8 / 20
現世での再会
しおりを挟む姫抱きにされたまま連れて来られたのは森の奥の奥にある美しい草原。
野に咲く花々が穏やかな風に揺れ、青い空がより青く見える。
そしてその少し先には、とても年季の入った外観なのだが、どこか品のある大きな屋敷が建っていた。
「…ここは、何処なの?アゼルから随分離れた場所みたいだけど」
ここに連れて来られる前、トヴァ達は目的地であるシイオと市場の中間地点に位置する【アゼル】という町に滞在していた。
欲を言えば、マーレ市場からバスでシイオまで行ってしまいたかったが、バスはアゼルまでしか出ておらず、今日はシイオに向けて徒歩の旅をする予定だった。
「トヴァ様が居るべき場所ですよ」
けれどおかしい、アゼルの周辺にこんな深くまで広がる森はなかったはずだ。
思い当たるとするなら、蒼の森くらいしかないが、その森への侵入は国が禁止しているし、距離的な問題からここが蒼の森だとは考えにくい。
何よりおかしいのは、ここに至るまでの経路を見ていなかったはずはないのに、思い出せないのだ。ただ、移動時間の感覚が正しければ、アゼルからここまで、然程時間はかかっていない。それも妙だ...。
こんな事ができる方法など、もう一つしか思い浮かばないが、敢えて聞いてみると、
「魔法って便利ですよね」
と軽く微笑んだ。
「まぁ、立ち話もなんですし、何より彼の方が首を長くして待っていらっしゃると思うので行きましょうか」
そう言ってニッコリと笑うモーントの表情は相変わらず少しばかり胡散臭いが、手を差し出す彼の手をとって二人で屋敷へと歩いて行く。
「… …」
「… …」
二人が屋敷の扉の前へ立ち、モーントが扉を開けようとした瞬間、その扉は中から開かれ、扉を開いたであろう人物が現れた。
無言で見つめ合う三人。
「あ、陛下ナイスタイミングですよ。トヴァ様をお連れしま…「!?」
モーントが言葉を言い終える前に、中から出てきた男は素早くトヴァを抱き締めた。
トヴァは咄嗟のことに何が起こったのか理解出来ずにされるがまま抱き締められている。
「…会いた、かった…っ」
掠れる声で漸く紡がれた彼の声を聞けば、トヴァは何故だか胸の奥が締め付けられるようにキュッと痛んだ。
「本当に...っ、ずっと、会いたかったんだ」
それは、とてもとても、深く、切ない痛みのように感じた。
「… …陛下、彼女、吃驚して硬直していますよ?」
「! そう、だな…、悪い」
ハッとしたようにトヴァを解放した彼の瞳からは涙が溢れていて、そんな彼を見たトヴァは眉を八の字にして、それはそれは愛おしげに彼を見つめる。
「リール?」
「…っ!!」
トヴァは涙で濡れる彼の頬を自分の両手で優しく包むと、彼の瞳を真っ直ぐと見つめた。
そんなトヴァの突然の行動に、今度は彼が目を見開く番だった。
「泣かないで、リール。
…私を待っている人って貴方だったんだね」
言って、優しく微笑むトヴァに、一度止まったはずの涙がまた溢れてくる。
「…ぁぁ、俺は "リール" だよ」
「夢で会って以来だね」
「覚えててくれたんだな」
「あんな不思議でリアルな夢、忘れることが出来たら逆に変」
クスクスと笑うトヴァを見て、リールも笑った。
「陛下、漸くトヴァ様に逢えて感極まるのも分かりますが…」
「あ、ああそうだな。トヴァ、中へ入ってくれよ」
紅茶でも、と用意するべく先に中へと入っていったモーントに続き、リールはトヴァを自分よりも先に入れようと促したのだが、トヴァは後ろを振り返り、その先を見つめていた。
「トヴァ…?どうした?」
「…カエとナナ、大丈夫かな」
「カエ?ナナ?」
「私の大切な友人たち」
「友人…」
「うん魔人のね」
リールはそれを聞いて、トヴァがルクスであった時と何ら変わっていない事に、目頭が熱くなった。人間も魔人も、基本互いに見下し合っているこの世界で、それを無視するかのように生きている彼女。
「私が此処に来る事を伝えてくれるって言ってくれたけど、きっと二人共、すごく心配してる...」
