碧の空

野部 悠愛

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碧の空5

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テーマパークでテンションが上がっているのか、いつもよりしつこかった。
「え~、イイじゃん一緒に回ろうぜ!お母さんも一緒にどうですか?」
クラスの男子が鼻の下を伸ばしながら母さんに尋ねた。
下心が見え見えで正直ちょっと、いや大分引く。
相手は一回り以上年上で、しかも同級生の母親であることを忘れているんだろうか。
……忘れているんだろうな。
ちらりと母さんの顔を伺い見る。
その横顔が少し悩んでいるようで、まさかそれほど仲良くもなく、むしろ苦手なクラスメイト達と回らなければいけないのかと心臓が嫌な音をたてる。
母さんの答えを待つほんの数秒がやけに長く感じた。
「……そうねぇ~……みんなで回るのも楽しそうだけれど、せっかくのお休みの日だもの。いつ反抗期が来るかわからない息子との時間を今のうちに楽しみたいの。」
だからごめんなさいね~
母さんの言葉で嫌な音をたてていた心臓が少し落ち着いた。
反抗期、とかはわからないけれどとりあえず断ってくれて良かったと思う。
クラスメイトに視線を向けると、母さんのはにかみ笑いの威力が凄まじかったようで男子も女子も顔を赤くして黙り込んだ。
母さんの笑顔は結構な威力があるらしい。
というのも、前にショッピングセンターで何故か姉妹に間違われてナンパをされたときにもはにかみ笑いで撃退していたのだ。
普通、はにかみ笑いをすると余計に絡まれると思うのだけれど、母さんがすると何故かみんな顔を赤くして固まってしまう。
もちろん、無意識にやっているのだろうけど。
「あら?みんなどうしたのかしら?」
不思議そうに小首を傾げる母さんに、
「いや、母さんのせいだよ。」
なんて言えなくて、黙り込む。
遠い目をしてしまったことは、……まぁ許して欲しい。
くだらないことをつらつらと考えている間にある程度時間が経ったようで、
「もう行きましょ?時間が無くなってしまうわ!」
そう言って急かす母さんと一緒に、未だに固まっているクラスメイト達を置き去りに歩いていく。

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それからクラスメイトと遭遇することも無く、空いているアトラクションに乗ったり、食べ歩きのお菓子を買って食べながらお土産を見たりネズミの国を満喫した。ただ、昼ごはんに食べたカレーはものすごくスパイシーで、結構辛かった。
夜のパレードを見てから帰ろうと話して、いい場所を探して移動していると、途中のグッズショップに目がいった。
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