもう絶対作るやつ~。

「うちの男どもは酒が好きなのだ。美味い酒があれば士気も上がると言うものじゃ」

 それはわかるけど、アル中が出そうなレベルのお酒作るわけだよ。
 エールの三倍は濃いはずなの。

 私はカクテルにしたいけど多分そのまま飲むんでしょう?

「うーん、一個だけアズライトたちが手を出してないのを作るのでそれの味見をしてから決めてください」

 それだけは時間短縮使うから。

「そうか?そこまで言うのじゃったらそうしようかの」

 仕方ないのでこのまま酒蔵に篭って追加を作るよ。

 お二人には帰ってもらって再び一式を作る。

 発酵蒸留を促進させる魔道具を追加して。

「ポム、ティム、アズライト、これは今後一般向けに売るものを試作するから何もしないでくれる?」
 ちょっと不服そうなポムとティムに今後作る全部のお酒をお手伝いしたいの?って聞けばそうでもないらしい。気まぐれなやつめ。

 アズライトはさすがに一般向けを霊水にした時の影響を考えたらヤバいのはわかるから納得してくれた。

 さて、どの果物にすべきか?
 お芋使ったらイモ焼酎になるかな?

 アランたちに追加のお芋を掘ってきてもらって下準備してからタンクにインしたよ。

 四日くらいで出来そう。

「アズライト、樽にできそうな木って何かある?」
 時短の分はエール用のでとりあえず良いかな?
 買って来てもらおうと思ったけど、後で出来る分にはちょっと良い素材が欲しいな。

『ふむ、池の木はみんな魔素を豊富に取り込んでいるから良いのでないかの』
 (え、縄張りの木、伐採して良いの)
『すぐ増えるし、ポムがいればどうとでも出来るでの』
 あー、すぐニョキっと出来るね。

 ウィンドカッターでやれるかな?

『・・・主がやると丸ハゲにされそうだから我が切ってくる』

 なんですと!?そんな暴走したりしないよ。

『良い。その酒たちに向いた木を選んでくるでの』

 なんかめっちゃ失礼な気がするけど切って来てくれるなら良いか。

 しばらく待ってると私の身長くらいに切り分けられた丸太を数個持って来てくれた。
 でけーよ!!!

「板状にしたら良いんですよね?」
「乾燥させたら良いですか?」

 アランとジェイクが一般的な酒樽サイズに使える板状にしてくれた。

「ありがとう」

 本当は職人に任せたいんだけどねぇ。

 とりあえず切ってもらった木材と鉄で錬成してランク上げて樽を仕上げる。
 焼きの工程も錬金術で済ませちゃったよ。

 お神酒ができちゃうかもしれないからね。もうやれるだけ最高の樽にしちゃったわよ。

 時短のには時に何もしない。普通に作った場合の味を確かめなくちゃだからね。

「はぁ、楽しみがちょっと恐怖になっちゃったよ」

「美味しければ良いではないですかー?」

 色々慣れちゃったアランとジェイクは深く考えないことにしたみたい。

 お酒、無事に私の口に入ると良いなぁ。

 ポムたちも酒蔵から出して扉を閉める。認証しないと入れないからポムたちがこっそり舞を踊ったりは出来ないはず。

 あとは飲酒許可だけど、出来上がったお酒を貢物にしたら許可くれないかな。

 ロジャー先生とマギー先生は飲みそうだもん。












しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。

三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。 それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。 頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。 短編恋愛になってます。

とある婚約破棄の顛末

瀬織董李
ファンタジー
男爵令嬢に入れあげ生徒会の仕事を疎かにした挙げ句、婚約者の公爵令嬢に婚約破棄を告げた王太子。 あっさりと受け入れられて拍子抜けするが、それには理由があった。 まあ、なおざりにされたら心は離れるよね。

私の妹は確かに聖女ですけど、私は女神本人ですわよ?

みおな
ファンタジー
 私の妹は、聖女と呼ばれている。  妖精たちから魔法を授けられた者たちと違い、女神から魔法を授けられた者、それが聖女だ。  聖女は一世代にひとりしか現れない。  だから、私の婚約者である第二王子は声高らかに宣言する。 「ここに、ユースティティアとの婚約を破棄し、聖女フロラリアとの婚約を宣言する!」  あらあら。私はかまいませんけど、私が何者かご存知なのかしら? それに妹フロラリアはシスコンですわよ?  この国、滅びないとよろしいわね?  

私の以外の誰かを愛してしまった、って本当ですか?

樋口紗夕
恋愛
「すまない、エリザベス。どうか俺との婚約を解消して欲しい」 エリザベスは婚約者であるギルベルトから別れを切り出された。 他に好きな女ができた、と彼は言う。 でも、それって本当ですか? エリザベス一筋なはずのギルベルトが愛した女性とは、いったい何者なのか?

ママチャリってドラゴンですか!? ~最強のミスリルドラゴンとして転生した愛車のママチャリの力を借りて異世界で無双冒険者に~ 

たっすー
ファンタジー
フードデリバリーをしていたオレは、仕事中の事故で死んでしまい、異世界に転生した。 だけど転生した後も日雇い仕事に精を出すだけのうだつのあがらない毎日は変わらなかった。 そんなある日、路地裏の揉め事に巻き込まれる。 手酷い暴行を受け意識を失ってしまったオレを宿まで運び傷を治してくれたのは、オレよりも遅れてこの世界に転生してきた、元の世界にいた頃の愛車(ママチャリ)シルバーチャリオッツ号だった。 シルバーチャリオッツ号はこの世界にドラゴンとして転生してきており(でも見た目は自転車のまんま)、思念伝達のスキルで会話ができる(でもちょっとウザい)オレの相棒となる。 転生にともなって思念伝達以外にも様々なスキルを獲得していたシルバーチャリオッツ号は、この世界では超つよのチートドラゴンだった(でも見た目は自転車)。 転生前の自炊生活で学んだオレの料理の知識と、シルバーチャリオッツ号のチート能力を駆使して、オレたちは様々な問題を解決していく。 最強ママチャリとちょっと料理ができるだけのオレの異世界活躍譚。 あれ、もしかしてオレってオマケ?

王妃ですけど、側妃しか愛せない貴方を愛しませんよ!?

天災
恋愛
 私の夫、つまり、国王は側妃しか愛さない。

巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】 事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。 神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。 作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。 「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。 ※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

両親と妹から搾取されていたので、爆弾を投下して逃げました

下菊みこと
恋愛
搾取子が両親と愛玩子に反逆するお話。ざまぁ有り。

処理中です...