トヴァの表情からは、彼らを本当に心配しているという事が窺えて、リールは先に中へと入っていったモーントを呼んだ。
「何ですか陛下?今紅茶を淹れようとしていたところなんですけど」
「悪いけど、トヴァの友人も此処へ連れて来てくれないか?」
「…それについてはお話したと思いますが。少し様子を見ていて、彼らはあまりにもトヴァ様に執着しているように感じました。はっきり言って、"厄介" ですよ」
溜め息を吐いて言ったモーントにお構いなく、リールは続ける。
「頼む、俺もルクスの… …いや、トヴァの悲しむ顔は見たくないんだ」
「… …仕方がないですねぇ」
モーントはやれやれといった感じで首を横に振った後、魔獣へと姿を変え、誰かに何かを伝えるかのように一度高く鳴いてから走り去った。
「あいつがあんたの友人を連れてくるよ。だから取り敢えず中に入ってくれ」
リールが屋敷の中へと誘うと、トヴァはやっと中へと入る。
「待ってて、今紅茶を淹れるから」
「うん」
「適当に座っていいからな」
トヴァは頷くと、ある一つのソファへと腰掛ける。なかなかの年代物であるが、濃い赤ワインのような色合いのそのシックなソファに座れば、何故か妙に落ち着いた。
自分が今腰掛けているソファもそうだが少し見回すだけで、古くてもとても高価そうな物や家具で屋敷内は統一されている。
アンティーク好きなのだろうか。
まるで昔の貴族の屋敷がそのまま現代へと残っているような…。
「トヴァ、できたよ」
そう言って彼は、目の前のテーブルへティーカップを置いてくれたので、お礼を言ってからティーカップに口を付ける。
「…おいしい!」
「はは、それは良かった。裏庭で葉が採れるんだ」
美味しい、と目を丸くしたトヴァの表情と言葉が素直に嬉しかったのだろう。リールは穏やかに笑っている。
「育ててるの?」
「ああ。これだけじゃなく、野菜や果物も育てているよ」
「すごいね」
「そうでもないさ。魔法で少し手を入れてるくらいだ」
「魔力持ちなんだ」
「ああ。もしかしてトヴァも?」
「うん。あ、じゃあ学園へは?今年入学するの?」
「決まりだからな」
「でも、此処って蒼の森じゃないの?」
この場所が本当に蒼の森か分からなかった為、カマをかけてみると、「蒼の森への侵入禁止という決まりは既に破ってるのに?」と揶揄っているのだと上手く受け取ってくれたリールが、「まぁそれとこれとは別で」と苦笑いで返してきた。
どうやら此処は予想通り蒼の森で当たっているようだ。
暫く他愛ない話を続けていると、トヴァが手にしていたティーカップを置き、真面目な顔でリールを見た。
「リール、私、貴方に聞きたいことがある」
「…何だよ、改まって」
「さっき、私のこと、"ルクス" って呼んだでしょ?」
「… …」
「夢の中で初めて会った時も、確かその名前で私を呼んだでしょ?どうして?」
トヴァの質問に困った様な表情を浮かべるリールから、彼女は視線を逸らすことなく見つめ続ける。
すると暫くして、リールは漸く言い辛そうではあるが口を開いた。
「… …トヴァは、前世って信じるか?」
「前世…」
「俺は信じている。…と言うより、実際に前世の記憶があるんだ。だから "信じている" っていうのとは少し違う気もするが」
「… …仮に信じていたとして、それがどう関係あるの?」
「…それは、言えない。けど、その記憶の中にトヴァがいたんだ。だから知ってる」
「私と貴方は…、知り合いだったってこと?…その前世とやらで」
リールは頷くことも首を横に振ることもなく、ただ曖昧に微笑んだ。
「…ただ、これだけは言える。トヴァは、何も思い出さなくていいんだ」
... ...嘘だ。本当は思い出して欲しい、思い出して、分かち合いたい。
俺とあんたの約束も、俺があんたをどれだけ愛していたのかも、全て。
...けれど、それは願ってはいけない。大切な者を失った時の記憶や、あんな最期を迎えたあんたは、きっと自分を責めるだろ?
