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一章

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 家に風呂あるんはありがたいで。
 共用の混浴露天風呂もあるらしい。お爺たちが酒飲みながら入ってるから私は行かない方が良いって。
 ちなみに魔法の〈洗浄〉で済ますことも出来るそうや。

 ちょっと辛いんは油っぽい石鹸しかないことやね。
 石造の風呂にチャポーンと浸かりながら、今後どうしてくかなと考える。
 楽ちんに生きるってしか思ってなかったから何しようかとか何もない。

 とりあえずせっかく仕事もないし、自分の環境を整えるんが一番かね。
 前世じゃ余裕が無くて出来なかったことしたろ。

 まずは香りのいい石鹸とシャンプーとトリートメントや。
 化粧水もあったらええかも。

 どうも〈渡人〉は男はんばっかやったんか食い物にしか前世チートしてないんちゃうか?

 まぁ私もタブレット無かったら作り方わからんもんばっかやし。

 風呂から出る時は桶と浴場に〈浄化〉をかけるんはマナーなんやて。掃除も湯替えもせんでいいの便利や。
 魔法使えん人は魔道具を使うんや。魔道具買えん人は自力やそうやで。世知辛いな。

 居間に出たらシルバの婆ちゃんが冷たいモノを持ってきて〈乾燥〉って髪を乾かしてくれた。
 こんな世話されんのも初めてに近いからちょっと照れるわ。

「気分がスッキリするハーブよ」

 うぐ。これは前のより色はええけど・・・。

 えええぃ!南無三!!

「お?」

 めっちゃ爽やか~!!
 ハーブなんか洒落たもん詳しくないからようわからんけどスッキリした味わいや。


「ルーノ、魔法や投擲を学ぶんですって?」
「うん、何や自立にためにはやっとけって言われた」
「そうねぇ、今のままじゃ村を出たら心配ね」

 うーん。楽ちんな暮らし方ってどういう暮らしやろか?
 大金持ちで貯金でやってけて人雇って護衛雇って左団扇ってやつか?
 神様が言う人生を楽しむに当てはまらんのかな!?
 ステータスも∞ばっかの中でレベルだけ低いんは自分で経験値詰めってことやろ?
 中途半端な楽ちんやで。

 曖昧なイージーモード言うたんがあかんかったぁ。

 まぁお金持ちになりたかったわけやないけど、努力と根性がいるんは詐欺や。

 努力と根性って言えば友情?んなもん前世から行方不明じゃ。
 愛と勇気もどこか行ったきりやな。
 お、思ってたより残念や!私、だいぶ残念やな。


 まぁそんなことはどうでもええ。

「ルーノ、薬術は私で防御や護身術はカシム、魔術はアクィラ、多分カルロスが投擲、剣はグウェインあたりかしら。他にも興味があればなんでも学べるわ」

 ほえ~、すでに師匠が決まってるやん。

「婆ちゃん、薬師?」
「そうよ。治癒術も使うわ」

 もしかして聖女?
 顔にワクワク感が出ちゃってたのか、
「聖女じゃないわよ。ヒーラーで薬術は趣味よ」
 って笑われた。
「私たちと旅した聖女は王都に残ったからね」
 旅した!?もしかしなくても勇者パーティだったん?
「ふふふ、大昔のことよ」

 ここは勇者のいたクラン?パーティの村ってことか。歳いっててもマッチョなのは当然なのかもな!

「大昔・・・」
 ぺち!
「あた!」
 しもた。歳に関するツッコミは今も昔も御法度や。
 婆ちゃんに手のひらで叩かれた。痛くないけど。

「なぁ。石鹸に香りつけたん欲しいんやけど」
「あら?」
 私はタブレットを出して欲しい素材と作り方を説明する。
 どうも婆ちゃんには画面が真っ黒にしか見えんらしい。見えてたら見せるだけですんだんに。

「へぇ、ハーブいれてもいいんだね」
 うちの石鹸はカルロスの嫁ベラさんの手作りだそう。
「ベラに教えてもいいかい?」
「うん」
 人に作ってもらえたら楽ちんやし。
 ついでにシャンプーやトリートメントも説明したら「髪が綺麗に!?」って夜だって言うのに婆ちゃん飛び出して行っちゃった。
 似たもの夫婦や。

 ちょっとしたら爺ちゃんが帰ってきた。
「留守番させて悪いな」
 って言いながら酒飲んどる!!!
 アル中ぽくないからええけど。

「明日は俺とカルロスとで森に行ってちょっと訓練だな」

 毎日お誘いありがとうやな。涙がちょちょぎれそうや。

「今の時期だポルポル鳥が繁殖期でたくさんいるぞ」

 お?野鳥観察かいな。
 のどかで良いな。

「カルロス、パン屋暇なん?」
「夜仕込んで朝焼き終わったら終いだからわりと自由だな」

 パン屋ってそんなんなの!?

「村じゃ物々交換が基本で一日に必要な量作ってしまえばいいからな」

 おお!この村で暮らすのガツガツしなくて良いから楽ちんなんじゃ!?
 私も何か供給出来るもん用意したら良いよね。








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