鏡節物語

野部 悠愛

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プロローグ

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いつもと変わらない日常。
毎日同じように繰り返されるそれはきっと「幸せ」というものなのだろうと思う。
……そんなことは誰に言われなくてもわかってる。
毎日毎日おんなじことを繰り返していく日常には新鮮さなんて言うものはかけらもない。

しかも、俺には未来が見える。
先に言っておくが決して中二病なんかじゃない。
本当に中二病だったならどれだけ良かったことか……。
何度もそう考えた。

想像してみてほしい。例えば推理小説を読もうとしたとする。
その小説の表紙をめくる前にどのような事件が起こるのか、犯人はだれなのか、その犯人の動機はいったい何なのかまでわかったとしたら、きっと読もうという気なんかなくなってしまうのではないだろうか?

俺にはそういったことが見えるのだ。
別に見てやろうと思ってみているわけじゃない。
一日に何が起こるのかが見えるというのはとても退屈だ。
誰が何を言うのかがあらかじめわかっていれば、それがどれだけ面白いことであろうとも笑えたものではない。

未来を見ないようにいろいろと試してみたこともある。
視界をふさいでみたり、何にも意識を向けないようにしてみたり、思いつくことは手あたり次第に試した。
でも、それらの試みは全部無駄な徒労に終わった。
未来のことはいつだって文章や映像として頭に浮かんでくる。

制御のできない力ほどいらないものもないだろう。
それでも、投げ出さずに生きてゆくことができているのは幼馴染のおかげだ。

今日もあいつは体調を崩していた。昼休みの時点で未来を見ていなくても倒れるだろうことが容易に想像できたくらいだ。(今日の朝顔を合わせた時にはすでに体調を崩して保健室で横になっている未来が見えていた。)
あいつの能力は本当にたちが悪い。
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