責めて、責めて、一人で泣くんだろ?
なら一生思い出せなくていい、思い出さなくていい。ただもう一度、あんたと一緒にいられるなら、例えあんたに記憶がなくたって、俺は何度でも愛せるから。
「何も思い出さなくていい」と言ったリールの表情は、微笑んでいるのにも関わらず、酷く寂しそうに感じた。
「…それ、どういうこと?」
「… …」
「私の前世とやらは、私が思い出したくないような前世なの?」
「… …」
「ねえ、お願い。答えてリール」
そう言った、トヴァの淋しそうな表情は、沈黙していたリールの口を開かせるには十分で。
「…俺が、悲しいんだ」
答えたリールが今にも泣きそうに眉を寄せて切なげに微笑むものだから、トヴァはこれ以上追求できなくなってしまう。
「… …ごめん、もう聞かない」
どこかしゅんとしてしまったトヴァと、気まずそうなリール。
しかし、ただお互いに無言の空間の中いるのに、二人共妙に落ち着いていた。
暫くして、口を開いたのはリールだったが、その彼の口から出た言葉はトヴァをフリーズさせるには十分だった。
「…トヴァ、俺はあんたを愛してる」
「… … … …ぇ?」
思いもよらないリールの発言に、トヴァは目を見開いて固まったまま彼を見つめる。
そんな彼女の瞳を真っ直ぐと見つめて、彼は続けた。
「もし、俺がトヴァの傍からいなくなる時がきても、これだけは覚えておいて欲しい。
俺は昔からずっと、トヴァを愛してる。
…永遠に、トヴァを想ってる。
トヴァの幸せを、何よりも、誰よりも願ってる」
急に何を、言い出すのかと。
理解不能なリールの発言も態度も、その言葉の真意も分からないのに、トヴァの瞳から次々と溢れてくる涙に、彼女自身も驚いているようだ。
「な…んで、涙なんか…」
「…トヴァ、」
「「トヴァ!!!」」
突然勢いよく開けられた扉。その方向を見れば、全力疾走でもしてきたのだろうか、息の上がりきった見知った人物が二人。
「…カエ、ナナ、」
「トヴァ!無事か!?
… …って、は!?お前何で泣いてんだよ!」
カエルムに言われ、手の甲で急いで涙を拭えば、スタスタとトヴァの元へと歩いてきたナナがその手を優しく掴んで退けた。
「…何で、泣いてるのトヴァ。誰に泣かされたの?」
ナナはゆっくりと目線をリールへ向ける。
その瞳は、スッと橙色へと変わり、冷たく冷えきっていて、何より暗い。
「… …お前?お前が、トヴァを泣かせたの?」
「俺は、」
「違う。リールは関係ないよ、私が勝手に泣いただけ」
微笑むトヴァを見て、困った様に眉を寄せるセプテム。
「ああ!面倒臭ぇ!どうでもいいから行くぞ!」
カエルムはトヴァの手を掴むと、外へ出ようとそのまま彼女を自分たちが入ってきた扉まで引っ張る。
セプテムはそんなカエルムとトヴァの後ろで、警戒と威嚇の意を込め、尚もリールを睨みつけていた。
「待ってくれ、俺は…」
「…勝手にトヴァを攫ってったくせに何?そんなに死にたいの?」
「待って下さい」
「あ?」
カエルムの歩を妨げたのはモーントで、彼は丁寧且つ簡単に自己紹介すると、下げていた頭を上げて続ける。
「貴方方の許諾なく、此方側の理由だけでトヴァ様をお連れしてしまい申し訳ございませんでした。
ですが、トヴァ様は私たちの主であるこの御方にとって無くてはならない大切な存在。
どうか、トヴァ様を我が主と共に居させて下さい。それが主にとってもトヴァ様にとっても一番なのです」
モーントがそう言い終えた瞬間、カエルムの体が燃え盛る様な激しい青いオーラのようなものに包まれる。
トヴァの手を握るカエルムの握力もそれに呼応するかのように強くなり、トヴァは自分の手の圧迫感よりもカエルムが心配になり、不安げな表情。
「黙って聞いてりゃ、勝手なことばっか抜かしやがって」
