碧の空

野部 悠愛

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碧の空4

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誰か知り合いでもいたのかと思って、ただぼんやりとそちらを見つめた。
集団は近付いてきて僕らの前に立ち止まった。
「なんだよ城川~。クラス会は参加しないで彼女とデートかよ。」
男子が声をかけてきて、初めて僕はそれがクラスメイトだとわかった。
そんな男子の後ろでは、泣きそうな顔をしている女子が数人いた。
絶叫マシーンにでも乗ってきたのだろうか?
しかし、今突っ込むべきなのはそこでは無い。
「違うよ、デートじゃない。彼女でもないから。」
そう、おそらくダッ○ィーとシェ○ーメイというペアのキャラクターのグッズを身につけていたからだろう。
しかも、母さんは僕と同年代と言っても誰も疑わないくらいに若々しい。
でも、母さんは母さんであって彼女では無い。
「え?うーん……じゃあお姉さん?普通に顔似てるし…瓜二つだ……。」
「違うよ。」
「あっ!わかった!妹だな!めっちゃ大人っぽいね。」
「違う。」
みんな母親という選択肢は浮かびもしないのか、いとこだとかはとこだとか答えを言うまもなくひっきりなしに間違った回答が飛んでくる。
そんなやり取りがしばらく続いて、もうどうして良いかわからなくなった頃母さんがくすくすと笑いながら口を開いた。
「残念、全部ハズレよ。」
ふふふ、と笑いながら母さんはネタばらしをしていく。
「息子がお世話になってます。城川碧の母親です。お姉さんや妹だなんて、ゴマをすっても何も出ないわよ?」
そして、どうやら母さんは姉や妹と言われたことを冗談やゴマすりだと思ったようで、笑いが止まらないみたいだった。
そんな母さんを見て、クラスメイト達は目が飛び出しそうなほど驚いていた。
一頻り笑うと、母さんは不思議そうに小首を傾げた。
「ところで、クラス会って言っていたけれど、クラス会でネズミの国だなんて、最近の中学生はすごいのねぇ?」
それは、僕も気になっていたことだった。
面倒で参加を断ったけれど、もし、気まぐれにでも「良いよ。」と言ってしまっていたら大変なことになっていただろう。主に僕の財布が。
「あ、違うんですよ。この間、田中くんがネットの懸賞でネズミの国団体チケットを当てたので、今日は皆でそれを使って来たんです。……城川君も誘ったんですけど……。」
「あらあら、ごめんなさいねぇ~。今日は、どうしても私が碧と一緒に来たかったものだから、予定は入れないでってお願いしていたの。」
そうなんですね。なんてクラスメイト達は納得しているけれど、真っ赤な嘘だ。
クラスメイトのことを何となく苦手なのを母さんは知っているから気を使ってくれたのだろう。
それにしても、懸賞であてるなんてすごいのねぇ。と母さんはのほほんと笑った。
そんな母さんを見て男子たちは頬を染めている。
もちろん、天然である母さんはそんなことには気付いていないが。
やれやれ、と思っていると、さっきまで泣きそうな顔で黙っていた女子が口を開いた。
「そうだ!良かったら城川君も一緒に回らない?」
……善意で誘ってくれているのはわかっているけれど、僕は正直クラスメイトのことが好きではない。
だからといってクラスメイトのことが嫌いかと言われればそれは違う。
ただ、何となく遠巻きに見られている感じがして、まるで僕のことを観察しているようで苦手だ。
「誘ってくれるのはありがたいけど、いきなり混ざったら迷惑だろうし、今日は母さんと来てるから。また機会があったらにするよ。」
流石に、「皆のこと苦手だから、一緒に行動したくない。」とは言えないので遠回しに断った。 
それなのに、クラスメイトは引き下がってはくれなかった。
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