カエルムから溢れ出る殺気に、モーントは素早くリールの前へと移動すると臨戦態勢をとった。
「...これ以上トヴァに関わるな、殺すぞ」
こんなカエルムを、トヴァは初めて目にした。
瞳孔が開ききっている。
怒りに支配されてしまっている。
一方で、カエルムがキレたことにより冷静さを取り戻せたセプテムは、カエルムの隣に立って口を開いた。
「…とにかくさ、俺達はやる事があるの。それを邪魔するなら許さない」
セプテムの言葉に何の反論もしないリール達を置いて、三人は屋敷を出て行こうとしたのだが、
「俺は、俺はもう…彼女と離れるのは嫌だ、堪えられない…っ
頼む…から、連れていかないでくれ… …」
「は?お前いい加減に… …!?」
リールの言葉に苛立ったセプテムが振り返ると、そこには床に膝と手をつくリールの姿。
握られた両方の拳は震えていて、床にぽたぽたと落ちる雫。
その姿に従者であるモーントも驚き、どうしたら良いのか分からないといった表情。
一方、苦しげに言ったリールの声音に振り返ったトヴァは、彼が泣いているのだと分かるや否や、掴まれているカエルムの手を振り切って彼の元へと駆け寄り、しゃがみ込む。
カエルムとセプテムは今まで静かだったトヴァの突然の行動に目を見開き、固まる。
カエルムとセプテムの発言中にも、トヴァが何も言わずに静かにしていたからこそ、自分たちは間違っていないのだと、トヴァもそう思っているのだと確信していたのに。
「…リール、泣かないで。あなたが泣くと私はとても悲しくなる。
二人の言う通り、私はあなた達に勝手に振り回されて、此処に連れてこられて大迷惑してるはずなのに… …」
顔を上げたリールとトヴァの視線が絡み合う。
「… …ほんと、何でだろうね…」
そう言って微笑んだ彼女の表情は、リールが驚きで自身の涙も止まってしまう程に切なげで、魅入ってしまうものだった。記憶がないのに、こんな風に自分を見つめてくれる彼女に、やはり駄目だと理解していても期待してしまう。
思い出して欲しい、と。
「リール、私にはやらなきゃいけない事があるから、ずっと一緒にいる事は出来ない。
でも、学園に入学するんでしょ?そうしたら一緒にいれるじゃない」
勿論、カエルムとナナも一緒だけど
と言うトヴァ。
彼女は親指でリールの涙を拭って笑った。
「次は、学園で会おう?約束ね」
言って、屋敷から出て行くトヴァの後ろを、弾かれたように慌て追うカエルムとセプテム。
一方のリールの様子は、数分前とは打って変わり穏やかで、去りゆく彼女の後ろ姿を見つめていた。
そんなリールに、モーントは声を掛けた。
「…行かせてしまって、いいのですか?」
「... ...取り乱して悪かった。トヴァの言う通りだ。すぐにまた会えるからな」
「まぁ...、そうですけど」
「それに、トヴァは俺との約束を破った事はない。ある一つ以外はな」
「…ある一つ…?」
――ああでもあれは、
あの "悲劇" は、
あれこそが、
世界の平和を、全ての生き物の幸福を願い、実現出来ると心から信じた俺達を、俺を、現実に引き戻した瞬間。
甘くて魅力的な夢から目覚めさせてくれた酷く憎らしくて苦しく、切なく、重要な…
" 喜劇 "
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
亡くなった王太子妃
沙耶
恋愛
王妃の茶会で毒を盛られてしまった王太子妃。
侍女の証言、王太子妃の親友、溺愛していた妹。
王太子妃を愛していた王太子が、全てを気付いた時にはもう遅かった。
なぜなら彼女は死んでしまったのだから。
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる